口裂け女にちゃんみな美人を聞かせたい

 アーティストちゃんみなの「美人」を聴いて泣いてしまう。彼女自身の経験を元にした曲だそうで、彼女が配信した楽曲の感想には、自身の音楽よりも、容姿に対するコメントが多いという事に対する違和感と、針のように長く、鋭利な刃物のように他人を、そして自らも傷つけるように発展してしまったルッキズムに対する彼女の叫びが、多くの人の心を揺さぶっている。

 現代に限らず古来より人々は容姿に苦悩していた。怪談には容姿にまつわるものが多い。「私キレイ?」で有名な口裂け女は正に日本のルッキズムが化けた怪異であろう。
 私が口裂け女を知ったのは学校の怪談ブームで再度掘り起こされた1990年代だったので、口裂け女の設定は変遷を遂げ、整形手術に失敗し口が裂けてしまった事を苦に顔貌がキレイか聞き回っているというのが主流だった。
 私は子供ながらに口裂け女という女性の存在を憐れんだ。綺麗な容姿を願ったのに、治らない傷を負ってしまったなんて。彼女には術後に寄り添ってくれる家族や友人はいなかったのかもしれない。
 
 令和の現代にもし、口裂け女に「私キレイ?」と問われたならば、ちゃんみなの「美人」を聴かせる。彼女からハサミを振りかざされても、それを素手で遮って聴かせる。
 一緒に聴こう。
 彼女の横で、私はやっぱり泣く。
 同じ画面を覗きこむ彼女を見ると……

 そして約3分後、二人で立ち上がる。

令和の世には、ちゃんみなのこの曲があなたに寄り添い、立ち上がらせるのだ。もちろん、私も。
 私達は未来に向かって歩き出すのだ。

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