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破滅的な初恋

 小学校四年生の時に好きになった吉田君が、今現在三十五歳になった私の中で一番未だに好きであった。身体が恋で沸き上がるような感覚、感じたことのない身体の火照りがそこにあった。

 歳を追うごとに私は彼のことが忘れられず、彼の姿を追いかけている。

 小学校四年生の時に吉田君は「好きなら付き合おうよ」そう言ってきた。私は「付き合う」ということをよくわかっていなかったが、両想いということだけは分かって喜んだ。

 吉田君とキスをしたのは五回目の下校という名のデートをしてきたときだった。吉田君は突然私の唇に触れそうして舌を入れて来た。私はそのぬめぬめした感覚とあまりの苦さに私は唇を離した。

 初キスの味は甘いと信じていたためその気持ちの悪さは絶望的であった。

「苦い。」

私がそう言うと吉田君は笑った。

「タバコのせいかな。」

 タバコとは大人の人が吸うもののはずなので私は吉田君のその言葉の意味が分からなかった。数年後彼は未成年喫煙していると知った。

 あの苦さが忘れられなくて二十歳になった時に私はタバコを吸った。あぁ不味い。この苦さが彼の味であった。

 小学校四年生の私にとって手を繋ぐことが恋人としての最高だったのに吉田君はそれを振り切って来た。私は大いに戸惑ったのであるが、吉田君のことが好きだったため断ることは出来なかった。

 毎日毎日吉田君のことを考えていた。吉田君ともっと話したい。もっと近づきたい。キスはしたくないけれどキスがしたい。

 吉田君と一緒に何十回目かの下校の時に吉田君はこういった。
「sexする?」

 小学校四年生の私は意味が分からなくて聞き返した。

「sexってなに?」

 そうすると吉田君は少し寂しそうに笑った。

「そっか、僕は毎日しているから当たり前だと思っていた。」

 吉田君はそういうと私を物陰に連れて行った。そうしてズボンのチャックを下ろして性器を露出させた。

 吉田君の性器の周りには赤い点々がついていたり、傷がついていたりした。

「ここと君のあそこを繋げるんだよ。あぁでもダメだ。僕は汚いなぁ。」

 二十歳を過ぎた私は吉田君が恐らく性的暴力または性的営業をしているのだと理解した。ただ理解した時には遅かった。

 吉田君はその後性器をしまった。

「僕、君のことが本当に好きだったんだ。」

 そうしてその日は彼の苦いキスを受けた。

 吉田君は次の日教室からいなくなった。

 三十五歳になった私はいまだに吉田君を探している。彼の苦い唇をそうして彼のボロボロになった性器を。

 それは私にとって破滅的であったが構わなかった。

 初恋が私をしばりつけている。

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