2019年シアトル・マリナーズ全選手通信簿【リリーフ編】
昨年は89勝を挙げながらも、またしてもプレーオフ進出を逃したシアトル・マリナーズ。現状のチームではこれ以上の伸びしろはないと判断したジェリー・ディポトGMはオフに選手の大幅な入れ替えを断行した。
2019年の新生マリナーズは、開幕15戦13勝とチーム史上最高のロケットスタートを切るも、その後は本来の実力が露呈し、結局終わってみれば68勝94敗でアメリカン・リーグ西地区の最下位に沈み、18年連続でプレーオフ進出を逃した。
この企画はそんな今季のマリナーズでプレーした全選手の通信簿を付けてみようというものである。この記事ではリリーフ投手(オープナーを含み、バルクを除く)を取り上げる。
先発投手編、捕手・内野手編、外野手編はこちら。
〇評価方法
・Grade「A」が最高、「F」が最低(「E」はなし、中間は「C」)
・プレーした期間が極端に少なく、判断が付かない場合は「-」
・独断と偏見で評価しているため、そのあたりはご愛嬌
・数値は全てBaseball Referenceより引用。身長、体重、年齢、年俸は2019年シーズン開幕時点。
ロエニス・エリアス
一度ボストン・レッドソックスへトレードされるも、昨季再びマリナーズに戻ってきた。元々はシーズン二桁勝利を達成したこともある先発投手だったが、力強い速球をより生かすために今季から本格的にリリーフに専念することとなった。
開幕直後は試合中盤から終盤まで幅広い役割を担ったが、ストリックランドの怪我、スウォーザックの不調などもあり、クローザーに定着。14セーブを挙げた。クローザー転向後も安定した投球ができたこと、また年俸も安かったことからトレードバリューが急上昇した。
トレードデッドラインにナショナルズへ移籍。移籍初登板の試合で回跨ぎのため打席に立った際、監督の指示を無視してスイングし、ハムストリングを痛めるといういきなり残念な一面を見せてしまう。結局ナショナルズでは4登板に留まり、ポストシーズンのロースターからも外れたが、なぜかインスタグラムで世界一になったことを誇り気にアピールしていたらしい。ナショナルズファンの皆様、ごめんなさい。
今季のハイライト:5月14日のオークランド・アスレチックス戦、1点リードの7回2アウトから登板し、2.1回5K無失点の圧巻のリリーフ
アンソニー・バス
2016年にはNPBの北海道日本ハムファイターズでプレーし、チームの日本一にも貢献した右腕(当時の登録名は「バース」)。5月中旬にオプトアウトでFAとなっていたところ、マリナーズが契約した。実は日本ハム加入直前にもマリナーズに在籍していた(プレーはなし)ため、今回が2度目の在籍となった。
マリナーズとの契約と同時にMLBへ昇格し、以降は主にセットアッパー、時にはクローザーとしてフル稼働し、ブルペンを支えた。特にエリアス、ストリックランドのトレード後は経験の浅い若手が大半を占めるようになってしまったマリナーズブルペンにあって、バスのようなベテランの存在感は大きかった。パフォーマンス面でも、rWAR1.0はマリナーズの全リリーフ投手の中で最高の数値だった。
残念ながら若手のためにロースター枠を空ける必要があり、シーズン終了後にウェーバー経由でトロント・ブルージェイズへ移籍することとなってしまったが、彼の今季の貢献には本当に感謝したい。
ブランドン・ブレナン
ルール5ドラフトでコロラド・ロッキーズから加入。ディポトGMは相当ブレナンを気に入っていたらしく、元々マイナー契約での獲得を目指していたようだが、ロッキーズと契約してしまったことから、ルール5ドラフトで半ば強引に獲得した。恐るべし執念。
90mph台後半の速球と独特な変化を見せるチェンジアップが主な武器。チェンジアップの変化がマックス・シャーザーに似ているとの声も。4月までは防御率1.96と最高の滑り出しを切ったが、夏場は肩の痛みにも悩まされ、調子を崩し、故障者リスト入りする時期もあった。休みが功を奏したのか、9月は持ち直した。
夏場の不調が響き、防御率やFIPは目立った数値ではないが、今季のマリナーズブルペンにおいては欠かせない存在であった。今季の経験を活かし、来季は更なる活躍に期待したい。
コリー・ギアリン
FAでアスレチックスから加入。サイドハンド気味のフォームと3年連続50試合登板以上のタフさがウリのベテラン右腕で、様々な場面を任せられる器用さもチームに1人は置いておきたいと思わせてくれる。
今季はセットアッパーとして開幕。4月は壊滅的にストライクが入らない時期もあったが、概ね1年間を通して安心して見ていられるタイプのリリーフだった(※当社比)。7月のトレードデッドラインで放出できず、8月下旬にウェーバー経由でニューヨーク・ヤンキースへ移籍。
