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8/31実装【ピトス・エルピス】樋口円香を読む

 こん!!いれぶんです!!こちらは8/31に実装された【ピトス・エルピス】樋口円香の感想文兼怪文書となる記事です。以下注意点です。

・記事というよりかはただの自分用の感想まとめなのでいろいろ話が飛躍してる気がします。
・コミュ内容のネタバレを含みます。さらに今までのノクチル全体のコミュの内容を前提としつつ絡めるのでさらにネタバレと妄想が飛躍します。お気を付けください。
・私個人の好意的・拡大解釈および誇大妄想を含みますが、それらを押し付ける意図のものでありません。むしろ自分の考えとの違いを発見してより幅の広い解釈を見せてくれ…。
・ゲーム内プロデューサーのことは名前が分からんので「シャニP」と呼称します。

では以下本文となります。

【ピトス・エルピス】樋口円香のイラスト

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 なんだこれは…。そんな気持ちになりました。まず真っ先に思ったのは「シンプル」という感想です。皆さんご存じかと思いますが、シャイニーカラーズというブランドは他のアイマスブランドの現行ゲームの中でも、というよりかは現在サービスされている他の所謂ソシャゲと呼ばれるゲームの中で比較しても、とんでもなく絵が上手いゲームです。やたらと凝ったデザインや意匠を取り込み、時には常識外れとも思えるほど攻めた構図を使い、我々を何度も魅了してきました。
 しかしこの【ピトス・エルピス】はそういうイラスト部分としての「シャニマスらしさ」みたいな部分がかなり薄いと思います。アニメーションの部分から映し出されているのはただ立って何かの収録に臨むか何かしている円香の姿だけだし、イラストとなれば円香のバストアップ、あとは窓とマイクです。しかも円香の着ている服もかつて見たことのないほど白基調のシンプルなコーデになっています。いつものよくわからんブランドの微妙に厨二っぽいパーカーなんかはどうした?この服装デザインにも何か意味があるのでしょうか…。
 ただ、そういう風にシャイニーカラーズらしくないと思えるほどにシンプルなデザインであるからこそ、注目を惹いてしまうのは円香の表情です。ご存じの通り、円香はかなり表情に乏しく、感情を強く表に出すという事をまずしません。そのため、これまでのカードイラストの中でもほとんど無表情に近い顔でしか描写されていないはずなんですが、この円香のイラストやアニメーションでは何をどう見ても感情が顔に出てしまっています。それも「嬉しい」とか「楽しい」とかそういう明るい感情であるとは思えない思い詰めているかのような表情ですね。ぐぬぬ…。
 円香が今まで見たことのない顔をしている、しかもおそらくはアイドルとして必要な何かの上で…となるともうこの時点でカードコミュの内容が決して軽いものではないことを予感させます。お助け~!ノクチルに脳が壊されちゃうよ。

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 お次はフェスイラストの方です。よくわかんねえ。【つづく、】浅倉透の衣装と同じく、エナメル的なテカテカ加減とよくわからんデザインが謎の未来感と古臭さを両立させております。
 アニメーションの方では円香は高いところに居て、イヤホンをしながら歌う場面があり、通常イラストの方との関連を感じさせます。おそらくは歌の仕事なのかな?イヤホンをしているというのはどうでしょう…単純に音楽を聴いているだけと捉えるか、外界の音を遮断していると捉えるか…。「止まれ」の標識と「横断歩道」の標識が映し出され、円香がゆっくりと歩いて階段を降りる場面も印象的です。彼女は止まることを止め、歩みだしたのでしょうか。
 また、【つづく、】と同じように謎の文字列が挿入されています。「甘く 香しい まどろみ」という風に読めますね。円香は何もすることが無いと寝るタイプみたいなところがたまに見えていますが、そういう直接的な意味だけでなく、例えば【閑話】で見えていた「だからもう少し休憩」という発言だとかに見える通り、円香は何の生産性も無いけどどこか安心するような心地の良い時間を愛する傾向があるように思えます。「甘く香しいまどろみ」というのはまさにそういう時間を表す言葉のように思えてなりません。二度寝とかみたいなね。実際そういう時間はなんとも気持ちがよくて、ずっとこれで良いって感じちゃいますよね。
 そして!何より考えなければならないのはこの色!!今までのノクチルの1周目2週目の衣装を思い出してくださいよ。みんな同じ色してたでしょう。しかしとうとうここに来て円香と透の衣装の持つ色が全く違います。しかもこうしてみると透も円香もパーソナルカラーとしてデザインされています。そうなってくると当然次は菫色した小糸が来て、黄色い雛菜が来ることはほとんど確定しているし、それは「ノクチルのみんながそれぞれ違う色になった」という事です。ぐあー!!この時が来た…いやいつか来るかもとは思っていたけど…ここに来て彼女たちはとうとう「透明だった僕たち」に明確にお別れしたという感じです。そしてそれを決定づけたこのカード、何をどう考えても緩い内容なわけありません。助けて…透…円香…小糸…雛菜…ユアクマ…!

