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受精卵の成虫

 これは僕が駆け出しの精子だった時のお話。当時父の睾丸内で肉体労働をさせられていた僕は夜中当然の緊急出動命令を受け4億人の仲間と共に異国の女王様と条約を結びにいかされた。しかし僕たちにはその条約を結ぶために過酷な道のりが待ち構えていた。 
何人もの仲間が道中バタバタと倒れていく。道を進んでいくにつれて減っていく仲間。女王様の姿が見えた時気がついたら仲間は50人ぐらいになっていた。
そして50人の仲間と共についに女王様の前に立った時、やっと条約が結べる!という感情と倒れていった仲間の姿が脳内によぎった。生き残った仲間と条約を結んでこのミッションを完遂させようそう思い生き残った仲間と顔を合わせながら頷き合ったその時
女王様から信じられない一言を下された。
「条約を結ぶのは一匹のみとする」
わけがわからなかった。
ある仲間はこういった。
「条約を結べなかったものはどうなるのですか?」
女王様は何も発さず首を振った。
それは一匹しか生き残れないことを意味していた。
そして少し時間を空けて
「条約を結びたいものは誰よりも強くて速いタックルで私の懐に入り込みなさい!」
それを言われた瞬間僕と50人の仲間が一斉に女王様にタックルをぶつけにいった。
思考はぐちゃぐちゃだった。50人の仲間と生きて条約を結ぶはずだった。
なのにどうして。
でもここで死ぬわけにはいかない。こうなったからには条約を結び生存競争を勝ち抜いて生き残ってやる。
僕は無我夢中になり女王様にタックルをしにいった。
タックルは何回も跳ね返された。それは50人の仲間達も同じだった。
どうしたら条約を結べるのか?一度タックルをやめ状況を冷静に眺めた。
するとあることがわかった。跳ね返されている仲間の全員が体からタックルしていたのだ。
普通のタックルではダメだ。こうなったら当たって砕けろの精神で頭からタックルしてやろう。あの状況では誰も思いつかない発想だった。
しばらく休憩しパワーを回復させた後僕は女王様の元へ全力疾走で向かい頭からタックルした。
すると女王様の懐にめり込んだ感触がした。そのままラグビーのスクラムのように突っ込んでいく。どんどん入り込んでいく。
奥まで入り込んだ瞬間女王様がいった。
「条約締結」
その瞬間目を開けられない光が指し僕は意識を失った。
そっからの記憶はない。
気がついたら女王様と条約を結んだ異国から外に放り出されていた。

そして僕は叫んだ
オギャーオギャー(どーもー受精卵の成虫です)

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