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8/31実装「さざなみはいつも凡庸な音がする」を読む

 こん!!いれぶんです!!こちらは8/31に実装されたノクチルのストーリーイベント「さざなみはいつも凡庸な音がする」の感想文兼怪文書となる記事です。以下注意点です。

・記事というよりかはただの自分用の感想まとめなのでいろいろ話が飛躍してる気がします。
・コミュ内容のネタバレを含みます。さらに今までのノクチル全体のコミュの内容を前提としつつ絡めるのでさらにネタバレと妄想が飛躍します。お気を付けください。
・私個人の好意的・拡大解釈および誇大妄想を含みますが、それらを押し付ける意図のものでありません。むしろ自分の考えとの違いを発見してより幅の広い解釈を見せてくれ…。
・ゲーム内プロデューサーのことは名前が分からんので「シャニP」と呼称します。

では以下本文となります。

オープニング「成長」

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 さて第一話、いきなり冒頭では「速報」と銘打って「4人の成長を描く新たなプロジェクトが始動」という文言から始まります。疑いようもなく我らがノクチルの事でしょう!何かの番組でしょうか。

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 すると、もはやリスポーン地点ともいうべきいつもの浅倉ルームで雛菜が「今日の分やった?」と質問を投げかけていますが、相変わらず透はボケボケです。円香は「今度出る番組の投票のこと」とすぐに理解しますが、その投票とやらはやってないみたいですね。
 ここで第一の投票先として「①有名トレーナーの元で身体能力向上!」という企画名が登場します。ははーんなるほどそういうやつね。視聴者に企画選んでもらって体当たりバラエティー的なやつかな?ってなところで、雛菜は出演側であるにもかかわらずみんなで票を投じて③にしたいらしいです。
 どうやら今日がその投票の締め切りのようですが、透もそうだし円香も締め切りであること自体ここで思い出しているので、2人とも1票も入れてないようです。あらら…雛菜はがっくりしてます。

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 次には「②マナー講師による厳格なレッスン!」という企画名が差し込まれます。うーんこれは…透あたりが死ぬほど不安な企画だなあ。てなところで円香は「投票しても無駄じゃないか」なんて言います。「自分たちが投票したところで一日当たりたったの4票にしかならない、大した量じゃない」と言います。まあそれはそうよ。しかし雛菜は「そんなのわかんない、もしかしたら自分たちしか入れてないかもしれない」なんて反論し、円香から「それならこの番組は最初から終わってる」とツッコまれています。
 いくらなんだってそんな訳ないのは雛菜だってわかっていて半分冗談で言っているものとは思いますが、雛菜のG.R.A.D.編でも見えていたように、雛菜はそういう「自分(たち)にいい意味でも悪い意味でも強い関心を寄せている人々」みたいな存在に対して鈍感、というよりかは敢えて目を背けがちな節があるので、やはりもう半分はちょっと本気でその可能性に賭けてる部分もあるのかななんて思います。
 透はそんなやり取りを「やばい、視聴率0%」なんて面白がっていますが、雛菜は「ママは見るって言ってたから1%はいく」と言い、透も「うちが見たら2%か」なんて言っています。視聴率ってそういう風に計算するものじゃなくない…?お前たち含めてこの世に100人しか人間いないんか?やはり彼女たちの持つ世界観は本当に狭くて閉塞的だなあという感じです。そして円香は「どうせ番組作りのための出来レース」「内容なんて最初から決まってるんじゃない?」と言います。ひねくれ者がよ~!まあ俺もこういうのそういう風に疑っちゃうけど…高2病がよ(自省)。でもシャニマス君は悪意のある業界人みたいなの普通に描写するからそういう疑い持つもの仕方なくない?(責任甜花)

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 さてお次に示されるのは「③天才パティシエに弟子入りして特訓!」という事です。確かにこれは雛菜やりたがりそう!小糸もお菓子作りチャレンジしたことあるしよさそう、グー。というタイミングで小糸がやってきます。ここでみんなに迎え入れられている小糸本当に嬉しそうで泣くかと思った。涙腺ガバガバガッバーナ。小糸は差し入れのアイスも買ってきたようです。偉すぎ。
 小糸は今日まで夏期講習だったようで、これまであんまりみんなで遊べなかったようです。偉いなあ小糸は本当に。そして雛菜に「これでようやく遊べるね」と言われて小糸は「~~!」みたいな鳴き声を出します。可愛い。本当は夏休みみんなで一緒にたくさん遊びたかったんでしょうけど、それでも学業の方を取ったんでしょうね。まだ1年生なのに偉い。とはいえ夏休みも残り少ないらしく、しかもすぐに例の番組の撮影があるのであんまり余裕があるってわけでもないみたいです。

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 お次には「④人気塾講師によるスパルタ缶詰合宿!」という企画名が出ます。いやーこれは…。流石に勉強得意な小糸でもやりたがらない気がするな。ここで雛菜は小糸にも例の投票をしたかと問いますが、小糸も頭の片隅にあったくらいの感じです。まあ勉強が忙しかったのでしょう。雛菜は「へ~~~!?」と驚いて、結局誰も協力してくれなかったことが残念そうです。そういうとこあるよな~。案外噛み合ってないんですよね。
 しかしながら我らが真面目な小糸は雛菜に協力しなかったというよりかは、「そういう企画だから、みんなが投票してくれたやつをやるのがいいんじゃないかと思った」「全部は無理でもそういうのに応えていけるようになりたい」「ファンの人たちが自分に何を求めているのか知りたい」という風に述べます。泣いた。このちっこい可能性の獣め。円香は「表向きはそういう風だけどね」なんて茶々を入れますが、小糸はこの番組に真っすぐ真摯に向き合おうとしています。
 そして小糸は噛み締めるように「頑張りたいな」と言いました。W.I.N.G.編の時からの小糸のテーマ「頑張る」ですね。頑張りたいと思えた時点で頑張っていいんだぞ小糸。

 そしてここで最後の投票先が「⑤由緒ある寺院で修行を積み、心身を鍛える!」であるという事が分かります。修行編だ!なんか新たな技を習得しがち。
 雛菜は相変わらず「③がいい」と言っていて、「自分が食べたいだけでしょ」と円香に言われても「食べれたらいいでしょ?作れるようになったらもっといい」と言い、小糸に「それは逆な気がするけど」と反応されています。これはなんだか雛菜G.R.A.D.編での「アイドルを『市川雛菜』にしちゃえばいい」という逆転した発言と重なる感じがしますね。雛菜的な思考と言っていいのかなと思います。
 加えて雛菜は「大変なやつになったらどうするの」と言っていますが、円香は「それでも普通にこなすだけ、それが仕事」とバッサリ切り落とします。やらせの可能性を示しながら仕事と割り切るその一周回って不器用とも思える真面目さ、まさに樋口。そして透は「まーやるか」「いいよ、なんでも」と、皆それぞれ向き合い方は違うものの、この仕事に向けてちゃんと気持ちを向けているようです。頑張れみんな。

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 そして場面は切り替わり、番組のキャッチコピーの「アナタの投票でノクチルが”変わる”!」「話題沸騰の幼馴染4人組アイドルノクチルによる初の冠WEBバラエティー番組」という説明がなされ、番組タイトルは「ノクチル成長中!(仮)」であると分かります。話題沸騰してたのか…。まあこういうキャッチはなんでもかんでも全米が泣いたりすることになる世の中ですので、多少は誇張するものでしょうがひとつ冠番組をやるというレベルに達しているようです。ノクチルが売れ始めてて嬉しいような寂しいような…(面倒オタク心)。
 そして事務所ではシャニPが取引先からの電話を受け、「決まったんですか」と言っています。例の投票結果の事でしょう。収録まであんまり時間の無い、しかも投票締め切り日のこのタイミングで決まったという連絡が来るという事は多分やらせじゃないんじゃないかな?そう思わんか樋口?あんまり斜に構えすぎんなよ。ここでシャニPは「雛菜はがっかりするかもしれないけど」なんて言っているので、まあ③ではないのでしょう。残念。透と円香は何でもいいと言っていたようですが、シャニPは「小糸は―――」と若干の含みを持たせた感じで独り言ち、オープニングは終わりました。うーむこれは…?
 さて、ひとまずこうして彼女たちは仕事、しかも初の「冠番組」へと向かうことが決まりました。果たして何が待ち受けているやら…。

第一話「遠く遠くまで」

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 さて第一話ではシャニPとノクチルのみんなでロケ先に移動中です。しかしどうやら早朝からの移動だったらしく、小糸以外の3人は車内でスヤァしております。小糸だけはちゃんと起きていますが、それは昨日よく眠れたとかではなく、「色々考えてると眠れそうにない」「自分たちの番組なんだからいいものにしないと」「ファンに選んでもらったことをやるんだからそれに応えられるように、もっと見てもらえるようにしないと」と強いプレッシャーを感じていることを滲ませます。小糸…。
 そして最後に小糸は「番組のタイトル通り、成長しないと」と述べます。小糸ォ…。しかしオープニングでのラストでの含みある感じや、ここでの小糸に賭けたシャニPの言葉を見るに、この男は小糸が強いプレッシャーを背負い込んでいることをしっかり認識しています。頼んだぞシャニP!こういう時何とか上手いことやるのが俺たちのシャニPってもんだろ!

