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4/20実装G.R.A.D.樋口円香編を読む

 ご機嫌いかがであろうか。拙者はいれぶんと申す者でござる。こちらは4/20に実装されたG.R.A.D.樋口円香編の感想文兼怪文書となる記事です。以下注意点です。

・記事というよりかはただの自分用の感想まとめなのでいろいろ話が飛躍してる気がします。
・コミュ内容のネタバレを含みます。さらに今までのノクチル全体のコミュの内容を前提としつつ絡めるのでさらにネタバレと妄想が飛躍します。お気を付けください。
・私個人の好意的・拡大解釈および誇大妄想を含みますが、それらを押し付ける意図のものでありません。むしろ自分の考えとの違いを発見してより幅の広い解釈を見せてくれ…。
・ゲーム内プロデューサーのことは名前が分からんので「シャニP」と呼称します。

では以下本文となります。

オープニング「脈を打て」

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 開幕では「何もしなくても時計の針は回る、でも本当の未来は自分で作るものだから」といった、なにやらアイドルのキャッチコピーというかPRというか、そんな感じのものがまず目に入ります。一方で円香はシャニPに車で送迎してもらっていますが、少しボーっとしています。そうして到着した現場で2人でエレベーターに乗ろうとすると、ひとりのアイドルが駆け込んできました。
 その少女は円香の知り合いのようで、先ほど流れたアイドルの言葉はこの子のPR動画だったようで、この子もG.R.A.D.に参加するようなのですが、これが「最後のトライ」だと言いました。そうして「願い続けることが大事」という円香にかけられた言葉を口にし、「だからこそ終わりの時は自分の意志で」と言いました。え???

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オイ!!!この子【ギンコ・ビローバ】に
出てきた子じゃないかよ!!!

 限定カードのコミュで出したモブキャラを共通コミュに引っ張ってきやがった…しかも限定セレチケを販売している時期に…シャニマス…恐ろしい子…。これのせいで【ギンコ・ビローバ】を取った人もいるかもしれないですね。
 さておき、このアイドルの子は「当然負けるつもりなんてないけど、もし負けた時は…」と強い覚悟を伺わせ、「お互いに頑張りましょう」と言って立ち去りますが、それを受けた円香の心境や如何にと言ったところですね。
 この子は「願い続けることが大事」という円香の言葉を受けて「だからこそ終わりの時は自分の意志で」と言いましたが、これはどういうことなんでしょう。円香はきっと「諦めるな」という意味で助言をしたはずですが、この子はもう諦めるポイントを決めてしまっています。「未来は自分で作るもの」というのはそういう意味でもあったんでしょうか。しかしながら、自分のかけた言葉でこういう風な形で相まみえることになるなんて円香は思っていたでしょうか。しかも円香もG.R.A.D.に出場するというのに、そこでこの子の未来は決まってしまいます。

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 そんな言葉を聞いた円香の脳裏には誰かに言われたであろう「樋口さんは本当に軽やかに踊りますね」という言葉がリフレインしていました。円香は「軽やかというより――」と、その言葉に何か思うところがありそうです。もうヤバい。きっと円香はまた重いものを背負い込んでしまったと思います。
 ここで一緒のエレベーターになったというのは非常に暗示的な表現だと思います。一度動き始めたエレベーターは目的階につくまで途中で降りるということは普通できません。そこに知り合いのアイドルの子が乗ってきたというのは、もう円香はこの状況からは逃れられないことを意味します。さらに言えば、これはあくまでシャイニーカラーズという「ゲーム」であり、このG.R.A.D.編の目的は優勝することです。この時点でこの知り合いの子が円香に負けることは確定しているようなもんですよね。ゲームの進行上、円香はこの子を蹴落とさざるを得ません。この子が円香より低い階で降りたのはそういう意味なのかなって…(深読み)。開幕からこれ!助けてくれ。話が重い。

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 また、この冒頭で円香はシャニPの車に乗っているところから始まりますが、これは「天塵」の冒頭にそっくりです。そしてその時も「時は流れだしたら止まらない」というような内容が描写されていました。これはG.R.A.D.編での冒頭の「何もしなくても時計の針は回る」というPR動画の言葉と重なりますし、先ほど述べた「動き出したら降りられないエレベーター」とも被ります。
 これまでの円香やノクチルの物語の中で、円香が「変化を望まない子」であるというのはよく見えていた部分です。【閑話】なんかが顕著ですね。しかし冒頭のPR動画の言葉通り、望もうが望むまいが時は流れて何もかも変わっていってしまうというのが現実です。そういったテーマはノクチル全体から感じられるものでもあるし、特に円香や雛菜の物語から感じられることが多いです。おそらくこのG.R.A.D.編では、円香のそういう過去や現状に固着してしまう部分からの成長を描くのだろうという風に思えます。とはいえいきなり初手からだいぶ重いパンチを浴びせてきやがってもう色々と不安です。なんか…救われてくれ…円香も知り合いの子も…。

1つ目のコミュ「空は晴れている」

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 1つ目のコミュでは、円香がCMのお仕事用の衣装合わせをしているようです。ここでスタイリストさんから「布が多いけど大丈夫か」と聞かれていますが円香は「これくらいなら問題ない」と言います。先ほどの「軽やかに踊る」という部分を考えると、これは円香が何かを背負い込んでしまっていても、当人としては「まだ大丈夫」と言っている暗示のように感じてしまいます。本当に大丈夫か…?円香はすぐ強がるから…。
 そこの同席していたシャニPは、このCMのお仕事を持ってきたであろう営業の方に円香をべた褒めされています。「大勢の中に全く埋もれない」「監督の要望にもすんなり応えられる」と褒め、これから円香が波に乗ってブレイクするほうに賭けてもいいなんて言います。別にこれはお世辞とかじゃなくて、円香は本当にちゃんとやれてるのだと思います。