オースティン・アダムス
5月にナショナルズからトレードで加入。MLBに同姓同名の投手がもう1人いるため、ミドルネームで判別する必要がある(こちらはランス)。
ナショナルズではあまりチャンスを与えられないまま、DFAされてしまったが、移籍後はブルペンの柱へと成長。6月中旬から7月にかけては11試合連続無失点を記録するなどチャンスを見事に生かした。特に空振り率48.2%を記録したスライダーはMLBでも屈指の変化球となり、三振の山を積み上げ、シーズン通算でのK/9も14.9と驚異的な数値を残した。
しかし、登板過多気味だったのが祟ったのか7月に肩を痛め故障者リスト入り。9月に復帰したものの本調子とはいえない状態だった。怪我をしっかり治して、来季も奪三振マシーンとしてブルペンで暴れてもらいたい。
今季のハイライト:7月2日のセントルイス・カージナルス戦で同点の7回から登板し、回を跨いで相手上位打線を4者連続三振、自身も勝利投手に
コナー・サゼック
開幕直後にテキサス・レンジャーズからトレードで加入。制球に課題がある投手とされてきたが、マリナーズ移籍後はフォームの微調整に取り組んだことで、多少改善の兆しが見られた。また、スライダーの割合を増やし、ボールゾーンで空振りを奪えるようになった点も功を奏した。
マリナーズとしてはブレナンに続いて思わぬ掘り出し物を引き当てた形となったが、6月に右肘の炎症で故障者リスト入りすると、そのままシーズン終了まで復帰することができなかった。10月に入ってトミー・ジョン手術を受けることが発表され、来季の全休もほぼ決定。40人枠からも外された。
サム・トゥイバイララ
昨年のトレードデッドラインにカージナルスから加入も、直後にアキレス腱断裂の大怪我によりシーズンを棒に振っていた。
今年もその怪我のリハビリで出遅れていたが、長いリハビリの末、7月に復帰。復帰後は怪我の影響を感じさせない安定感のあるピッチングで、崩壊寸前だったブルペンを支えた。来季も試合の重要な場面を任せられるようなピッチングに期待したい。
マット・マギル
7月中旬にミネソタ・ツインズからDFA後のトレードでマリナーズに加入。今季は移籍前の時点で28.1回15BBと制球に苦しんでいたようだが、移籍後は制球面で劇的な改善が見られた。
エリアスがトレードされてからはクローザーを務めることもあった。現状、誰が来季のクローザーを務めるかについては白紙となっているため、マギルがその役割を担う可能性は十分あるだろう。
マット・フェスタ
マイナー時代はクローザーを務めていたこともあり、今季のフェスタにかかる期待も大きかったが、結果として目立った成績を残すことはできなかった。
平均球速92.6mphとリリーフとしては球威不足なのが気がかり。一方でスライダーは一定程度通用することはわかったため、来季は投球の構成を工夫し、巻き返しを図りたい。
マット・ウィスラー
7月上旬にサンディエゴ・パドレスからトレードで加入。リリーフとしては全く使えるような状態ではなかったが、オープナーとして思わぬ才能を発揮。8回オープナーを務め、10回無失点、10K/1BBと抜群の成績を残した。
特に今季のマリナーズはルブラン、ミローンとオープナーが必要な投手を複数抱えているにもかかわらず、オープナーに適した投手がほとんどいなかったため、ウィスラーの存在は非常にありがたかった。
が、実質オープナー専任にもかかわらず既にオプションが切れている投手は使い勝手があまりに悪いせいか、シーズン終了後にウェーバーにかけられ、ツインズへ移籍した。
レジー・マクレイン
2016年ドラフト13巡目指名で入団。昨年まではA+級より上のクラスで投げた経験がなく、オフシーズンは球団主催の球速向上プログラム「Gas Camp」に参加しながら、Uber Eatsで食い扶持を繋いできた。
その「Gas Camp」の成果が出て、球速が92mphから96mphまで大幅にアップ。開幕はA+級で迎えたが、あっという間にAAA級まで駆け上がり、勢いそのままにMLBへの切符も掴んだ。しかし、MLBでは実力の壁に跳ね返される形となった。
一度失点し始めると止まらなくなる傾向にあり、1回に3点以上失点した試合がMLB昇格後14試合で3試合あった(前述の試合を除けば昇格後の防御率は1.50)。MLB定着にはもう一段階実力アップが必要か。
ザック・グロッツ
独立リーグ等を経て、マイナー契約で加入。開幕はAA級で迎え、先発・リリーフをこなしながら26試合で防御率2.51、57.1回で69K/11BBと結果を残した。