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 するとまず雛菜が起きます。後輩組の方がちゃんと起きとるやんけ。そろそろ起こそうとしてたという小糸の話を聞き、雛菜は「じゃあ2人も起こさなきゃ」と言って、「寝起きすぐだと顔むくむよ」なんてバカデカボイスを出して起こします。雛菜目覚まし時計欲しい。透はまだ寝ぼけていそうですが、円香は「うるさい、もう起きてる」なんて言っています。深読みし過ぎなんですけど、なんかここの円香寝起きが良過ぎて、本当はちょっと前から起きてて小糸の言葉を聞いてたんじゃないかって気が若干します。憶測どころか妄想の範疇も出ないですけどね!いつもの病気です。誰か治療して。

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 到着したのは~?なんと由緒正しき「寺」!!つまり⑤の修行編になったってことですね~。まあ事前に公開されていたイラストでお寺に来ることはほとんど分かっていたんですけど!透は「寺だね、めっちゃ」といつもの気の抜ける浅倉構文です。めっちゃ寺ってどういう寺なの?本格的ってことなんでしょうかね。ややもすると番組のスタッフさんたちが現れ、「お腹空いた」なんて言いながら4人は着替えやメイクなど収録の準備に入りますが、やはりどうにも小糸はプレッシャーを感じていて足が止まってしまいます。頑張れ小糸…!

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 シャニPは番組のディレクターさんと会話していて、番組出演のオファーを貰ったことにお礼を言っています。シャニPが売り込んだというよりかは番組側からの提案だったんですね。ディレクターさんは「みんな活躍してるしいい感じ」「むしろウチで初冠番組やらせてもらえて光栄だ」なんて言います。果たしてこれは本心か社交辞令か…持ち上げといてなんかロクでもないこと持ちかけてきたりしねえだろうか(疑心暗鬼)。シャニマスに出てくる業界人は信用なんねンだわ。
 控室の方では雛菜が「移動だけで疲れちゃった」と言っていますが、透も円香も、そして何より小糸もしっかりと気持ちを向けて準備しています。こう見えてこいつら結構真面目なんですよ。雛菜はここで「修行なのにメイクするんだね」と言って、「撮影なんだから当たり前でしょ」とツッコまれますが、「雛菜は可愛いほうが良いからいいけど!」と適当に流しています。しかし小糸はその言葉に何やら感じるところがあるようです。

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 相変わらず雛菜は鋭いことをサラッと言っています。「修行なのにメイクする」という指摘は、雛菜にとっては、というか一般的な通念として「お寺での修行にメイクは必要ない」という認識があることを示します。それは我々としても特に異論のない考え方かと思いますが、ここで彼女たちが「修行」には必要の無い「メイク」を求められているという事は、この「修行」はあくまで番組側及び視聴者側にタレントとして求められている企画や演出の一部、つまり「この『修行』は本質的な修行ではない」と言える形になってしまいます。それは平たく言ってしまえば「やらせ的」であるという事です。
 ただ、個人的にはあくまで「やらせ『的』」であるという風に表現したいと思います。実際のところ、これはあくまでもエンタメとしての番組であり、もし本気で体当たりで真実味のある成長が見たいならドキュメンタリーにしたほうが良いのです。しかしこの番組があまり大きなものではなさそうなWEB媒体のエンタメ番組で、そこに可愛らしい「アイドル」なんてものを起用する以上、そこに一切の反論の余地も無いような「ガチさ」を強く求めるものでもないのでしょう。ここでの「メイク」は番組としてはやはり必要なものです。
 しかしながら、極端な話でその筋の人には怒られるかもしれませんが、その「メイク」というのがお寺での「修行」というのにどれほど影響があるでしょうか?少なくとも私の思う範囲では多少のお化粧が修行に対する実物的な妨げになるとは思えません。そういう意味では、彼女たちが「メイクする」のと「お寺でしっかり修行を積む」というのは相反するものではなく、どちらも両立しうる以上、この「やらせ的」な要素があっても番組として成り立つのでしょうし、だからこそこの⑤が企画候補として投票の対象になるのです。「可愛いほうが良いからそれでいい」と言った雛菜の考え方だってあながち間違ってはいなくて、「メイク」があるからこの「修行」が100%やらせである、という風にはなりません。

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 長々と話が逸れました。外ではシャニPとディレクターさんが会話しています。どうやらこのディレクターさんは「天塵」の時の我々オタクが完全にぶっ飛ばされた例の生配信でのやらかしを見ていたらしいのですが、それを見たこの方は「なんでかこの子たちは来る、と思えた」というのです。シャニPもその言葉に何か感じています。んだこの人?ミスター・わかり手か???ノクチルのオタクだろあれ見て「来る」なんて思えるのは。この人信用できるタイプの業界人なんじゃないか???(手の平ぐるぐるまわるもの)
 因みにここでこのディレクターさんの「来ると思えた」という発言を受けた後、「風」のSEが挿入されています。なんか久しぶりですね、「風」。「風」が吹く、というのは彼女たちの何かの始まりを意味するものとして「海へ出るつもりじゃなかったし」で描かれていた重要な要素です。その「風」が、今このディレクターさんとシャニPに吹いています。やはり何か、始まろうとしていますねえ。

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 一方4人の方では、小糸が「なんでこの企画になったのかな」と深刻そうに問います。雛菜は「そういう自分たちが見たかったんじゃない?」と言い、円香は「投票が本当ならね」「番組を盛り上げるために本当は最初から決まってたんじゃないの」と言います。まーだお前それ言ってんのかよ。
 しかし雛菜は「でもこれ本当に面白いのかな」とバッサリ言います。そして円香は「もし本当に投票で決まったんなら身も心も入れ替えてこいってことでしょ」と皮肉たっぷりです。ねじくれ過ぎだろお前。小糸はあんまり釈然としていません。ここで透と雛菜が台本でこの⑤の「由緒ある寺院で修行を積み、心身を鍛える!」という企画名を確認しますが、雛菜は「心身ともにこれ以上ないくらいだけどな~」と反応しています。雛菜つよい~!!円香は「そういうとこじゃないの」と返しています。別にいいじゃないの健康で。

 ここで小糸が「なぜこの企画になったのか」というのを気にしているのは、当然これまで見えた初冠番組に出演してしっかりとした結果を出したいというプレッシャーの部分も大きいでしょうが、先述した「やらせ的」要素アリの体当たり番組であるというのもひとつの要因であると考えます。
 この「やらせ的」要素アリであるというのは厄介で、言ってみれば「ガチガチに台本の組まれた流れが無い」のに、「視聴者や番組からタレントとして求められるような何かはある」という状況になってしまうのです。そしてこの「ノクチル成長中(仮)」という番組のコンセプトは文字通り「成長」です。彼女たちにはそういう状況の中何かしらの「成長」を求められています。
 そして小糸は、車中でシャニPに語ったように、「成長したい」と強く思っているわけなんですが、「成長」のために訪れたこの番組ロケでの「修行」は、必ずしも企画名通りの「心身を鍛える」だけのものではありません。ただ真面目に修行しているだけの様子を映したって面白いわけがないのです。あくまで彼女たちは「メイク」した可愛らしい魅力的なアイドルとして、この「修行」を通して「成長」することが番組や視聴者から求められているのですが、その「成長」というのが具体的にどういう事なのかわからないのが小糸は不安なのだと思います。
 雛菜のようにいつものマイペースでやりたいようにやるほうが良いのか、円香のように「やらせだ」と割り切ってそれっぽく求められてるそうな姿勢で臨むのか、どういう在り方がノクチルや小糸の望む・望まれてる「成長」なのか、彼女はその答えが出せません。