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 そしてこの営業さんは「円香は本当に軽やかに踊る」「円香と比べてしまうと周囲の子が重たく見える」「才能は残酷だ」と言いました。先ほどの言葉はここで出てくるんですね。しかしどうでしょうこの言葉は…なんだかあまり円香に聞かせたい言葉とは思えませんね。
 衣装合わせは終わったか、シャニPは円香にさっきは営業さんに褒められていたことなんかを伝えつつ帰路についています。そこで円香は通り道のCDショップでのアイドルによる店頭イベントが無くなっていることに気が付いています。おそらくこれはW.I.N.G.編で「アイドルなんて楽な商売」言い放った時のものでしょう。
 これが時系列的にどういう扱いになるのかわかりませんが、W.I.N.G.編で円香はその店頭でイベントをしていたそのアイドルと同じオーディションを受け、その子が物凄いプレッシャーに押しつぶされて泣いているのを気にしていたのにも関わらず、その子に勝ってしまって何かを背負い込んでしまうというようなコミュがありましたね。このことは先ほどの「才能は残酷だ」というセリフと重なって感じられます。
 しかし、この「残酷」というのはその才能に押しつぶされる側への同情として放たれた言葉と言えますが、それによって誰よりも苦しんでいるのは円香自身でもありますよね。きっと円香はこの「才能」で誰かが傷ついたりすることは全く望んでいないのですが、アイドルという「比べられる」世界に身を投じてしまった以上このことから逃れられません。W.I.N.G.編での4つ目のコミュで他人と比べられるような世界を「怖い」とまで言った円香にとって、この世界はかなり息苦しいものだろうと思えます。この才能の残酷さは、円香本人まで蝕んでしまいます。円香…。

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 円香はここで自分の宣材写真の撮り直しを提案しています。円香の事なので、やはりかけられた期待に応えようとしてそういう提案をしたのでしょうか。アイドルとしての仕事を舐め腐ったようなことを言う割にやっぱりちゃんとやるべきことはやるようにしますよね。すぐ口先で予防線を張る女。でもきっとこれも何かにプレッシャーを感じてやろうとしたんだろうな。
 まあ実際はどういう意図なのか分かりませんが、そうこうしている内に仕事の電話がかかってきたシャニPを横目に、円香はエレベーターでの知り合いのこの言葉を思い出したか、「あの子は未熟で未完成のまま終わろうとしている」と独り言ちました。どうにもあの時のやり取りが忘れられないようですが、やはり円香としてはあの子がこのまま諦めて終わろうとしていることに引っかかるものを感じています。とはいえ、あの子を終わらせてしまうのはきっと円香になるだろうに、それを背負い込んでしまっては…円香……。感情が巨大になってしまう、助けてくれ~!

2つ目のコミュ「息づかいを聞く」

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 次なるコミュではシャニPが元気に事務所に帰ってきたと思いきや、もう誰もいない時間のようです。いつもいつもお疲れ様です…。そうして暗い事務所で、仕事先の人に「283プロはまだ若い事務所なのにしっかりしている。連絡も細かいし色々提案してもらえるし助かってる」という言葉を思い返しています。シャニPはそのことに「だってそうしなきゃ…」と少し自虐気味な感じです。そうして届いた円香の宣材写真をみて「自分がこれに見合った仕事ができなくてどうする」「頑張ろうな」と気合を入れなおしています。まあ若くて小さい事務所だからそうでもしなければ生き残れないというのは間違いないでしょうが、まず25人もアイドル抱えて社員1人とバイト1人の環境がおかしいって思わないか?なあ天井努??労基署からカチコミされても知らないぞ。
 しかしながら、ここでシャニPが円香の宣材写真を手に取り「自分がこれに見合った仕事ができなくてどうする」「頑張ろうな」と言ったのは、シャニPもまた円香のそういう「才能」を認めているということでもあろうと思えますが、同時に円香がその才能に甘んじずに相応の努力や取り組みをしていることを分かっていて、「自分も円香もお互いに」という意味も含めての言葉なんじゃないかなと思います。シャニPはそういう男。多分。

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 そんなところでシャニPはいつの間にか横にいた円香に気づきます。いやいたんかい!!二人とも電気くらいつけろよ!!声を掛けてくれたらよかったのにというシャニPに対し、円香の方はちょうど帰るところだったけどシャニPがいつまでも気づかないし、シャニPがクタクタになっていて声をかけるタイミングが無かったなんて捲し立てます。シャニPもそれにはすんなり引き下がっていますが、やはりお疲れなのでしょうか。
 そうしてシャニPは円香を送っていこうとしますが、円香は断固として拒否します。シャニPが食い下がると、円香はいつものような皮肉を「今回は言いませんよ」「ゆっくり休んでください」と言って事務所を去ります。完全にシャニPが気を遣われてしまった形になり、シャニPは「事務所でも気を抜かないようにしよう」と思っています。

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 その後、円香から出演する番組に必要なアンケートについての連絡を受け、そのことについて確認しています。どうやらシャニPはその番組には同行できないようですが、円香のそういうしっかりしたところを信頼しているのかおそらく問題なかろうと言った感じです。円香の方も台本があるから問題ないと言っています。そんなやり取りの中で、シャニPは「円香は才能に恵まれている」「そして聡明で物事の奥を見ようとする」「だからこそ安心して頼ってもらえるように気を抜かないようにしないと」と感じています。
 このことは、先述の仕事先の人に「283プロは若いのにしっかりしている」と褒められたことに対してシャニPが「だってそうしないと」と思っていたことと重なっています。283プロが小さい事務所だからそれくらいしないと仕事が貰えないのと同じように、シャニPは円香の前でしっかりした隙の無い大人でいないと円香に頼ってもらえない、余計な気を遣わせてしまうという風に感じています。【ギンコ・ビローバ】で出てきたような「折り目正しいスーツ」の大人でなくてはならないんだ、ということなんでしょう。
 ただこれってどうなんでしょう。円香は「折り目正しいスーツ」が「ぐちゃぐちゃになればいい」と言って我々プレイヤーを戦慄させた過去がありますが、この言葉通り円香は寧ろシャニPが隙を見せないように振る舞うことで、よりシャニPに対する疑念を深めてしまうように思います。シャニPの言う通り、円香は「物事の奥を見ようとする」ので、むしろ体面を取り繕えば取り繕うほど円香は眉間に皺を寄せて、円香もまた「折り目正しい」立ち振る舞いをして己のことを悟らせないようにしてしまうと思います。かといってどうすればいいんだっていう感じもしてしまいますが…シャニP頑張れ…。

G.R.A.D.予選

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 予選では、突然円香が「自分がG.R.A.D.に出場する理由を聞かなくていいのか?」とシャニPに語り掛けます。それを受けたシャニPはじゃあ聞こうという感じで聞きますが、案の定円香は拒否します。お前樋口ほんとそういうところだぞ。しかしながら、この質問に円香が答えていたとしたらなんと答えていたのでしょう。やはりあの知り合いの子の存在が大きいのでしょうか?それとも何かを確かめるため?なんだかいろんな思いを抱えていそうです。