トレードデッドラインにエリアス、ストリックランド、リークが一斉に放出され、枠が空いたことからMLB初昇格。失点する試合は少なくなかったが、防御率が示すほど内容は悪くなかった(実際にFIPは2.69と優秀)。ゴロ率65.2%と非常にゴロを打たせるのが上手く、今後も安定した成績が見込めるのではないだろうか。
チェイセン・ブラッドフォード
昨季はMLBとマイナーを行き来する生活ながらも様々な場面を任せられる便利屋としてチームに貢献し、今季は飛躍が期待されていた。しかし、終わってみれば終始怪我に悩まされる1年間を送り、8月にはトミー・ジョン手術を受けたため、そのままシーズン終了となった。
来季の大半は投げられないと見込まれることから40人枠を外され、ブラッドフォード自身がFAを選択した。
マイク・ライト
ブレナン、サゼックの活躍に味を占めたディポトGMが剛腕ガチャの一環でボルティモア・オリオールズから獲得。90mph台後半にも届く速球は非常に良いものを持っており、三振を奪う力も兼ね備えていたが、少々運にも恵まれなかったこともあり、防御率にはあまり反映されなかった。7月5日にDFAで40人枠を外れ、シーズン終了後にFAとなった。来季からはKBOのNCダイノスでプレー予定。
ダン・アルタビラ
怪我が無ければリリーフエースになるだけのポテンシャルを秘めている投手。今季も怪我に苦しみ、17試合の登板に留まった。また、ここ2年は怪我に加えて制球に苦しむ場面も多く見受けられるようになってきた。
速球は相変わらず平均97mph程度と高水準、スライダーも空振り率39.3%と一流クラスの変化球となっているだけに、怪我と制球の問題を早く克服してほしいものだが・・・来季こそはまずは1年間をフルで戦いたい。
ザック・ロスカップ
左のワンポイント要員として、ロサンゼルス・ドジャースからFAで加入。期待通り、左打者を.200/.391/.286と抑え込んだが、制球があまりに不安定であり、見ている側としても常にハラハラせざるを得なかった。特に日本開幕第2戦目では、同点の延長11回に登板し、最初の2人を三振に切った後、ヒットと2つの四球でサヨナラのピンチを演出。結局無失点で切り抜けたが、開幕早々マリナーズファンの心臓を痛めつけた。5月17日にDFAとなり、ウェーバー経由でブルージェイズへ移籍した。
アンソニー・スウォーザック
ロビンソン・カノー、エドウィン・ディアスらのトレードでニューヨーク・メッツから加入。カノーの高額な年俸をメッツに負担してもらう代わりに、その年俸を一部相殺する形でスウォーザックをマリナーズが引き取る形となった。
日本開幕戦は怪我で帯同しなかったが、アメリカに戻ってからはストリックランドの怪我に伴い、クローザーを務めることになった。初めは無難に抑え、マリナーズブルペンの数少ないオアシスとなっていたが、徐々に飛翔癖が現れ始め、4月18日から5月7日までの7登板6被弾とリリーフとしてはおおよそ考えられないようなペースでHRを献上した。マリナーズ時代のHR/9は驚異の4.0。5月20日にアトランタ・ブレーブスへトレードされた。
テイラー・ギルボー
エリアスらのトレードでナショナルズから加入。スリークォーター気味のフォームからコンスタントに90mph台中盤の速球を投げ込めるのが魅力である。
8月中旬にMLB初昇格を果たす。シーズン終盤は左のワンポイント起用が目立つようになってきたが、どちらかといえば対右打者の方が結果は出ている(サンプルは少ないが)。現状のマリナーズは左のリリーフが少ないため、来季の開幕ロースター入りは十分ありうる。
ジェシー・ビドル
スウォーザックとのトレードでブレーブスから加入。かつてのトッププロスペクトという評価もすっかり地に落ちてしまった。深刻な制球難に改善の兆しはなく、マリナーズ移籍後も結果を残すことはできなかった。6月23日にDFAとなり、レンジャーズへ移籍した。
マット・カラシティ
マイナー契約で加入。2018年にはNPBの東京ヤクルトスワローズでプレーした経験も持つ。6月下旬にMLB昇格を果たすと、主にオープナーとして起用され、結果も悪くはなかったが、7月7日に1回を持たず5失点してからは大差でのリリーフ登板のみとなった。9月に40人枠を外れ、シーズン終了後にそのままFAに。
ゲルソン・バティスタ
カノー、ディアスらのトレードでメッツから加入。100mphの速球が最大の魅力のリリーフプロスペクト。
とにかくコマンドに課題があり、また速球も棒球になる傾向にあり、甘く入ったところを悉く痛打された。平均球速97.7mphの速球で被打率.385、被長打率.654はあまりにお粗末。MLBで生き残るためにはコマンドを最低限のレベルまで改善させ、またアウトピッチになり得る変化球も1球種は欲しい。
