ファミリーコンプレックス

わたしにはふたつ違いの姉がいる。
彼女は小さい頃から勉強ができて、スポーツもできて、顔立ちが整っていて、幼いわたしにとっては目の上のたんこぶでしかなかった。
想像に容易いかと思うが、わたしは小さい頃から頑固で自分のやりたいことしかやらず、親から殴られても頑としてやりたいことを譲らなかった。
結果、まったく勉強のできない、努力というものを知らない幼少期を過ごした。

教育ママだった母親は夜、姉のそばに付きっ切りで勉強を教えていた。時々母親のビンタが飛ぶ。
「ほんっとアンタは字が汚い!」
姉は歯向かわず鉛筆を握り、机に向かい、中学受験、大学受験と順調に進学した。
一方のわたしは小学校の通知表は5段階評価の2と3のオンパレード。姉の通知表を覗き見て5が存在することを知る。5は都市伝説ではなかったのだ。

頭の弱いわたしは、算数の時間になると腹痛を装い保健室を訪れた。ベッドに入り、ほかの腹痛(仮)仲間とひそひそ話をしたり、性教育の本を読んで密かに興奮を覚えたりした。

公立の中学に上がり、受験をして落ちるのがいやだというクソみたいな理由で高校も大学も推薦で
入学し、大学在学中に痴情のもつれの挙句、鬱病にかかり卒論が書けずスランプに陥り中退をするというこれもクソみたいな過去を持つ。
両親には申し訳ないと思うが、高1から大学4年まではまじめに学業に励んだので目を瞑ってほしいと伝えたい。全てが無駄だとは思いたくないんだよ。タモリさんだって世界のキタノだって中退してるし、大丈夫いまに特別生徒枠で卒業扱いになるから安心してよ。

順風満帆そのものの姉に見えたが、数年前に知ったことがある。学生時代、ストレスで10円ハゲができていたと母親から聞いたのだ。
中学高校と私立の女子校なら、妬み嫉みを受けるも大いに頷ける。何せ姉への妬み嫉みがいちばん酷かったのはわたしなのだから。同じように「なんであいつばっかり」と憎むにんげんがいてもおかしくない。

 母親と話していると、姉の話をするときは心の底から嬉しそうな顔をする。どれだけ姪が愛おしいか叩けば出てくる埃のように、砂漠の砂の数ほどに語ってくれる。
そのとき、わたしの胸の奥はほんのすこしだけちりちり音がなる。
やきもち。
姉のことをわたしより愛していることを40近くになって、まだ妬いている。我々を平等に愛していることくらいわかっている。相続もきっときれいに半分こしてくれるだろうこともわかっている。でもちりちりする。
「自分の子供はいくつになってもこども」であるように、母親はいくつになってもわたしの母親だ。
こどもの頃に比べたら姉との仲ははるかに良好だ。わたしのファッショニスタは紛れもなく姉だし、頭の良さも、性格のまっとうさも、体型を痩せ型で維持できることも尊敬する。
なのに。



#エッセイ #母親 #姉妹

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