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HACCPとTOC

20年ぶりにHACCPに取り組んだ。今回は推進者を支援する立場で。
ここ15年学んでいるTOCの考え方を適切に入れることで、量と衛生の両立ができる。

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HACCP(ハサップ)とは、前半の危害分析(Hazrad Analysis)と後半の必須管理点(Critical Control Point)に分けて説明されます。

危害は、「どういった危害があるのか、その原因とは」と言う分析を行います。食中毒、アナフィラキシーなどの健康被害を扱います。美味しくない、見た目が悪いなどの一般的な品質は扱いません。

ついで、その危害に対する、重篤度とコントロール手段の有無・有効性から、販売可能かどうかを判断します。

例えば、フグ料理屋さんは、免許を持った調理人が居ない場合は、提供しませんよね。一方で、牛肉ハンバーグは、中心温度75度1分以上加熱ができれば、提供できます(O-157の場合)。

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TOC(ティーオーシー)とは制約の理論と呼ばれています。システム内の要素がつながりがある場合(プロセス)に、システム全体の成果の向上を、一番能力の低い要素=制約に着目して、個々のばらつきの影響を最小にして行う理論です。

つながり
例えば、食品加工のプロセスで、材料の洗浄、切断、加熱調理、味付け、盛り付け、提供の工程を考えます。それぞれはつながっており、味付けの後に材料洗浄はできません。順番が決まっています。また、それぞれの工程には速度に違いがあり、その速度も一定ではなく、ばらつきがあります。

全体の成果
ここでは、洗浄から盛り付けまでを速く作り、お客様に提供することを、システム全体の目標とします。

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制約
制約とは、全体の成果を決める工程(あるいは方針)と定義され、システムに必ず存在する、物理現象です。(できる人が少なかったり、機械の速度であったり、理由は様々です)
例えば、切断に手間がかかっている(制約)とすると、切断の速度以上に料理は提供できません。システム全体の目標を向上させるには、まず切断の速さ合わせて投入(投入制限)し、しかも切り易いように整えて(フルキット)おくことが解になります。
それができるようになって初めて、制約の能力向上に手をつけないと、成果を損なう場合があります。



HACCPとTOCの融合

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食品加工では、「速く作り、お客様に提供すること」の前に、食品の安全性を達成する必要があります。必須管理点を制約に見立ててることで、共通に取り扱うことができます。

食品の汚染は、材料由来、洗浄不良、切断ルール違反、加熱調理不良、食器・容器と手指・道具の汚染...などから発生します。前工程の汚染を小さくすることが求めれられています。

例えばハンバーグのO-157による、食中毒を考えます。土から取れる玉ねぎについている場合を想定して、泥を良く洗浄します。まな板や包丁を牛肉と分けて、牛肉由来のO-157が付着しないように、切断する。できる限り減らしておき、加熱調理工程で、一番熱が伝わりにくい中心が75度×1分以上を保持できるようにします。
加工後は、清潔な容器に盛り付け、素早く提供します。

TOC的な表現をすれば、衛生的なフルキットで、必須管理点の加熱調理工程に投入し、速やかに提供する。

まとめ

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ここで、切断能力が量的制約、加熱調理工程が衛生的制約となって、1つのシステムで2つの制約は扱いにくくなっている。どちらを優先するかで、量と衛生を妥協してしまうことが考えられる。
衛生制約の滞留を防ぐために、量的制約の後に衛生制約を配置した場合が良い。

衛生制約と量制約の順番関係を検討する。
A:量的制約→衛生制約
B:衛生制約=量的制約
C:衛生制約→量的制約

A:量的制約→衛生制約は◎
量的制約の切断工程が前にあって、衛生制約の加熱調理工程が後に続く。
衛生制約の能力が高いので、切断された食材は余裕を持って衛生基準をクリアできる。量的制約でミスがあっても、衛生基準はきちんと守られる。一方で衛生制約での手直しは、時間的余裕の範囲内でカバーできる。
マネジメントは、衛生制約に学び鍛錬した人を配置し、量的制約に注目することができる。あるいは、量的制約を全体でカバーさせ、衛生制約に集中する。

B:衛生制約=量的制約は△
切断工程を増強して、加熱調理工程を、TOCとHACCPの共通の制約に置く。
マネジメントは、一つの工程に注目することで対応を図ることができ、マネジメントの使用量が減る。一方で、現場は温度管理や計測などの業務が増えて忙しくなる。手作業でなくて、機械生産なら上手くいきそうだ。
もし、ここで製造ミスが出れば、生産量の低下、スループットの低下につながり、取り返せない。衛生ミスも同様になる。とりかえすために、手直しに時間をかけても、スループットの低下は免れない

C:衛生制約→量的制約は✖︎
衛生制約の加熱調理工程は動かせないので、量的制約を盛り付けに移してみる。加熱調理済みの食材が、盛り付けの前に在庫される。TOCでは良いが、HACCPではダメである。在庫の滞留時間で衛生が失われていく。時間が経過した食材は再加熱されたり、廃棄になったりする。その結果、加熱工程が盛り付けに速度を合わせ、加熱工程前に在庫を置くこととで、系が安定する。

最後に、HACCPの管理でもTOCの考えたを組み込んで設計することで、衛生品質も数量も担保できる。さらに、発展させると、量的制約→時間の経過に左右されにくい品質制約→時間の経過に左右されやすい品質制約の並びが適切と言える。7/22



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