見出し画像

土偶にあいている小さな穴は、いったい何?

ある時、土偶に〝穴〟が多いことに気がつきました。
注目して見はじめると、実にたくさんの土偶に様々な〝穴〟があるのです。
貫通しているものも、してないものもあり、大きいもの、ごく小さい針の穴のようなもの、あきらかに単なる模様であるようなものもあります。

それぞれの〝穴〟は何故つけられたのでしょうか。
普段は見落とされがちな、土偶の〝穴〟だけに注目してみました。

ナニカを表現している〝穴〟

こちらの土偶の耳にある大きい〝穴〟は、おそらく〝ピアスの穴〟的なものでしょうか。
ミミズク土偶が耳たぶに大きな丸で〝耳飾り〟を表してしているのと同じく、縄文時代の人々の姿を表現しているようです。
関東地方から出土した1つのミミズク土偶に、耳たぶの片方から耳飾りと思われる木の破片が見つけられたものがあります。この土偶の耳にもその様なものがあったのかもしれませんね。

画像5

縄文晩期 青森県亀ヶ岡出土 東京国立博物館所蔵

朝日新聞デジタル:写真・図版 - 文化

目、口、耳に同じ大きさの円がある〝ミミズク土偶〟

こちらの土偶には、文様と思われる半貫通の〝穴〟があります。
〝穴〟が、顔から胸、そして又と足の付け根という場所を見ると、東洋医学のツボの図みたいですね。
ちょうどリンパの流れなどを表しているようにも感じられます。

画像5

縄文晩期 石川県中屋サワ遺跡出土 金沢埋蔵文化財センター所蔵

ナニカのためにあけられた〝穴〟

上記の様に〝ナニカを表現している穴〟はとても分かりやすいのですが、一方とても不可解な〝穴〟は、国宝〝縄文のビーナス〟やこの〝縄文の女神〟にも確認できる、主に縦方向にあけられた極めて小さな〝穴〟です。
〝縄文の女神〟を良く見てみると、頭上部の左右、頭下の左右、肩下左右に、1つずつの半貫通の小さな小さな〝穴〟があります。

縄文のビーナス [ Venus of Jomon ]

土偶はもともと祭礼に使うために作られた、と言われています。
その際に、立つことの出来ない板状の土偶に〝穴〟をあけて紐を通して吊り下げることがあったようですが、バランスの悪そうな位置にある〝穴〟や大型の土偶、立体的な土偶は吊るすことは難しそうです。
この美しい仕上がりの一級品の〝縄文の女神〟はどう考えても吊るしませんよね。

そもそもこれらの〝穴〟は糸を通すのも苦労しそうなほど、とても小さいもの。また貫通していない〝穴〟もあります。
こうしてみると‘’吊るすために作られた説〟は成立しないようです。

このような半貫通やあるいは貫通した極めて小さな‘’穴〟が、縄文時代の草創期の最古の土偶(滋賀県相谷熊原遺跡の土偶)からも確認されています。
上記の〝縄文の女神〟は東北・山形県の出身であることを考えると、地域や年代を問わずこのような穴があけられていることは、何か共通した土偶の目的や意味があるのではと考えられます。

で、何のためにあけられたか?

”鳥の羽をさしていた〟という説があるそうです。
土器や土偶には様々な文様が描かれていますが、その中の円形の文様は「竹を割ったような工具」を使って描かれていると言われています。これを「竹菅文様」と言います。
これはよく土器に使われるポピュラーな方法で、竹を横にカットした先辺を押し付けて、小さな円形文様を作るというものです。
押し付けられた円形のくぼみの中は、僅かに盛りあがったり突起状になったりします。
竹の筒の厚み部分によってその様になるのです。

土器には「竹を割ったような工具」が使われたようですが、土偶はとても小さくて面の部分が少ないので、もっと細く繊細な器具が必要と思われます。それが鳥の羽なのではと推測されるのです。
鳥の羽の羽軸の部分を横にカットすると、ちょうど竹菅をカットしたものとそっくりになるのです。

そのカットした羽を刺したのが、”鳥の羽をさしていた〟説です。
縄文時代の人々は自然界の動物に対して神格的な感覚があったと言われています。鳥というのもやはり神的なものと考えられていた可能性があり、その〝神的〟なものを土偶に施したとも考えられるのが理由の一つです。

この土器には、土偶の全身が貼り付けられています。
土偶は細く長い手を持ち、手足の指は三本で、鳥を表しているとも言われています。

南アルプス 人体文様つき

縄文中期 山梨県鋳物師屋遺跡出土 南アルプス伝承館所蔵

///////////////

でも、説明がつかない感じもしますが‥
”鳥の羽をさしていた〟説のように羽を刺すだけなら、貫通している〝穴〟は必要なかったのでは?という疑問も生まれてきます。

残念ながら、今回の〝穴〟の不思議の解明はここまでになってしまいました。
新たな発見があったらまたお知らせしたいと思います。

ここまで読んでいただき有難うございました☆彡

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?