7月10日の読書感想文

最果タヒ『きみの言い訳は最高の芸術』
エッセイ集。読んでよかったなあ、と思いました。この本じゃなくてもよかったのかもしれないけど、久しぶりに本を読んでよかった、そしてやっぱり、手に取ったのがこの本でよかった。最果タヒさんの本は、『渦森京子は宇宙に期待しない』しか読んだことがなかったのですが、これをいいと思える自分がとても愛おしくなる、文章が好きです。自分、まだ若いのだなあ、という感じ。本文中には近年最果タヒさんご自身が「サブカル系」と呼ばれるようになったと書かれていて、確かに私が『渦森京子』を最初に目にしたのは地元のビレバンで、大森靖子の推薦文が帯にあった、と思い出します。サブカル系、ハイカルチャーやメインカルチャーじゃなくてサブカル系、平凡に尖った、普通に凹んだ若者が好む文章という感じ、悪い意味ではなくて、これを好む自分の痛さがとても健全だなあと思えるタイプの本です。おばさんになったらなったで変わらず同じような感想を持つのかもしれないけど、もしくはまた違った読み方ができるのかもしれないけど、今はとりあえず、今の若さだからこそ享受できるものがあると思いたい。若いって、それだけで無敵って言われがちじゃないですか。若い感性で色んな本を読め、と言われて読むけど、若いということは人生経験が浅いということだから、小難しい文章は結局あんまりわからなくて、せっかく若いのに、感性が柔らかいはずなのに、それを活かしきることが出来なくて、私はだめだなと思うことがよくあります。こう言葉にするとくだらなくて、何言ってんだ、そんなこと別にいいじゃんという感じだけれども、理解できるはずの美しさや醜さが理解できないというのは少し悔しい。もったいない感じする。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』とかそうですね、中学生で読むべきだと言われて読んだけど、ヒリヒリする青春?みたいなの、いまいちピンとこなくって、少し落ち込んだものです。
そこへ来ると、最果タヒさんの作品は、今の私にぴったりくると思う。平凡に尖った若者が好みそうな本を、私も平凡に尖った若者として、好むことができるのが嬉しい。まだ2冊しか読んだことないのに、何をわかったふうに、という感じですが。あと、たぶんこれ、私が若いから若者向けって思ってるだけで、別に年齢制限がある本じゃないってこともわかってる。でも、今この瞬間に、この本に出会えて、「若い感性」で触れることができて、よかったなあと思う本でした。

就職活動を始めると、何者かにならなければいけなくて、何者でもない自分が辛くて、これまでの人生が全て無駄なものだったような気がします。そういう焦りとか、混乱とか、人のいう正しさに自分を当てはめて、正しくなろうとしているもがきから、ふっと覚ましてもらったような感じです。ありのままでいいんだよね。ありのままを表現してもいいんだよね。
途中あまりにも共感して、これ書いたの自分じゃないのかな、と何度か錯覚しそうになりました。もちろん、これはわかんないや、私はこうは考えないなあ、とかこういう人もいるんだなあ、となる部分もあるんだけど。最果タヒさんは、共感してもらおうと思ってこれを書いたのではないというのは文章から繰り返し伝わってきて、それはわかる。あと、言葉はやっぱり感情を表すには不完全だし、作者と自分は違う人間なのだから、共感なんて不可能なのだということもわかる。というか、この本を読んでその認識が強くなりました。そういう内容の本です。でも、文章を読んで、ほっとしたり、少し悲しみを思い出したり、これは私のことだと思う、そういう私の感情はホンモノだとも思える本です。言葉ってすごい。ありのままの自分への諦めとか、思春期の感情を忘れてしまうもどかしさとか、人との繋がりかたとか、日常生活の中で忘れていそうで根底にあること、を揺り動かされる感じ、すごいな、と思いました。単純で純粋なので。だから私も言葉で何か生み出したくなって、感想文を書いてみた次第です。最果タヒリスペクトで文体を整えたつもりだけど、やっぱり難しいですね。おしまい。

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