小泉夜雨さんとの「いちごつみ100tanka」~後半50首~

ツイッターにて、小泉夜雨さん(https://twitter.com/kozumi_yau)と「いちごつみ」(相手の短歌から一語(いちご)摘んで、次の自分の短歌に詠み込む。詳しくはこちらをどうぞ→http://kohagi-orz.jugem.jp/?eid=2349)をしました。  ※旧仮名訂正有。そして私が数字をずらしてしまったため、まぼろしの(?)101番目がございます。奇数偶数が違ってきていますので、小泉夜雨さん作は(夜)、とわさき芽ぐみ作は(芽)を数字の後ろに付けました。すみません…。

51.(夜)
夏期講習期間だけあう友達と予定調和のようなやっほー


52.(芽)
銀色は冷たい証友達と鱗一片見せ合って夏


53.(夜)
人知れず水上花火が終わるとき鱗の落ちたきみとくちづけ


54.(芽)
くちづけをあなたの夢に 羊たちどうかやさしく憩っておいで


55.(夜)
夜の果てなんてないのにいつまでも俺の頭でなくなよ羊


56.(芽)
ままごとの夜なんだから好きなだけ光を取り込んでもいいんだよ


57.(夜)
立ち位置がすげえ微妙でままごとで言うなら隣の家の犬役


58.(芽)
俺だって全身スーツの犬役じゃなくて王子をやりたかったのに


59.(夜)
全身に雨を浴びたらたちまちにかぶとむしゼリーみたいな匂い


60.(芽)
餌付けするいのちのひとつ かぶとむしおまへの角は何を耕す


61.(夜)
冷えてゆくいのちを掬う手のひらの熱よ(わたしを忘れてしまう?)


62.(芽)
手のひらを返したように目玉焼き半熟派へと寝返ったのね


63.(夜)
恋をすることの代償たったいま返した本に眠らせる花


64.(芽)
長針が一歩進んでゆく間にも花は枯れゆくものだったのか


65.(夜)
待ち合わすたびに染まっていくようで長針の指すほうに月影


67.(芽)
この夜をふかくつつんでやはらかく月影守つておくれこの星


68.(夜)
ずぶ濡れになりさうな日もやはらかくありたい我のレーズンロール


69.(芽)
ふくよかにレーズンロールひとちぎり噛めば噛むほど泣いてしまうね


70.(夜)
絶望に似た味がして鉛筆を噛めばじわじわゆがむ青空


71.(芽)
ヘッドライトは鋭いまなこ絶望はわたしをつんざく光だったか


72.(夜)
金魚鉢ひつくりかへした二時半はつんざくような赤色をして


73.(芽)
おほぞらへ向かつて開く花びらのやう金魚鉢 花のなか、舞ふ


74.(夜)
夢をみるようなあかるさ花びらにまみれたままの終バスでゆく


75.(芽)
(響き)わぁん、(響き)(あなたの)わぁん、わぁんあかるさとしてとても適度な


76.(夜)
わぁんって耳鳴りのする竹藪のあおさ喰らへばそこは最果て


77.(芽)
そんなことないってどこに係るのか最果てばっかりこれが旅かよ


78.(夜)
雑音は聞き流してゆけスナフキンみたいな旅の途中にひとり


79.(芽)
どうせなら合間合間で口笛を吹き雑音の一部となって


80.(夜)
すきとおる朝のひかりをのせてゆくああどこからか誰かの口笛


81.(芽)
むげ わたげ 五里霧中ではあるけれどひかりの喉を信じてあるく


82.(夜)
片付けた部屋の隅からとんでいけわたげきれいな空気を吸って


83.(芽)
砂になる前の小石が胸の隅つっかえていてじゃりじゃりとする


84.(夜)
つっかえてしまうわたしのカナリアの瞳にやわく霧雨のふる


85.(芽)
霧雨の迷いながらも枝々をしならせながら君を見つける


86.(夜)
魔術師の家系なのです枝々に燈らせてゐる実の赤、青、黄


87.(芽)
アルコール強い家系のはずなのに採血前の不自然な香は


88.(夜)
もう少し減らしませんかと看護師の説得を試みる採血


89.(芽)
吸い込んで心許ない八月のジュースは苦い 減らしませんか


90.(夜)
薔薇園の香り漂う八月のロマンスカーに咲くノスタルジー


91.(芽)
ならず者のノスタルジーは飽和した夢の水面をすべるゴンドラ


92.(夜)
不思議、もうずっと昔に会った気がするね揺れる白いゴンドラ


93.(芽)
機織りを続けた鶴の白い羽淡く光ってもう戻れない


94.(夜)
折り紙は鶴が折れますそれくらいみんなできると知っているけど


95.(芽)
ひとしさを折り紙で折るねえ何も持たないままで行っていいかな


96.(夜)
ねえ雨の匂いがしたよ、ねえなんで同じ速度で生きられないの


97.(芽)
この闇をいっせーのせで駆け抜ける速度は光 みずは後ろへ


98.(夜)
笑いつつ体育館をこだまするいっせーのせの、せで飛んで、いま!


99.(芽)
うらがはを省みてゐるわたくしを目掛けてこだまするラブソング


100.(夜)
ラブソングということにして聴いている君の鼻歌 芽をなでる午後


101.(芽)
傘立てに一本の枝 雨だけが実るその実をなでるあなたは


小泉夜雨さん、ありがとうございました。

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