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10年前のキミへ #4 入社式④

10年前のキミへ

ホテルに着いた。

ホテルで同期に会うかと思ったが、結局誰にも合わなかった。

早く着きすぎたのかもしれない。 昔からの性分だ。

ギリギリで着いて慌てるより、早すぎるくらいの方がいい。

時間が余れば、周囲を散策したり本を読んで時間を潰せばいい。

慣れない土地にいるからと言っても、やることは同じでいいのだ。


本社の最寄駅に10分ほどで着いた。

駅からオフィスは歩いて7分くらいらしい。

地下鉄から地上に上がる、ビル風が中々強い。

周囲を見渡すと、新入社員風の人も何人か見かける。

他の会社は朝一から入社式をやっているのだろうか、それほど多くはない。

本社にはすぐ着いた。看板が大きくて分かりやすい。

事前にもらった案内には、正面入り口ではなく裏の通用口から入るように書かれていた。

裏側に回り込もうとすると、一人正面玄関前に立っている、同い年くらいの男性がいた。

スーツを着こなし切れてない感じを見ると、彼はおそらく同期の一人だろう。

そのまま一人で行くのも変だなと思うが、声をかけるのに少し億劫な気持ちになる。

こういう自分が嫌いな時もあれば、これで良いと思う時もある。

向こうがふとこちらを見て目が合ったので、声をかけてみる。

やはり同期だった。 内定中は、東西の採用が別々だったので、彼とは初めて会った。

お互いに名乗ってから、裏口に回り込む。

裏口らしきところを見つけ入っていくと、警備員の方々いた。

そこで新入社員であることと名前を告げると、ネックストラップを渡される。

そのまま進むと、ロビーになっており、見知った顔も何人かいた。

さっき出会った彼氏とも色々と話をした。

どうやら彼は箱根駅伝で有名な大学の体育会出身らしい。

そう言われてよく見ると、細い身体にもしっかりと筋肉がついているのが見て取れる。

ボクは適度な運動はしているものの、部活は高校で引退した。

それ以来、運動の頻度はかなり減ったので、大きな差を感じる。

しばらく話し込んでいると、人事部らしき人が声を呼びかけてくれた。

内定式の会場に案内される。

入社式の会場は、数百名は入るホールで、そこに名前順に座っていく。

隣に座ったのは、内定式や入社前で一番ウマが合うと思ってたやつなので一安心だ。

会うのは久しぶりだったので、卒業までに何をしていたのかお互いに話す。

彼はバイクで日本一周をしていたらしい。

ボクは、ヨーロッパ各地でサッカー観戦した話をする。 サッカーが共通の趣味だ。

とはいえ、彼は大学の体育会で4年間ゴールキーパーを務めた努力家なので、同じ土俵にあげるのは失礼かもしれない。

そうこうしているうちに、入社式が始まる時間になった。

入社式はあっという間に終わった。

社長の講話を聞いて、この会社の一員として今日から頑張るのだ。

社長は4代目だが、創業者である祖父の話や、経営理念をあらためて聞くと、身が引き締まる。

この会社に入って良かった取れる思えるかどうかは、これからの自分の努力次第だ。

入社式の後は、明日からの研修スケジュールや、オフィスへの入館方法、注意事項を聞いて、最後に同期全員の集合写真を撮影した。

転職が当たり前になった今、3年後、5年後に、この中の何人が残っているのだろうか。

写真を撮って解散となった。

いつも皆んなの中心にいる同期が、飲み会に行かないかと呼びかけている。

ノリが悪いと思われると面倒だなと思いつつ、明日に備えてホテルに戻ることにした。

ホテルに何人かで戻る。

飲み会には行かないまでも、そのままホテルの無機質に戻るのもイヤなのは皆んな同じだったようだ。

ホテル近くの居酒屋に入る。 同期3人、こじんまりとした乾杯だ。

だらだらと話すこともなく、1時間程度で食事も済ませて引き上げる。

ちょうど良い距離感が心地よい。

部屋に戻ると、東京からの移動があったからか、久しぶりに大人数の中にいったからか、疲れがどっと押し寄せる。

すぐにでも眠りたいが、小さいバスタブに湯を張る。

環境が変わってもルーティーンは極力崩さない。

風呂から上がって、彼女にメールを送るか送らないかの記憶も曖昧なまま、あっという間に眠りに落ちる。

気がつけば朝の6時だった。


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