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 外ではまだシャニPとディレクターさんの会話が続いています。ディレクターさんは「ウチはWEB番組だから制約も少ない」「自由にやってもってそれが面白ければ一番いい」という風に言いつつも、「まさか最初がお寺ロケになるとは思わなかった」と言います。「ウチの投票はガチだから」と前置きしつつも、「彼女たちはこういうのが求められてるんですかねえ」と少し不思議そうで、シャニPも特にこれと言った解答は得ていないようです。それでも「風」は吹きました。この問答の後、4人は外に見える「海」の存在を確認し、「海で遊べるかな」なんて言い、シャニPとディレクターさんはもしかしたらレギュラー化の可能性もあるとモチベーションを上げながら「面白くするのが我々の仕事」「いい仕事にしましょう」と意気込み、第一話は終わりました。「風」が吹き、「海」が見える…彼女たちは、小糸は答えを出せるでしょうか…頑張れ、小糸。

第二話「普通」

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 さあ収録スタート!ディレクターさんは「自由にやっていい」と言っています。先ほど言っていた通り、自由に動いてもらう方針のようですね。しかしながら「進行のカンペは出るからそれは流れに沿って」とも言います。やはりこういうとこなんだよね~難しいのは。100%自由でもないし、かといって不自由でもないのです。

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 透はさっそくカンペを見ますが、「カンペの字が小さくて」なんて言ってカメラに寄り、「浅倉 『まずは写経を体験させていただきます』」などと宣います。円香にもツッコまれていますが、その「浅倉」は読むなよ!やってることド素人じゃねえか!!ほんと面白いなお前な。その後は円香がしっかり読み上げます。
 すると職員の方からの写経についての説明が始まりました。4人はここで写経の経験を問われていますが、小糸だけが「学校でちょっとやったことがあって」と発言しています。他の3人は経験がなさそうで、小糸だけ1人違う中学校に通っていたことも考えるとどうやら中学生の時に写経が授業に取り入れられていたという事になりますね。果たしてこの経験は活きるでしょうか。
 ここでいろいろと説明がありますが、「心の乱れは字に表れる」という説明の時に雛菜が「?」を発しているのが面白いですね。「服装の乱れは心の乱れ」みたいなものと同種の発言でしょうが、確かに雛菜はそういう考え方しなさそうだし、何より雛菜自身がそういう子です。表面的な立ち振る舞いだけ見てると雛菜の事は確実に誤認してしまいますよね。かつて私がW.I.N.G.編で雛菜の事を「怖い」と感じてしまったように!記号的にものを見てしまう思考の浅いオタクです…(反省)。

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 そうしてノクチル一行は写経を始めますが、(多分)絵面がクッソ地味。当たり前じゃい!流石に写経を面白おかしく見せるのはキツいですよ。しかもみんな結構真面目にやっています。「これ本当に面白いのかな」という雛菜の言葉がフラッシュバックします。
 そうしているとまず円香が写経を終わりますが、そのことに小糸は「早いし字もキレイ」とビックリしています。その後すぐに透が終わりますが、雛菜に「字ふにゃふにゃ~」と言われています。確かに透の字ふにゃふにゃしてそう。そしてすぐに雛菜も終わり、願い事には「雛菜幸福」と書いたと言っています。四字熟語みたいでわろた。書いて部屋に飾っておきたい。なぞるタイプの写経だったのに雛菜はやけに字を大きく書いたみたいですが、「雛菜のおっきい心が表れてるのかも」と言います。強すぎる。先程の「心の乱れが字に表れる」という話から考えると中々シャープな切り返しですね。流石。
 小糸の方はまだ終わらないようで、書き損じをしてしまいます。そのことでとても申し訳なさそうですが、自分だけが写経の経験があるはずなのに他の3人よりも遅く、見せ場も無いというのがきっとまた少し小糸にプレッシャーを与えている気がします。そしてそんな4人の様子を見たディレクターさんは「んー」「どうするか」と少し納得のいっていない様子。暗雲だこれ…たすけてくれ。

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 夕方、シャニPディレクターさんの先ほどのつぶやきを聞いて「スケジュール押してすみません」と謝罪していますが、ディレクターさんはスケジュールは大丈夫だと返します。じゃあどういうことなのかという話ですが、「ノクチルが悪いっていう話じゃない」という前置きをしつつも、「自由にやってとか言った自分たちも悪かったかもしれない」と言います。うーむどういう事でしょう。「何か問題があれば指摘していただけたら…」とシャニPも申し訳なさそうです。
 ノクチルの方はというと、そろそろご飯の時間なのにシャニPがいないという事で、探しに行こうかという流れになっています。嫌な予感すんなあこれ!!聞きたくないこと聞くやつじゃん!!

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 先ほどの話の続きで、ディレクターさんは「むしろ逆」「思ったより真面目で、語弊があるかもしれないが普通だ」「もっと突拍子もない事するかと思ってた」「バラエティーの子たちかと思ってた」と言います。お前も表面だけ見てた浅いオタクかァ…?と言いたいのですが、これは致し方ありません。我々オタクやシャニPはあの「天塵」の生配信の裏側で何が起こっていたのか、そしてそのことが彼女たちをああいう行動に走らせたという事を知っています。しかしこのディレクターさんがそのことを知る由もなく、彼にとっては生配信でいきなり童謡を歌いだしたりするやべーやつらであるという事しかわからないはずです。そしてそういう在り方をバラエティー的に期待してオファーを出すというのも至極当然の事という他ありません。流石にシャニPも謝るしかないですね。
 一方でこのディレクターさんは「でも『仲良し』が売りってわけでもなさそうだ」「魅力を生かすにはちゃんと理解しなくては」という事を言います。この人まだあきらめていない!冷静に「番組のコンセプトが『成長』だから、視聴者は何か事件が起きたりしてそれを乗り越えるのが見たいみたいな期待があるんじゃないかと思ってた」と述べています。しっかり真面目に考えて番組作ってますね。

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 そんな言葉を受けてシャニPは若干不安そうにしますが、ディレクターさんは言葉を待たずに「ヤラセやるつもりはないから安心してください」と言いました。いややっぱいい人っぽいなこの人。そして最後に「本当のファンの人たちっていうのは、あの子たちが何してたって、ただ、立って笑ってるだけでいいんだと思います」と言い、時間を取らせたことを謝罪するシャニPに「ノクチルもだけど、283さんも相当真面目じゃないですか?」なんて軽く冗談を言いながらも、「あの子たちがどう輝くか、自分たちがどう輝かせるか、それが仕事だからお互い頑張りましょう」と〆て夕飯に向かいました。ディレクターさんも大概真面目だと思いますけどね。
 いやーしかしこれは…ぐうの音も出ませんでした。正直な所、私自身も「立って笑っているだけでいい」と思ってしまう側の人間です。少なくとも私が向こうの世界の住人としてノクチルのオタクをやっていたら、「推しが生きてるだけでいい」みたいな思想で生きてるでしょうね!でも本当にそれでいいんでしょうか?小糸は、「成長したい」と、そう述べていました。ただあるがままの彼女たちを願う、それは一種のエゴなのでは?そもそもずっと変わらずあるがままなんてあり得るのか?何も変わらず「笑ってるだけ」って当人たちにとってそんな簡単な事だろうか?そんな反省がのしかかってきます。流石は由緒ある寺だぜ…画面の向こうのオタクに内省を強いるとは…もぅマヂ無理。写経しょ…。

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 そして嫌な予感的中!やはりシャニPを探しに出た彼女たちはこの2人が話していた内容を聞いてしまいました。あーあ!!なんでこうなる!!透はあくびをしているし、雛菜はあんまり気にしてなさそうだし、円香は「こんなところで話してる方が悪い」と相変わらずですが、やはり小糸だけは重く受け止めてしまっています。
 実際話の内容としては前向きでポジティブな感じだったはずなんですが、「成長しなきゃ」と感じている小糸にとって、「思ったより普通だ」と言われてしまったのが結構心に来るのでしょう。小糸は小糸なりに悩んで頑張っているんですが、どうにも結果に繋がらず、それは小糸に「成長できていない」「求められていることに応えられていない」という印象を与えてしまいます。なんだかとても歯痒いです…「天塵」の時と違って、誰も悪くないんですよね。むしろそのことが小糸に無力感を与えてしまっているんでしょう。お前のせいで~!とヘイトを向けれるクソ業界人がいた方が楽だった…やっぱ仮想敵って大事だな!(危険思想)

第三話「立っているだけでも」

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 さて夜になりまして、本日の撮影スケジュールは終了したようです。翌日の撮影も早いようで、しっかり寝るよう促されています。
 雛菜はお布団にダイブしています。たのしそう。雛菜も透もとても眠そうで、「がんばったからな~」と雛菜は言っています。実際彼女たちは彼女たちになりに頑張ってますよ。伝わり辛いだけで。多分。円香も眠いようでさっさと寝ると言います。

