静かなる号哭 ①

第1話『彼女』

彼女は【孤独】を孕んでいた、人であるために必要な【孤独】を、
【孤独】はひどく不思議な奴だった、文字通り1人で居る時、【孤独】は彼女の心の深いところまで入り込み、彼女の全てであるかのように振る舞う、しかし、彼女が1人ではない時、【孤独】は、まるで最初から存在しないかの如くその身を潜め影を揺らすばかりだった。
彼女には【孤独】が必要だった、【孤独】も彼女が必要だった、それはある種の毒のような、依存の様な、形容し難いそれだった。

彼女は【束縛】を嫌った、
「誰かを縛る事が【愛情】と言うのなら、私はずっと知らないままで良い。」
【束縛】はそんな彼女を憂い、心の深いところに入ろうとした、けれどそれは叶わなかった。

彼女は【自由】に憧れた、
【自由】はいつも他人の【理解】の範疇には及ばない所にまで行き、その身を削る思いをして帰ってくる。
「自由には傷がつきものさ」
彼が良く口にした言葉は、彼女の瞳を湿らせるには十分すぎるものだった

彼女は【理解】を好んだ、
【理解】は話の分かる奴だった、彼女が他人と話す時、必ず側に居て共に話を聞く、しかし口出しはせず、ただ黙ってその場を見るばかりだった、しかし、彼女にはそれで良かった、それが、彼女と【理解】との正しい向き合い方だと思っていた。

彼女は1人だった、誰も彼女を知らないまま、彼女も誰も知らないままだった。

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