テイラー・スコット
マイナー契約でシーズン前にマリナーズに加入。開幕はAAA級で迎えたが、6月8日に南アフリカ出身の投手として史上初のMLBデビューを果たし、話題となった。
ただ、肝心の投球では目立った結果は残せず、6月25日にウェーバー経由でオリオールズへ移籍。来季からはNPBの広島東洋カープでプレーするため、日本で彼の投球を見られることになる。
デビッド・マッケイ
2018年シーズン開幕前にカンザスシティ・ロイヤルズから$1でトレードされてきた。
今季は3月末にMLB初昇格も、一度も登板することなくマイナーへ降格した。5月に再び昇格し、ようやく念願のMLBデビューを果たした。三振は奪えるものの制球に難があるという状況はMLBでも特に変わらず、結局8月にウェーバー経由でデトロイト・タイガースへ移籍した。
アート・ウォーレン
2015年ドラフト23巡目指名で入団の未来のクローザー候補。100mph近い速球と鋭く落ちるスライダーが武器。
今季はAA級でクローザーを務め、29試合で15セーブ、防御率1.71、31.2回で41K/11BBと文句なしの成績を残し、9月のロースター拡大時にMLBへ昇格した。MLBでも登板した6試合を全て無失点に抑え、まずは上々の滑り出しを切った。
スライダーはMLBレベルでも高水準であり、少ないサンプルながら空振り率40.9%は立派である。かつてのエドウィン・ディアスのような存在になれるか?
パーカー・マーケル
独立リーグ、KBOも経験した苦労人。開幕はAA級でスタートし、7.2回で18Kの奪三振マシーンへの変貌を遂げると、昇格したAAA級でも22試合で防御率2.60、27.2回で44Kと存在感をアピールし、MLBへの初昇格を勝ち取った。
しかし、MLBではその奪三振マシーンぷりが発揮されることなく、7月23日にDFAとなり、ウェーバー経由でピッツバーグ・パイレーツへ移籍した。
R.J.アラニズ
昨年までMLBでの経験はなかったが、MLB契約で加入。
マリナーズでは全く通用せず、奪ったアウトの数と与えたヒットの数がほとんど同じだった。5月末にウェーバー経由でシンシナティ・レッズへ移籍。
ショーン・アームストロング
2018年はシーズン後半からブルペンの貴重な1枚として貢献。今季はセットアッパーとしての活躍に期待がかかったが、スプリングトレーニング中の怪我で出遅れる。
4月中に復帰を果たしたが、昨年の姿は見る影もなかった。4月26日にDFAとなり、オリオールズへ移籍。
ハンター・ストリックランド
#HunterStricklandFightClub のオーナー。FAでサンフランシスコ・ジャイアンツから加入した。
シーズン前にディアスをトレードしたこともあり、クローザーとしての役割を期待しての獲得で、日本開幕2連戦ではその期待に違わぬ活躍を見せた。
が、アメリカに戻った2戦目で広背筋を痛め、故障者リスト入り。おまけにブルペンの時点で背中に違和感を覚えていたにもかかわらず投球を続け、逆転HRを浴びた挙句、怪我も悪化させてしまった。
全くの期待外れに終わったが、7月のトレードデッドラインでエリアスと共にナショナルズへ売りつけることに成功。ただ、エリアス同様、ナショナルズでは特に目立った活躍はできず、ポストシーズンのロースターからもほとんど外れていた。チャンピオンリングだけ受け取ることにはなった。
いや、ナショナルズファンの皆様ほんとごめんなさい。
今季のハイライト:開幕戦の最終回に登板し、パーフェクトリリーフでチームの今季初勝利を守り切った
ライアン・ガートン
2017年にタンパベイ・レイズとのトレードで加入。今季は5月のわずかな期間のみMLBに昇格するに留まった。5月21日にDFAとなり、シーズン後にFAとなった。その後、ミネソタ・ツインズとマイナー契約。
ニック・ランベロー
オプションが切れていたため、開幕ロースター入り。最速90mph台後半にも届く速球を持ち、マイナーでも結果を残していたが、MLBでは実力を発揮できなかった。5月17日にDFAとなり、6月になってリリースされた。その後は独立リーグでプレーした後、メッツとマイナー契約を結んだ。
今季のハイライト:3月30日、4点差の9回2アウトからディラン・ムーアの3連続エラーで1点差に迫られるも、最後はリードを守り切ってキャリア初セーブ
Photo by Blake Handley
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