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私的短歌選 春日井 健

春日井健(1938-2004)

学生時代定型詩に興味を持ち始めて、オーソドックスな短歌や俳句に違和感を感じていた頃に読み始めたのが、寺山修司や塚本邦雄だった。
その中でも、春日井健の短歌は独特の輝きを放っていた。

三島由紀夫が若き定家が誕生したと激賞したことも覚えている。



大空の斬首ののちの静もりか没(お)ちし日輪がのこすむらさき

火祭りの輪を抜けきたる青年は霊を吐きしか死顔をもてり


火の剣のごとき夕陽に跳躍の青年一瞬血ぬられて飛ぶ

水葬のむくろただよふ海ふかく白緑の藻に海雪は降る

ミケランジェロに暗く惹かれし少年期肉にひそまるる修羅まだ知らず

季(とき)めぐり宇宙の唇(くち)のさざめ言しろく降りくる冬も深まる

冬川の柩となりて流れゆくうすき浮氷をうちて泳げり


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