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 どうやら明日の撮影では「座禅」やるらしいですが、まあ定番という感じですね。「座禅中に寝ちゃったらどうしよう」とか「一回叩かれた方が目が覚めていいんじゃない」なんて話しながら、雛菜は周りに「起きてなかったら起こしてね」と頼んでいますが、円香は無視だし透はそもそも起きれなさそうという事で小糸に頼みます。しかしどうやら小糸は心ここにあらずで話を聞いていませんでした。小糸…相当思い悩んでいます。
 しかしここは小糸、冷静に「とりあえずみんなでアラームかけておこう」と提案します。小糸ホント真面目。雛菜は「10分前くらいで良いか」とめちゃくちゃギリギリな設定にし、円香に「寝起きすぐはむくんで見えるぞ」と行きの車内での発言をブーメランされていますが、「まあ自分はちょっとむくんでても可愛いからいいか」と言います。いやマジで強すぎる!どうやったら勝てるんだこれ。むくみ気味雛菜見てえ~。そうしてめいめいに彼女たちは布団に入り、就寝しました。

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 しかしどうやら透は寝付けていません。そのまま部屋の外に出たようですが、廊下で小糸に遭遇して驚いています。小糸もまた寝付けていなかったんですね。小糸はやはりまだ深く悩んでいて、目が冴えてしまった事で眠れなくなったようです。そして窓越しに聞こえる波の音を聞きながら、一人考え事をしていたのです。
 そして小糸は透に対し、「自分たちは番組に何を期待されているのか、どうすれば面白くなるのか、視聴者やファンは自分たちにどうなって欲しいのか、わかる?」と問います。先ほどからずっと見えている悩みですが、これを問われた透は一言も発しません。ここ、こういうゲームのテンポ的に考えてもとんでもなく長い間があり、しかも透の立ち絵が出ません。小糸ほど深くはないかもしれませんが、透もまた小糸と同じようにその問いについて考えることがあったんだろうと思いますし、それで寝付けなかったのかもしれません。しかしながら透は咄嗟の言語化能力が低いという事はもはや説明するまでも無いのですが、それをこうやって表現するのはほんとに巧みですね。凄いゲームです。

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 まだ廊下に残っているという小糸を残し寝室に戻ると、円香から声をかけられます。「起こした?」と問う透に対し「起きてた」と答えているので、円香もまた同じように悩んで目が冴えてしまったのかもしれません。なんだかんだで気持ちは一緒なの、幼馴染なんだなって感じ。
 普通に寝ているだろう雛菜を横目に、小糸の所在を確認しつつもう起きるまでの時間が無いという事でさっさと寝ることにしています。随分長く起きてたんじゃないこれ?大丈夫かなあ。
 結局の所、みんなで同じ仕事を受けて、みんなで同じ場所に来て、みんなで壁にぶつかって、みんなで同じ悩みで寝付けなくなってて、やっぱりそれが小さくて凸凹なこの子たちの在り方なんだなあと思います。ディレクターさんは「『仲良し』が売りって感じじゃない」と言ってましたが、こういう仲がいいとか悪いとかいう部分を超越した繋がり方が彼女たちの輝きの一部で、シャニPはともかく、このディレクターさんももしかしたらあの時の事件からそう感じる何かがあって「来る」と思えたのかもしれません。そしてそんなディレクターさんもシャニPも同じく、彼女たちを輝かせるために悩んでいます。みんな真面目、だからこそ全員が全員悩みの渦!さてどうなる?いい答えが出せるかな、出せると良いな。

第四話「理解」

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 朝です。小糸が飛び起きています。普通にギリギリになっちゃってんじゃん!まあ不可抗力でしょうが夜更かし気味だろうしね。円香は先に起きていたみたい。偉い。雛菜はまだ寝ているようで小糸に起こされています。おいおい。急いで仕事に向かいます。

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 さて昨日の夜確認してた通り、さっそく座禅を組んでいます。寝るだろこれ。透は相変わらずあくびをしていて小糸に注意されていますが、同時に「自分のせいで夜遅くまで起きる羽目になった」みたいに謝罪しようとしいます。いや多分小糸のせいじゃねーから(バカデカ擁護)!透は透で色々考えてて寝付けてなかったんだよきっと。
 というところで唐突に「いった~~~い!」と雛菜の悲鳴!!どうした雛菜!!どうやら警策で叩かれたようです。おお…座禅だ…。雛菜は座禅中に寝落ちてしまったらしく、円香も「完全に寝てた」と言っています。しかし叩かれた雛菜はなんだか楽しそうに「今のですっごい目が覚めたかも~!」と笑顔です。あまりにも強い。ポジティブ思考が服着て歩いてんのか?

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 座禅が終わって、シャニPはすぐに雛菜に駆け寄り叩かれたことを心配しています。いい男だなお前は本当に。しかし雛菜は「自分が寝てたのが悪いから叩かれても仕方ない」「叩く人もそれが仕事だ」なんてとても15才だとは思えない達観した言葉を述べます。うおお…こいつもう寺で修行する必要ある?と圧倒されそうになりますが、この「叩かれる」というの意味深じゃないですか?
 ここでは当然警策で背中を叩かれたという物理的な話ですが、雛菜はこちらの世界でも登場時結構叩かれたし、ノクチルに至ってはこっちの世界でもあっちの世界で叩かれた存在です。しかしながらその「叩かれる」というのを「自分(たち)が悪いから仕方ない」と言い、叩く人の事を「それが仕事だ」と言うのは、やはり「自分には自分の、他人には他人の事情や考え方がある」という雛菜のしあわせ理論武装的なものを感じ、そういう今までのノクチルの歩みに重なる発言であると思います。

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 しかし雛菜は続けて、「それに、プロデューサーたちはそのほうが良いんでしょ?」と言いました。死んだ。なんか謝りてぇ。ごめんよ雛菜。雛菜もまた小糸と同じく、「何が求められているのか、どうすれば面白くなるのか」、それを考えていてくれました。雛菜はついさっきしあわせ理論武装を展開して「自分は自分、他人は他人」というスタンスを示したのにもかかわらず、ここで番組側の事情を斟酌するかのような発言をします。雛菜は時々これやるんだよなあ~ものすごく周りを見ているし、ドライなように見えてかなり周りに気を遣っていて、それがところどころに見えちゃうんですよね。
 そして雛菜は「バラエティー的に面白くなきゃダメなんでしょ」「アイドルは歌って踊れて面白くなきゃいけないしで大変、楽しいからいいけど」と言います。シャニPはここでのディレクターさんとの会話を聞かれてしまった事に気付き、もしかしたら雛菜がわざと叩かれるような真似をしたのではないかという事を心配しますが、雛菜は「それはない」「本当に寝てた、ヤラセなし!」と断言し、そのまま引き留めるシャニPを無視して立ち去ります。ん~どうだこれは?雛菜は割と都合が悪くなりそうだと早々に居なくなることあるから怪しいなあ。

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 するとそこにはヌルっと円香。なんでこいついつも無音で現れるの?円香は「昨日の2人の話響いていた」「聞くつもりが無くても聞こえてしまうくらい」と皮肉たっぷりに話の全てを聞いてしまった事を告げ、さらには「自分も透も雛菜も気にはしていないから安心しろ」と追い打ちをかけます。当然そんなことを言われてしまえばシャニPの目に映るのは小糸ですね。ドギツい皮肉ですが、これは円香が小糸がそのことで強く悩んでしまっていることを知っているし、そのことを滅茶苦茶に皮肉りながらもシャニPに伝えているという事でもあります。やっぱ優しいな樋口お前な。
 シャニPは「こんなところで話すべきではなかったし、むしろみんなにちゃんと共有しておかなければならなかったことだったかもしれない」と謝罪します。が、円香の皮肉ラッシュは止まらず「手間が省けましたね。小糸ももう知っている」と言い、シャニPが「4人が悪いわけじゃないし、ディレクターさんも良いものにしようと頑張ってくれている」と言い訳じみた反応をすると、「ご安心ください。自分たちがどう輝くか、あなたたちがどう輝かせるのか、画面に映る以上輝くことは確定しているという事はみんな理解できましたから」と言います。
 これはかなりキツい皮肉ですね。俺までダメージ受けたわ。きっと番組側やシャニPからのノクチルへ対する歩み寄りが無い、と言いたいのです。第3話からここまでの流れを見るに、ノクチルのみんなはこの番組を作り上げるにあたって結構悩んでいて、何とか答えを出さなければと考えています。しかしシャニPやディレクターさんは「輝いている彼女たちをここでさらにどう輝かせるのか、それが俺たちの仕事だ」というスタンスに終始し、今まさに悩んで輝きをくすませている彼女たちの事を「理解」できていません。後方理解者面して悦に浸ってんなよと言ってきたわけですね。オタクに効き過ぎるからやめろ。まあシャニPもディレクターさんも苦心してるはずなんですけどね…そういうことも分かってて敢えてキツく言うんでしょうけど。
 そんな状態ではそりゃ良い撮れ高なんてあるはずも無く、そういう現状を円香はキッツい皮肉で教えてくれました。やっぱり「ただ笑って立っているだけでいい」なんてのはエゴです。俺みたいな限界オタクはそれでよくたって、それは「笑って立っているだけ」の身になる方の事情を何も考えていないんです。しかしながらそのことを「笑っておけばなんとかなる。アイドルって楽な商売」と皮肉った円香が伝えてくるなんてな…感情が爆発するわ。
 そうして円香は雛菜に呼ばれ、立ち去ります。雛菜によると次にやるのはお寺の庭掃除と海岸の掃除を二手に分かれてやるそうで、じゃんけんで組み分けしています。さあこの番組側とノクチルとの分断、どうするシャニP…?お前しかなんとかできないからマジ頑張れ。