1つ目のコミュ「hibi」

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 さあ1つ目のコミュです。なんかテーンって音する某NHKの番組みたいな謎演出から始まります。もうヤバそう。シャニPが事務所を訪れたようですが、そこには円香が居ました。本来は歌のレッスンだったらしいですが、時間をずらすことになったらしく、事務所でテレビを見ながら朝食を取って時間を潰していたようです。

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 そのテレビではお笑い番組をやっていたようで、現在はコントをやっているようです。シャニPは「面白いなあ」と言いますが、円香はあんまりおもしろくないという風に言っています。ホントかなあ?シャニPに質問されたら本当は良く思ってるものでも「良くない」って反発するような奴だしなあ円香は。
 するとシャニPは何故か円香と一緒に番組を見ようとします。円香は当然ムッとしてテレビを消そうとしますが、シャニPに丸め込まれて結局一緒に観ます。シャニPはだいぶウケてるようで「面白かったよな」と円香に同意を求めると、「全然」「こんな下らないもので笑えるなんて羨ましい限り」とボロクソに言います。シャニPはともかくその芸人さんにも死ぬほど失礼だぞ円香。どうせ本当はそれなりに面白いと思ってるくせにシャニPと一緒の感想を抱きたくないから反発してるんだろ?厨二病め。

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 すると次の芸人さんが出てきます。シャニPもやはりこういう業界の人間だけあって事情はそれなりに知っているのか、その人がオーバーな一発ギャグが売りの現在人気急上昇中芸人であるという事を円香に伝えていますが、円香は何か食べているのか興味が無いのかうんともすんとも言いません…と思っていたら…

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 …えぇ!?樋口円香、「筋肉べろんちょ」に敗北。これ号外ニュースものですよ!こんな字面だけで下らないギャグであることが一目瞭然な芸にまさかのあのクールビューティー樋口がやられてしまい、口にものが入っていたせいか壮絶な噎せ返りを起こしています。
 そんな驚き桃の木山椒の木としか言いようがない状況、さすがのシャニPも「え!?!?!?」と凄い動揺を見せ、「今自分はどうすればいい?」「当人はテレビと関係ない風を装っているけどどうする?」「下手にフォローすれば逆に傷つけてしまうか?」みたいな逡巡を巡らしまくります。ここ選択肢が出ますが、選択肢次第では茶化して乗り越えようとしたら円香に「は?」って言われてコンマで謝罪するシャニPが見れて面白いですよ。シャニPのそういうとこ好き。これもうある意味で信頼関係が完成してると言ってもいいんじゃないの?
 吹き出してしまって色々汚れたらしく、とりあえずシャニPも上手くフォローしながら片付けをしますが、円香はどうしてもその芸人のせいでそうなったと認めません。まあつい直前に「こんな下らないもので笑えるなんて」なんてシャニPを皮肉った手前、こんな明らかに下らなそうなギャグで笑ってしまったとあってはプライドがば~りばりのギッタギタでしょうから無理もありません。そんま円香をみたシャニPは心の中で円香に謝罪し、「本当は楽しく見ていたんだな…」反省しています。やっぱり円香はそれなりに楽しんでこの番組を見ていたんですが、シャニPが隣に来たことで素直に楽しめなくなっちゃったんでしょう。ホント厨二。そんな厨二病にボロを出させた「筋肉べろんちょ」、有能。一発屋で終わらないでまた出て来てくれ、そしてまた円香を笑わしてやってくれ。

2つ目のコミュ「hako」

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 2つ目のコミュですが、また例の演出から入ります。1つ目のコミュをギャグ調にして油断させてからまたこれ。助けて!円香は何かを見つけたようですが、それが何なのかよく分からないみたいです。「開かない」と言っているので何か入れ物なのでしょう。そのくだりで画面に表示される文言を抜粋します。

それは 古い宝石箱だった
大切なものを仕舞うために作られた箱だった
宝石箱に鍵をかけよう
大切なその中身を誰にも気付かれないように
その中身は何?

 もうやばい。ノクチルに脳をやられ過ぎた経験から、このカードコミュは巨大感情にさせてくる展開をここから畳み掛けてくるに違いないと確信できます。(歴戦の兵士)

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 すると場面は切り替わり、円香とシャニPが一緒に事務所倉庫の整理をしているみたいです。透も一緒にやってた事あったよな…。ここでは円香の方がシャニPに指示を出してますが、確かに円香は整理整頓とか得意そうよね。
 円香は自分では判断できないものについてはひとつの場所に集めたようで、シャニPにチェックしてもらいますが、結局全部捨てることになっています。それをシャニPは「もったないけど」と言いますが、「未練がましい」と円香に非難されます。そこまで言うか?

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 円香は「そんなにもったいないなら家に持って帰れば」と言いますが、それは出来ないという風なシャニPに「足の踏み場も無いほど家もキャパオーバーしてるのか」と追撃します。隙を見せればすぐ攻撃。ここで選択肢が出ますが、シャニPは微妙な反撃に出るも論点をずらされたりスルーされるなどして返り討ちに合っていたりしています。よわい。
 ここで印象的なのはまず、「捨てるのがちょっとだけ名残惜しいだけだ」と述べたシャニPに対し「あなたは大切なものが多すぎるのでは?」「人間にだってキャパはあるんだから全部を抱えきることはできない」と言います。確かにシャニPはそういうとこありますね。25人の所属アイドルの人生全てをも抱えてそうな男ですが、そんなシャニPは「確かに全部は無理かもしれないけど、その時自分の腕が届く範囲のものだけでも必死に抱えるだろう」と言います。そして最後に「大切でなくなったから捨てるというわけでもないだろう」と加え、円香も多少は納得しているようです。

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 また他の選択肢では、円香が「片付けのコツは手放すことを恐れないこと」とシャニPに講釈を垂れ、「そういうのは苦手そうですね、ご愁傷様」と皮肉ります。それを軽く流して円香は得意なのかと聞き返しますが、「部屋は片付いている」「必要なものならまた買えばいいし」と言います。それを聞いたシャニPは「二度と買えないものだってあるだろ」と反論し、円香は「そんなものは最初からなかったと諦めるしかない」と凄いドライな事を言います。ホントにそんな割り切り方出来るか?たかだか女子高生に?シャニPも「俺も大人になったら分別がつくのかなあ」とギャグをかましますがスルーされています。なんだかんだ仲良しだろこいつら。
 果たして何を意味するやり取りなのやらという感じですが、ここでのやり取りと同時に冒頭と同じ某プロフェッショナルな番組みたいな演出が再度挟まれていて、しかも選択肢次第で文言が変わります。それもそれぞれ抜粋しておきます。

