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王家の宝石 | デンマーク王室のルビーティアラ

⚫︎はじめに⚫︎
明けましておめでとうございます。

2024年1月1日、デンマーク マルグレーテ女王退位のニュースを受け、慌てて下書きにしまっておいた本記事を投稿することにしました。
(文中の「女王」「王太子」などの表現を直すのが手間なので)

概要

デンマーク王太子妃メアリーが頻繁に着用するティアラ。
ダイヤの葉とルビーの実が連なった作り。
お揃いのイヤリングやネックレスもある。 

名称

THE DANISH RUBY PARURE TIARA

起源

ナポレオンが自身の戴冠式に際して、当時の元帥ベルナドットの妻へと作らせた

宝飾メーカー

不明

歴史

①デジレ・クラリー(スウェーデン王妃)

Fredric Westin • Public domain
Wikimedia Commons

ナポレオン皇帝を擁するフランス帝国の元帥・ベルナドットの妻にして、ナポレオンの元婚約者。
色々あって、ナポレオンとは結ばれませんでした。

ナポレオンは自身の戴冠式に際し、権力を国内外に示す目的で 元帥の妻にも装飾品を作るようにとお金を渡していました。

ベルナドットは、そのお金でルビーの髪飾りやネックレスetcのパリュール(セット)を購入しました。
当時はまだティアラの形状になっていなかったようです(詳細後述)。



軍事・政治に優れていたベルナドットは、このあと後継者問題に喘いでいたスウェーデンに「将来のスウェーデン王になって下さい」とスカウトされます。

彼はこのオファーを受け、デジレや一人息子もスウェーデン王室メンバーとなりました。


②ユセフィナ(スウェーデン王妃)

Axel Nordgren (1828-1888) • Public domain
Wikimedia Commons

①デジレの息子の妻。

なお彼女の父親は、ナポレオンの妻ジョゼフィーヌが前夫との間に作った子。
つまりユセフィナ夫妻は、ナポレオンの元婚約者の息子と ナポレオンの元妻ジョゼフィーヌの孫との夫婦ということになる。

ややこしいので、覚えなくてOKです。

③ロヴィーサ(デンマーク王妃)

Bain News Service, publisher
Public domain / Wikimedia Commons

②ユセフィナの孫。
デンマーク王室に嫁ぐことが決まった際、「デンマーク国旗の色だから」という理由でこのルビー 一式いっしきを持たされました。

ここで使われているルビーはピンク、デンマーク国旗の色はじゃないかと思うのですが、どの資料もつっこんでいないので流します

④アレクサンドリーネ(デンマーク王妃)

J. Russell & Sons
Public domain / Wikimedia Commons

③ロヴィーサの息子の妻。
彼女が初めてルビーのセットをバンドゥのように作り替えて頭に着ける形状にしたそうです。

ただ元々あまり宝飾品を好まない性格だったようで、息子が結婚するや結婚相手にさっさと譲り渡してしまいました。

LollofromSweden
 パブリックドメイン
Wikimedia Commons


⑤イングリッド(デンマーク王妃)

Photo: Johannes Jaeger, photographer to the Royal Court of Sweden. • Public domain
Wikimedia Commons

…というわけで、譲り渡されたのが彼女。
④アレクサンドリーネの息子の妻。

ちなみにこの方はスウェーデン王家出身で、①デジレや②ユセフィネの子孫にあたります。

イングリッドはこのルビーセットが気に入ったようで、より自分好みのティアラ風に作り替えて何年もの間愛用しました。

あまりにも頻繁に着用していたので、当時は「イングリッドのルビー」と呼ばれていたとか。

Nationaal Archief
Bestanddeelnummer : 252-9270
パブリックドメイン
picryl

⑥!?フレデリック王太子

Saeima • CC BY-SA 2.0(トリミング)
Wikimedia Commons

⑤イングリッドの孫。次期王位継承者。

イングリッドは2000年に亡くなりますが、遺言によって愛用していたルビー 一式いっしきをフレデリック王太子(当時独身)に贈りました。

女王マルグレーテ2世を含め3人の娘&女のお孫さんまでいたにも関わらず、何故独身の男孫に?



