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プロ野球・コリジョンルールについて

本日、ロッテ対中日の試合で色々あったので急遽この話題をnoteに書くことにしました。

0.まずコリジョンルールって何?




コリジョンルールは、野球における本塁での衝突(コリジョン)を防止するための規則。本塁での過激な接触プレーによる負傷者が後を絶たなかったことから、2014年にメジャーリーグ(MLB)で採用され、日本野球機構(NPB)においても2016年より採用された。

1.得点しようとしている走者が、走路をブロックしていない捕手または野手に接触しようとして、または避けられたにもかかわらず最初から接触をもくろんで、走路を外れることを禁じる。

2.ボールを保持していない捕手が、得点しようとしている走者の走路をブロックする行為を禁じる。 (Wikipedia, コリジョンルールより)

と本塁突入時の怪我や走塁妨害、守備妨害を防ぐために作られたルールである。

1.問題のシーン

だがこの選手の無事や試合の進行を手助けするようなコリジョンルールは度々問題になることがある。
今回このnoteを書くきっかけもその問題が起こったからだ。

2021年6月2日のロッテ対中日戦でのワンシーン。9回表、ツーアウト二三塁。
中日にとってはあとワンアウトで勝利の場面、逆にロッテにとっては一打同点のチャンスだった。
ロッテの5番、角中の打球がセンターへ抜けると2塁ランナーの中村奨吾が一気にホームへ突入。だがレフト大島の好返球が返ってきて、クロスプレイのタイミングは完全アウトだった。審判が木下選手がちゃんと球をキャッチしたかを確認してからアウトコールを叫び、試合終了だと思われた、が、
審判のアウトコールの直後、ロッテ監督の井口監督が動く。タッチプレー時に中日の捕手、木下拓哉の動きがコリジョンルールに反するのではないかという旨のリクエスト。
審判団が数分映像を見直したあと、コリジョンルールが適用されると判断し判定が覆りロッテが同点に追いつく。
中日ファンからは悲鳴が、ロッテファンからは歓喜の声が聞こえた。

その後試合は2対2のまま終了し、中日にとっては掴みかけていた勝利を最後の最後に手放してしまった形となった。

もちろん試合後のSNSは大荒れ、審判団の判定に肯定する人、反対する人、ついには中村奨吾がわざとコリジョンルールを狙ったと思う人まで出てきた。

では何故こんなに荒れたのか?
それはコリジョンルールの曖昧さのせいである。
ルールブックにはコリジョンルールに関する項がとても少ない。しかも全ての項が曖昧で、最終的には審判の裁量によって決められることが多い。
今回コリジョンルールが適用される原因になった項はこちらだろう。



ボールを保持していない捕手が、得点しようとしている走者の走路をブロックする行為を禁じる。

筆者の意見を出す前に、ロッテファン、中日ファンの言い分を振り返ってみよう。

1.1 ロッテファンの意見

まず、この画像を見て欲しい。


これは中村奨吾選手が突入する前、返球を捕球する直前の木下拓哉選手だ。
この画像を見る限り走路は完全に塞がれている、これは絶対に言えることだろう。右へ避けることも出来ない状況だ。
これがロッテファンの主な意見であり、審判団に肯定する理由である。
確かに木下選手はまだ球を捕球してないにも関わらず中村選手の走路を塞いでしまっている。この捕球前というのが肝で、これだけ見ると第2の項に当てはまっている。


1.2 中日ファンの意見

中日ファンは2つの根拠を元に適切な判定ではなかったと言う。

1) タイミングはアウト、中村選手が無理に突入してきたし、避けることも出来た。
2) 大島選手の送球が逸れたので、木下選手は捕球するために走路に入る必要があった。

ただ、この2つの意見は筋が通ってると思われるがこれらを支持する文がルールブックに明確に(全て曖昧)載っていないのが問題だ。
もちろんタイミングは完全にアウトであったし、送球が走路に逸れていた。
ただルールブックに厳密に沿うと、これらの意見は判定に影響を与えることは難しい
(最終的には審判の裁量によって決まる)

2.前例

日本の公式戦で初めてコリジョンルールが適用されたのは2016年5月6日の西武対日本ハム戦。
ワンアウト満塁の場面で西武の投手、高橋光成が暴投してしまう。捕手の対応が遅れたのを見て2塁ランナーの浅間選手が一気にホーム突入、ホームカバーに来ていた高橋選手とのクロスプレイになる。最初はアウトと判定されるも審判団が映像を見直し、高橋選手が浅間選手に覆い被さり走路を塞いでいたと判断し最終的にはセーフと判定された。
なんと日本初めてのコリジョンルール適用はキャッチャーにではなくピッチャーに対してだった。



今回のシチュエーションに似た前例

そして過去にはコリジョンルール適用によってサヨナラ勝ちしたチームもいる。
2016年6月14日、広島対西武の交流戦。
同点のまま迎えた9回裏ツーアウト一二塁、広島の赤松選手がセンター前ヒットを放つ。
2塁ランナーの菊池選手は3塁を蹴ってホームへ。
クロスプレイ時の判定はアウトとされたが広島側の猛抗議と映像検証によりコリジョンルールが適用されるとして判定が覆り、広島のサヨナラ勝ちとなった。
この事例は今回のロッテ対中日戦に似ており、タイミング的にはアウトであったし、送球が走路に逸れたことから捕手が塞いでしまっていた。だがこちらも最終的に判定が覆っていることからタイミングと送球が逸れたかどうかはあまり考慮されないのだろう。
もちろん西武ベンチはこれに猛抗議、最終的にはパ・リーグに質問書を提出するという事態にまで発展した。


3. 筆者の考え

今回のロッテ対中日戦や西武対広島戦を見て思うことはコリジョンルールというものがすごく曖昧なルールであるということだ。
MLBでは一定の基準が設置され、そのおかげでコリジョンルールによる争いは近年減った。
NPBにも何らかの基準は必要だと思うが、コリジョンルールはプロ野球の歴史上ではとても新しいルールであることを忘れてはいけない。
まだ前例が少なくNPB側も対応に困っているというのが現状だろう。


今回の件に限ると、筆者がロッテファンということもあり適用されるべき場面であったと思う。ただ中日ファンの言い分も十分理解出来るものであり、今後はこういう事態が減るようにNPBが対応してくれることに期待するしかないだろう。

4.なぜ審判はセーフ判定にしたのか?

・木下選手の左膝が走路を塞いでいるから
・木下選手がホームベース前に出て捕球出来たから
・捕球する前から木下選手が走路に入っているから
・中村選手は木下選手を避けることが出来なかったから
・中村選手のヘッドスライディングが捕手と接触する前に地面を触れている正当なヘッドスライディングだから
・木下選手がちゃんとした立ち位置から中村選手を追いタッチしてればセーフだったから

などと審判団が判断したからだと思います。


5.最後に

今回はプロ野球で最も曖昧なルールであるコリジョンルールについて書きました。
これからの日本プロ野球の発展のためにもNPBには基準や明確なルールを作って欲しいですね。

(木下選手と中村選手に非はありません。
プロ野球ファン同士仲良くしましょう!)


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