見出し画像

るか / luca

学校のクラスメイトに彼女がいたら、私の青春はもっと濃厚で自由なものになっていたのかもしれない。そう思ってしまうほど、彼女の思考は広く深く研ぎ澄まされている。それが〈るか〉である。10代の頃から社会問題や環境問題に向き合い、行動し続けてきた彼女の姿勢は自分にはないものだった。

音楽活動では〈LUCA〉として作曲やライブなどを行っている。私も初めての出会いは彼女のライブがきっかけだった。そこから、彼女との時間を重ねることで、その人柄や考え方に触れて、LUCAさんだけではない〈るか〉という存在を好きになったのだ。

彼女の生まれはアメリカ。5歳で仙台にやってきた時から、生活や文化が異なっていることに対してカルチャーショックを受けたという。学校のクラスにも馴染めず、日本を出て海外に行きたいという気持ちを抱きながら幼少期を過ごしていた。

そんな中、2011年の東日本大震災をきっかけに、デンマークへ行くことを決める。当時17歳だった。

「当時の日本は、福島の原子力発電所の問題のほかに、消費税の値上げなど国民の不安要素がたくさんあったの。対して、デンマークは原子力発電所が検討された時に、国民が反対運動をして、廃炉になったという事例があったり、消費税も日本より高いのに、税金が国民の暮らしへと循環していくことで、国民が安心して税金を収めることができていたり。エネルギー問題や、福祉、環境、政治に対して国民の意識が高くて、そういう国に身を置いてみたかったんだ」。

国民ひとりひとりの精神に触れることによって、多くの経験や学びを得ることができた。中でも、国の問題に関して国民が自分事として向き合う姿勢の背景には、デンマークの教育が影響を与えていると感じたという。デンマークの教育では、ひとりひとりが自分で物事を考えて解決していくことが重要視されている。答えそのものよりも、どう思ったか、なぜそう考えたか、ということを自分なりに言葉にすることに対して評価がされる。教育や文化など、日本との違いを学んだ貴重な経験だった。

しかし、国籍や言語が違う人と関わる日々は、コミュニケーションの難しさにも直面する。時には一日誰とも話さない日もあり、次第にストレスを感じるように。

その時に出会ったのが音楽である。友人からもらったギターを手にして、心の赴くまま歌を歌うことは彼女の心の癒しとなった。

「自分が心地よいと思うメロディーを奏でたり、心に浮かんだ言葉を歌詞にして歌ったり。そのようにして初めて作った曲が〈Denmark〉だったよ。デンマークでの美しい知恵のある生活とそこに対する喜びを歌っているよ」。

歌うことや曲にすることの楽しさにもめぐり逢いながらデンマークでの一年間を過ごした。

帰国後、芸術や美術への進路にも関心を抱いていた彼女は、デンマーク教育のワークショップをしていたガルバ・ディアロさんと出会い、再びデンマークを訪れることになる。彼が教師を務めるフォルケホイスコーレに入学して、様々なバックグラウンドを持つ人と共に、国際問題や政治、芸術など自身の学びを深めた。その日常にはいつも音楽の存在があったという。

ある満月の夜、力強い月光の中で、意識だけが過去や未来へと旅をするような不思議な経験をした。満月の存在が自身にもたらした心情を、いてもたってもいられずに、あっという間に曲にしたのが〈Full Moon〉だった。そして、この曲は、音楽の道を歩んでいく決意を彼女に与えた。

「自分自身が音楽で癒やされていたように、聞き手にも癒しを与えることができると思ったよ。そして、地球の美しさを曲にしていくことで、直接的じゃなくても社会や環境についてのアプローチができるのでは、と音楽を自分の活動の軸として考えるようになったんだ」。


続きは、以下さのサイトよりご覧いただけます。
Leben「ある日の栞」vol.10 / るか


Lebenはドイツ語で「生活」を意味します。正解のない様々な暮らしを取材しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?