第五話「かんむり」

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 お次の掃除の方はと言うと、お寺の庭掃除を透と雛菜が、海岸の掃除の方を円香と小糸が行う事になったようで、雛菜は「どうせ掃除するなら海の方が良かったな」なんてボヤいています。透は相変わらずあくび。曲がりなりにも撮影なんでしょこれ?大丈夫?雛菜は「昨日眠れなかった?」と透に問うとともに、「自分は布団入ってすぐ寝ちゃった」と言っています。

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 一方、円香小糸ペアは夏の日差しの中しっかりゴミ掃除をしつつ、さすがの小糸もあくびをしてしまっています。円香に体調を気遣われていますが、いつものように遠慮と言うか謙遜と言うか強がりと言うかといったところの発言をすると、「じゃあ頑張って」と冷たく話題を切り上げてます。なんでそういう感じになっちゃうの。
 再び透雛菜ペアに戻り、そちらでは「学校の掃除みたい、これじゃあ学校とやってること変わらないね」と言い、透はその発言を受けて「そういえば今度外の掃除当番まわってくるんだった」「雛菜にもそのうち回ってくるよ」と言っています。出たな、「まわるもの」。かなりしれっと出てきましたが、この物語の中ではあまり大事じゃないかも?いやそもそも「まわるもの」に拘ってる精神異常オタクは俺くらいのものだから意味がある描写かどうかも分からないんですけどね!!
 ただ、ここまで「天塵」は円香の語り、「海へ出るつもりじゃなかったし」は透の語り、そしてこの「さざなみはいつも凡庸な音がする」が小糸の語りだと考えると、次はまず間違いなく雛菜の語りになるだろうという感じがするので、「当番が回ってくるよ」という透の発言はちょっと意味深ですね。

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 海の方では、円香が水を貰ってきて小糸にも渡しています。優しいなぁお前は本当によ!言葉や態度と裏腹過ぎるだろうがよ。そうしてしっかり掃除に勤しむ二人ですが、小糸によるとあまりゴミは落ちていないらしく、円香は「普段からお寺の人とか近所の人が掃除してるらしいから」と言っています。しかし次に円香は「それでもひとつも無いわけじゃない」と言いました。如何にも円香という感じです。このゴミ拾いという状況での発言として見るならばそれは円香がひとつのゴミも見逃さない完璧主義者的ゴミ拾いガールであるという感じになりますが、拡大解釈すると円香のそういう「普通見落としてしまうような機微でも見逃さない」という部分を表しているように思います。G.R.A.D.編でシャニPに「聡い」と評価されていた円香の特質だと思います。そういう部分があって、このストーリーでも円香は小糸の悩みなんかも敏感に察することが出来るのでしょう。そんな円香の発言を受けた小糸はビニール袋を見つけています。

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 さてお寺組の方はというと、しっかり掃除を終えたようで雛菜も達成感を感じ、透も「グー」と言っています。透のグー好き。透はその「やってることが学校と変わらない」地味な掃除を終えて「やばい、楽しいかも」と満足気ですが、雛菜に「海じゃなくてよかったの?」と問います。これ!相変わらずの言葉足らずですが、透が空気も読めない気の遣えない子であるというものを否定してくれます。透はここで「案外お寺の掃除するの楽しかった」と自覚しましたが、その瞬間すぐに「自分は楽しかったけど雛菜は楽しめたのかな」という心配をしたのでしょう。透は透で実はちゃんと周りの3人の事考えてあげてますよね。
 そんな質問に雛菜は「海なら良かったけど、こっちで透とお話しできたからこっちも良かった」と答え、「自分には楽しくないことがあまり無い」「本当に楽しくないことはしないよ、透先輩も知ってるでしょ?」と言います。いつものしあわせ理論武装的ですが、やはり前者の「自分には楽しくないことがあまり無い」というのが大事な気がします。この発言、捉えようによっては「多少楽しくないことでも楽しいことに出来る」みたいな意味を感じてしまいます。つまり無理やりにでもポジティブに捉えることが出来るという事なんですが、なんか雛菜のそんな感じの言動、ここまでに何回かありませんでした?
 例えば写経の文字が大き過ぎたのを「自分の広い心が表れているから」と言ったり、警策で打たれたのを「目が覚めてよかった」と言ったことです。この辺の雛菜の言葉は雛菜つよい~~!と茶化してギャグ的に見ることもできますが、少し冷静に見てみると、そういう色んな出来事を無理やりにでもポジティブに捉えようと、物事の受け取り方を捻じ曲げているような印象を受けてしまいます。それはポジティブ思考だと言えば聞こえはいいですが、一周回って頑固とでも言ったほうが良いような気がするし、15歳の少女には負担の大きなスタンスな気がします。透はそれをどこか分かっていて雛菜の事を心配して見せたのかもしれません。「透先輩も知ってるでしょ?」と雛菜は言いましたが、透が「知ってる」のはそういう上辺の雛菜だけじゃないんじゃないかなあ。

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 海岸の方では、小糸が「自分もゴミを何か見つけなくちゃ!」と気合を入れ、円香に「ないほうが良いけどね」と言われています。その通り。でも小糸は自分の行動の成果を、「成長」を求めています。
 というところで、小糸は砂浜の中に小さく煌めく何かを見つけます。手に取ってみるとそれはなんと王冠!瓶の飲み物の。一瞬光ったそれには、見たことのないロゴと英文が記載されており、「海外から流れてきたのかな」なんて海の向こうに思いを馳せます。円香は「私たちが知らないだけかもね」と言っています。なんだか閉鎖的な彼女たちと、まだ見ぬ広い海の対比を感じさせますね。いつか飛び出していけるかな。
 お寺の方では今度は逆に雛菜から透に「掃除楽しかった?」と聞いています。透は相変わらずぼんやりはぐらかしていますが、雛菜は「自分のすきな人が楽しいと自分も楽しいから!」と言っています。いいね、グー。やっぱり雛菜は周りの人の事考えてる、というかこれはむしろ他人のしあわせが自分のしあわせに繋がるんだと言ってるようなもんで、最近ではもう初期の頃に感じていた「自己中心的」だなんて印象はもうパリッとさせられてちょこ先輩のお腹に消えましたね。

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 海岸組の方もすっかり掃除は終わったようで、「少しでも海が綺麗にできてよかった」と小糸は達成感に包まれて笑顔を見せています。ようやく笑えたね…「よかったね」と樋口も無表情に祝福。仕事が始まってから小糸はずっと悩み続けて全然笑えていませんでしたよね。
 小糸はしっかり掃除できたことで気分が晴れているようですが、「でもゴミ拾いしてるだけで何も面白いことなかった、大丈夫かな…」と心配しています。まあつまんないでしょうね(無慈悲)。こんなの面白くなるわけないですが、円香は「掃除して海岸も心も綺麗にして来いって企画だから間違ってないでしょ、全然面白くないけど」と、どこか満足気に言います。でもそれスタッフとかカメラの前で言ってるんだとしたら相当だぞ。
 円香の言う通り、こんな全然面白くないただの地味な「掃除」の時間によって、小糸のみならずみんな少しは心の蟠りを「掃除」できたんだと思います。4人ともここに来てようやくリラックスして楽しそうにしている感じがしますよね。砂浜に埋まっていて一瞬だけ光ったかもしれない「王冠」の持っていた小さな輝きが彼女たちの輝きなんだろうな、きっと。それをこの「学校と変わらない」時間に4人は取り戻しました。

