Interview journal Vol.7(kiretto-v/東京)
kiretto店主、菊池さんインタビュー。
ーーー 菊池さんは、「kiretto-v」というお店の店主で、衣服や小物のセレクトショップをされています。店名の「kiretto-v」は菊池さんの名前からきているんですか??
菊池 全然僕の名前は関係ないんです(笑) 店名の由来は登山用語なんです。切戸(きれと)って知ってますか?
ーーー いや、知らないです。どういう意味でしょう。
菊池 切り立った難しい場所をさしてるんですよ。そっからきています。まぁ町田という辺鄙な場所でやるにあたっていいかなと。
ーーー 町田にピッタリですね。
菊池 はい。 あと当初はギアっぽい商品を取り扱って、買いやすくて回しすいものを軸にしてビジネス的にやろうかなとも思ってました。でもその考えがずれていって。結局好きなものをやってます。
ーーー そうなんですね。そしたらセレクトされている商品は菊池さんの「好き」なものが多い感じですか?
菊池 そうですね。好きなものと後は「知り合い」です。友達みたいな(笑)
ーーー え〜〜!いいですね!!
ーーー 幼少期から服が好きでしたか??
菊池 いや全然です。 3人兄弟の中だったら1番こだわってたぐらいで。イトーヨーカドーとかの服ですけど。
ーーー そうなんですね(笑) そしたらいつから好きになりましたか?
菊池 高校生の時に、仲の良い友達が「チョキチョキ」という雑誌によくスナップで掲載されていて。それが格好良いと思ってて。
ーーー そうなんですね。
菊池 それで大学が青山学院大学だったんですけど、彼が通ってる古着屋が近くにあったんですよ。それで授業の合間に行こうと。そっからですかね。後はそもそも渋谷の大学に行くってなったら、入学する前になんか頑張らないとなって。要はモテたかったんでしょうね(笑)
ーーー 良い理由ですね(笑)
菊池 そっからは、ハマるのが早かったですね。僕「オタク」なんですよ。
ーーー 「オタク」ですか??
菊池 はい。そもそも「オタク」に憧れがあって。何かにのめり込んで、没頭するのって格好良いじゃないですか。好きなものはとことん掘りますね。
ーーー 青学時代から本格的に衣服にハマった。ということですが、学生時代はどこに服を買いに行ってましたか?
菊池 原宿にある「BUSINESS AS USUAL」古着屋があるんですけど、ヴィンテージから今物まであるお店にハマりました。そこのスタッフさんに憧れて。常連になって、そこに荷物置いて原宿で遊ぶぐらいになってました(笑)
ーーー 荷物置いてですか!?
菊池 はい。結構周りの友達もやってたんですよ。だけど通い始めて1年ぐらいでそこのスタッフさんが辞めるってなって。それで他のお店を見ていた際に、次にハマったのが高円寺です。元々90年代の古着を買っていたんですけど、もっとゴリっとしたヴィンテージを買いたいと思って。それで通うようになって高円寺にすごい友達ができました。当時は高円寺の古着屋みんな友達みたいな(笑)
ーーー 高円寺いいですよね。古着屋多いですし。
菊池 スタイリングの基礎は、そこにある感じです。ヴィンテージと今物の「ミクスチャー感」が好きですね。統一感がないのに、統一感がある。成立して見えるスタイリングは今の根底にもありますね。
ーーー そこから、大学卒業後にアパレルに就職した流れですか?
菊池 いいえ、まず大学院に行きました。もともと勉強も好きだったんです。
ーーー そうなんですね。何を勉強されていたんですか?
菊池 大学時代は哲学を専攻していました。ジャンルで言うと「表象文化論」になります。
ーーー とは??
菊池 芸術や文学、社会・文化現象一般について、ジャンルにとらわれず、分野を横断しながら検証していく学問です。
ーーー 初めて聞きました。すごいですね!
菊池 教員にもなってみたかったんです。それも含めて視野に入れてて。それで大学院に進学しました。大学院時代にあった人達がとてもスパイシーで(笑)
ーーー スパイシー(笑) どんな方達ですか?