宝石箱に鍵をかけよう 
大切なその中身を誰にも気付かれないように
(「捨てるけど、でも……」の場合)
宝石箱ごと海に沈めた 
二度と浮かんでこないように
(「円香こそ」の場合)
その中身はなに? 
今はもうわからなくなってしまった
(「足の踏み場は……ある」の場合)
誰も触れないように 
誰にも傷つけられないように

 さあ~なんだこれ?冒頭と少し被っているので、おそらく円香が見つけていた何かが「宝石箱」であるというのは間違いなさそうですが、果たしてそれが何を意味するのか…さっぱり分かりませんね。ただ深い意味があるのは疑いの余地もなさそうで、脳にかかる負荷は上昇しっぱなし!面白いね~(死亡)。

3つ目のコミュ「uru uru」

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 3つ目のコミュでも冒頭から例の演出が入り、「胸を打つものは」と表示され、それに答えるかのように円香は「技術」と言っています。

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 どうやらシャニPと円香の2人で電車を待ちながら言葉を交わしているようですが、「涙を誘う曲でも泣きながらステージに立つわけではない」「演奏する者の内面ではなく技術こそが観客の感情を掻き立てる」「と、どこかの有名な演奏家が言っていた」とシャニPに伝え、自分もこの言葉には同感だと言っています。これ誰の言葉かなあ…シャニの事だから多分元ネタあるんだろうけど見つかりません。情報求ム。
 その言葉を受けたシャニPは「つまり今日のコンサートで俺がうるっとしたのは不可抗力であると」と謎の自己擁護です。円香が「うるっと?」と突っ込むと「…ハンカチを使う程度には」と気まずそう。ガチ泣きじゃねえか。しかしそこから特に追撃してこない円香にシャニPは違和感を覚え、「ミスター・泣き虫とか言われると思った」と(円香に乗せられて)残念がっています。その後「ともかく、素晴らしいコンサートだった」とシャニPは無理くり締め括りました。

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 場面は切り替わり、円香はレッスン場にて歌の練習をしています。シャニPが「終わりの時間だ」と伝えに来て早々と出る準備をしていますが、時間を忘れるほどレッスンに打ち込んでいるとは…円香の内に何かが渦巻いているのはまず間違いありません。W.I.N.G.編や天塵での円香を思い出します。
 シャニPは「ここ最近いつも同じところを練習しているな、そこを重点的にやれと言われたのか?」と聞きます。しかし円香は「違う」と否定しますが、その理由は述べません。うーん…。シャニPも突っ込みません。

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 練習のせいか円香は喉の調子が悪そうですが、シャニPはそんな円香を労わりつつ、歌の出来を認めようとしますがちょっと思うところあって訂正します。ここも選択肢ごとに少し違いますが、大筋として「円香にとって『歌』というのはただそこそこ上手くやって大衆に認められればいいようなものでは無い」という事です。そのことをシャニPに指摘された円香は少し驚いていますが、選択肢次第では円香自身も「歌は喉を使うだけはでない」「知れば知るほど歌には精巧な技術が必要」「感動も陶酔も伸び伸びしたように見せるのも全部技術」だというようなことを言いますが、最終的には「まあ知らないですけど」と適当に予防線を張って立ち去ります。
 そんな円香の様子を見たシャニPは「まるで世界でたったひとつの正解があると確信しているかのようだ」「円香には本当に美しいものが見えてるいるんだろうか」「歌の技術を求めながら、丁寧に扱うべき喉を痛めている事には違和感があった」とモノローグを放ちます。シャニPもまた現在の円香の中に何か、表には出さないけど抱えている思いがあるという事を感じています。特に3つ目の「丁寧に扱うべきとわかっているはずなのに喉を痛めている」という事への違和感なんかはかなり不安なものを感じさせますね。シャニPは倉庫整理の時に円香の合理的で割り切ったような発言を「分別がある」というように表現していましたが、ここで時間も忘れながら自身の喉に大きな負荷をかけているのは「分別がある」などとは言えないでしょうね。円香の身に一体何が起こっているんだろう…。

4つ目のコミュ「kara su」

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 4つ目のコミュでは、夕暮れ時の事務所屋上で円香が黄昏ていたところ、シャニPが屋上に作られてしまったカラスの巣の様子を伺いに来たようです。なんだかシチュエーション的には【カラカラカラ】と同じような感じですね。その存在を伝えると、円香もまたその巣の事はなんとなく知っていたようで、「ああ、カラスの巣?」と反応します…まるでカラスのようにとても嗄れた声で。

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 フラッとしましたねここはねぇ!円香ァ(バカデカ感情)!!なんで彼女の声が嗄れているのか、考えるまでも無いですね。彼女はシャニPに注意を促されていたにも関わらず、誰に頼まれるでもなく例の歌の自主レッスンを繰り返し続け、ついには喉を枯らしてしまったのです。
 円香は何事もなかったかのように話を続けようとしますが、流石にシャニPもそれをスルーしたりはせず心配しています。円香は最初「別に、次の仕事までに治す」と言いながらも、発言を取り消して「報告しないですみません」と謝ります。真面目。この喉の状態は忠告を無視した自分のミスであると分かっているんでしょう。なのにどうして止められなかったんだ円香…。シャニPは円香の喉を心配しつつも、叱りもしなければあまり深くは突っ込むことも無く、カラスの話に戻ります。こういう踏み込まない優しさ、円香もシャニPも一緒って感じする。