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 そうして円香は「笑っておけばなんとかなるでしょ」なんて言ってステージへと向かいます。「笑っておけばなんとかなる、アイドルって楽な商売」と同じ言葉で、ともすればこのG.R.A.D.予選を完全に舐めているという風に取れてしまう言葉です。ただそうはいっても、円香がここに至るまでに用意してきたものが「笑っておけば」なんてものだけではないなんて事はもはや言うまでもありません。どうせこいつはレッスンも頑張ったしそれ相応に気持ちを向けていたでしょう。
 それでもこの発言からはむしろ、自分みたいに「笑っておけばなんとかなる」なんて思っている奴は負けるのが当然、なんて思ってるのではと感じてしまいます。もしかしたら、あの知り合いの子がアイドル人生を賭けてこれに臨むことと、特にアイドルに対するモチベーションがあるわけでもない自分とを比べてしまってそういう風に思っているのかもなんて思います。

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 予選を勝った場合は、シャニPの労いもよそに「予選だしこんなものだろう、普通にやってれば落ちない」なんて言います。これもまた己の才能を鼻にかけた世の中を舐め腐った人間の言葉に見えます。しかし、先ほどの「自分みたいなのは負けて当然」という風に思っているというように考えれば、「モチベーションが高いわけではないのに勝ってしまった、つまりこの予選はこんなんでも突破できる程度のレベルだった」といった具合に考えて、何をどうしても自分がこの結果に見合うような高いレベルの存在じゃないという形にしたいんだと感じられます。円香が自分のことを大層な存在だと認めたくないような振る舞いはこれまでも数多く見えていたものであるので、いつも通りと言えばいつも通りですがひねくれ過ぎだろお前お前お前!そういうとこだぞホントに!!
 そして知り合いの子もまた予選を勝ち抜いたことを確認し、「なんとかなってよかったですね、この先はわからないけど」といつもの皮肉の如く言います。でも円香はあの子が「笑っただけでなんとかした」なんて絶対思ってないでしょう。円香としてはむしろ死ぬ気で挑んだ知り合いの子の方が「勝って当然」だと思っていたはずです。樋口円香という人間は、決死の覚悟で物事に挑んでいる人を軽んじるような人間ではありません、絶対に。もし違ったら俺をその辺の菩提樹の下に埋めてくれて構わないよ!!

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 予選を負けた場合は、いかにも負けて当然みたいな雰囲気です。「いいステージじゃなかったから落ちた」という円香に対しシャニPは「いいことと上手いことは違う」と言って円香のパフォーマンスを認めてやりますが、「薄っぺらい詭弁」だと返されています。キツい言葉。加えて「そんな薄っぺらい言葉は信じられないが騙されてあげる、それがあなたの優しさなら」と締め括ります。いやドギツい!
 これは【ギンコ・ビローバ】の4つ目のコミュ「偽」で、このG.R.A.D.編に出てきている知り合いの子に励ましの言葉をかけていたのをシャニPに見られていた時の円香の言葉と関連するものです。円香はあの子に優しい言葉をかけていたことを、「自分は優しくないから、あの子に『夢は叶わない』『諦めて生きたほうが楽』ということを教えてやらなかっただけ」と言いました。つまり円香にとって、「あるかどうかも分からない希望を持たせること」は「優しさ」ではないというのです。そういう意味でのシャニPに対する皮肉ですね。しかしどうでしょう、あの時本当に円香はそう思ってあの子を励ましたんでしょうか?
 きっとその気持ちは「偽」ではなかったはず、本当に「偽」なのはその円香の言い訳の方です。きっとその言葉があったから知り合いの子は頑張れただろうし、だからこそ円香のことを慕っているんだろうと思えます。円香の言葉は間違いなくあの子にとっては「優しさ」だったはずだし、円香だってそういう優しい思いで言葉をかけたはずだって思えます。
 しかし、このG.R.A.D.編でのその知り合いの子は、そんな円香の言葉を受けて「終わりは自分で決める、今回ダメだったらもう終わりにする」なんて言い出してしまいました。円香はきっと自分の言葉に重い責任を感じてしまっています。
 先述のシャニPの言葉を「薄っぺらい詭弁」と言ったことからも分かる通り、円香は軽々しく綺麗事を口に出すことをかなり嫌います。それはすなわち、それだけ言葉というものの重みを信じているということでもあります。そう考えるなら猶更、あの子にかけた言葉は真に円香の心からかけた優しい言葉であるはずです。しかし、いやだからこそ、その言葉がもしかしたらあの子を追い詰めたかもしれないという思いがあるからこそ、シャニPに「その薄っぺらい詭弁に騙されてやる」と言ったのかもしれません。まるでそれが自分があの子を追い詰めたことへの贖いになるとでも言うように。そうならやっぱりひねくれ過ぎだし優し過ぎるんだ樋口お前………円香ァ!(バカデカ感情)

3つ目のコミュ「無機質な廊下」

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 さて予選後の3つ目のコミュでは、2つ目のコミュでのシャニPが付き添えないと言っていた番組の収録の日のようです。シャニPは取引先の方と打ち合わせ中のようで、円香のことを気にしてはいるものの「円香なら大丈夫だろう」といった感じです。が、その折、円香から来たチェインには「仕事を失敗した」と書かれていました。大丈夫だって言っていたのに…。シャニPも動揺を隠せません。ぐおぉ…とうとうなんか起きたぞ…誰か助けてくれ…円香…。シャニPは仕事を終えましたが、そこで(おそらく1つ目のコミュに出てきた)営業さんとに出くわし、円香に対する緊急の案件を提示されています。何やらそれは炎上したタレントの代役らしいです。夢見か?しかしながらこれは結構過激な内容の番組のようで、注目度が高いから若手にはおいしい仕事だと営業さんは言いますが、シャニPはやんわり断ります。流石俺たちのシャニPだ。このプロデューサーは絶対にアイドルのことを大切にします。
 それを受けた営業さんは仕方なさそうに引き下がりますが、「チャンスを選んでる場合じゃないでしょ」「アイドルに入れ込むのも結構だが青臭いと言われないようにご注意を」と嫌味たっぷりに言いました。んだお前。円香は絶対売れるとか抜かしてたくせに。お前みたいなやつの言う言葉はいつも軽いな。箪笥の角に足の小指ぶつけて全身複雑骨折しろ!!シャニPは心の中で「これで間違っていない、売れることだけが全てじゃない」と心を落ち着けています。頑張れシャニP!負けんなシャニP!そこで円香の出た番組がツイスタで話題になっているのを確認し、円香が番組で何をしでかしたのか知ることとなります。

