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人生の折り返し地点を過ぎて(中編)

前編では、〈人生のわけのわからなさ〉を描いたのがカフカだ、と書きましたが…
一方、今年亡くなったポール・オースターは、〈人生のとりかえしのつかなさ〉を描いた作家だと思っている。

オースターの作品で人気No.1は、やっぱり『ムーン・パレス』なのかな。わたしが好きなのは、『最後の物たちの国で』、『偶然の音楽』。
じつは最初に読んだのが『写字室の旅』だったという、不案内すぎる読者で申し訳ない。。

(『写字室の旅』では、いままでオースターの作品に登場した人物が、オースターと思しき主人公に会いに来たり、復讐を企てたりする。ので、ふつうは「はじめまして」の人は別のから読む… 知らんかったもん。装丁が白くてコンパクトで素敵だったんだもん。とっても面白かったからいいんだもん。)

『最後の物たちの国で』は、現在購入できないようですが…復刊希望。

そう、いまの私には悔いていることがたくさんあります。時おり、自分の人生とは一つらなりの後悔にすぎないのではないか、間違った方向転換、取り返しのつかない過ちの連続でしかないのではないか、とすら思えてきます。

ポール・オースター『最後の物たちの国で』


あーー、ほんとにそうーーー…。

オースターといえば、柴田元幸さんの訳の魅力も大きいですよね。そして、柴田さんの解説も、また良い!

個人的には、過去に接したさまざまな他人との関係を人がふり返るにあたって、ほとんど考えずに浮かび上がってくる感情が疚しさ、罪悪感である というのは、とてもリアルなことに思える

ポール・オースター『写字室の旅』解説より、柴田元幸

あーー、ほんとにそうーーー…。

かといって、いままで関わった人たちに謝って回るのが正解とも思えないし。
人生ってほんと取り返しがつかない。

『偶然の音楽』も、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』と同様、中年文学だと思っていて。児童文学は〈ゆきて帰りし物語〉ですが、中年は行ったら帰ってこれんのよねぇ…と思ったことでした。


さて。

なにものにもなれなかった私、そして、もう取り返しがつかないことばかりの私が、それでもルサンチマンに陥らない心の持ち方があるのだろうか?
続きは、後編にて。


※画像  テオドール・キッテルセン
12 villender .1897 (The 12 wild ducks)


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