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ビーナスの後ろ姿は圧巻だ

縄文時代の祈りや願いが込められた土偶。
1万年以上続いた縄文時代に作られた土偶は、妊娠した女性を想像させるものから猫やイノシシなどの動物、はたまた宇宙人の様なものまで実に多種多様です。
かわいいものはもちろん、ちょっと怖いものや奇妙なものにもどこか愛らしく親しみを感じるところが、人々を惹きつける魅力となっているようです。

現在国宝に指定されている土偶は5体。
縄文のビーナス、縄文の女神、仮面の女神、中空土偶、合掌土偶。

国宝・縄文の女神 ホームページ

そのうちの3体がビーナス、女神というように、美しい女性をモチーフにした神像です。
山や海の自然の恵みを日々の糧にしていた縄文人は、自然の恵みに感謝し、また時に畏れ、子孫繁栄や安定した天候をひたすら祈る、そういった無垢な心のうちが、こうした女性の土偶に表され心の拠り所になったと思われます。
おもに集落でおこなわれた祭礼などの特別な時に、祈りをささげるシンボルとして存在していました。

その姿は名前に相応しく、美しく、神々しく、原始的なエロスさえ感じられる女神たちです。

でもこのネーミングがちょっとくせ者。どれがどれだか区別がつかなくなってしまいそうです。

そこで今回はこのうちの縄文のビーナスをじっくりと観察してみました。

縄文のビーナス

一番最初に国宝に認定された土偶で、長野県茅野市棚畑遺跡から出土した縄文中期の土偶です。
八ヶ岳連峰を見渡せる丘陵に位置する集落の中央広場に作られたお墓に、ほぼ完全な形で横たわっていました。このお墓に葬られている人の埋葬品と考えられています。

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高さ27センチの大型の土偶で、使われている粘土には雲母うんも(きら、きららとも呼ばれる光沢の強い鉱物)が混ぜ合わせられ、さらにツルツルに磨きあげられています。

一般的な土偶の特徴とされる十字形の身体が軸となり、縄文前期の東北地方の土偶の特徴から見られるカッパ形と言われる扁平な頭を持ち、弓なり状の眉、吊り上がった目、小さな鼻、丸く開いた口のハート形の顔を持つ、縄文中期の中部地方の特徴をよく表している土偶です。


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横姿を見ると、緩やかでやや垂れ下がった大きなお腹、そのお腹をしっかり支えることのできる大きなお尻、さらに地面をしっかり踏みしめる太い脚がよく見て取れます。
身ごもった女性の姿を表していると言われ、安産や多産、健康長寿の祈りが込められていると思われます。

前から見たかわいらしい姿とは違い、ほんの少し顔を上向きにして、背筋をしっかり伸ばした凛とした姿は女神像そのものです。

カッパ形の頭は、その装飾から大きく結った髪を表しているようです。今でも着物を着た時やドレスアップしたときにヘアアレンジするような、女性をより美しく表現したい、という思いの表れなのかもしれません。

最も特徴的なのは、出尻土偶と呼ばれることもある大きなお尻です。
ほぼ完璧な桃尻です。

キュッとしまったウエストのくびれと、キラキラした光沢のある滑らかな肌質も相まってセクシーな雰囲気を醸し出しています。

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装飾がほとんどない、そぎ落とされた造形美は大きなオーラ―を発しています。ビーナスと呼ぶにふさわしい女性の強さ、愛らしさ、美しを兼ね備えた姿に惹きつけられます。

縄文のビーナスに会えるのは、長野県の茅野市尖石縄文考古館。
何度でも訪れたい場所です。

最後まで読んでいただき有難うございました☆

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