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【映画感想】愛と希望の街
↑STORYにほとんど全部のネタバレが載っているので、映画を見終わってから見た方がいいと思います。
監督:大島渚
脚本:大島渚
あらすじ
ある小都市の駅前、靴磨きの女の人たちに混じって一人の少年・正夫(藤川弘志)が鳩を売っていた。そこへ会社役員の令嬢・京子(富永ユキ)が通りかかり、その鳩を七百円で買った。正夫はお金が要るから鳩を売ると言う。京子は同情するが、実は鳩が巣に戻る習性を利用した巧みな金儲けだった。
登場人物
正夫:藤川弘志
中学3年生の男子。頭が良い。貧乏。
京子:富永ユキ
高校2年生の女子。世間知らずの箱入り娘だが、優しい心を持っている。金持ち。
勇次:渡辺文雄
京子の兄。父の会社の労務課員を務めている。秋山先生に惹かれている。金持ち。
秋山:千之赫子
正夫の担任の女教師。貧乏。
感想
全員が善意の行動をとったうえで、最悪の事態を引き起こしている。どうしてこんなことになっちゃったんだよう。
見ていて思ったのは、正夫くんが人に相談しなさすぎるということ。もちろん気持ちはわかる、というか自分も同じで、人に愚痴を言ったり、弱みを話したりすることが苦手だ。
特に愚痴を言うことで、相手に自分の負の感情をお裾分けすることになってしまうんじゃないかと思ってしまう。でも相手は愚痴を言ってほしいのだろう、苦しみを1人で抱え込まず、一緒に背負いたいのだろうな。だって漫画とかでみんなそう言ってるから。
↑本当にそうか?「苦しみを半分背負わせてほしい」だなんて、優しい嘘をついているだけじゃないのか?
だがこの映画では、人に弱みを見せなかったことで事態が悪化したわけだ。正夫くんと京子ちゃんが、もっと話し合っていれば、たとえ就職はできなかったとしても、鳩ぽっぽが撃ち殺されることはなかった……ハト〜〜〜!!!
靴磨きの人が正夫に同情してお金をあげるシーンがある。これは京子がお金をあげようとするのとは訳が違い、ただでさえ貧乏で、さもすれば隣の人からお金を盗るような人が、自分で稼いだお金を正夫にあげるのだ。しかも何も言わずに。
私はこのシーンが一番好きです。
大島渚はこれを金持ちと貧乏人の間には大きな隔絶があり、それを戦後の復興に隠して見ないようにしていた。ということを伝えたいのだと言うことがわかった。貧富の差とは、自分の立場からは相手の立場はわからないということだ。京子ちゃんは正夫くんの貧乏がどういうことかわかっていなかったし、秋山先生の立場からは勇次お兄さんの立場は理解できていない。
正夫くんが大きく感情を出さないのも見ていてつらくなる。唯一笑ったのは京子ちゃんと雨の中で笑いあったシーンだった。最後の鳩小屋をナタで壊すシーンで、悔しさで絶叫でもしてくれれば、声も出さずにナタを振り下ろす姿にやるせなさを感じた。
悪がいた方が救いがあるとは、なんて皮肉だろうか。
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