見出し画像

31.青い奇跡の橋ードレスデンのロシュヴィッツァー橋


エルベ川に架かる美麗なロシュヴィッツァー橋

 ドイツ・ドレスデンのエルベ川に架かるLoschwitzer bridge(ロシュヴィッツァー橋は、橋長: 280m、全幅:12m、高さ:24m、最大スパン:147m、総重量:約3800トンの鋼鉄製の片持ち梁トラス橋である。
 淡い青色の塗装が、周囲の赤い屋根、緑の木々と良く調和している。

 土木技術者であるClaus Koepcke(クラウス・ケプケ)とHans Manfred Krüger(ハンス・マンフレッド・クルーガー) の設計により、1893年7月に開通した。両側に広めの歩道を有する道路橋である。

 一般的にトラス橋は簡素で単調な構造の場合が多いが、「ロシュヴィッツァー橋」は、石積み橋台の上に門型の鉄塔を立て、主桁を引張り上げているかの様子が、遠目には吊り橋とも思えるような美しい姿を見せている。

写真1 エルベ川に架かるロシュヴィッツァー橋

 第二次世界大戦の終戦間際に、多くの橋がナチスにより爆破されたが、「ロシュヴィッツァー橋」は、ドレスデンで唯一爆破を免れた橋であり、架橋当時の姿を残している。

 この「ロシュヴィッツァー橋」は、通称、Blaues wunder(ブラウエス・ヴンダー、青い奇跡)と呼ばれている。

 1935年にドレスデンのある新聞が、「当初はコバルトブルーとクロームイエローを使って緑色に塗装されていたが、次第に淡い空色に変色したため、Blue wonderと呼ばれるようになった。」と書いたとの説がある。
 一方で、架橋当初から青色の塗装が施され、橋脚無しで最大スパン:147mを実現したことから、技術的な奇跡と見なされたとの説もある。

写真2 複雑なトラス構造の「ロシュヴィッツァー橋」

 L型鋼材を基本とした部材は、ガセット(Gusset)と呼ばれる鋼板を交点として、多数のリベット結合を駆使することで、全体的なトラス構造に組み立てられている。

写真3 「ロシュヴィッツァー橋」のトラスはL型鋼材のリベット結合で構成

桁橋からトラス橋への進化

 トラス構造の概念は、古くは14世紀の欧州で建築家たちにより提案されたといわれている。16世紀に入ると、軽量で加工の容易な木造トラス橋が各地で見られるようになる。
 19世紀の中頃以降の鉄道の急速な発展とともに、米国を始めとして世界中で木造鉄道橋が架設されている。木造トラス橋は鉄道橋で多く見られ、道路橋や水道橋などでも採用されているが、現存しているものは数少ない。

 トラス(Truss)は三角形を基本単位とした構造形式である。三角形は三辺の長さが決まると形が決まる。この三角形を組み合わせたトラス構造は力を合理的に伝達できるため、外力が作用しても安定した構造を保つことが知られている。
 橋体をトラス構造で補強したトラス橋は、これまでの単純な桁橋に比べて軽量・高剛性であり、長大化をめざして様々なトラス橋が開発された。

トラス橋の種類について

 代表的なトラス橋として「ハウトラス」、「プラットトラス」、「ワーレントラス」と発案者の名前を付した3つの基本形式が知られている。それぞれ、斜材に作用する力により区別されている。

 すなわち、斜材に圧縮力が作用するハウトラス形式は「木造トラス橋」に、斜材に引張力が作用するプラットトラス形式は「鋼鉄製トラス橋」に多くみられる。現在では、デザイン面から垂直材を使わないワーレントラス形式が好まれている

 トラス橋を構成する各部材には、軸方向に圧縮力か引張力という単純な軸力のみが作用し、曲げる力は作用しない特徴を有しており、比較的簡単に高精度の構造設計が可能である。

 以前には、国内にも多くの木造トラス橋が見られたが、現在は強度特性に優れた鋼鉄製トラス橋に架け替えられている。

図1 代表的なトラス橋の基本形式

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?