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 そのカラスの巣はもう巣立った後のようでそれを撤去するという話のようですが、シャニPはどこかそれが名残惜しそうで、その巣が色んなゴミを寄せ集めて作られたり、中にビー玉らしきものがあるのを見つけては「人間にとってはゴミでも、カラスにとっては心地よい寝床だったのかな、宝物だったのかな」と思いを馳せています。心優しい男ですねえ。ほんと好きですそういうとこ。
 相変わらず円香はそういうシャニPの事を皮肉り、「なんでも守ろうとするのは癖?」「カラスも自分で捨てたんだしどうでもいい」なんて言いながら咳をして立ち去ります。中でもビー玉らしきものを発見したシャニPに対して「あとは一人で好きなだけ童心に帰ってください」と言って立ち去る展開で、シャニPが「童心に帰るのも大人の特権だと思うけどなあ」と独り言ちるシーンは印象的です。2つ目のコミュで「俺も大人になったら分別が付くのかな」と冗談めかして呟いた言葉との重なりを感じます。シャニPは子供なのか、大人なのか…じゃあ円香は?

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 その後シャニPはその巣の撤去の事やら仕事やらをこなすために事務所内に戻ります。ここでの描写も選択肢ごとに微妙に異なるのですが、大筋として事務所に戻ったシャニPはそこにあった小さな小箱、「宝石箱」と思しき何かの錠前を壊してしまう、または壊れているのを発見します。選択肢次第ではカラスがつついて壊す展開もありますが意味深すぎて脳が壊れるわね。しかしここでようやく2つ目のコミュから描かれていた存在が出てきました。そしてこれはきっと円香の物でしょうが、果たしてこれはいったい何なんだろう…。
 というところでコミュが終わってしまいます。オイ!!4つ目のコミュにしてなんにも話がカタついてないけど!?しかもここまでガシャ演出アニメーションの挿入無し!!これ【ギンコ・ビローバ】と展開が一緒じゃん!!つまりTrueコミュからが本番なんでしょうね。助けてくれよ。

Trueコミュ「gem」

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 さあこっからが本題なのでしょう。円香はなんとかある程度は喉を治せたようです。良かったね。シャニPはまだ治ったばかりなんだから歌のレッスンは休もうと指示しますが、円香は「歌うなと言われると歌いたくなる」と反応しています。ひねくれものがよ。そうして円香は声出しをし始めます。いやー…ここまで円香がシャニPの言う事聞かなかったことあるか?反発するのはいつもの事ですが、それでも筋がある程度通っているシャニPの言葉には強烈な皮肉と共になんだかんだで従うのがいつもの円香っぽいと思うんですが…。

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 ここで回想に入り、例の小箱が壊れてしまった事をシャニPは円香に伝え謝罪しています。シャニPはその小箱の中身を「大事なものが入っているだろうから」という理由で見ないようにしていたようですが、その様子を見た円香は鼻で笑うかのような表情で「やっぱり何も入っていない」という風に箱を開いて見せます。なんだ…何も入っていないのか…なのになぜ鍵が…?
 円香によるとこの前掃除をしている時に出てきたらしいですが、「そんな知らずに放置していたものの中に自分が何かを入れっぱなしにするわけがない」という風な確信があったようです。几帳面な性格ですなあ。
 そして円香は2つ目のコミュに出てきた倉庫から出てきた要らないものが入っている段ボール箱の中にその箱を投げ入れてしまいました。あの時の円香の言葉を考えればそうするのも納得ですが、そんなあっさり捨てていいもんなんだろうか…中に何も入っていないだけで…一目で「宝石箱」と分かるような美しい箱なのに…。

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 そしてまた一瞬現在の仕事の方へ移り、円香はまだ咳をしています。まだ完治はしていないのだろうかと思わせつつ、また回想に戻ります。シャニPは円香が捨て去ったその箱を拾い上げ、「本当に何も入っていないのか?」と訝しんでいます。わざわざ鍵がかかっていた箱に何も入っていないなんてのは確かにあまり釈然としないところでしょう。すると突然その小箱から音が鳴りだし、シャニPは気付きます。

その時、何か音がした
錆ついた音が
オルゴールだ

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 ここでも今まで何度か出てきた例の演出が入ります。その3文目はシャニPがこの「宝石箱」がオルゴールであると気付いた言葉そのものでしょう。
 そして何より凄まじいのは、この気づきの演出と同時に、調子が悪かった円香の喉から「音」が出始める演出ですね。その埃をかぶっていた「宝石箱」は、中身の無いガラクタは、錆ついた音の「オルゴール」は、樋口円香自身の事でした。

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 そうしてシャニPは歌い始めた円香を見て、「あーあ、まだ歌うなって言ったのに」「いつも冷静で分別がつく円香らしくないな」なんて言っています。全く以てシャニPの言う通りですが、その「分別のない」円香を止めはしないんだね。きっと何かを掴んでいます。そしてまたここでクソデカ感情にしてくる演出が入りますのでここに文字として抜粋します。

放置されていたせいか
オルゴールの音は歪んでいた
きれいな音が出ない
きれいな音じゃない

違う、違う、違う
いつもとは違う

この音じゃない
だけど、この音だ

もっと精巧で、複雑で、繊細で
とても荒くて、単純で、野性的で

透明な音じゃないと
豊かな音があるじゃないか

もっと
まるで

魂を削り出すように
魂を削り出すように

美しく
美しく

 …………(絶句)。死んだ。2つ目の抜粋については上が円香の言葉、そして下がシャニPの言葉として、円香の音声と共に下のセリフ枠にシャニPの言葉が表示されます。【ギンコ・ビローバ】に勝るとも劣らない展開。そしてシャニPはこの「分別の無い」円香を見て、「今日、確信した」「樋口円香には激情がある」と言葉にし、最後にはまた例の演出が入りますが、今度は白背景になっているのが印象的です。わけわかんねえ。もう感情になり過ぎて気が狂いそう!!なんだこれは!!

