見出し画像

【詩】人間として過ごした季節

白いチョークで

アスファルトに描かれた人型

雲の上で順番を待っていた僕に

「よし、お前の番だ」と背中を押してくれた神様

みんな知らないと思うけど

白いチョークで描かれた人型を空から確認して

見つけた瞬間

僕たちはようやく宿ることができる

不妊治療の注射

注ぎ込まれるのも人型を描くため

お腹を撫でるのも

手で人型を描くため

神様に背中を押されたあと

ロケットに乗せられて

地上にたどり着くには10ヶ月もかかる

とても長い旅だ

最新型のロケットだから

故障することは随分少なくなったけれど

大気圏に入るとき

爆発が起きることもある

僕も何度か爆発した

爆発するとまた

雲の上に戻されて

最初から順番待ちをする

なんども順番待ちするのは

ちょっと退屈だけど

僕たちは悲しいわけじゃない

地球のみんなが

タピオカ屋さんに並ぶみたいに

大人しく

順番を待っている

ただそれだけのことだ

次のロケットの打ち上げは

成功してほしいなって

NASAがグルグルするのを見て

いつも思ってる

※流産の話

サポートはお菓子代になる予定です