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 一方円香の方はというと、例の知り合いの子と出会ったようで、なにか話しています。どうやらこの子と円香は同じ番組に出演したみたいで、「円香と共演出来て嬉しかった」と言いつつも「なぜあの時台本通りに私のことを笑ってくれなかったんだ」と責められています。円香に悪気が無いのはわかっていると言いつつも、どうにもこの子と円香の間に何か起きてしまったことが分かります。これが円香の言う失敗なのでしょうか。
 シャニPが確認した番組の中で、知り合いの子は自分のことを「無能系アイドル」と自称し、笑いを取っていました。これが先ほど言っていた「台本通り私を笑う」という流れになります。自分は何をやってもダメ、起死回生の策はこれしかないなんて言って笑われていますが、円香だけは笑いませんでした。

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 「笑えない」「他の人にも笑ってほしくない」「あなたはあなたのままで間違っていない」。それが円香の言葉でした。そりゃそうでしょう。円香はこの子がどれほど頑張って、どれほどの覚悟でこれからのG.R.A.D.に挑むのか知っています。そんな子が己のことを「無能」と称し、それを周りの大人たちが笑う。不愉快というか、もはや悍ましさすら感じられるでしょう。円香はこの仕事にあたって「台本があるから大丈夫」なんて言いましたが、それを完全に無視し、生配信であるにも関わらず彼女をフォローしました。きっと場は凍ったでしょうし、だから失敗したと言ったんでしょう。でもそれだけの思いやり、「優しさ」があったゆえの行動なのは間違いないでしょう。やっぱり円香は優しいよ。しかしながら、生配信の番組であるのに空気を読まないで主張を押し通すのは「天塵」と重なっていますね。そんな円香もまたやはり「青臭い」し、いかにもノクチルだなと思います。青く硬い心、なんですね~。

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 しかし、その円香の行動を受けたアイドルの子は「もしかして樋口さんはずっと、私のことを哀れんでいました?」と返してきました。読んでるこっちがクラっと来てしまいましたねここはね。最悪の形で円香の思いは捻じ曲がってこの子に伝わってしまいました。当然円香はこの子のことを哀れんでなどいません。この言葉の後に円香の「『はい』」という返事が差し込まれていて、これはシャニPとの電話のやり取りと重ねているからの表現でもありますが、鍵括弧が付いているのでこれは「台本」であるという意味でも取れます。つまりこれは知り合いの子からの質問に対する返事でもあり、そしてそれは「偽」であるという表現ですね。とはいえ円香は真に心の底から彼女のことを思っていてあの行動に出たはずですが、この言葉に円香は『はい』と答えるしかないほどに自分のしでかしたことに責任を感じてしまっているという風に感じられてしまいます。
 この時の円香の言葉を受けたこのアイドルの子は、今まで円香が自分にかけた言葉や行動の全てが、円香が自分より優れているというのをわかっている上で自分のことを見下していたからこそのものだったという風に感じてしまったのでしょう。憐憫は強い立場から弱い立場へのもの、それはそうなのかもしれませんが、そもそも円香はこの子を下には見ていないはずという風に私は読み取ってきました。むしろ「自分なんかよりこの子の方が評価されるべきである」とすら思っているのではと感じられるような気がします。明確にそういうことを口には出しませんが…。それでも円香はこの子に全く逆の印象を意図せずに与えてしまいました。これが…「残酷な才能」なのか…。苦し過ぎる…。

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 そうして「青臭い」2人はお互いの仕事の終了を確認し、円香に対して「家まで送るから迎えに行く」と言いました。きっと普段の円香ならキツい皮肉と共に断っているところでしょうが、ここでは「待っています」と受け入れています。表面的には読み取れませんが、円香はきっと今かなり苦しんでいます。というかあんなことがあって苦しくないわけないんですが、ここまできてようやくシャニPを頼ろうとし始めたのかもしれません。疲れ切って「折り目正しいスーツ」の人間ではいられなかった2つ目のコミュのシャニPのように、今の円香もそういう「折り目正しい」振る舞いをするのに限界が来ています。ここまできたらあとは頼んだぞシャニP!いつも通り上手いことこの状況を打破してくれ!!

4つ目のコミュ「椅子の背もたれのように」

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 4つ目のコミュはおそらく3つ目のコミュからのそのままの続きで、迎えに来たシャニPを円香がカフェで待っていたところから始まります。円香は軽食を「頼んでしまった」のでよかったらシャニPも、と言ってシャニPも同席します。きっと円香はここでシャニPと今日の出来事について話す場を設けたかったのだと思いますが、ひねくれ者の円香は素直にそう言えないので軽食を「頼んでしまった」ことにしてシャニPを巻き込みましたね。ほんと樋口って感じ。まあシャニPも円香をなんとかフォローしなくてはと思っているだろうからWinWinでしょうけどね。

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 なんと声をかけるべきか考えているシャニPが雑談を吹っ掛けると、それを円香はバッサリ切り落として番組での失敗を謝罪しています。ここで「余計なことを言った」と反省していますが、これは仕事的にという意味であるよりかはあの知り合いの子に対して「余計なことをした」という意味の方が強いかと思います。円香は後悔してしまっています。
 シャニPはその円香の行動を「場は凍ったようだがそこからうまい具合に話が転がってむしろ良くなった、仕事のオファーも増えたし結果的には成功だ」とフォローしますが、これも残酷な話です。これはむしろ円香の行動があの子のやろうとしていた「起死回生の策」をよりいいもので塗り替えてしまったということを意味します。そんな風になってしまったから猶更あの子は「今まで自分のことを哀れんでいただけだったのか」と感じてしまったのだとも思えます。円香にそんな意図があるはずも無いのにね。
 円香は「結局それは失敗だった」「自分の言葉が引き起こす結果を考えていなかった」「あの子のチャンスを潰してしまった」と言いました。やはり円香は、自分があの子の最後かもしれないチャンスを奪ってしまったことに強い後悔を抱いていること、そして「言葉」というものがもたらすものに対する真摯さも伺えます。そんな円香に対してどう言葉を伝えたらいいのかとシャニPが悩んでいるうちに桜エビのパスタが到着しました。一息つきましょう。シャニPもまた言葉の持つ重さを知っていて、それゆえに必死に悩んでいます。

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 すると円香は「聞き流して欲しい」と言いつつも、「自分はありがたいことに恵まれている」「今まで大した苦労もしてきてない」「相応の努力はするが、大体のことはできる」と言いました。【閑話】でのモノローグと大きく重なる発言です。円香はそういう「才能」が自分にあるということを自覚しています。
 しかし円香は「だから自分の言葉は軽い、重さが無い」という風に言いました。「みんなから笑われていた彼女の言葉の方がずっと重い」「黙っていればよかった」「薄っぺらい言葉なんて言うんじゃなかった」と言いました。円香の「軽やかというより――」という発言はここに繋がります。ここでこのG.R.A.D.編の構図がはっきりと見えてきたように思います。