第六話「結局」

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 さあ次の企画はというと、どうやら廊下の雑巾がけで競争するみたいです。おお…ようやく映像映えしそうな企画が来たな…。実際やるとクッソ疲れるやつ!これもまた「学校と変わらない」ノリの掃除と言ってもいいでしょうね。勝った人にはジュース奢りだという事になり、透も円香も乗っかっていますが、小糸だけはちょっと気後れしています。その「ジュース奢り」のために雑巾がけするというのは、言ってみれば煩悩的で、それはやっぱり「修行」であることを気にしている優等生の小糸的にはまだ少し抵抗があったのかななんて思います。
 しかし雛菜の「なんでも楽しくて面白いほうが良いでしょ?」という言葉に少し驚きつつも、得心がいったか小糸は笑顔でそれを受け入れています。なんかいい流れ来てますねこれ!みんな雑巾がけレースにやる気です。いけいけ!学校で仲良く遊んでるみたいに生き生きとしててくれ。

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 レースを終えた4人はぶっ倒れています。雑巾がけは全力でやるとマジキツい。そうまでなっても小糸は「廊下綺麗になったよね」と言っていますが、雛菜は「今たぶん誰もその事気にしてない」と息も絶え絶え、みんなで休憩に入ります。そしてここで報酬カードのイラストが出て、遠い海を眺めながらレースの結果についての話題になりますが、流れで小糸が1着だったという事になります。小糸自身は自分だと思ってなかったみたいですが、こうして周りの3人が小糸の事を立ててあげるのはなんだかもういつもの事という気すらしますね。
 しかし小糸は商品のジュースを遠慮し、深く噛み締めるように「みんなでこうやって楽しかったから、それだけでいいや」と言います。これ一種の悟りです。流石は由緒ある寺。続けて小糸は「この番組は面白かっただろうか」「ファンや視聴者が選んでくれたものだから、しっかり成長したところを見せたいって思ってたけど」「結局あまり変われてない気もする」とずっと悩んでいた心情を吐露します。この悩みは結局ここまでで解決したとは言えないのでしょうが、ここでそれをちゃんと3人の前で言えたという事が、小糸の蟠りが少しは綺麗になったという事のような気もします。やっぱりこれお寺での「修行」の効果でしょ間違いなく。

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 すると雛菜が「自分はそもそも変わりたいと思ってないしな」と切り出し、「今の自分のままでもすきになってくれる人がいるし」「誰かに定められた『正しい』に従う事を成長って言う?」と言い放ちます。いやもう本当に強すぎる。ゆるふわカワイイ15歳の思想じゃないよ。透も「おー」と言っています。そうして「自分がこういう風になりたいって思うようになれればいいんじゃないの?」といつものしあわせ理論が飛び出します。
 その言葉を受けた小糸が「そうだけど、でも…」と反論しようとしたところ、雛菜はそれを遮って「だから小糸がみんなの求める小糸になりたいなら、これからそうすればいいんじゃない?」と言ってあげました。

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 あ”ぁ…(絶句)。凄い。流石としか言いようがない。この言葉を受けた小糸は何か感じるところがあったようです。円香は「この番組のタイトルは『成長中』で『(仮)』だから次でいいんじゃない」とよくわからん屁理屈をこね、雛菜は「やるならレギュラーがいい、これから成長するかもしれないし」と前向き、透も「次があるなら(また挑戦しよう)」と言った感じで、彼女たちはみんな「次」を見据えています。
 きっと、小糸は今までの人生の中で「大変な思いをすること」にあまりにも慣れ過ぎていたんじゃないかなと思います。分かりやすいのは高校受験で、きっと小糸は受験に臨むにあたりみんなと同じ高校に行くために必死に勉強して、そしてなんとか無事受かるという「結果」を出せています。小糸は今までそういう風に「大変な思い」をして「結果」に繋げようという事を沢山してきたのだろうと思いますが、それはすなわち「大変な思いをしなければ結果は出ない」という意識に囚われる形になりかねませんが、実際に小糸はそうなってしまっていたんだと思います。
 そんな小糸はこの番組において、周りに求められる「結果」としての「成長」をしなくてはならない、そのために「大変な思い」をしなくては、というプレッシャーがあったのでしょう。つまり小糸にとってこの「修行」は本来「大変な」ものであるべきで、そういうのが求められているべきものでした。しかし実際は特に厳しい思いをするような台本なんかも無く自由にやれと言われ、ノクチルはノクチルでいつもの緩い雰囲気、しかも番組も全然盛り上がらないし全然「成長」できた感じもないものだから小糸は強く悩んでしまいます。

 しかし小糸も何とか円香との「掃除」を通してそういうモヤモヤを多少なり取っ払えています。そう思えた理由は「海岸を少しでも綺麗にできて達成感があった」「みんなと一緒に臨んだこの仕事が楽しかった」というただそれだけ。小糸は「結果」を焦るあまり、そういう「楽しい」という感覚を失ってしまっていましたが、それはやはり先述した「大変な=楽しくない思いをしなければ結果に繋がらない」という意識によるものだと思います。ですが小糸はここで「失敗しちゃったけど楽しかったからそれはそれでいいや」と思えたのです。
 そこでそういう小糸が「楽しい」と思えた気持ちを一瞬で察したかのような雛菜の言葉ですよ!雛菜は「その大変な思いをしてでも周りに求められる自分になりたいっていうのも『楽しい』なんじゃないの?」って言ってあげたんだろうなという気がします。実は「大変」「失敗」と「楽しい」は両立するんですよね。「メイクされた可愛いアイドルであること」と「お寺での修行」が同時に成立するように。
 「大変だったけど、失敗しちゃったけど、楽しかった」と、雛菜の言葉とこの仕事での自身の体験を通して小糸はそう気づけたはずです。その上で雛菜は「これから」そうすればいいと「次」へのステップの背中を押し、透や円香もそれに乗っかってきています。素晴らしい。雛菜は小糸の事本当によくわかってあげてるし、上級生2人もこうやって支えてあげられますね。いい関係だなあ(しみじみ)。

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 そうして4人が外に出ると、急にシャニPが「俺からのジュースの奢りだ!」と突然飲料をもってやってきます。図らずもレースの賞品持ってきたな!ナイスタイミング。ついさっきみんな一緒にひとつのゴールにたどり着いたもんね。相変わらず円香は「罰ゲームでも受けてるのか」とシャニPを皮肉っていますが、シャニPによると4人に対する労い、そして「みんなの事を分かりたいという気持ちの表れかな」という事らしく、透と円香と雛菜はそれを受け取ります。このセリフからもシャニPは彼女たちに対する歩み寄りや理解が足りていなかったという事を自覚できましたね。えらい。頑張れ。
 しかし小糸だけはその受け取りをちょっと強めに拒否します。どうした!?グレ丸小糸か…?と思っていたら、小糸は意を決するように「ジュースの代わりに、この番組の『次』が欲しい」などと宣いました。泣いた。それでいいんだ小糸。小糸には、みんなには「これから」が、「次」がまだまだあるんだ!

エンディング「凡庸な音たち」

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 さてエンディングでは小糸が学校に居て生物の授業を受けています。「オーキシン」という植物ホルモンの話が少し描写され、「茎の成長速度を調節する」「光の当たる側と当たらない側とで…」なんて言う高度な話をしています。俺これ高校生物でやった記憶ない…文系だから許せ。というところで突然誰かのスマホがなっちゃいます。気まずいやつ。どうやら小糸のスマホのようですね。

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 どうやらそれはシャニPからの電話だったようで、小糸は「いつもは授業中に電話してくることないのに珍しい」と言っています。しかし雛菜は「自分は授業中によくシャニPにチェインするけどな」と。ちゃんと授業受けなさい雛菜。小糸はまだかけ直してないようで、4人で集まってかけ直すことにしたようです。
 みんなが一緒であることを確認したシャニPは、「例の番組が配信されたことは知ってるよな」と切り出します。どうやらもう配信するところまで行ったようですね。そしてシャニPによるとその番組の週間ランキングは「24位」。どういうランキングなのかよくわかりませんが、シャニPによると「健闘したと言っていい」らしく、雛菜は「視聴率2%じゃなかった」と言っています。

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 そしてシャニPは「色々判断してレギュラー化の話は一旦無くなりそうだ」と告げます。残念…。まあ内容が無いようだったしなあ(激ウマギャグ)。小糸もしょぼくれます。そんな空気を察したか円香は即電話を終えようとしますが、ここからが重要なんだとシャニPは言います。
 シャニPによるとあのディレクターさんから直々に連絡があって、「今度はみんなの意見を取り入れて1から番組を作りたい」「もう1回いいもの作って、今度こそレギュラー化したい」という申し出があったというのです!そしてシャニPは小糸に「思ってたのと違う形になったかもしれないけど、約束してただろ、次」と伝え、小糸は嬉しそうです。よかったなあ(感涙)。シャニPはまず真っ先にこのことを小糸に伝えたくて、授業中であるにも関わらず電話してしまったのでしょうね。可愛いなこの男。
 たとえ失敗したとしても、「これから」「次」を信じて前に進もうとしていたのは小糸達だけでなく、シャニPもディレクターさんも一緒だったんですよね。しかもここでディレクターさんから「みんなの意見を取り入れて」という風な形でオファーが来ているのも、ディレクターさんもシャニPと同じくノクチルに対する「理解」が足りなかったのだと反省できたという事なのでしょう。というかそもそも、ディレクターさんは第2話で「魅力を生かすには理解しないと」という発言をしているので、本当はきっとそうしなきゃと思っていたんでしょうけど「天塵」での事件の強烈な印象や彼女たちの閉鎖的な雰囲気がそれを阻害してしまった部分もあるかと思います。

