彼女について
彼女はいつも私を見ている。
ようやく座った首を少し傾けて洗濯物を干す私の方向に顔を向ける。
他の人に抱っこされていても目線は私の顔。
そのつぶらな瞳が私のことを追いかけてくれるのも少しの間だけだ。
台風が去って、竜巻のような風が暑い夏を攫ったら少しひんやりする涼しい季節がやってきた。
かわいいひよこが歩んでいる白い服を着せる。
産まれたばかりのときはまだ大きかった長袖のロンパースは今やピッタリになった。
抱っこすると懐かしい匂いがする。
ああ、新生児期の赤ちゃんの匂いだ。
服に染み付いていたんだ。
真っ白お肌にむっちりお足。
こぼれそうなほっぺに小さい口。
抱っこすると温かくて気持ちの良い季節。
昔の私もこうだった?
あの人とは縁を切ってしまったから。
いずれ彼女も私のように母親と縁を切るのだろうか。
背筋が凍り暗い思考のループから抜け出せなくなる。
彼女は私と違うのだから。考えるのをやめよう。
最後なんだ、人生の中で。
いつも渦中の中にいるときは気が付かず、通り過ぎてからもったいないことしたな、と後悔するんだ。
どんなに写真や動画におさめても過ぎ去ってしまう。
もう半年。
あと半年。
後悔のないよう最後の時間を楽しもう。
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