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けいおん!から考える「ケーキのイチゴ」

バンドアニメ史に燦然と輝くマスターピース、『けいおん!』。
登場するキャラクターが使用している楽器に品切れが相次ぐ、Mステの週間ランキングトップを楽曲が独占する、などの社会現象を巻き起こしました。
多くの少年少女が楽器を手に取り、練習を重ね、そしてやめていきました。
一説によると今の20~30代で楽器をやっている人間の約8割がその時の生き残りだと言われているかもしれません。

そんな『けいおん!』のあらすじや楽曲の魅力については今さら特にいうこともありません。知らんのなら見ろ
基本的に桜ヶ丘女子高等学校軽音部での日常がゆるい雰囲気と共に描かれているのですが、私が人間関係の中で今でも大切にしている価値観が生まれた回があります。

それが『けいおん!!』第14話「夏期講習!」と、第21話「卒業アルバム!」です。

第14話は夏休み真っ只中。軽音部メンバーがそれぞれの休日を過ごす場面から始まる回です。
主人公である唯が幼馴染の和と家でケーキを食べているときに事件は起こります。
お互いのケーキを一口ずつ交換しようと提案する唯。和は唯のケーキのほうが高そうだからという理由で躊躇うのですが、唯に押し切られ承諾。唯のショートケーキを一口もらうことに。そして和が取ったのは…

けいおん!!14話「夏期講習!」より

まさかのイチゴ!!何回見ても笑います。唯はとにかく信じられないというように後輩の梓に電話をかけるのですが、以降の会話で和の意図も明らかになります。

梓「ケーキのイチゴ?」
唯「いきなりとっちゃうんだよ!!」
梓「そんなの知りませんよ…」
唯「変だよね!?普通しないよね!?」
和「ほら、別に変なことじゃないでしょ?一番取りやすいところだし、スポンジだと悪いし。」
唯「違うよ!ケーキのイチゴはケーキの頂上だよ!ハートだよ!魂だよ!!」
和「唯の中だけでしょう?」
唯「ちっがぁぁう!全世界的に!」
和「仕方ないわね……。じゃあ私の栗あげるわよ。これでおあいこでしょ」
唯「わああん!違ぁう!あずにゃん!変だよね!?和ちゃん間違ってるよね?」

こんな歳になってけいおんの文字起こししてるの俺ぐらいやろ…。情けない…。
某動画サイトではこのような言動を含め和は「鬼畜メガネ」というあだ名をつけられていましたね。和はしっかり者ですが、意外にも作中では天然エピソードが多いんですよね。ちょっとズレてる。
しかし、いくらいつも自分を助けてくれる頼れる和とはいえ、唯は納得ができない様子。
この事件自体はこの第14話の中で回収されることになるのですが、それはまあ本編を見てください。
律、澪、むぎのそれぞれのキャラが際立つとても好きな回です。


ケーキのエピソードはこの回で完結かと思いきや、個人的に真の回収回だと思っているのが前述、第21話「卒業アルバム!」です。
この回はタイトル通り唯たちの卒業が近づき、アルバム撮影を行う回。
唯は過去の卒業アルバムを引っ張り出し、入念に鏡をチェック。自身と瓜二つな妹の憂の助けを借りて髪型の研究も。撮影に向け並々ならぬこだわりを持っていることが描写されます。
「一生残る写真なんだよ~!」

そんなこだわりを聞いた軽音部メンバーはデジカメで撮影の練習をすることに。
ここで唯がまた謎のこだわりを見せます。

「…ちょっと前髪長くない?」

絶対長くない!そんなの作画の裁量ひとつだろ!!

「切る!!」

やめとけ……

そして無造作にハサミを取り出す唯。すごい、ここまでベタなフラグも近年なかなか見ないですよね。
みんなが恐る恐る見守る中…

「き…切りすぎました…」

お約束…。私はこの前髪の唯とっても好きです。
本人は凹みに凹みます。みんなのフォローも優しくて好きなシーンです。
なんとか軽音部メンバーがなだめ、いつも通りお茶をすることに。
その日ムギちゃんが持ってきてくれたおやつは、奇しくも14話で和も食べていたモンブランです。
お菓子パワーで唯もひとまず上機嫌に。

そんな唯を眺めていた律が唯にモンブランの栗をあげます。こういったところが弟を持つ姉の細やかさというか。りっちゃんはなんだかんだやっぱり部長なんですよね。
それに続くように澪、むぎが唯に栗を差し出します。
ついには後輩である梓まで。
「甘やかしすぎじゃないですか?」
対後輩であっても飾らない唯の先輩像がうかがえます。

モンブランの魂×5!!

このシーン、流れで見てると普通に涙が出る。みんな優しいなァ泣
つまりここは、あれだけ唯がこだわっていた「ケーキの魂」であるイチゴや栗への考え方を、律をはじめとする軽音部メンバーが尊重したという場面なんですね。

「相手が大切にしている考え方を理解し、尊重する」

一見すると当たり前の様ですが、実際の人間関係でそんな当たり前を忘れてしまうことは少なくありません。
私は時々自らを省みる栞のようなエピソードとして、この「ケーキのイチゴ」のトピックを大切にしています。

例えば、
イチゴを取られて文句を言っている唯に
「まあ、ケーキはまた買えばいいじゃん」
とか、
前髪を切りすぎて凹んでいる唯に
「何年かたてば気にならなくなるって」
と言う。みたいな。
実生活で問題そのものから視線を切らせるようなフォローをしてしまうこと、ありませんか?
私は結構あるのですが、これって無意識のうちに当事者の感情をないがしろにしている気がします。

私は人間関係とは「膨大な情報を交換する」営みだと思っています。
あるいは「すり合わせ」といってもいい。
だからこそ、問題を解決することに主眼を置くのでなく、あくまで「相手のことを理解する」というスタンスが根底にないと成り立たない。
なかでも重要で曖昧な「相手の考え方」「相手の感情」を理解することを諦めずに生きていきたいものですね。
つまりこの2話は私の人間関係に対する根幹を築いた回ともいえるわけです。
ふと自身の向き合い方が不安になったときには、またこのエピソードに帰って来たいと思います。

けいおんの話はどうしても熱が入っちゃうな~。
俺何歳までこのイチゴのエピソードの話するんやろ。
もう15年前のアニメと聞いて正直冷や汗が止まらん。
しかし本当に大切なことはたとえ時がたっても変わらないということですね
あ~いいこと言った。アブね~。
いいこと言ったしこの辺で終わりにしよっと。

ここまでお付き合い下さりありがとうございました。
それではまた。






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