ラジオが照らした燈

 震災当時、人々を繋いでいたラジオ。それは、これからも残り続ける。1995年といえばまだ携帯電話が普及していなかった時代。フリーアナウンサーである藤原正美さんは、地震発生直後、AM神戸(現ラジオ関西)で、奇跡的に残っていたマイク2本を使って懸命に地域の方々に避難を呼びかけていた。緊急時において、ラジオは人々が情報を得る最後の砦として、人々に安心感をもたらしていた。

画像1

 ラジオ関西は、地域密着型の放送局。震災時には被災者が生きていくために必要な情報にフォーカスを当てて伝えることができた。さらに被災者が情報提供者となって生活情報を提供することで、ラジオとリスナーが一つになって安心感をつくっていった。当時は情報の信憑性を確かめる「裏取り」をする余裕がなかったにも関わらず、ラジオ関西にはクレームの電話が一本もなかったという。藤原さんは「リスナーさん、電話をくださる方、私たち伝える側の信頼関係があり、本当だと信じて話していた」と話す。必死に生きようとする中、人々はみな善人になるという表れだった。

画像2

 今、震災が起こったとして人々はまずスマホに助けを求めるだろう。しかしスマホは万能ではない。最近の体験談がある。2018年6月18日の午前8時頃、大阪北部地震が発生した。発生時、私は電車の中にいた。地震発生後、家族や友人に連絡を取ろうとすぐスマホに助けを求めたが電波障害が起こり、なかなか繋がらなかった体験をした。その後1時間経った後に電波が回復したが、結果的に電車が動かなくなり芦屋付近から自宅まで3時間かけて徒歩で帰ったことを今でも忘れない。急に非日常なことが起きると人々はパニックになり皆同じ行動に出る。電波が繋がり始めても、ネット上の情報は信憑性が高いかは不透明である。特にSNSは誰もが自由に発信できるツールであるため信憑性に欠けることが多い。世の中が便利になるのは生活の質が上がり良いことではある。しかし緊急時は裏目にでる。では、どうすれば災害が起こったときに少しでも緊張が和らぐのか。私はスマホとは別にポケットラジオを持っておくことが助けに繋がると思う。緊急時に選択肢を増やしておくことが安心感になる。また、日ごろの備えとして藤原さんが教えてくれたのは「普段から家族や大事な人と災害が起こった時はここにいるという約束を事前にしておくことが大事」ということだ。現代は「デジタル化」が推進されているがあえて「アナログ」にも目を向けることが、私たちを助けるきっかけになるのではないかと思う。

(取材先:ラジオ関西、フリーアナウンサー 藤原正美氏)
(取材者:大石祥子、谷口浩都、福島有紀哉、森島みなみ))

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?