それは
大切なものを仕舞うために作られた箱だった

まとめ

 助けてくれーーー!!1つ目のコミュで油断してたらとんでもねえ内容だった…やり方が汚いぞ!今までなかなか見ないような演出を駆使し、樋口円香という人間性により深く踏み入ってきた内容です。

 この【ピトス・エルピス】を考える上で重要になるのは「激情」となるでしょう。「樋口円香には激情がある」というのがこのコミュで導かれた結論です。
 この「激情」というのは、3つ目のコミュあたりからちらほら見えていた円香の「分別のない」行動から感じられるものでしょう。実際円香はW.I.N.G.編の時も別に誰にも求められていないはずの自主レッスンを行っていたように、時折そうやって求められている以上のパフォーマンスを発揮しようとする時がありましたが、あの行動は「自分を応援しているファンがいる」という外圧がかかったことによってプレッシャーを感じ始めたことに由来するかと思います。円香は結構怠惰な所がありますが、そういう風に「ああしろ、こうしろ」という風に言われると、腰を重そうに見せながらもなんだかんだでそれらを遂行します。それは真面目だと言っていいし、「分別がある」という事でしょう。
 しかしながら今回の円香は、そんな外からの要因の存在が感じられないのにも関わらず、何故だか喉を壊すほどに歌の自主レッスンに打ち込んでしまいました。そしてその理由は、Trueコミュでの円香の言葉を見るに、ただただ自分の納得のためにその「歌」のクオリティを求め続けていたからに過ぎなかったのです。そのためだけにシャニPの言葉を無視するような「分別のない」振る舞いをしてしまい、シャニPはこれを「激情」と表現しました。

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 この円香の「激情」が果たしてどこから生まれたのか、という部分については何もわかりません。過去にこういう「激情」を持つに至った出来事があるか、もしかしたら生来のものかもしれません。なんにしてもとにかく、そういう「激情」を内包していた存在、それが「宝石箱」です。
 この物語の中心には「宝石箱」というモチーフがありますが、この「宝石箱」に対する円香とシャニPの考え方が内容のひとつの主軸と考えられます。印象として円香はこの「宝石箱」の事を軽んじているように見受けられます。彼女はこの「宝石箱」の中には「何も入っていない」という確信から、それが明らかになった途端それをあっさりと捨ててしまいます。
 これは2つ目のコミュで見えていた円香流の断捨離的な発言から考えればごく自然なことですが、そういう円香のある一種のドライな割り切り方をシャニPは「分別がある大人」的な振る舞いであるという風に表現しています。これはこの場でのゴミたちに対する円香のスタンスのみならず、普段からのスタンス、たとえば【ダウト】で水着の仕事を仕事と割り切って受けた事や、直近で言うと「さざなみはいつも凡庸な音がする」で出演番組にたいしやらせを疑っていたのに仕事としてはしっかりこなすような、そういう部分も含めて円香は「分別がある大人」であるという風に言えるのでしょう。

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 一方でシャニPの方に見受けられたのは、倉庫に眠っていた不必要なものたちのことを「名残惜しい」と感じていたり、これから撤去しなくてはならない役目を終えたカラスの巣に対して思いを馳せたり、そして最後には捨てられた「宝石箱」も拾い上げたりと、先述したような円香のドライな割り切り方とは対照的な描かれ方をしています。そのことを円香によくチクチクと皮肉られていました。かわいそう。
 2つ目のコミュでシャニPは「大切じゃなくなったから捨てるというわけでもないだろう」という風に言いますが、シャニPはこういう打ち捨てられたもものたちが、ここまでに至るまでに繋いできた過去や時間みたいなものに意味を見出しているというように見えます。それは円香にとっては背負い込み過ぎだし、そういうものを捨てて前に進んでいくのが「大人」なのだという事になるのでしょう。そうなってくると、このカードコミュで見えるシャニPは円香の立ち振る舞いと対照的に「分別のない子供」であるという事になるのでしょう。

