事業創出の原理原則14 戦略の立案 – 戦略フレームワーク①

この「戦略フレームワーク」は、森岡毅(つよし)氏の「コンサルティングメソッド」を参考にしています。私が教わってきた一般的なマーケッティングとは少し違っていました。森岡氏は、プロのマーケッターですから、当然行き当たりばったりの思い付きでコンサルティングをしているわけがありません。何らかの思考プロセスと独自のマーケティングのメソッドがあるはずです。どのような思考プロセスから生み出されるか興味を持って調べた結果から私が思っている「森岡氏のマーケッティングメソッド」になります。ネットのチェック、テレビ番組やYouTubeを10本以上見ました。著書も4冊読みました。私が一番参考になったのは、「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」です。統計学の本は、私には難解でした。余談ですが、YouTubeで昔の森岡氏を見ると、今よりかなり太っていて同じ人に見えません。当時は100キロ以上あったそうです。
 
 ・戦略フレームワーク : 「戦略フレームワーク」は、3階層の思考プロセスになっています。3階層は、①目的(コンセプト)。②戦略(必要条件)。③戦術(施策)。になります。①「目的(コンセプト)」は、「ギャップ分析」で導き出された「Purpose目標(目的)」から、達成すべき命題は何かを明確に定義します。②「戦略(必要条件)と森岡氏は表現していますは、目的達成のために、経営資源を何に集中するか?そのための必要条件を決めます。③「戦術(施策)」は、具体的にどのように実現させていくのか、アイデアを出します。そのようなプロセスで、マーケティングを考えていきます。
 このプロセスの中で、私が特にユニークだと感じたのは、②「戦略(必要条件)」を、考えるプロセスです。私が教わってきた「マーケティングや問題解決」では、まず、問題を解決できる対策を出来るだけたくさん考える。次にその対策が、現在のリソースで可能か?実現可能性はあるか?効果はあるか?自社のリソース(人、もの、お金、技術、情報)で可能か?などの条件から対策案を選択して、そして実行計画を立案します。私が独創的だと思う「森岡氏メソッド」は、対策を考える前に、まず、対策の条件「必要条件」を決めてから、その「必要条件」を満たす対策を決めていくことです。たぶん森岡氏にとっては、普通の思考プロセスだと思いますが、私にとっては、斬新で新しい思考方法でした。対策を考えてから、対策が可能な条件で絞るより、あらかじめ対策可能な条件を絞るってから、対策を考える方が効率的です。対策から検討する場合は、ありとあらゆる実現の可能性のない対策まで、際限なく対策が出てきます。
 
西武園ゆうえんちの戦略フレームワーク : 戦略フレームワーク」の事例として、「西武園ゆうえんち」を分析します。振り返りになりますが、「西武園ゆうえんちリニュアルプロジェクト」直前の状況は次のようになります。「1950年に開業した西武園ゆうえんちは、1988年度の年間入場者数約194万人をピークに、その後は徐々に減少傾向となり、直近の2018年度には約49万人と最盛期の4分の1ほどまでに落ち込んでいます。施設は、リニューアルもされないまま老朽化しています」。普通に考えたら、「できるだけ施設を新しくする。可能でない場合は廃園も選択肢にする。」になると思います。
森岡氏が「再生プロジェクト」のコンサルティングを受けたときの大きな「課題」は、3点あります。①予算は100億円。USJならアトラクションを1つ導入するだけで使い切ってしまう金額。②ブランドの特徴がない。ブランドの特徴を作るためには、ものすごく予算がかかる。強烈なキャラクターを借りてきてパークを作り直せばパークの顔はできるが、桁違いの予算が必要になるため不可能。③所沢という場所。西武鉄道の沿線上ではすごく便利だが、集客施設は商圏からいかに多くの方により多く来場するかが勝負なので、西武沿線以外の関東全域からお客様を引っ張ってくる魅力を作らなければならない。になります。戦略は、この3点の課題をクリアする戦略である必要があります。
この状況で考えられた戦略フレームワーク」は、次のようになります。①「目的(コンセプト)」は、幸せを売る 「コミュニティー(community)。愛」「幸福感」「心あたたまる幸福感に包まれる世界」古き良き時代を再現する。何度も「訪れたい場所」にする。②戦略(必要条件)は、100億円という限定的な予算。すでにある観覧車とかメリーゴーラウンドなどは潰すよりも活用する。古いアトラクションは壊すだけで数十億円かかるが、その予算で、新しいアトラクションを1つ作る。③「戦術(施策)」は、「昭和の商店街」の再現。「昭和」なら版権料もかからない。町並み・食体験で「あのころの日本」を再現する。「昭和」をイメージした「夕日の丘商店街」や昭和を代表する大怪獣ゴジラの最新アトラクションを投入した映画館「夕陽館」を作る。人情味あふれるライブパフォーマンスを行う。結果として、多くのマスコミにも取り上げられ、入場者数も、コロナの影響で入場制限したほど、盛況になりました。「西武園ゆうえんち」は復活しました。もし機会があれば一度訪れたいと思っています。古い遊園地を、最小限の予算で、「昭和レトロ」という魅力に変えて再生させるやり方は、マーケッティングの天才だとリスペクトしています。
 