実はイングリッドが亡くなる数ヶ月前、このフレデリック王太子は"運命の出会い"を果たしていたのです。

そのお相手が、のちの王太子妃メアリー。

出会いの場はオーストラリアでしたが、出会って間もなくイングリッドの容態が悪化し、王太子はデンマークに帰国。

次はメアリーにいつ会えるか分からない状況でしたが、王太子は病床の祖母に 大切な人と出会えたことを報告したのだそう。

孫からの嬉しい報告を受け、イングリッドはお気に入りのルビーを是非未来の王妃に…という気持ちで遺言を残したのかもしれません。

(赤ちゃん時代のフレデリック王太子を膝に乗せているイングリッド。フレデリック王太子は 母親が女王の務めで忙しかったからでしょうか、おばあちゃんには特別な思いがあったようです↓)

⑥メアリー王太子妃

Holger Motzkau • CC BY-SA 3.0(トリミング)
Wikimedia Commons

というわけで、6番目にこの宝石を身につけたのは オーストラリア出身のメアリー王太子妃。
フレデリック王太子がシドニーオリンピック観戦のためオーストラリアを訪れた際出会い、結婚しました。


結婚式前日の祝賀イベントで、イングリッドが遺したティアラを着用。
メアリー妃は民間出身で、これが彼女のティアラデビューでした。

画像を検索したら、
こんなお茶目なものが出てきました。
これぞ真のお姫様抱っこ!



メアリー妃は初め
「デンマーク国民から人気があったイングリッド愛用のジュエリーを、自分なんかが身につけて良いのだろうか…」
と戸惑いがあり、長らく"借り物感"を感じていたそうです。

またゴージャスなルビーセットの使いこなし方については、義母のマルグレーテ女王にアドバイスを求めたこともあったとか。

例えばこちらの写真。↓
元々はイヤリングにもっとジャラジャラルビーが下がっていて、更にお揃いのネックレスもあるのですが…
それらを取っ払った引き算コーディネート。

女王のアドバイスを受けながら、こうした新しい使い方にも挑戦していきました。



こうしてジュエリーのセンスに磨きをかける一方、短期間でデンマーク語をマスター。
出産・育児をしながら公務もこなします。

その過程で自信がついたようで…結婚から6年後の2010年、彼女はティアラのセットをデンマークのジュエラーに依頼して作り替えさせました。

イングリッドが愛したフォルムをなるべく残しつつ、より自分の頭に合うようにしてもらったそう。
このリフォームについては、女王陛下も「良いアイデアだ」賛同しました。

ティアラ、その他ルビーのリフォーム動画。
宝石がバラバラになっている様子は
見てて緊張します!


嫁ぎ先のご先祖様を大切にするメアリー妃と
彼女の意見を尊重するマルグレーテ女王、
2人とも素晴らしいですね。

おわりに

フェミニンなファッションがお似合いのメアリー妃、華やかなルビーのティアラ姿も非常に素敵です。

王太子夫妻の第一子は男の子なので、ティアラはいずれお嫁さんに譲り渡されることになるでしょう。
その際も、きっとお相手の気持ちや時代の流れに合わせながら 継承されていくことになりそうですね。


ご覧下さり、ありがとうございました。

[関連記事]
デンマーク王室が所有する(所有していた)ティアラに関する記事を3本宣伝させて頂きます。

マルグレーテ女王が最も重要な場面で着用される(気がする)ティアラ↓

2年前、「紅白の石で縁起が良さそう」というよく分からない理由で新年最初に書いた記事↓

こちらもマルグレーテ女王によくお似合いのターコイズをあしらったティアラ。↓

参考

見出し画像:
photo AC

・THE COURT JEWELLER
THE DANISH RUBY PARURE TIARA

・The Beau Monde
The Danish Royal Rubies

・YouTube
Scandinavian Royalty
Scandinavian Royal Jewels (Documentary)

theco1987
Crown prince Frederik documentary part 2


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