 「分別のある大人」として振る舞う円香、「分別のない子供」的な振る舞いを見せるシャニP。基本的にはそういう風に並べられ、そういう対照性は今までのコミュ中でも見えていたように思えます。【ギンコ・ビローバ】での「ちゃうちゃうちゃ~みんクッキン事件」もこういう部分の表れでしょう。しかしながら、この物語で肝要なのはむしろそうではない2人の部分です。
 少なくとも、いつもの「らしい」と表現される樋口円香はシャニPの言葉を借りれば、「いつも冷静で分別がつく」子であると言えます。しかしTrueコミュで「らしくない」という風にシャニPが言ったように、円香がシャニPの言う事を聞かずに喉を痛めるほどに歌のレッスンに打ち込むことは「分別がある」という風には言えません。また、あの「宝石箱」に対し「中には何も入っていない」という確信があったというような事を言っていたのに、実際にはその錠前が壊れて開くその時まで「宝石箱」を捨てられないのはおろか、事務所にまで持って来ていたことの説明が付きません。多分意味もなく持ち歩いていたのでしょう。「片付けのコツは手放すことを恐れないこと」とか偉そうにシャニPに言ったのはどこのどいつだっけ樋口?年相応とでも言えるかもしれないですが、「分別のない子供」の部分が漏れてしまっていますね。
 一方でシャニPの方が「分別のない子供」であるなどというのはあり得ないというのはシャニP大好きクラブの皆様なら特に異論はないでしょう。シャニPは時折そういう子供っぽい純真さを見せてくるだけで、むしろ自身の気持ちを押し殺しながらでも多少の理不尽に対して折り合いを付けようとする方の人間です(当人がそれを望んでいるかどうかはともかく)。2つ目のコミュでの円香にスルーされたジョークや、4つ目のコミュの「童心にかえることは大人の特権」という発言から見ても、シャニPは円香の前では敢えてそういう部分を出しているのかなとさえ思います。更に先述したような円香の「分別のない」部分に対しても、今回のシャニPは強く叱ったり深く突っ込むような真似をせず、あくまでそういう円香を後ろから見守るスタンスに終始しました。これは「分別のある大人」と言ってもいいですし、本来のシャニP的な在り方です。
  つまりこの物語で見えるのは、表面上は「分別のある大人」だが内実は「分別のない子供」である樋口円香と、表面上は「分別のない子供」的な立ち振る舞いも出来る「分別のある大人」のシャニPという構図です。
 ちなみにこの構造が一番良く出ているのは面白いことに1つ目のコミュです。「筋肉べろんちょ」!!結構なお笑いコミュなのですが、この「筋肉べろんちょ」のくだり、深読みするとなかなか意味深です。というのも、シャニPはこの「筋肉べろんちょ」の前に出て来ていた芸人の(おそらくは)精巧に練り上げられていたコントを高く評価していましたが、円香はそれを「下らない」と一蹴しました。しかしその後の「筋肉べろんちょ」とかいうどう考えても下らないものであろう一発ネタに円香は見事に粉砕されてしまいました。これ、どっちが「大人」っぽい趣味でどっちが「子供」っぽい趣味でしょうか?吹き出してしまった円香に対するシャニPの気の遣いようとそれに対する円香の意地を張ったような反発の仕方から見ても、結局シャニPの方が「大人」であるという事実はこの時点で示されています。ちょっと無理くりな当てはめ方ですけどね!ありがとう「筋肉べろんちょ」…(謎感謝)。

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 そんなねじくれた構図で対照的な円香とシャニPの関係ですが、その2人がこのコミュ内で「パフォーマンス」というものにどう向き合ったのかも考えなくてはなりません。
 まず円香は、3つ目のコミュでの発言やTrueコミュでの心の内の声から読み取れるように、パフォーマンスに対してとにかく技術的に優れていて、少しも隙の無い美しい、たったひとつの完璧なものであることを求めています。それこそが人を感動させる、「心を抉るもの」「胸を打つもの」であるというスタンスです。そしておそらく、そういう洗練されたものを作り上げるには不必要なものはこそげ落とす必要があるという感覚もあるのだと感じます。それは先ほど読み解いているゴミに対する円香の発言もそうだし、なんなら今回の円香の服装が今までに無いほどシンプルで飾りっ気のないデザインになっているのもそういう意味かなと思いません?
 片やシャニPは今まで読み取ってきたように、その物事の表面上にあるものだけではなく、そこに至るまでの過程なんかにも目を向けていて、むしろそちらの方にこそ大きな意味や魅力があるという風に感じているように見えます。今は打ち捨てられたカラスの巣や捨てなくてはならないガラクタたちにも、「ゴミ」なんかじゃなかった時間があるはずで、それにだって色んな意味があるはずです。「そのパフォーマンスに至るまでの艱難辛苦を乗り越える努力物語こそが美しい!」というような、アイドルマスターのみならずありとあらゆるガールズサクセスストーリーを取り巻く「アイドルの文脈」的にシャニPの考え方は正しいと言っていいものです。我々オタクもどっちかって言うとこっち寄りの考え方でしょ?多分。

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 これは「結果」のみを求めている円香と、「過程」に意味を見出しているシャニPという風にまた対照的に並べられるのですが、2人が「宝石箱」に対してどう考えているかという部分もこの考え方を適用して見てみます。
 円香はその「結果」に至るまでの時間や経緯は意味が無く、そういうものを削ぎ落していって作り上げた精巧で完璧なものこそが全てであるということ、つまり「宝石箱」に本来入っているべき「中身」こそが本質的に素晴らしいものであるというスタンスです。だから円香はその「宝石箱」に中身が無いと判明した瞬間、それを捨てることを選びました。宝石の入っていない「宝石箱」はただの飾りなのでしょう。
 一方でシャニPはその捨てられた「宝石箱」を拾い上げています。先述のように、シャニPはそういう物事が紡いできた時間や過去に目を向けて意味を見出す男なので、その「宝石箱」がそんな容易く捨てられるような価値のないものであるとは思えなかったのでしょう。その結果としてその「宝石箱」がオルゴールであるということも分かりました。「中身」が入っていないからと言って、その箱自体が何物でもないという訳ではなかったのです。

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 そしてコミュ内容の部分で触れたように、この円香の部屋に眠っていた「宝石箱」は樋口円香自身そのものを表しています。
 つまり今回のコミュで円香が捨てようとしたもの、それは「中身のない自分自身」です。結局の所、「自分は外面だけ綺麗だけど中身の無い空虚な人間である」というのが円香の根本にあった思いなのでしょう。G.R.A.D.編で自分の事を「軽い」と表現したこととも合致します。
 そんな思いを抱えながら生きてきた円香は、例えば【閑話】や【雨情】で示されたような、怠惰で閉鎖的な関係の中での時間、つまり「幼馴染の4人組」という場に自身を置いてその存在を隠してきたのでしょう。2つ目のコミュでの例の演出で出てくる、「宝石箱ごと海に沈めた 二度と浮かんでこないように」というのはそういう事だと思います。そんな「中身のない宝石箱」である自分に他者が干渉してこないように、誰からもその中身を期待されないように。
 しかし、その「宝石箱」を沈めた「海」である幼馴染の4人組は日の当たる「アイドル」という存在になり、「宝石箱」は浮かんできてしまったのでしょう。そういう状況になっても円香は表面上は「分別のある大人」として冷静に振る舞っていました。しかし最終的に円香は「宝石箱」を余計なものとして捨てるという流れになりますが、これまで読み取ってきた流れを考えると、それは今まで装ってきた「分別のある大人」であろうとした自分を捨てる結果になってしまっているという風に考えられます。おそらく彼女自身はその大人ぶって「宝石箱」を捨てるという行為が結果的に聞き分けの無い子供っぽさを露呈させてしまっている事に自覚的ではないんじゃないかなと感じなくもないですが、ともかく円香は「分別のある大人」という「宝石箱」を捨て去ってしまいました。

