【エッセイ】あなたはカンニングをしたことがあるか?
あなたはカンニングをしたことはありますか?
私はあります。
小学校の頃、図工の時間に隣の席のひろこちゃんの絵をカンニング、というかもろパクリしたことがあります。
え?図工?そんなの適当に図鑑とか見て描けばいいじゃん、と思われるかもしれません。
経緯を説明いたします。
その頃の私は図工が好きでした。
もっと言えば国語と図工と給食の時間しか好きではありませんでした。
典型的なあれな感じの生徒でした。
その日、私は遅刻をして学校に到着し図工室に向かうとすでに授業は始まっていて
なにやら音声が流れています。
先生にとりあえず座ってと言われて着席すると
「銀河鉄道の夜」の朗読がデッキから流れていました。
どうやら「銀河鉄道の夜」を聞いてイメージした絵を画用紙に描くという授業のようでした。
先生は朗読を聞いて描くようにとだけ説明をし紙を渡しました。
私は絵を描くことは好きなので、さっそく取り掛かろうとしましたが筆がぱたりと止まりました。
あれ?知っている話と違うぞ。
私が(さわりだけ)知っている話は
「銀河鉄道999」でした。
デッキから流れて来る話にはメーテルと鉄郎は登場せず、ジョバンニとカンパネルラが登場します。
言葉の意味もわかるようでわかりません。
簡単な言葉の羅列のはずなのに、さっぱり頭に入ってこないのです。
ラッコの毛皮ってなに。
銀河ステーションてなに。
ていうか、知ってる登場人物が一人も出てこない。
私は混乱しました。
頭が真っ白になりました。
図工の時間でコンフューズを起こしたのは初めての体験でした。
手は震え、腹は痛くなりました。
周りの児童たちはちゃくちゃくと筆が進んでいます。
なぜ、この意味不明な、意図不明な朗読でみんなは絵を描けるのか。
もしかしてはじめに先生が物語の補足説明をしていたのではないか。
時間は無情にも過ぎていきます。
そのとき、
そうだ、人の真似をしよう。
と悪魔の声が囁きました。
プライド、そんなものはありませんでした。とりあえず白紙の用紙からプリズンブレイクしたい一心で、隣の席のひろこちゃんの絵を真似しました。
真似、というより完パクリをしました。
右側にジョバンニの横顔、上に銀河鉄道が走っている構図です。
ほどなくして、ひろこちゃんの視線に気づきました。
彼女は私をギッと睨みつけて
「パクってんじゃねえよ」
と今にも言い出しそうな瞳をしていました。
ひろこちゃんは彼女の隣の女の子にひそひそ耳打ちしています。
耳打ちしながらもこちらをガン見しているので、あいつ私の絵をパクってると言っているのは明らかでした。
まったく筆が進まないのであれば、今ならいさぎよく白紙のままで提出するなり、先生に助言いただくなりできたかもしれません。
しかし、そのどちらもできませんでした。
友達の絵を真似する浅はかさ。
プライドもへったくれもなく、またそのあとの友人関係がどうなるかも考えない頭の悪さ。
その頃の私にはとにかく白紙を埋めなければならないという焦りでいっぱいだったのだと思います。
ひろこちゃんからはそのあと半年くらい口を聞いてもらえませんでした。
なんとも情けなく、ほろ苦い経験です。
これが私が完パクリをした「銀河鉄道の夜」の思い出です。
でもね、大人になってから「銀河鉄道の夜」を読んでも理解できなかったです。
ひとつひとつの単語は理解できるのに、意味がよくわからない。
以前、しくじり先生でオリラジのあっちゃんが「銀河鉄道の夜」を解説していてとても面白かったです。
知ってる?
ラッコの毛皮!とジョバンニはからかわれているけど、この意味って
「お前のとーちゃん、ラッコの密猟者!」
なんだって。
そんなの補足説明がなきゃわからないよね。
以上、
完全なパクリは良くないけど、私、オマージュはバンバンするよというお話でした。
#エッセイ #銀河鉄道の夜 #銀河鉄道999はハーロックが出てきたあたりから挫折
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