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第6回・時速30㎞の景色

私は、車は所有していない。
これは現時点の話だが、持つ意味が無いからだ。

別に車に興味が無いわけではなく、普通自動車免許も18歳で取得したし、20代の頃は毎日のように車を利用し移動していた。
「この車カッコイイなぁ」という思いは今でもあるし、「もし買うとしたらコレ!」と考えたりもする。

しかし、今の私の移動手段といえば、もっぱら原付だ。
本業の職場に出勤する時も、少し用があって出かける時も、基本数キロ圏内であれば原付で済む。

乗り物として見た時、『電車』もとても魅力的だが、毎日のようにそれに乗って目的地を目指すよりも、原付で直接向かった方が、経済的だし効率も良い。
中古で5万5千円で購入した原付は、ここ数年の間、大活躍してくれている。

もっと色々な意味で余裕があれば、車の購入も考えるだろう。
買い物に行っても荷物の量を気にしたりせずに済むし、気分転換に遠くに出かけたりなど、行動範囲は広がるのかも、なんてビジョンが一瞬脳裏を過る。

だが、そもそも今は物欲も無いから荷物に困るほど買い物もしないし、遠出をするなら、それこそ魅力的な電車で移動して、現地ではゆっくりとその街の様子を散歩しながら感じる方が楽しい。

ハンドルを握り、音楽をかけながら窓を全開にし、颯爽と街を駆け抜け風を感じる。車だったらそんな気持ち良さそうなイメージも浮かぶが、それはイメージの中の世界であって、現実ではそんな情報量が多いことは、疲れるだけだろう。

歳を感じ始めた今は、そんなあっちゃこっちゃにセンサーを張り巡らし、気にかけてなんていられないのだ。

現在の私の1日の生活は、本業に割り当てられる時間が多い。
その割には経済的な安心はそこまで無い状況だ。

車を持っていても、乗る時間は無いし、僅かばかりの乗れる時間が確保出来たとしても、それのためにかかる維持費を考えると、持つ意味が無い。

もっと色々な意味で余裕があればと書いたのは、そういう意味だ。

今はそんな話しか出来ないが、もしもその余裕というものが持てたら、車関連でやってみたいこともある。
それは、キャンピングカーで日本全国をゆっくりと回ることだ。
まるで散歩をする様に。

その土地の美味いものを食べ、景色を実際にこの目でとらえ、生活を感じる。
自分にとっての「何これ?知らない」を沢山発見して、まだまだ自分は無知であることを楽しみたい。
それこそ余裕というものだろう。

今の生活では『便利』を選ぶことは、絶対的に『余白』を生むものではない。
むしろ『少し不便』を選び、想像や空想や妄想をしている方が、不思議と『余白』が生まれたりもする。

最高時速30㎞だろうが80㎞だろうが、最終的には目的地に着くことには変わりないのだから。

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