やがて哀しきFino alla fine
Fino alla fineとは、イタリアの強豪ユベントスのグラブモットーである。直訳は「終わりまで」
サッカーは生で見るに限る。
なぜなら、好きな選手にずっと注目できるからである。
先日、Jワンの試合をみに、一家でレイソルの本拠地へいった。
試合結果から言うと、スコアレスドローだった。
スタジアムにサッカーを見にいくのは久しぶりで、私は楽しみにしていた。
対浦和レッズ戦を選んで見に行ったのだが、何故かというと、浦和レッズには、日本代表やマルセイユで活躍していた、酒井宏樹選手が在籍しているからだった。
ところが当日、最も見たかった酒井選手は、ケガで欠場だった。
この時点で既に半分、楽しみを失った。
スタジアムに入って生ビール飲みながらキックオフ。
そして、なんと、感染症予防対策で、歌と声援が禁止されていた。
正規のチケットを定価で買って現場に来てるのに、応援歌も野次も聞けないなんて…ショックで力が抜けた。
もう楽しみは9割5部消え失せた。
だが、まだ90分有るのである。Fino al fineの精神で、試合内容に期待しよう。
で、見ていたらえらくつまんないのである。
なぜつまんないかというと、レイソルも浦和も、どちらもボールを回して、ボールの所持時間を稼ごうとしていたからである。
積極的な攻撃しようとする気配はゼロだった。
ロストボールを一人が奪取しても、誰も走らないので、一か八かのクロスを上げようがボールの落下天に誰も追いつかない。
禁止されていたかが二、三人の観客から野次が飛んだ。当たり前である。
ホルモンバランス崩れ気味のおばさんはヒステリー起こしそうである。
全員で守って、コロコロ転がったロストボールを、感の良いフォワードが奪い取り、気がつけば相手側陣地にそのフォワードと相手側GKしかいない一騎討ち、そういう試合を期待していた。
その試合運び、どこで記憶していたのかというと、何年も前、偶然深夜にテレビで見たスペイン一部リーグの、アトレティコマドリードの試合だった。
現地観戦でもなければJリーグでもなかった。
無いものねだりなのはわかってる。
ユベントスやアトレティコの選手たちの年俸、クラブの規模もわかってる。
ヨーロッパと南米から布教活動に来た人は言うだろう。この国はサッカーが根付かない沼地だって。
しかししつこいようだけど、現地観戦はお手軽にはできないのだ。
私だけでは無い。全ての観客はほぼ一日潰して、スタジアムにくるのだ。
前回来た時は、ユベントスの選手たちみたいな気迫で端から端まで走る選手も何人かいたのに。
応援席全体にうんざりしたムードが漂ってきた。
そんな中、前半終了前、変化があった。
倒された一人の選手がファールのアピールをしたが審判は、ファールを取らなかったので、その選手が怒りで立ち上がり、相手選手に肩を当てたのである。
当てられた選手が何か喚き立てていたが、内容まで聴こえない。
客席も緊迫した喧嘩上等の空気に包まれ、期待感が高まった。
当人たちが掴みかかりそうな瞬間、他の選手が止めに入り暴力沙汰はエスカレートせずに終わった。
その後主審が双方にイエローカードを出して、治まった。
この間、5分くらいだったが、ピッチと客席が一体となって盛り上がったその日一番のハイライトだった。
(終わり)
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