・新規事業の戦略フレームワーク : 私が経験した「新規事業プロジェクト」の①「目的(コンセプト)」は、サービス事業を1つ立ち上げる。ドキュメント事業とのシナジーが可能なものにする。②戦略(必要条件)は、現状のリソースとノウハウで可能なで範囲の展開にする。販売会社を始め、全グループで展開できるものであること。予算は最小限度として、必要な予算は各販社で計上することとする。「ドキュメントカンパニー」として逸脱しない事業であること。③「戦術(施策)」は、セキュリティビジネスを最初のきっかけ(フック)としてサービス事業を立ち上げる。新たにシステム開発をするための、ノウハウも資金も直ぐにはないため、コンサル事業を中心に展開する。になります。私が「新規事業」立ち上げたときは、「戦略フレームワーク」の知識はありませんでしたが、「戦略フレームワーク」で改めてまとめると、当時考えていたことややりたいことが分かりやすく整理できました。使いやすい「フレームワーク」だと思います。当時、「戦略フレームワーク」を理解していれば、もう少しスマートにプロジェクトが実施できたと感じています。
 
 現在、森岡氏の会社は、多くの会社のコンサルティングを手掛けながら2025年に沖縄のテーマパークの開業を目指して計画が進んでいます。私は若いころ何回も沖縄にダイビングに行きました。世界有数のダイビング・スポットがある美しい海です。どのようなテーマパークができるのか、今から楽しみです。それと全く個人的な願いなのですが、「デパートの再生」も手掛けてもらいたいです。私は、高校生まで東京の代々木に住んでいました。子供のころは、新宿のデパートに家族で行くのが楽しみでした。おもちゃ売り場や屋上の小さな遊園地やペットショップにわくわくしました。「大食堂」で楽しく食事をした思い出もあります。大人になってから、わざわざデパートに行く目的が無くなりました。せいぜい地下の食品売り場に行くぐらいです。全国のデパートの廃館が続いています。明らかに不況業種です。今のままでは将来性は感じません。過去の成功体験に縛られているためか、小売りの王者のプライドが邪魔をしているためか、分かりませんが、小手先ばかりの対策で、まったく変化に対応できていません。デパートの人は自社の「顧客提供価値」は何だと定義しているのでしょうか?私には、「お金持ち向けに高級品を扱っている」だけのように見えます。「富裕層マーケット」は、これから縮小していきます。「富裕層マーケット」だけで、事業を維持していくのは無理だと思います。せっかくの立地とブランドが生かされていません。是非、森岡氏に「デパート再生」のモデルケースを作ってもらって、行くことが楽しくなるようなデパートに再生してもらいたいと願っています。
 
それでは、皆様良い年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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