縫われる上半身_大砲

詩「縫われる上半身」  2018 5 23

俺は上半身だけ縫われてよみがえる
復讐も呪いもない
俺のしたいことは這って前進すること
ことごとく排除した
砂埃と白線だけの道を遅々と進む
俺に役目はない
たわいのない目的があるだけ
心から愛する人
変わり果てた俺をもっと教育してくれ

夢と希望と肉体を破壊された眠れる豪傑
それが俺の称号でもあるし蔑称でもある
やがてやってくる斜陽は命を持っていて俺がどうなっても気にしない

球をつめこられた大砲が暴発するとき俺は剣をもって憎しみと戦っていた
暴発した大砲の一部が俺の体となり俺の体の大部分が城の通路のシミになった

愛する者
身に余る愛と戦場
友は血液まで争いに巻き込まれた
一滴一滴と血を流し友は追い込まれ剣を飲み込むように馬から飛び降りた

誰も俺を思い出さない
フィアンセまでも意図的に俺を忘れ去ろうとしている
あまりにも失っていくものが多すぎて順をつけて弔うひまなんてありはしない

俺は上半身だけ縫われてよみがえる
戦術は単純だ
闘える奴から死んでいけばいい
記憶は半分しかない
脳が半分飛び出たから
なくなった記憶の範疇に嫌なものだけが詰まればいいのに
遅々として進む
可能な限り最短距離で

マッチ棒は箱の中では着火しないと信じひたすら濡らさないようにだけ気を付けた
人間の味を覚えた猛獣たちの踊りは凱旋中の敵の整列にも及ぶのだろう

懐疑的な意識のまとまりが敵意をもつ
悪口を言われている子どもの心境だ
指導者のところまではたどり着けない
大抵は誰が何を組織しているか謎

混じりけのないパウダーなんてありえない
大体お前ら全員が混じりけたっぷりだ
俺は体の半分と脳の半分が欠けている
混じりけのなさも半分だと信じて異様

ほっといて眠らせてくれてもいいのにおせっかいな奴が俺をよみがえらせた
この道は何かに続いているだろう
だから言ったろう
俺はただ進むのみ

俺は上半身だけ縫われてよみがえる



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詩を書いています。ここまで読んでくださってありがとうございます。あなたに会えて幸せです。

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