詩 ペンギンの群れの中で生きたカモメの話
あるカモメがいた。カモメの名はよしおといった。
よしおは群れの中で期待の星だった。
よしおは期待の星だったものだから調子に乗って1日中飛び回っていた。
ある日、よしおは突然全く飛べなくなってしまった。
よしおは飛びすぎたのだった。よしおはがんばりすぎたのだ。
そうすると群れの仲間は、ひっくり返ったように冷たくなり、よしおをおいて行った。
群れの仲間たちは口々に言った。「こうなったよしおは自業自得だよ。」「おれたちだって大変なんだからよしおのめんどうなんてみられないよ。」「まあ、今、人間界のどっかの国で流行っている自己責任ってやつですね。」
そう言って仲間達はよしおをおいていった。
よしおは弱り、死へと近づいていった。
運の悪いことにそこは、とっても寒いところだった。
よしおが凍死しかけていた時、そこにペンギンの群れが現れた。
よしおは、ペンギンの群れに助けられ、ペンギンの群れの中で生きることになった。
かつてよしおの仲間だったカモメ達はよしおをバカにした。
「とべないカモメなんかカモメじゃねえ。あんなのはカモメの恥だ。」
さらにはペンギンの中にもよしおをバカにするやつがいた。
「何あれ、カモメじゃないの。なんでここにいるの。」
よしおはさびしかった。よしおは叫んだ。
「飛べなくなった俺は死んだほうがよかったんだよ。」
「ペンギンの群れはどうして俺なんて助けたんだよ。」
ある日、よしおは泳げないペンギンのまりえに出会った。
まりえはペンギンの群れの中でいつもひとりぼっちだった。きれいでかわいかったまりえは、サメに体の一部を食われたことで泳げなくなり、ひとりぼっちになってしまった。
よしおとまりえは出会った後、よくいっしょにいるようになった。
だが、よしおとマリエは子どもを作ることも、恋仲になることもなかった。
なぜなら、カモメとペンギンの間には乗り越えられない壁があるからだ。
今日もまだよしおは飛べないまま、そのか細い足で大地をトボトボと歩いている。
まりえはずっと泳げないまま、泳いでいる仲間のペンギンたちを見つめている。
でもよしおはマリエにあったことで、マリエはよしおにあったことで「生きていてもいいかな。」とだけ思えるようになった。
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