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橋のはなし

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人類の三大発明といえば、「道」「階段」「橋」である。中でも、橋は、河を渡るための手段として始まり、創造的思考に基づいて様々な発展を遂げて現在に至っている。その架橋の歴史と美しい姿…
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2024年7月の記事一覧

29.異彩を放つイタリアの木造橋ーベネチアのアカデミア橋

  鋳鉄アーチ橋から木造アーチ橋への道  15~16世紀に入ると、石造り「半円アーチ橋」から「扁平円弧アーチ橋」への技術革新が生じた。半円アーチ橋では橋の高さが径間(スパン)の半分となるが、扁平円弧アーチ橋では橋の高さを抑えてスパンを長くできる。  このような偏平円弧アーチ橋への移行を可能とした裏には、アーチ橋の設計技術の大きな進歩があった。  一方、欧州では15世紀に入ると「木造橋」の建設も活発化し、17~18世紀に最盛期を迎える。それまで主流であった石造りアーチ橋

28.ブレークスルーを実現ー英国アイアン・ブリッジ

石材・木材から鉄へのイノベーション  橋梁の構造材料として多用されている石材やコンクリートは、引張強度は低いもの圧縮強度と剛性が優れている。そのため、圧縮力のみが作用する石造りアーチ橋の発展を支えた構造材料である。  特に、石材の代替となるコンクリートに関しては、弱点とされる引張強度を、鉄筋コンクリートやプレストレス・コンクリートなどの複合化技術により改善することで適用範囲を著しく拡大した。  一方、軽量な木材は引張強度、圧縮強度、剛性(弾性率)共にバランスの取れた構

27.異彩を放つ英国の木造橋ーケンブリッジの数学橋

石造りアーチ橋から木造アーチ橋へのイノベーション  古代ローマ帝国の建国は紀元前753年とされているが、その最盛期には、欧州各地でアーチ水道橋が建造された。スペイン・セゴビアの中心部に建造されたセゴビア水道橋(Aqueduct of Segovia)は、現存する水道橋の中でも最大規模である。   紀元1世紀頃に建造され、中央部分は2層構造(2階建て)で高さは基礎部分を含めて最高で29mに達する。橋長:823m、全幅:5.1mの花崗岩製の多連アーチ橋で、スパン:約6mの半円

26. 欧州で最も古い木造橋ースイスのカペル橋

欧州の屋根付き木造橋  欧州では、木造橋の建設は15世紀に入って活発化し、17~18世紀に最盛期を迎えた。特に、スイスのルツェルン出身のヨーゼフ・リッターとトイフェル出身のハンス・ウルリッヒ・グルーベンマンは18世紀後半にスイス・ドイツで木造橋を多数建設している。  その多くはアーチとトラスを組み合わせた構造で、長いスパンを架橋することで人々に衝撃を与えた。現在でも、積雪量の多いスイス・ドイツ南部には、耐雪対策としての屋根付き橋が多く観られる。  こんにちでも、グルーベ