菊池 表象文化論っていうジャンルを作った「小林康夫」さんだったり、建築家の「團紀彦」さんだったり。
ーーー すごいメンバーですね。。
菊池 はい。かなり濃い時間でした。衣服関係に関しては、格好良いと思っていた「NEAT」というブランドがあって。そこがたまたまバイトを募集してたんですよ。その日の内に履歴書を投函しました。それからメールして(笑) その行動力を買われて、働かせていただきました。
ーーー 普通順番が逆ですね(笑) でもその行動力が良かったんですね。「NEAT」さんはパンツが素敵ですよね。そこでは、何をされてたんですか?
菊池 「NEAT」は株式会社にしのやが運営しています。にしのやはPR業務も行っているので、1年半程度、PR業務をメインにやらせてもらってました。
ーーー PR業務ですか。
菊池 そうなんです。当時のにしのやは、社長の西野さんと僕の2人だったこともあり、みっちり扱かれました(笑) 服のことだけでなく、社会人としての礼儀・作法を教えていただきました。
ーーー かなり濃い時間だったんですね。
菊池 はい。現在kiretto-vで取り扱っているブランドもにしのやで働いている時に関わっていたものが多いです。
ーーー 繋がりって大事ですね。
ーーー にしのやさんで働いた後は?
菊池 はい。株式会社デイトナ・インターナショナルに入社します。
ーーー 大手ですね。
菊池 しかも入社前に新規事業の話があって。その事業が「NEAT」をやりたい。とう話だったんですよ。それで入社前から新入社員なんですけど、新規事業をさせていただくことになりました。
ーーー すごい!偶然というか、必然というか。。
菊池 そうですね(笑) 人に恵まれてますね。後は高単価エリアの販売もさせていただいてました。そこで、販売の基礎を学びました。
ーーー 菊池さんコミュニケーション能力高いから成績も良さそうですよね。
菊池 一応、半年間ではありますが新卒で社内売上TOP10には入ってましたね。
ーーー すごい。。それは他の人と何が違うんでしょう。
菊池 高単価エリアを任されていたのもあるんですけど、すごい数の接客していました。それですかね。
ーーー こなす数。大事ですよね。
菊池 後は、上司の方で販売員としてすごい優秀な方がいたので、とても感謝しています。接客の指導はしかり、洋服の知識も、その人にかなり教わりました。本当に感謝しています。
ーーー その後は?
菊池 後は、会社での裁量も多くなってきて本社業務やSNS周り、撮影やバイイングもやりました。
ーーー すごい。相当幅広く経験されたんですね。
ーーー そこから、現在のお店をするまでの経緯は??
菊池 27歳でデイトナ・インターナショナルを辞めます。それから「THIRTY ’THIRTY’」という新潟と金沢でセレクトショップをやってるお店があるんですけど、そこの社長の岡田さんと出会って、意気投合したんです。その岡田さんに、出会ってから2回目で「町田で店やりたいんだよね。物件抑えてるんだよね。やる?」って言ってくださったんですよ。なので、「やります。」って答えました(笑)
ーーー すごい意気投合したんですね(笑) すごい話です。。 それから、kiretto-vが誕生したんですね。お店のコンセプトはありますか?
菊池 はい。「都市と郊外を繋げる」です。田舎で着てても「浮かない」、都心部で着てても「ハリがある」服は意識しています。なので、クラシックなものが増えてますかね。
ーーー 良いコンセプトですね!特に菊池さんは白シャツとデニムのイメージがあります。
菊池 僕、白シャツ変態なんですよ(笑) 現在のお客様にも、白シャツとデニムの方多いですね。
ーーー ある意味、菊池さん化してますね(笑) 菊池さんの白シャツとデニムの着こなし、好きです。
菊池 ありがとうございます! 僕はフレンチシック・フレンチトラッドが好きなんです。ルールが無いんですよね。そこが魅力的というか軸にしているところです。
ーーー ルールが無い。ですね。コンセプトにも関わっている、「都市と郊外を繋げる」というのは、お店の場所にも関係しているのでしょうか?
菊池 そうですね。町田っていいんですよ。新宿などの都心部も1本で行けるけど、山とかも近くて自然も少し感じられる。そこが魅力的だと思ってます。後は、町田のまちづくりをしていきたいと思ってます。
ーーー まちづくり??
