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宗教でも自己啓発書でもない、美学のこと

見えない道を歩く。太陽も草木も薄汚れた看板もコーラの空き缶も見えない。広がるのは真っ白な空間。あるいは深く深く広がる暗闇。僕らの人生そのものだ。昨日から続いている今日がどうなるかなって誰もわかりはしない。なのに「将来の夢に向かって計画を立てろ」と大人は忠告する。それって本当に必要なのか。計画通りに物事は進むのか。計画通りに進んだ人生は楽しいんだろうか。甚だ疑問でしかない。

と思っていたけれど、計画を立てるのも悪くないかもと最近思う。月も星も妖しく誘う娼婦も見えない空間の中で、唯一道しるべとなるのが計画だろう。または目標、夢、自らの美学も。見えない未来を健気に生きるために。僕らは思想に救いを見出すのではないか。宗教は何千年も続いていき、人類が滅亡するその日まで途絶えることはないだろう。無信仰の人々を根拠のない断言によって導こうとする自己啓発書も売れ続けるんだろう。人はやっぱり拠り所を求めざるをえないからだ。

僕は拠り所を自分自身に見出したい。尊敬する人に見出したい。親友に、未来の伴侶に。そして一番の拠り所は自らの美学でありたい。だからこそ他者を心から信頼して、心にダイブして、まだみぬ深いつながりが生まれるんだと思う。ぼくはその関係を心ゆくまで味わいたい。

#エッセイ #コラム

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