 今回のストーリーは、円香が知り合いの子に対して優しい思いで言葉をかけてあげていたという部分が根幹にあります。円香が【ギンコ・ビローバ】の時にかけていた言葉はその言葉通り「願い続ければ夢は叶う、あなたにはそれができる、だから諦めないで」という言葉でした。あの配信の番組での事件の時は、「あなたは笑われるべき無能なんかじゃない、今までのやり方で何も間違っていない」という言葉でした。そしてこれは間違いなく円香があの子のことを心から思っているがゆえに出てきた言葉と見て間違いないと思います。
 しかし、円香の「願い続けることが大事」という言葉は彼女にアイドル人生を終わらせる覚悟を抱かせてしまい、「あなたは間違っていない」という言葉は上に立つ者の憐みの言葉として受け取られてしまいました。しかしそのどちらも円香の意図したものではないだろうということをここまで読み取ってきました。円香の「思い」が伝わっていなくて、そのことが円香を苦しめてしまっているということになりますね。そう考えると、この構図はとあるものに似ていると言えます。

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 今の円香の状況はシャニPとそっくりです。「自分のことを卑下したり、未来を諦めかけている子に対して優しい思いやりを向け、声をかけて手を差し伸べる」「でもその言葉や振る舞いがかえって相手に疑念やプレッシャーを与えてしまう」。今円香と知り合いの子とのこの状況は、円香とシャニPの関係そのものです。
 シャニPはこれまで、自分をアイドルにしたことを「勝算の無い賭け」なんて言うような円香を「そうじゃない、円香はやれる」「そのために自分はどれだけの手間も惜しまない」というスタンスでずっとその背中を押してやろうとしてきました。しかし円香は、ご存知の通りシャニPがそうしようとすればするほどより刺々しい振る舞いになり、果てには「ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいい」なんて感じてしまっています。シャニPの円香に対する思いもまた真なるものですが、伝わらないことが多かったですよね。
 このG.R.A.D.編の円香は、その知り合いの子とのやり取りにおいて、この円香とシャニPの関係上のシャニPと同じような立場に立ってしまいました。今までシャニPのそういうやり方を否定してきたのに、いざこういう状況になると円香はシャニPと同じやり方を取ってしまいます。私は【ギンコ・ビローバ】を読んで、「樋口円香とシャニPは似ている」という持論を展開していましたがやはりそれは間違っていなかったと思います。
 そして今、2人はどちらも上手く自分の思いが伝えられないという部分で苦しんでしまっています。円香に至ってはかなり強い後悔に苛まれているように見え、そういう自分の「優しさ」の部分すら「軽い」として否定しようとしています。
 それを受けたシャニPは必死に思案を巡らします。当然円香が苦しんでいることをわかってのことだし、ちょっとメタ的な読み方にはなりますが、ここで円香の振る舞いを否定することはそのままシャニPの在り方の否定になってしまいます。お互い「青臭い」者同士、それが間違っていない、「その思いは軽くない」んだということを証明しなくてはなりません。

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 そうしてシャニPは円香と同じように「独り言だから聞き流してくれ」と言いつつも、「こうすべきという正解はない」「利口になることで見失うものだってあるはず」、そして「円香の言葉が薄っぺらいのなら俺の言葉だって薄っぺらい」と言いました。これらは選択肢として出てくる言葉ですが、3つ目なんかはもうやっぱりこの2人はそっくりであると言ってるような気がします(拡大解釈自説補強ムーヴ)。
  そんな言葉を受けた円香は相変わらず「そんなのは己の未熟を肯定したいがためだけの言い訳、詭弁である」とこれらの言葉を否定してきますが、「今の言葉はアイドルのプロデューサーとしての言葉か、それともシャニP自身の言葉か?」と加えて質問してきます。シャニPは「聞き流せと言ったぞ」と答えをはぐらかしますが、「しっかり聞いてしまった」という円香に対し「じゃあ口止め料としてここの食事代は奢らせてくれ」と言い、円香はホットのレモンティーを追加で注文しました。なんだこのやり取り?揃いも揃って2人とも中二病か?それもそのはず、2人は「青臭い」のですから。でもその思いは軽くないはずです。まさに重病だな!ワハハ!!!

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 ここでシャニPがかけた言葉は円香の言う通り言い訳のようなものであるのは間違いありません。アイドルでビジネスをやる者としてはやはり「青臭い」もので、円香の考え方に対する返答としては甘いものであると言ってもいいかもしれませんが、だとしてもこれが偽りないシャニPの本心であるはずです。きっとこの言葉は「折り目正しいスーツのプロデューサー」としての言葉ではありません。シャニPは聞き流して欲しい「俺の」独り言と言っています。
 シャニPは円香の質問の答えをはぐらかしていますが、円香が「しっかり聞いてしまった」と言っているのはやはりこの言葉が「折り目正しいスーツのプロデューサー」のものではないと理解できているということでしょう。そのことでシャニPが気まずそうに「口止め料」を払おうとするのも、2つ目のコミュで疲れ切っていて隙を見られてしまって気まずそうにしていたことと同じです。それでもシャニPはこういう時には「折り目正しいスーツのプロデューサー」としてではない言葉が必要であると判断したのでしょう。
 そして円香は、シャニPが「折り目正しいスーツ」の大人であるから円香に優しい言葉をかけているわけではないということをここでしっかり確認し、シャニPの申し出に気を遣うわけではなく素直にレモンティーを注文することができました。わざわざスーツがぐちゃぐちゃに引き裂かれている必要もありませんでしたね。
 ここに来てシャニPはやっと円香に少しでも自分の思いを伝えることができて、円香を支えてあげられる「背もたれ」になってほんの少しでもその「重さ」を預けてもらえるようになったのでしょう。よかったねえシャニP…。あとはもう円香の思いをあの子に伝えるだけです。円香ならできる!きっと!