菊池 「THIRTY ’THIRTY’」の岡田さんが新潟と金沢のお店で、ある意味まちづくり/まちおこしを成功された方なので、この人と一緒に仕事したら町田を盛り上げられるかな。と思ったんです。町田をもっと文化的な雰囲気にしたいと思っています。それで町田が盛り上がってくれればなと。勝手ながらにプロデュースしている感覚です。
ーーー 素敵ですね。
ーーー 大変なことは、ありますか?
菊池 集客ですかね。町田ってまだあんまり、足を運ばれにくいんですよ。例えば、世田谷区に住んでいる人は渋谷には行くけど、町田には行かない。電車に乗っている時間はあんまり変わんないのに。多分東京の方は、下るのに少し抵抗があると思うんです。それも含めて町田を魅力的な街にしたいなと思ってるんです。
ーーー なるほど。確かに都民はあんまり下る意識は少ないかもしれませんね。逆にやりがいはなんでしょう?
菊池 顧客様ができることですね。みんな仲良いんです。お花見とかも一緒に行ったりします(笑) 誕生日を祝う方もいますし。
ーーー それは仲良いですね!
菊池 コミュニティっていいですよね。お店ってそういうところだと思うんですよ。今はまだ小さいけど、そういう場を広げていけたらなと思ってます。
ーーー 現在のアパレル業界について思うことはありますか?
菊池 販売員の価値が低いと感じています。こんなに頭を使う仕事なのになって。しかし一方で販売員側もだらだらやってる人も確かにいると思っています。でも本当はやる気がない人でも、こなせれば、ある程度稼げる仕事にしないといけないと思ってます。仕事をしてて、興味や好きが増えてくることもあると思うので。
ーーー なるほど。「販売員の価値」ですね。
菊池 なので、教育の問題もあると思います。知識を得られて、生活もできる仕組み化が大事だと思います。会社側もマニュアルを作るとか教科書作るとか。
ーーー 確かに!
菊池 だから僕の最終目標は、資料館/美術館みたいなものを作りたいんです。
ーーー それ賛成です!
菊池 少し細かい話になるんですけど、ファッションってフランスだと文化省なんです。要するに「保護しないといけないもの」なんです。日本だと管轄が経済産業省なので、文化省にできればなと。
ーーー 大きい視野の目標ですね。確かに日本だとファッション業界は少し下に見られがちですよね。
菊池 はい。そうしないと、いい人材が入ってこないと思ってます。親に自信持って答えれるような業界になって欲しいですかね。
ーーー どういったブランドに惹かれますか?
菊池 タイムレスなものと狙いが明確なものがいいです。後は他にないもので、ないことやってるけど、派手すぎないことです。
ーーー それは深いです。若いデザイナーには何を求めますか?
菊池 とりあえず、挑戦してくださいってことですかね。空振り三振かホームランか。とりあえずバットを振って欲しいです。後は、魂こもる、鬼気迫るものはやっぱり魅力的です。
ーーー 「鬼気迫る」、僕も肝に銘じます。
菊池 縫製や生地のクオリティの話ばかりでなく、プロダクト全体のクオリティが立ってる方がいいですね。
ーーー 菊池さん(お店)の今後の展望はありますか?
菊池 はい。さっきも少し話しましたけど、町田が盛り上がることですかね。それは、僕だけのことじゃなくて飲食店さん等も含めた街全体って意味です。良い空気を作りたいと思っています。
ーーー 良いですね。
菊池 後はもう1~2店舗、事業拡大したいです。専門店みたいなことをやりたくて。パンツ専門とかシャツ専門とか。凝ったことをしたいと思ってます。色んなブランドさんが置いて欲しいと思ってくれるような、お店にしたいな。
ーーー 専門店、魅力的ですね。
菊池 はい。頑張ります。
ーーー 本日は貴重なお話ありがとうございました!
店名:kiretto-v
住所:東京都町田市原町田4-22-16 武藤ビル202
店主:菊池 健斗
HP:https://kiretto.shop-pro.jp
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