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 とどのつまりノクチル側からの歩み寄りだって足りてはいなかったのだろうと思いますが、ここで小糸が「次」を望む姿勢を見せ一歩踏み込み、同じ気持ちを持っていたシャニPやディレクターさんを呼応させ、小さいかもしれないけど確かに彼女たちを前進させました。
 前に進み始めた彼女たちを急かすように時計の針は動き、昼休みが終わっちゃうと焦りながら3人は例のレースの賞品であるジュースを小糸に買おうという話になっています。きっとこれはあのレースの事であると同時に、誰よりも強く「次」に行きたいと願って前を走り、ノクチルに新たなチャンスをもたらした小糸が誰よりも先頭を走っていたという事でもあるでしょう!
 そんな小糸のために、小糸に引っ張られるかのように3人も走り出します。駆けていく4人の背中に通りがかりの大人は「そこの幼馴染4人組!廊下は走るなよ」と注意しますが、彼女たちはもう走り出しました。もう止められない彼女たちの背中は、爽やかな潮風が、小さなさざなみが押しているのだろう、そう思わせて「さざなみはいつも凡庸な音がする」は幕を閉じました。

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まとめ

 さて、ノクチルの記念すべき3つ目のイベントストーリーでした。みなさんはどんなもんだったでしょう。正直このイベントが始まるまでの告知があまりに入念過ぎたせいでとんでもない内容のやつが来るんじゃないかと思ったんですけど、意外と普通の軽め、いわば「凡庸」な物語でしたね。そういう物語の起伏の少なさは今となってはノクチルらしいってな所ですが…。
 まあそんなことを言ってもまたグダグダと色々深読みしたことを吐き出します。まず個人的に強く感じたのは、この「さざなみはいつも凡庸な音がする」(以下「さざ凡」)という物語は小糸と雛菜のG.R.A.D.編をベースに作られた物語であるという印象です。

 まず雛菜の方から考えます。彼女たちが挑むこととなり物語において中核の舞台となる「ノクチル成長中(仮)」という番組についてですが、私はこの番組の構成に「やらせ的」な要素があるとして読みました。実はこれ、もうすでに一度雛菜が扱っているテーマではないですか?
 お察しの通り、この番組は雛菜のG.R.A.D.編に出てきた「これは恋ではありません!シーズン3」と雰囲気が似ているんです。この「恋ませ」は「青春ジャーニー♡リアリティショー」というジャンル?でしたが、その「リアリティ」というのはこの記事で書いた「やらせ的」と同じ意味と私は解釈します。大まかに台本があるが、細かいところまで固められてはおらず出演者側次第の遊びがある。100%リアルでもなければ100%フィクションでもない、それが「リアリティ」「やらせ的」です。
 そしてG.R.A.D.編でも雛菜はそのリアルとフィクションの狭間で自分がどうあるべきなのかという部分で悩んだし、その収録後も自分にも「すきな人の事が自分の全部になっちゃってる」ファンがいるかもしれないという気付きから、もう一度同じ悩みにぶつかります。

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 この「さざ凡」で小糸、そしてみんながぶつかった悩みも似たようなものだと思います。ディレクターさんの言っていた「視聴者は何か事件が起きたりしてそれを乗り越えるのが見たいみたいな期待があるんじゃないか」というのはフィクション的な方向への期待であり、一方で「本当のファンはただそこに立って笑っているだけでいいと思うだろう」というのはあるがままのリアルな方向への期待ですが、その狭間に彼女たちは置かれました。そういう状況で「自分たちは視聴者や番組に何を求められているのだろう、そのために自分たちは何をすべきだろう」という疑問が彼女たちを悩ませます。
 しかしながら、そういう蟠りを彼女たちは最終的に「楽しかったから良かった」で片付けました。それは当然投げやりな意味じゃなく、凄い悩んだし上手くいかなかったけど、それでもなんだかんだ最後までやり遂げた事が「楽しかった」という事です。
 これはまさに雛菜のG.R.A.D.編的で、「アイドルも自分のこうしたいという思いも諦めない『市川雛菜』で居たい」という姿勢や、「自分が自分のためにやってることを見て、それでしあわせになってくれる人がいたらいい」という在り方です。G.R.A.D.編の決勝直前、シャニPは「勝ち負けなんてもうどうでもいい」と言っています。勝とうが負けようが、そうやって前に進むためにもがいてきたことが「楽しい」と思えたらいい、それを見た周りの人たちがしあわせになったら更にいいというのがこの雛菜式しあわせ理論です。そういう考え方あってこそ雛菜が小糸に掛けた「だから小糸がみんなの求める小糸になりたいなら、これからそうすればいいんじゃない?」という言葉の重さも増すってものです。失敗したって楽しいって思えることはあるんですよね。

 さてもう一方の小糸G.R.A.D.編的な部分ですが、大事なキーワードは「理解」「もう一度」です。小糸のG.R.A.D.編ではシャニPがこれでもかってくらいのバッドコミュニケーションを連発して小糸との間にクソデカ亀裂を作ってしまい、俺の胃にも穴が空きそうな思いをする羽目になりました。
 この事件の根本にあるのは、「小糸もシャニPも結果を焦り過ぎていたという事」、そして「お互いの『理解』が足りていなかったこと」です。小糸はこの「さざなみはいつも凡庸な音がする」と同じように「結果を出さなきゃ」と焦り、それに引っ張られ過ぎたシャニPも勇み足になってしまいます。そしてシャニPは「小糸がSNSに自分のレッスン姿を上げられるのを嫌がっている」という事、小糸は「シャニPが小糸の魅力を少しでも伝えなければと頭を悩ませてああいう行動に出てしまった」という事を、お互いに理解できない状態で走り出してしまいました。
 これはこの「さざ凡」でのノクチルとシャニP及び番組側との乖離の構図と同じです。小糸そして他の3人もこの仕事にあたってどうするべきなのか、何を求められているのか分からず、シャニPやディレクターさんもまた彼女たちに何を求めるべきなのかという事が分からないままに進行した結果、制作は上手く回らなかったわけです。

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 そういう断絶が生じてしまっていることをシャニPは円香からクッソキツい皮肉で教えられたわけですが、シャニPは出来る男なので当然その意味を理解し、ジュースを奢って「お前たちの事を理解したい」と歩み寄りました。その直前、ノクチル側も「これから」「次」があるならもう一度やりたいという風に感じ、小糸は「次」が欲しいとシャニPを通して番組側に一歩踏み込みました。そして最終的にはディレクターさんも「みんなの意見を取り入れてもう一度」という風に言ってきましたね。
 これもまた小糸のG.R.A.D.編的で、小糸とシャニPに生じた亀裂を修復するために必要だったのはただ「お互いの気持ちや思いを確認する」という事だけでした。2人は自分たちがお互い間違っていたこと、相手の事を考えられていなかったことを謝り、そして再度手を取り合ってG.R.A.D.に挑もうとしました。つまり「お互い『理解』し合い、『もう一度』やろう」という事で、これはこのディレクターさんからの提案である「みんなの意見を取り入れてもう一度」というものと同じです。
 これは小糸のG.R.A.D.編と違って、シャニPや番組側はまだ彼女たちの事を理解できていないという事でもあるんですが、そういうお互いの「理解」の場を設ける、お互い歩み寄るというところまでは行ったんですよね。それはきっとうまくいくんじゃないかな~。いってくれ!(願望)

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 とまあそういった感じで、小糸と雛菜のG.R.A.D.編が土台にありそうだなと言った感じなんですが、それらの持つテーマ性をノクチルというユニットだけでなく、シャニPや番組側も同じテーマを同じ舞台で突き合せたという印象です。そして、そういう状況になったという事の持つ大きな意味はやはり、ノクチルが「外部」に手を伸ばしたという事です。
 これとんでもない深読みオタクの限界妄想なんですけど、この「ノクチル成長中(仮)」で視聴者投票の対象になった5つの内、①~④は実はそれぞれノクチルの4人に対応してるのでは?という風に思いました。②の厳しいマナー云々は円香っぽいし、③は言わずもがな雛菜だし、④の勉強合宿は小糸です。①はまあ…透と言えばジャングル「ジム」だから…(苦しい)。という風に無理矢理こじつけると、⑤は彼女たちの中には無い存在であった=「外部」にあった場所と言えます。そうであるとすれば、やはり結局最後まで4人とも「なぜ⑤になったのか=自分たちは何を求められているのか」という答えを出せなかったことも納得がいきます。