敗者復活戦

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 敗者復活戦直前の円香は、オープニングでも登場した知り合いの子によるPR動画をまた見ていました。そこで言われていた「何もしなくても時計の針は回る」と言う言葉について、「何もしなくても回るのになぜ回そうとするのだろう」と疑問を呈します。シャニPはそれに「衝動みたいものかな」と答えてあげました。
 それに納得がいったのかどうなのか円香の反応は薄いですが、続けて「ここで何人も落ちる、その落ちた人たちの一体何人がこの先10年後20年後、過去の自分が必死に時計の針を動かそうとしたことを『無謀だった』と笑って乗り越えたような顔をするだろう」と言いました。ぐぅぅ…なんだこいつ…言葉がキツ過ぎるだろうよ。しかし、この発言からは円香がそういう未来を掴みたい、前に進みたいという「衝動」のようなものを全く軽んじてはいないということが感じられますし、そんな「衝動」を抱えていた事やそれに突き動かされたという過去を茶化してなんでも無かったことにしようとする事にも否定的なんだと思えます。
 円香はそういうものが「重い」と感じていて、だからこそそれを軽々しく笑い飛ばして投げ捨てようとした配信番組のあの子の「無能」発言が許せなかったんだろうと思います。そこで円香は咄嗟に、まさに「衝動」的にあの子を庇ってしまいましたね。シャニPが円香に対してそうであるように円香もまた、あの子の時計の針を止めたくはなかったんでしょう。ここでこの子が「無能アイドル」として負けて、アイドルを諦めてしまえば全てが止まってしまう、そういう思いが円香にあったんじゃないかと強く感じられます。「なぜ回そうとするのか」なんて言っていますが、円香にだって本当は回そうとする思いはあるはずなんですよね、きっと。それが自分の事じゃないってのが本当に円香は優しいなって感じです。樋口は本当に優しい。

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 そうして敗者復活戦を勝った円香は、「諦めるというのは何かから離れることだと思っていた」「でも違う、何かを諦めるということは、何かを始める時と同じように踏み出すことだった」と言い、シャニPに「あなたはその事を最初から知っていたんですか?」と問いました。ここでシャニPの答えはありませんが、シャニPは初めからってほどではなくても、きっと分かっていたでしょう。
 今まで円香はきっと、シャニPの弛まない「折り目正しい」振る舞いにプレッシャーを感じていたんだろうと思えますが、最初からシャニPは円香にもそういう在り方を求めていたわけではありませんよね。例えばもし円香が本気でアイドル辞めようとしたところで、きっとシャニPは「諦めるな」なんて言ってそれを無理に止めたりはしないし、道から外れるための最大限のサポートをするだろうと思えます。それがシャニPの「優しさ」で、それは間違いなく「時計の針を止めさせない」優しさのはずです。シャニPはただ「どんな形でも円香が前に進めばそれだけでいい」っていうスタンスだと思います。
 そしてそれと全く同じ優しさを、円香もまた持っています。何をしなくても時計の針が回るように、円香があの子の時計の針を止めさせようとしなかったことが、円香の針も同じように回っているのだということを示しました。後必要なのはもう「衝動」です。円香のそれだって絶対に軽くないものでしょう。さあ行け円香!絶対に答えは出る!!

G.R.A.D.決勝

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 さあ決勝です。シャニPは「言葉で全てを伝えるのは難しい、だから歌やダンスが生まれたのかもしれない」「正確に伝わるかはわからないけど、すごいものが伝わるかもしれない」なんて急にポエマーになっています。どうしたオイ。円香は大仰だと言いますが、「大仰じゃない、決勝のステージに言葉はいらない」と返します。それでもなお円香は「言葉が無ければ表現が軽くなるだけ」と反論しますがシャニPは「軽いんじゃなくて軽やかなんだ」と更に返します。なんだお前らポエムバトルすな!!シャニPもだいぶ円香相手も慣れましたね。でもなんかいつも通りって感じですね。それでいいんだ。

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 そうして円香は口先八丁のシャニPに「黙れ」と告げ、「言葉はいらないんでしょ」と告げてステージへと向かいます。キツい口調ではありますが、これもまた円香がシャニPの言葉を受け入れていると思えます。そしてそれは予選の時の「騙されてやる」なんて自暴自棄なものではなく、シャニPの言葉が真なるものであるという信頼に基づくものなったと思えます。
 ここまで来たらもう円香は勝つしかありません。たとえあの子を蹴落とす事になろうとも。ここで負けてしまえば、円香があの子にかけた言葉や思いは「重さ」を失います。
 円香があの子の時計の針を止めさせようとしなかったことが円香の針をも回したように、今度は円香が自分の時計の針を回して見せてあの子に道を示さなくてはなりません。「諦めることは始めることと同じ」なんだということを、円香はあの子のことを下に見て哀れんでなんてないということを、円香のことを誰より慕って尊敬してくれていたあの子にこの場で全力をもって示すことこそが、円香の言葉や思いが決して「軽くない」ことの何よりの証明になります。行け!円香!歌い踊れ、軽やかに!!

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 そうして決勝を勝ち抜いた円香は、「ステージを思い切り踏みつけた音を聞いていたか?」とシャニPに言います。シャニPはそこまで気にしてなかったようで気付かなかったという風ですが、シャニPは円香のステージを「いつもよりダイナミックで凄く良かった」「ゾウがドシーンって感じで」と言いました。なんだそりゃ。2人とも笑ってしまいます。ようやく笑い合えたね。
 でも、それだけこの円香のステップは重かったんです。たとえどれだけ軽やかに踊ろうとも、円香の背負ってるものは決して軽いものではありません。そのことがこの決勝でしっかりと示されました。シャニPの言う通り、やっぱり言葉なんて要らなかったですね。この円香の「ゾウみたいな」パフォーマンスの結果が全てです。重々しく、軽やかに円香はG.R.A.D.を優勝しました。

エンディング「願いは叶う」

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 G.R.A.D.を勝ち抜いた円香はいつものようにシャニPと一緒に仕事をしていますが、一方で励ましと哀れみの境目に悩んでいる様子が見えます。当然これはこのG.R.A.D.で負かしまったあの子に対するものです。どう言葉をかけるべきか、円香は悩んでいます。シャニPと同じように。
 そうしている内に、偶然あの知り合いの子に出会ってしまいます。やっぱり若干気まずい雰囲気が流れますがそれは仕方ありませんね。あんなことがあったし、円香はこの子をその重いステップで蹴落としました。そして、オープニングコミュと同じように、一緒の1階行のエレベーターに乗ります。今度は下りなのも意味深いですね。

