【エッセイ】未来の夫、夫の未来
秋です。人肌恋しい秋です。
わたしのおうちは2DKで、だからというわけじゃないけど、わたしと夫の寝室は別にあります。
夫はタバコを自室で吸い、就寝時間も違うので別室がいいと同棲するときに言われたのです。
同棲することが決まった際、寝室は一緒がいいと再三ゴネたけど、わたしの要望は却下されました。
8年ほど共同生活をして理解したのは、生活スタイルが違うなら夫婦の部屋を分けるのもありかもということです。
寝室が別だということをいうと、まれに
「えーヤスタニさんのとこ、もう家庭内別居ですかー。やばくないですかそれー」
と冷やかす人がいます。
私は普段人に対して「引く」ことがあまりない方だと思いますが、「人へのいじりが下手くそなひと」を見るとうわあ、薄ら寒っと思います。
シャッター降ろしちゃおうっと。
閉店ガラガラ。
可哀想なひと。そこいじって地雷だったらどうするんでしょうね。知りませんけど。
話を戻します。
肌寒くなって、薄手の羽毛布団の上に毛布をかける。羽毛布団の下には肌触りのよいタオルケット。
深々とした夜、隣の部屋の夫に会いに行きたくなります。
自分のやりたいことを優先して、お邪魔しないことも多々あります。
遊びに行くとタバコ臭いベッドでゴロゴロして、カイジの作者の漫画とか読んだりします。
今夜は会い行くの、ちょっとがまんしてみようかな。
彼の部屋へは大股で5、6歩進めばドアがあるけど、明日の朝までじっとしてみようか。
夫と付き合っていた時のことを思い出す。
わたしは好きになったらすぐ付き合っちゃいたいし、デートをしたら長く一緒にいたいタイプでした。
結婚してからはそうでもないけど。
あれ、どうかな。
いまはそうだけど、
仮にまた誰かと付き合うことがあったら、以前と同じような感覚で付き合いたいと思うのだろうか。
社内恋愛で終業後にドトールでよくお茶をしていました。
まだ帰りたくないと言ったら未来の夫が
冷静に諭すように説明をしたのが忘れられません。
「アリサ」
「なあに」
「よく考えよう。俺たちは明日、仕事だ」
「そうだよ」
「時計見てごらん、いま夜9時だ」
「そうだけど」
「よし、よく考えよう。いまから家に帰って、お風呂入って寝るだろ?起きて会社来たら」
「うん」
「朝9時には、会社で会ってるから。寝て、起きて、会社来たら会ってるから」
「ほんまやー! 」
帰って、お風呂はいって、寝て、起きて会社きたらもう会ってるよって言われたことが妙に腑に落ちて、以後もう少しいたいと言うことはなくなりました。
後にも先にも同じ論法で説得されたことはありません。
今まではもう少しいたいと言ったら相手にウザがられるか、しぶしぶ付き合ってくれるか、逆に相手からもっといたいと言われてこちらが辟易するかのいずれかでした。
また脱線しました。トーマス並みの車両故障。
夫の部屋から光が漏れています。
夫は今、綾野剛の精密画を鉛筆で描いています。一枚の絵で半年近く時間を掛けたりして、その根気と情熱がいつか報われたらそれはそれは嬉しいなと思います。
夫の未来に光はさしてくれるのでしょうか。
本当に本当のことを言えば、成功しても夢が叶わなくても正直なところどちらでも良いです。
我々は子供を持たない共働きなので、お互いが常識の範囲内で好き勝手できるというのが最大メリットだと思っています。
日、一日と冬が近づいてきます。
人肌恋しい秋です。
今日は隣の扉をノックするのをこらえて、
久しぶりに「せつない」気持ちを舌で転がして味うのもいいかな、なんて思う秋です。
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