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 さらに大事なのは、「⑤がなぜ選ばれたのか=彼女たちに何を求めるべきか」ということについて理解できず、シャニPやディレクターさんも答えを得ていないという事です。これもまた番組が上手くいかなかったことのひとつの要因でしょう。第1話で2人ともその答えが得られていないであろうことが分かります。
 さらにさらに言うと、これも都合のいい限界憶測ですが、なんなら投票した視聴者やファンたちでさえも「なぜ⑤になったのか」という事はわかってないんじゃないかと思います。正直向こうのファンや視聴者の気持ちになっても、⑤にどういう気持ちで投票したのかよくわかりません。企画としては①~④の方が面白そうなんですよね。もしかしたら視聴者側もこの番組がどういうものか、ノクチルという存在がどういう存在なのか、よくわかっていなかったのかもしれません。それで妙に票が割れちゃって⑤になったってとこかなあ。

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 そう考えると、この物語は番組への臨み方の分からないノクチル、ノクチルへの臨み方の分からないシャニPと番組側が、そしてそのどちらのことも分からない視聴者の選んだ「お寺」という場所に一堂に会することとなったわけです。「なぜここに来たのか分からない」人たちだらけ、そういう迷える人々が「お寺」に集まったのはどことなく意味深ですね!今一度状況や自分を問い直すにはうってつけ。
 そうして⑤という彼女たちの外部にある場所、お寺に何故か辿り着いてしまったノクチルは修行を通して自分たちの在り方を見つめ直し、小糸の思いを尊重する形で「外部」に居るシャニPと番組側に手を伸ばすことになりました。一方でシャニPと番組側も⑤お寺という予想外な場所に辿り着いてしまいましたが、自分たちのノクチルに対する不理解を反省し再挑戦するという形でノクチルに手を伸ばしました。これは実際どうなのかわからないのですが、視聴者側もまた彼女たちの事が少しは理解できたんじゃないかな。24位という順位は「健闘した」らしいし、それなりに興味を持って見てもらえたんだと思います。
 この物語はそういうお互いに色々なことが「理解」できていない迷える存在たちが、自分たちの意識になかった⑤という「外部」に飛び込む羽目になって、その結果はあんまり上手くいかなかったけど、「修行」を通し迷いを捨て去って「次」を見据えるという構図になってるのかな、なんて思います。
 そういう流れを通して、最後にノクチルはその「外部」に手を伸ばすという結論を出しましたが、それは小さいようでとても大きなことです。今までの「天塵」も「海へ出るつもりじゃなかったし」も、結局彼女たちの内側での話しかしていませんし、それを踏襲するかのように第5~6話で彼女たちは彼女たちの中で問題を解決しました。
 しかし今回、とうとうノクチルは「シャニPや番組側と手を取り合おうとする」という選択をして物語は終わっています。これこそが「凡庸な音のする」「さざなみ」なのでしょう。実際の所、この仕事は失敗でしょう。レギュラー化も出来なかったし、順位も微妙だしで酷く「凡庸」な出来です。

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 しかし、その小さく「凡庸」な「さざなみ」は「次」をもたらしました。エンディングに出てきた「オーキシン」という植物ホルモンは、どうやら「光の当たらない方」へと移動し、そちら側を伸長させることで日の指す方へ植物を向かせる働きがあるらしいですよ!この「凡庸」でつまらない仕事にも彼女たちが頭を悩ませながらも真面目に取り組んだこと、シャニPやディレクターさんがこの仕事を良いものにしようと頑張ったこと、あまりうまくいかなくて日の目を見なかったこんな小さな仕事が、彼女たちを光指す方へ少し「成長」させた、そんな気がします。海岸で見つけた小さなゴミである「かんむり」のような「冠番組」は確かに輝きを見せ、海の向こうにあるものの可能性を感じさせました。
 進む先には「遠く遠くまで走れ」という人も、「ただそこに立って笑っているだけでいい」という人もいるでしょう。そのどちらも正しいし、どちらも正しくありません。そんな答えのない中で、悩みながらでいいから、確かな結果なんて出さなくたって、何度失敗したって、ただ自分たちで納得のいくように前に進んで欲しい。それが「いっぱい生きる」ってことだと思いますし、それがいつか海の向こうへ届くほどの大きな波を生むかもしれません。
 あのAmazonはどこにでもあるようなガレージから始まっています。松下電器だって最初はただの小さな製作所でした。あの765プロだって弱小事務所だったし、なんならアイドルマスターというゲームだって最初はゲーセンの隅っこにある凡百のゲームでした。ノクチルのこの物語そのものもまた目立たない小さな「さざなみ」なのでしょう。でもきっとそれは、そういうものたちと同じようにはじまりは、「いつも凡庸な音がする」。

感情置き場

 疲れた(悶死)。ごっちゃごちゃよ内容。なーにが「凡庸」じゃい!こういうのっぺりした展開の方が逆に思考の及ぶ範囲の方が大きくなって大変なんだよ。脳が壊れるわ。
 しかしながら、今回のお話はノクチルが外側に手を伸ばす選択をしたというのが個人的には重要なんですが、それをこういう起伏の少ない物語にしてきたのは多分わざとだろうなと思います。今後新たな海へ飛び出していく彼女たちの布石、というよりかはもしかしたら「思い出」みたいなものにしてくるんじゃないかという感じがします。
 ここに来て彼女たちはようやく外の世界に行くスタートラインに立ったという雰囲気ですが、それはもうきっとこれから「変わる」彼女たちが始まるという事でもあると思います。ノクチルの中だけで完結する世界観はもしかしたらここからどんどん終わるのかもしれません…まあそれでも結局彼女たちの関係とか奥底にある輝きは変わらないんじゃないかとは思うんですけど!!(願望)
 そういう風に思うと、このイベントが始まる直前でのツイッター乗っ取り企画で彼女たちの楽しそうな日常をこっちのインターネットに侵食させてひと夏の思い出を残したことや、この「さざ凡」と同日に実装された【ピトス・エルピス】樋口円香のフェス衣装によってノクチルの3周目衣装がとうとう4人がみんな同じ色でなくなることが確定してしまったことなんか凄く意味深じゃないですか?いつか俺たちオタクは数年後、この2021年の夏休みの終わりに見えたこの陽炎を思い出して、「あれが彼女たちが今までの彼女たちでいられる最後の『夏休み』だったんだ…」つって超ド級クソデカ感情になる未来、見えませんか?俺は見えてます…(絶望)。ただの杞憂だと良いんですけど、もしこの「さざ凡」がそういう風な流れにする布石だとするならば、こういう動きの乏しい「凡庸な」物語をぶつけてきたのはいやらし過ぎるだろう…いつものような凡庸な夏は決していつもの夏じゃなかったんだ…。

 ただやはり、私としては彼女たちに「いっぱい生きろ」と言いたいなと思います。今回シャニPとディレクターさんの会話の中に出てきた「本当のファンの人は彼女たちがただそこに立って笑っているだけでいいと思うのでしょう」という言葉はかなりグサリと来ましたが、それによって「いっぱい生きろ」というシャニPのメッセージもまたより深みを増した気がします。
 「いっぱい生きろ」というのは、例えば「芸能界の荒波に揉まれながら苦難や理不尽を乗り越えて成長しろ」という意味合いでもなければ、「ただそこで息をして笑って生きていればいい」というのともまた違うんですよね。そんな極端な話じゃなくて、色んな物事を体験して、それで悩んだり閃いたり、失敗したり成功したりしながら、最後にはそんな人生が「楽しかった」って言えるように生きていけってことなんだと思います。可能性に満ちた魅力的な彼女たちなんだから、やっぱりそうあって欲しい!と、よりそう思えましたので、私もいちオタクとして「お前たちがただ生きてるだけでいい」なんて甘えた見方をしないで、これからもしも彼女たちが変わっていくとしても、ノクチルの「これから」「次」を応援したいなと思いました。いっぱい生きてくれホントに!

 とまあ相変わらずのぐちゃぐちゃのまま終わります。このままいくと30000字越えちゃうから…。今月は多分ノクチルの新曲が来るし来月にはきっとノクチルのLP編もきてまた感情と脳が爆発させられるのが確定しているようなもんですが、我々もいっぱい生きていきましょう。それでは、またどこかの由緒ある寺で修行しながら会いましょう。それでは~。

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