「風立ちぬ」観ました!

「風立ちぬ」観了。なにせ映画館で映画観たのが「ジュラシックパーク」とか「ちびまる子ちゃん」以来なので音の良さにまずノックアウトされた。多分あのサウンドシステムならサントラだけでウルっときそうだ。金管の美味しい周波数もけっこう拾ってるし、弦の空間性もよく表現されていて最近の映画館やっぱすごいな〜という感じである。
まず、最初のテーマに反応した。たまたま今朝、もともと持っている無印良品BGMボックスセットの3を聴いていた。無印良品BGMボックスセットの3はシチリア〜南イタリアのフォーク集で「風立ちぬ」のあの最初のテーマの、ギター系ならではのちょっと南欧っぽい感動的な曲が多い。「風立ちぬ」を観た日に南イタリアのギター、マンドリン、アコーディオン音楽を聴いていたのは素敵なシンクロニシティだった。
ディアハンターでの「カヴァティーナ」を引き合いに出すまでもなくギター系音楽と映画の相性はとてもよい。さらに言うならわびさび好きの日本人にはあのギター系でメロをとる音楽は琴線に触れやすいのだろう。
日本人の琴線に触れるギター系音楽ということで「北の国から」が頭を少しよぎった。「北の国から」もギター伴奏で始まるあのテーマを金管楽器で力強くなぞる展開があるが、「風立ちぬ」にも その展開があった。「北の国から」で蛍のテーマ、だったかな?ギターだけの美しいテーマがあったが日本人にはあの感じはグッとくる。
映画の感想自体はというとなんかよくわからないけど感動した!
「2001年宇宙の旅」も「エヴァンゲリオン」もオチがよくわからないけど感動する。そういう感じの作品で色んな見方、色んな捉え方ができる作品、これは映画でも音楽でも文学でも名作の必須条件だろう。
よくわからないながらに観てる間中ずっと胸が熱くなってしまうのだが、なんでかと考えてみると菜穂子さんは結核だし、戦争にはどんどん突入するしで、ハッピーなオチじゃないんだけど、そんな中みんな一生懸命だし、菜穂子さんも明るいしっていう切ないフィーリングに観てる人は普遍的に胸が熱くなってしまうんじゃないか、と思う。
風景描写もすごくて、なるべく予備知識なしにと思っている中、内田樹さんの文章だけは読んでいたのだが、その文章に大正から昭和初期の場所の空気感、時間の流れ方を表出することに宮崎監督はすごいエネルギーを注いで、成功している、みたいなことが書いてあって、その視点を交えて観るとほうほうなるほどと思えるところがたくさんあった。上野の辺り?、なじみのある深川の風景、行ったこともある零戦で有名な岐阜県の各務原、軽井沢など、と知ってるところも多く何十年前の日本、みたいな写真集のすごい精密なのが動いているのを観ているようでそれだけでもすごい感動だった。
飛行機をそのまま牛で運ぶシーンがたびたび出てくるが、あれは吉村昭さんの名作「零式戦闘機」で読んでいてよく覚えていておぉあれだ!となった。
またスピ系のオイラとしてはイタリア人のカプローニさんが夢で出てくるとこはスピアンテナがピコーンと反応した。これはハウルにおける魔法伝授のシーン(魔法の光りを飲み込むところ)と同じである。これは神の啓示、もしくはスピリットみたいなものが堀越二郎に降りた描写なのである。
オカルト系ネタ、スピ系ネタは絶対に入れてくる宮崎さん、今回もやはり入れこんできた。
昔からの日本、オカルト、自然と人間、メカ、空飛ぶ、など、よく考えると今までの宮崎映画要素てんこもりだが、大人のロマンスという要素だけが新しかった。その新しい要素こそ堀辰雄さんの方の「風立ちぬ」要素である。
さすがタイトルになっているだけに堀辰雄さん要素は思った以上にたくさん入っていた。堀辰雄さんの「風立ちぬ」もこの映画も菜穂子さんだが、森の中のサナトリウムでの場面が描かれ、堀辰雄さんの「風立ちぬ」要素がこれまた強い村上春樹さんの「ノルウェイの森」の中の女性も同じ直子という名前。
「ノルウェイの森」も大ヒットしたことを考えるとギターの音楽といい、堀辰雄さんの「風立ちぬ」ワールドも日本人の琴線に触れる普遍的な要素なのかもしれない。
宮崎作品の鉄板要素がてんこ盛りでいながら全てが停止しているような静けさがあるこの作品、数ある作品の中でも一際特徴的な作品と言えると思う。
とにかく風景といい音楽と言い、劇場で観てよかったなぁと思った作品である。

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