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それでも作り続けている理由

創業70年の縫製会社の3代目(修行中)です。コロナウィルスで仕事が9割減。2020年2月から128cornerというブランドを立ち上げて抗菌抗ウィルス機能繊維を使用した完全オリジナル商品を作り始めました。

ウチの会社は4人の社員と職人さん達が20人ほどの小さな会社です。

この会社は私の祖父が始めた縫製会社です。
当時は足袋などを作っていたようで、祖父が毎日商品を担いで上野などへ売りに出かけて行ったそうです。東京に支社を作るほど盛況で、祖父曰く「あの当時は、足袋が片足でも飛ぶように売れた」とのこと。モノが少なく、作れば売れた時代でした。

会社がある行田市は昔から足袋の生産が盛んな街で、街中に工場や会社があり、職人さんも多くいました。
その名残で、いまでも繊維関係の会社や高い縫製技術を持つ職人さんが多い街です。

足袋を履く人が減り、足袋が売れない時代になると、会社は子供服や作業ズボンなどを作るようになりましたが、ほどなくお祭り用品の製造に移っていきます。
主な商品は腹掛や股引、鯉口シャツなどです。
(お神輿を担ぐ方や、人力車の車夫さんなどが着ています)
当時お祭り用品を作れる会社は少なく、「作ったそばから売れた」そうです。

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このあたりで、私の祖父が亡くなり私の父が2代目となります。
父が継いで分かった事は、会社には祖父の作った借金がかなりあったということです。
商品は売れていましたが、祖父は頼まれると断れないタイプで、銀行に高い金利の融資を頼まれどんどん契約してしまっていたようでした。 
それを2代目社長は苦労して返済したそうです。

その頃、縫製は人件費の安い海外の工場で作るという世の中の流れになっていきます。
お祭り用品も例外ではなく、行田市の縫製工場もどんどん海外へ進出していきました。

しかしウチの会社は海外で生産することなく、昔通りのやり方でイチから手作業の製造を続けていました。
小さな会社ですし、単純に資金や人材がなかったからかもしれませんが、初代社長の借金返済で苦労した2代目社長は「身の丈に合う経営」をその都度、選んでいきました。

人件費の安い国での大量生産が縫製業の世界的な主流となったせいか、ウチのような会社にはオーダーメイドのお祭り用品の発注がくるようになりました。

「右にこの柄、左にこの柄が出るように作ってほしい」
「特注で5Lサイズを作ってほしい」
「裾を5センチ長く、太ももを3センチ太くして」などなど。

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お客様のこだわりを一つひとつカタチにしていく、神経を使う作業が続きます。大量生産では作れない商品を日々作っていました。

その頃、私は3代目を継ごうと決意し、2代目社長に弟子入りします。
親子ですが、厳しい職人の世界です。

生地や柄の種類、全商品の特徴を覚えて、生地の裁断、在庫管理、商品発送や材料仕入れ、経理や財務、労務など会社経営に関わる全てを叩き込まれました(いまでも修行中です)。

私がようやく一通りの仕事ができるようになってきた頃に、コロナウィルスのニュースが出始め、お祭りなどのイベントはどんどん中止になっていきます。
仕事はみるみる減っていきます。
マスクも少しずつ手に入らない状況になっていきました。

その時に私がまず思ったのは、「会社のみんなを守りたい。社員の家族や友人、全部まとめて守る方法はないか」ということでした。
 
抗菌抗ウィルス機能繊維でマスクを作ったら、社員やその家族はマスクには困らないだろうと考えました。

しかし、家族の分まで作ったとしても、家族の職場先で感染が広がったらどうなるのだろう…大事な人を守るには、その周りの人も守らないといけないのだと気付きました。

つながる全員を守りたい。
それは、より多くの人達にマスクを届けなければならないことになります。

この想いを実現するには、マスクをきちんと良い製品にして、いつでも買えて、全国どこへでもすぐに届くようなシステムにしなければなりませんでした。

その想いを社長に伝えたところ、自分の財布からポケットマネーの1万円を渡してきました。そして「これをお前に投資してやるから、まず1つ作ってみろ」と言ったのです。

その1万円で材料を集め、試作を何度も繰り返して、ようやく納得できる商品が出来上がり、ネットショップを立ち上げました。
その時にできたのが128cornerです。

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おかげ様で本当に多くの方にお届けする事ができました。当初は「全く売れなかったら、どうしよう…」なんて思っていましたが、こんなに長く続くとは…。
本当にありがたく思います。

2020年の夏を過ぎると、マスクの供給も多くなり、困る方もいない状況になりました。
ウチのマスクも一時期に比べてかなり売り上げが少なくなりました。

それでも続けているのは、128cornerを立ち上げた時に2代目社長に言われた「売り抜けはするな。買ってくれる人がいる間は作ったものに対して責任を持て」という言葉があったからです。

「売り抜け」というのは、需要が高まっている商品を大量に仕入れて高値で売り、売り切れたらそのまま終了することです。

高値で売れるし、在庫も抱えないので、商売としては無駄がなく効率的です。とても合理的だと私も思います。
おそらくマスクが売れなくなった今、販売を終了している会社も多いのではないでしょうか。

それでも「売り抜けはしない」のは、小さな会社でお客様が求める商品を臨機応変に製造してきたウチのような会社だからこそできることだと思います。

「最後まで作ったものに責任を持つ」

128cornerは、こんな想いで出来ています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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