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橋のはなし

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人類の三大発明といえば、「道」「階段」「橋」である。中でも、橋は、河を渡るための手段として始まり、創造的思考に基づいて様々な発展を遂げて現在に至っている。その架橋の歴史と美しい姿…
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2024年4月の記事一覧

15.完成された木造りの美しさー伊勢神宮の宇治橋ー

伊勢神宮で和橋を観る  飛び石に始まり、丸太橋のような単純桁橋が連続桁橋へと長大化する過程では、創造的思考に基づく多くの発明・発見と試行錯誤が繰り返されてきた。  これまでは石橋を中心にして、石造りアーチ橋にいたる「橋のイノベーション」を垣間見てきた。  一方、メソポタミアや中国沿岸地域とは異なり、国内では森林資源が豊富なため、石橋とは異なる木造橋が、独自の発展を遂げた。  すなわち、橋を架ける周辺状況や利用状況に応じて技術革新が進められ、様々な形式の木造橋が架けられて

14.ハイブリッド化による創造的思考ー福井の九十九橋ー

既成概念の組合せ、ハイブリッド化  京都の鴨川に架かる三条大橋は、1590年(天正18年)に豊臣秀吉が増田長盛に命じて行った改修工事により、従来の木造橋について橋脚のみを石柱とする水平展開により生み出された。  「腐食に強い石材」と「曲げ力に強い木材」を組み合わせることで、当時としては最強の耐久性を有する桁橋を実現したのである。  既成概念の組合せではあるが、社会には大きなインパクトをもたらした。これも創造的思考の一環と考えて良いであろう。   このように異なった材料

13.コンクリート製アーチ橋への道ー京都七条大橋ー

鉄筋コンクリ―トの発明と橋への適用  ローマ時代の技術者が石灰岩を砕き焼いて創ったセメントに砂と水を混ぜてモルタルとし、このモルタルにポッゾラーナ(ナポリ近郊のポッツォリに産する良質の火山灰)を加えると硬度と水密性が良くなることを発見した。  ローマでは、それに砂利を混ぜたものをオプス・カエメンティキウム(Opus caementicium)と呼び、道路・水路・浴場の建設に利用した。現在のコンクリートの起源である。実際に、コンクリート橋も架橋されているが、その外面は煉瓦

12.常識の非常識についてー京都の水路閣ー

常識と非常識について  常識(Common sense)とは「誰でも知っているありふれたこと」の意味で、広辞苑によれば「良識、社会通念、一般知識」と解釈されている。この常識は人が社会において生きるための重要な知識であるが、個々人によって必ずしも一致してはいない。  往々にして、『自分にとっての常識は他人にとっての非常識』でもある。この常識は様々な主体(世界、国、地域社会、企業、学校、家庭など)において存在し、取り巻く環境と時間により変化する。例えば、企業であればその企業