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 しかしながら、今回見えた円香のそういう部分を悲観すべきとは思いません。むしろ前向きに捉えるべきものでしょう。なぜそう思えるのかというと…そう!俺たちのシャニPのおかげですね!!さっすが~!!
 今までさんざっぱらシャニPと円香の在り方が対照的になっているという話をしましたが、言ってみればそれは「円香にない考え方や視点をシャニPは持っていられる」という風に言い換えていいのです。少なくとも相応の信頼関係が築けているなら、そういう人間と共に仕事をするというのはマイナスどころかプラスの要素の方が強くなりそうです。
 また大切なのは、このコミュの中でシャニPは「自分の価値観を円香に押し付ける」という類の行動を一切していない事です。主に円香が噛みついてくるせいですが(そういうとこだぞ樋口お前!)、このコミュの中で価値観が違うという事をお互いに確認している場面は数多くあります。そこでシャニPは「自分の考えはこうだけど」という話はするものの、円香の考え方を面と向かって否定しません。そういう部分も大人ぶろうとする円香と違って本当の意味で「分別のある大人」だなという感じですね。
 そして何より大事なのは、シャニPが円香と対照的な態度で「宝石箱」に向き合うという事は、「激情」を露にしてしまい、たった一つの正解に辿り着くために円香が「ゴミ」だと判断して捨て去ろうとしているそれらを肯定しているという事です。円香は「違う」と感じていますが、シャニPは捨てられた「宝石箱」から出る錆ついた音の方を「この音だ」と確信しています。それはつまり、例えば使い道のなくなったガラクタたちや打ち捨てられたカラスの巣を否定するように、円香が「魂を削り出すように」己の身を切りながらひたすらに「ゴミ」を削ぎ落とし続けている円香の姿勢、ひいてはそうして出てきた「ゴミ」そのものが輝きの本質であるというのがシャニPのスタンスです。

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 しかしながら注意しないといけないのは、ひたすらに技術による最高のパフォーマンスを追い求める円香の考え方と、そこに至ろうとする過程が美しいというシャニPの考え方のどちらが正しいとかいうものではないという事です。どっちも考え方としては正しいのです。なんせ円香のスタンスのソースは偉大な結果を残したであろう有名な音楽家ですからね。誰か知らんけど。
 ただ、円香はきっとそう思っていないからシャニPに噛みつくのでしょう。流石に全否定までせずとも、綺麗事や理想論のように思えてしまう言葉や考え方を「薄っぺらい詭弁」だと言う円香には、やはりシャニPより自分の考え方の方が正しいという思いがあるのだろうと思います。一方で、真に「分別のある大人」のシャニPは円香も正しいけどそれだけじゃないんだという事を理解しているからこそ、「分別のない子供」の部分を露呈した円香の事を無闇に制止したりはしないし、むしろ円香がそういう風になって初めて円香の持てる輝きを確信したと言ってもいいでしょう。そんなシャニPは「激情」によって削ぎ落とされ捨てられていくものを必死に拾い上げながらも、自身の求める理想へとがむしゃらに走り出してしまった円香を支えてやろうとしているように見えます。
 光差す方へ走り出し、傷ついたり悩んだりする少女をプロデューサーが支えながら2人3脚で夢へと向かう、これめっちゃアイドルマスターじゃないですか?ここに来て円香はようやく「アイドル的」なスタート地点に立って走り出したように思えます。そしてそれは、アイドルの文脈的に考えれば紛れも無いほどに「希望」の物語であるはずです。