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 円香はまだなんと声をかけるべきか悩んでいます。「今G.R.A.D.を勝ってしまった自分から尊敬や賞賛の言葉をかけるのは違う」「私はこの子のようになりたいわけではない」「そう感じるならそれは優越感なのか?」と相当に逡巡している様子ですが、知り合いの子の方から先に声をかけられてしまいます。円香を責めるような発言をしてしまったことの謝罪を皮切りに、円香の言葉を遮りながら続けます。
 「冷静で物知りな円香のことが好きだった」「だからこそ本当はちょっと嫌いだった」と言い、円香はそれを黙って聞いています。この言葉は偽りなき本心でしょう。こういうのは難しいですよね。円香のこの子に対する友愛が憐憫と紙一重だったように、この子の円香に対する憧憬と嫉妬は全く同じように紙一重だったのでしょう。それがこのG.R.A.D.を通して悪い形となって2人の関係に影を差してしまっていました。
 それでも円香は、このエンディング冒頭でどう声をかけるべきか迷っていることからも分かるように、2人のこの関係を「このまま終わりにしちゃダメだ」と思っていると思います。そしてそれは、きっとこの子も一緒だったはずです。だからこそ、この子は「本当は少し嫌いだった」なんて言葉に続けて「円香に出会えてよかった」なんて言います。アイドルを諦める結果にはなったけれども、それでもこのアイドルを頑張っていた時間を、円香と共にアイドルをしていた時間をなんとか肯定しつつ踏ん切りをつけようとしています。きっと10年後20年後、この「衝動」に突き動かされていた時のことを「無謀だったけどいい思い出だ」と軽々しく笑うために。そうしてこの子は円香に「これからも頑張ってください、またどこかで」と伝え、早々に立ち去ろうとします。

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 しかし円香は彼女を引き止め、「あなたの一歩は軽くない」「とても重くて力強い」「お互いに頑張ろう」と言い、円香は彼女がアイドルを諦めることを肯定してあげました。これは敗者復活戦での言葉と同じもので、「諦める」ということが道から外れて消えるものではなく、新たな道に踏み出すものであるということに気づけた円香だからこそかけられた言葉です。
 これまでも述べてきたようにきっと円香は、自分のかけた言葉がこの子に「アイドルを辞める」という覚悟を持たせてしまうほどのプレッシャーを与えたことに責任を感じていて、それゆえに何とか「この子はそんな軽いものじゃない、この子をここで終わらせたくない」と感じて思い悩んできたのだろうと思えます。しかしこのG.R.A.D.編で円香は「何かを諦めることは全てを失って終わることを意味するものではない」と気づけています。
 そうして円香の出した結論は、「あなたがどんな選択をしても、あなたのこれまでのその強い思いや頑張りがなかったことになるわけではないし、この先にはまた新しい道があるよ」と言って背中を押してあげることでした。それがこの言葉なんですね。だからこそ、「お互いに」頑張ろうと言ってあげられたんです。円香の時計の針が止まらなかったように、彼女の時計の針もここで止まるわけではないのです。これから先、この2人がどこかでまた会うことがあるかどうかは分かりません。それでも2人の時は止まってなどいないのだから、きっとどこかでまた出会えるんじゃないかなって思います。2人の「アイドル同士としての」関係はここで終わりましたが、終わりが始まりと同じであるように、また新たな2人の関係がここで始まったと言えるでしょう。そうであってくれ。それもまた1つの「願い」です。俺の。

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 そんなやり取りを後ろの方で聞いていたであろうシャニPは「伝えられたかな」と言います。円香は「おかげさまで」なんて言っていますが、このシャニPの言葉は円香だけじゃなくて自分自身に向けた言葉でもあります。先ほど円香とシャニPは似ているということも述べましたが、シャニPの円香を思う言葉がちゃんと円香に伝わったからこそ、円香はあの子を思う言葉をちゃんとあの子に伝えられたのだと思います。踏み出すあの子の背中を円香が優しく押してあげたように、シャニPもまた「椅子の背もたれ」のように円香の背中を支えてあげられたはずです。

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 そして円香は「終わりも始まりも、同じように」「軽やかで」「しかし」とモノローグを挟みながら、「行きましょう」と言ってシャニPと共にエレベーターを降ります。このG.R.A.D.編の冒頭なんかもそうでしたが、円香は為されるがままシャニPの車から降りられず、一緒にあの子と乗ってしまったエレベーターも降りられずにいました。円香はそもそもアイドルだってなりたくてなったわけではありません。ずっとなし崩しの中で踏み出せないまま、いろんなものを抱え込んできました。しかしここでは自ら「行きましょう」とシャニPを引っ張って一歩を踏み出して見せています。
 この「終わりも始まりも、同じように」「軽やかで」「しかし」という言葉からわかるように、円香は何かを始めたり諦めたりするその一歩が「軽い」のではなく「軽やか」なんだという風に思えるようになっています。「しかし」それは、決してその一歩が何ものをも背負わないようなものではないということであって、そのことは円香もあの子も一緒です。そして円香は、このG.R.A.D.を勝ち抜いたという結果と、心からあの子を思う言葉で、ここであの子のエレベーターを降りる一歩まで「軽やかに」してあげたと思います。円香の思いは間違いなく伝えられたでしょうし、だからこそ最後には円香自身も「軽やかに」エレベーターを降りて一歩を踏み出しました。
 「願い続けることが大事」、その言葉通りです。円香に自信の思いや考えを伝えようと諦めずに悩み続けたシャニPの愛が円香に伝わり、あの子の時計の針を止めたくないとシャニPに支えられながら諦めずに悩み続けた円香の愛はあの子にも伝わって、結果として3人とも前に進むことができました。「願いは叶う」んです。一歩踏み出した3人にはきっと新しい世界や体験が広がっているはずです。なんかもうみんな救われてよかったなあみんな(号泣)。
 「何をしなくても時計の針は回る」のは間違いありません。それでもそこには何かをしただけ様々な「思い」が積み重なっていきます。それならなんでも積み重ねていけばいいですよね。それが「重い」になっていきます。そしてその「思い」がどれほどあろうと、何かを始めようとすることや諦めようとすることを「軽やかに」踏み出してよいのです。軽やかなその一歩は誰かの、そして自分自身の「重い」を否定するものではありません。だからこそやっぱりこの言葉が全てだなって思います。円香、「いっぱい生きろ」!ゾウの如く軽やかに!きっと願いは叶うぞ!円香!!

