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『スターターピストルの音は待たない』

「位置について」

褐色のグラウンドにかがんで膝をつけ、つま先をつけたらかかとを上げる。鼓動がとくとくと早まる。美しきクラウチングスタートの姿勢。

審判は高く右手を空に掲げる。空は一点の曇りもない。桜の花びらがどこからかふわりと舞う。青と白のコントラスト。彼の手にはピストル。

「よーい!」

地面についた指を立て、いよいよの時を待つ。

グラウンド、100Mのコースの先には真っ白なゴールテープがピンと張る。

パンッ、

というスタートの合図が鳴る前に私は右足を思いっきり蹴り飛ばした!

右足、左足、交互に地面を打って前のめりに走ってく。はっはっと息をあげて前へ前へとグングン走っていく。シューズが地面に着地するとき、ほのかにゴムの弾力を感じて心地よい。

「待て! フライングだ!」

後方から審判の怒鳴り声がするが完全に無視をしてやる。

ゴールが見えたら脇目も振らずに一直線にただひたすらに進むだけ。

貪欲に、強欲に、誰よりも早く捕まえるんだ。
他のランナーも審判もオーディエンすらかえりみない。
目前に現れた譲ることのできないたったひとつのゴールが見えたなら、無我夢中で遮二無二なって摑み取れ。自分の手と足と頭で摑み取れ。

後ろには道はない。


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日常の中でふと感じたことを物語のワンシーンとして書く試作です。#スケッチ と仮タイトル。
世の中には様々な「欲」が渦巻いていますけれど、わたしも欲に貪欲な方だと感じます。

「食欲」は言わずもがな。物欲はさほどでもないですが、好きな人ができたら割と脇目も振らずにトライしていきます。自分が欲しいと願ったものに関しても手に入れるまではイケイケゴーゴーなタイプです。

そんな強欲さをスタートの合図ガン無視で走るヒトとして描きました。


書いた作品が読まれるかどうかは(あたりまえだけど)公開しないとわからない。
コンディションもあるからいつでもヒットを打てるとも限りません。
バッターボックスに立って、「次こそ書けないかもしれない」と震える気持ちを抑えながら今日もバットを振り切るのです。

一度でも創作をしたことがあるあなたなら
スランプを経験したことがあるあなたなら
こんな気持ち、わかるでしょう?



#練習  #スケッチ


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