 このカードが発表されるにあたって、「ピトス・エルピス」という耳慣れない言葉を調べた方も多いでしょう。私も例に漏れずそうです。聞いたことない単語。相変わらず求めてくる教養の範囲が広い学問ですね(シャニマス文学部)。調べてみると、それは厨二病を経験した人間なら知らない奴はいないであろう「パンドラの箱」に関連する言葉であることが分かります。「ピトス」が「甕(箱)」であり、「エルピス」が希望を指すようです。
 当然、このコミュにおいての「パンドラの箱」は「宝石箱」であり、つまり樋口円香自身の事です。「パンドラの箱」のエピソードではその蓋が開いてしまった事で中に閉じ込められていた「厄災」が世界中に放出されてしまっていますが、円香が見つけた「宝石箱」から飛び出した「厄災」は「激情」です。開いてしまった「宝石箱」を捨て去り、「激情」によって前に進むことを選んでしまった円香はこれから、誰かと比べられる場に立たされたり、理想とするパフォーマンスとのギャップによって苦しめられような「厄災」に見舞われるでしょう。
 しかしながら、神話において「パンドラの箱」の底に最後まで残ったもの、それは「希望」であると語られています。何も入っていなかったはずの「宝石箱」の樋口円香には、渦巻く「激情」を内に湛えながらも、かつていい音を出していたという過去の時間が、錆ついてしまっても未だ音を出そうとするオルゴールの機構が、自分はもっといい音が出せるはずだという「希望」が底に眠っていたのです。円香は「宝石箱」を捨て去ってしまっているから、もしかしたら自身の内にある「希望」の存在には気づけていないかもしれません。しかしシャニPという男、そして283プロに住み着く悪霊としてお馴染みの我々オタクは、この己の理想に向けて「激情」を帯び走り出した円香を見て確実に「希望」を見出せたはずです。
 そうなればやはり、シャニPも我々オタクももう出来ることはただひとつ!ただ円香の「激情」の行く末を見守って、そこで生まれた失敗や挫折も肯定していくだけでしょう。円香はそういう考え方を「分別のない子供」的なものであると否定しますが、シャニPはそれを「大人の特権」だと言いました。私もまた、「大人の特権」を行使して彼女の時間を肯定してあげたいと思います。
 同時に、「未熟な『分別のない子供』だった時間に思いを馳せて、失敗も成功も肯定してやろうとする」というのが「大人の特権」であるならば、「未熟な今を否定し試行錯誤して、素晴らしい結果を残せる『分別のある大人』になろうとする」というのもまた「子供の特権」であり、それこそが円香の理想に最大限近づくことの出来る大きな「希望」であるはずです。様々な「厄災」にぶつかり、苦しんでもがいて、そうしてそこまでに捨て去ったものも、辿りついた先に見出したものも、それはきっと全て美しい輝きを持っているはず。鍵が掛けられた箱が開いたからこそ、そんな「希望」に光が差しました。だからやっぱり最後はこの言葉になっちゃうな!「いっぱい生きろ」、円香!魂を削り出すように、美しく!

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感情置き場

 感情死した。今遺体安置所からこの記事を書いています。おかげさまで記事も全然上手く進まんかった…まさかこれほどまでの物をぶつけてくるとは…。相変わらずぐちゃぐちゃの読書感想文ですみません。ここまで読んだ人、嬉しいけど人生の時間を無駄にしてませんか?(懐疑)
 色々言いたいことはありますが、やはりこのカードのコミュは円香にとってのスタート地点のお話になっていると感じました。パンドラの箱がぶち破られて「激情」と「希望」が出てきてしまったわけでしょう。今までのノクチルのコミュを見ても、透は日常を飛び出して未だ見ぬ世界に飛び出してみた、小糸は研鑽を重ねて色んな人の期待に応えられるような存在になりたい、雛菜はもっとたくさんのしあわせや楽しいを広げていきたいみたいなモチベーションでアイドルをやっているのかなぁという感じでしたが、どうにも樋口円香という子だけは一体どういうモチベーションでアイドルに向かい合っているんだコイツ?という感じが拭いきれませんでした。しかしながら今回、円香は「人々の胸を打つような素晴らしい理想のパフォーマンスを追い求めている」という少し驚くくらい真っ直ぐなモチベーションを示してきました。如月千早なんかと同系統のアイドルだったんですね。
 とはいえ結構納得感のある描写であるなとも思います。円香って絵にかいたような高2病で、凄い厭世観に囚われがちな人間だと思います。しかし、実際に厭世観を持つ人間というのはその厭世的な思考の裏に「そうではない世の中」を前提していると思うんですよね。そういう人の中には理想があって、それと現実のギャップがそういう態度にさせてしまうんだと思うんですが、きっと円香もまたそういう人間だったのかなと思います。これまでもなんとなくそういう風なパーソナリティなんじゃないか?という風に感じることはありつつ確信が出来なかったのですが、この【ピトス・エルピス】でしっかりとその部分が描かれてスッキリしましたし、「自分の納得できる理想を追い求めたい」という人間的で、一種利己的と言ってもいいような衝動が円香の中にもちゃんとあったというのが確認できたことで安心すらしました。ファン感謝祭編で「自分は誰かのために歌ってない」と彼女は自己否定するような発言をしていましたが、彼女は自分のために歌っていたんですねえ…それでいいんだぞ円香。
 しかしながら、そういう理想に向かって走り出してしまった円香の物語に「パンドラの箱」をモチーフとして持ってくるというのは、やっぱりこの物語が「希望」の物語だからだろうとも思えます。円香の行く先にはきっと何かいい未来が待っていると思うんだけどなあ。同時に実装された「さざなみはいつも凡庸な音がする」もまた、ノクチルがひとつのアイドルユニットとしてスタート地点に立つという意味で「希望」の物語だったと私は思っているので、そういう風に合わせてきたんじゃないかなーって。いつもの深読みですけどね!

 あと、散々シャニPのスタンスが円香と対照的になってるという事を述べたんですが、シャニPの「物事の過去の時間に意味を見出す」という価値観って【つづく、】や【おかえり、ギター】で浅倉透が示した価値観とほぼ同じなんですよね~。
 という風に考えると、対照的なスタンスを取りながらも内に「激情」を抱いていた円香の行く先を支えてやれるのはシャニPだけじゃなくて透も、というか下手したら物心ついた時から一緒に居る透の方が円香に対する理解が深いからさらに強く支えられるのでは…?とさえ思ったりもしました。濃厚なとおまどだァ…(歓喜)。なんだかんだでやっぱり幼馴染なんだなあという感じです。シャニPに加えて透も、もしかしたら小糸も雛菜も、走り出した円香が捨て去ったものを拾い上げてくれるんじゃないかな。そうだったらいいなあ。

 というところでそろそろ終わります。ほんとに良い出来のコミュ過ぎて感情がクソデカくなりすぎているのでもう限界です。こんなコミュ出して新曲も来てまだLP編残してるとかマジ?死ぬほんとに。助けてくれ。それでは、またどこかで筋肉べろんちょしながら会いましょう。それでは~。

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