 最もいいタイプの愛情はお互いに生命を与え合うものである。一方は喜びをもって他方の愛情を受け取り、なんらの努力なしに愛情を与える。そして二人ともこのように交互的に幸福であることの結果として全世界をより興味ぶかいものとして見出すだろう。

バートランド・ラッセル「幸福論」より

感情置き場

 死んだ。ノクチルのG.R.A.D.編、猛烈に物語が濃ゆい。G.R.A.D.が全体的に濃いのは分かり切っていたことですが、いざ実装されてみるとやはり感情が爆発してキモオタになってしまいます。とりあえず感情爆発死で役所に死亡届出してきました。まだ2つ目だぞ?どうしてくれるんだよシャニマスくん?まだいっぱい書かなきゃならんのよこっちはよ。誰に頼まれた訳でもねーのによ。(自省)

 さておき、この円香のG.R.A.D.編で何より思ったのはやっぱり円香お前優しいなお前樋口お前お前!!というところですね。今まで何度円香のことを優しいと書いたかわかりませんがやっぱり優しいですこいつ。今回はその思いがうまく伝わっていないような状況になってしまって円香は苦しい思いをしましたが、それこそシャニPからその姿勢を学んだかのように、諦めずに真摯に向き合い続けて最後にはあの子にも円香の優しい思いが届いたと思えます。
 ちょっとほろ苦い終わりではあったものの、これからの未来を明るく軽やかに感じさせてくれる終わり方だったと思います。この物語のあと、ちょこちょことでも円香とあの子が連絡とか取り合ってて、新たな道を見つけたあの子に円香がまた優しい言葉をかけていたらいいな…という幻覚がめちゃくちゃ見えています。誰か助けてくれ。またこの子どっかで出てこないかな〜!さなぴーみたいに何度出てきてくれたっていいんだぞ!!

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 また、この円香のG.R.A.D.を読んでいて強く感じたこともあります。この記事は実装から3週間ほど経っているのでもうとっくに指摘されていることかもしれませんが…。私がこの物語を読み込んでいて強く感じたのは透のG.R.A.D.編との対応です。どうでしょう?こじつけなのかなって思わなくもないんですけど、なんかどうにも似てるところがかなり多かったなと思います。
 「どちらも優れた才覚や能力を持つが、そのことに加えて自身の言葉が少ないことも相まって、自身の思いが周囲にうまく伝わらないことで生じた悩みや苦しみに向き合うことになる物語」「どちらの物語も『ポジティブな諦め』というテーマが盛り込まれている」「どちらの物語も『終わりと始まりは渾然一体としている』というテーマが盛り込まれている」「パーソナルカラーが『青緑』の透が『赤』ジャージを着る物語と、パーソナルカラーが『赤』の円香が『青』臭い真似をしてしまった物語」「4つ目のコミュで同じ『コウカクルイ』のカニとエビが出てくる」「海の最大の生物である『クジラ』の透と、地上の最大の生物である『ゾウ』の円香」「ジャングルジムを上に登れているのかわからなくなった透、エレベーターで否応にも上に昇ってしまう円香」「湿地に吹く風のように踊る透、軽やかに踊る円香」、なんとなく感じられるだけでこれだけ対応する要素があるように思います。ノクチルに脳をやられ過ぎてこじつけてるだけかもしれませんけど…(深読み病)。
 さらに言えば、この円香のG.R.A.D.編も「気づき」の物語であったように思います。透のG.R.A.D.編は「自分にも心臓があった」と気づく物語であると書いたんですが、円香もまた「何かを諦めることは時を止めることではない」と気づけた物語になっていたと思います。円香はその周囲の期待や、とりわけ自分に対して多大な労力を払おうとするシャニPの存在によってプレッシャーがかかり、アイドルを「諦める」ということができなくなっていたのでは?と思います。しかも真面目な性格でなまじ才能もあるばかりにどんどんこのアイドルの世界から降りられなくなっていたように思えます。「残酷な才能」というのはやはり円香自身においても残酷さを発揮してしまっていたのだろうと感じます。

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 そして円香は(心底そう思っているかは分かりませんが)、その「降りられない」という状況の原因をシャニPという存在に見出していたのだろうと思います。シャニPの存在こそが円香にとってのプレッシャーです。そう考えるならば「ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいい」という言葉もなんとなく意味が分かります。「お前がそういうスタンスで居るとこっちもそれに見合ったことをしなきゃならなくなるんだよこの野郎」みたいな感覚で出た言葉だったのではないかと思えるのですが、これもまた「円香に見合った働きを自分がしなきゃどうする」とお疲れながらも独り言ちていたシャニPと同じですよね。やっぱ似てるよこいつら。

 しかし円香はあの知り合いの子とのやり取りにおいて、自分がシャニPと同じ側の立場に立ったことで、シャニPが円香を降ろさないようにプレッシャーをかけているわけではなかったと気づきました。そうして「何かを諦めることは時を止めることではない」と理解できた円香はその自身が勝手に感じていたプレッシャーからひとつ解き放たれたと言ってもいいと思います。
 ただやっぱりこれって最初からそうだった、と思います。シャニPがそんな奴じゃないってのもそうですが、このG.R.A.D.編の一番最初から既に「何もしなくても時計の針は回る」という言葉が出てきています。それは当然「何をしても時計の針は回る」という意味だって含むはずです。あの子がアイドルを辞めようが辞めまいがあの子の人生がそこで終わるわけではないのに、どこかで円香はあの子が「終わってしまう」なんて感じてしまったんでしょう。それは円香の優しさゆえであり責任感の強さゆえでもあるかと思いますが、「そんなことはなかったんだ」と思えることで一歩を踏み出せたという意味でこれもやっぱり「気づき」の物語だったなと思います。
 ところで、この円香のG.R.A.D.編における「シャニPは自分にプレッシャーをかける存在ではない」という気づきは、雛菜のW.I.N.G.編に似てるなって思いました。雛菜もまたW.I.N.G.編で、シャニPは自分に「ちゃんとやれ」みたいな社会規範的プレッシャーをかけてくる大人であると感じてすれ違ってしまいましたが、シャニPは雛菜の「しあわせ」のためにそばにいてサポートしてくれる存在なんだと理解して雛菜は前に走り出すといった感じの内容でした。なんだか似てますよね~これ。
 円香のG.R.A.D.編は透のG.R.A.D.編と似ているなんてのも先ほど書きましたが、ノクチルの物語を見ていると「性格は全然違うけどこいつら4人とも全員が全員に似ているところがあるのでは…?」と感じることが多々あります。ただこれは考えが上手くまとまらなくて言語化できないので、誰か同じような感覚の人いたら代わりに書いてください!お願いします!なんでも島村卯月!!

 そんなこんなで相変わらずとっ散らかりまくりの怪文書になりましたが、ノクチルのことになるとすぐこうなるので許してくれさい。こんなものを書いているうちにまさかのLnding Point実装に至ってしまい俺はもう物語の供給過剰で死にそうですよ。ヘルプミー。でもやっぱり新シナリオ楽しみだな~!!生きます(決意)。
 なんにしても、ここまでこんな拙文をお読みくださった方、貴重な人生のお時間をいただきありがとうございました。またどこかで会いましょう。それでは~。

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