古びた銭湯
いつもと違う帰り道で帰ったら、小学生くらいによく行っていた銭湯がなくなっていた。
浴槽が二つしかない、地元の人しか行かないような昔ながらの作り。風呂上がりに番台の横にある30円のみかん水を飲むのが楽しみだった。その銭湯は2階まであって、上はサウナになっている。
ツルツルつべる階段を上ると、木でできた大きな重い扉がある。そこは子供は入れない決まりになっていた。
とはいっても、小学生くらいの年齢だと好奇心が勝って行きたくなるもんだ。何度もサウナに入ろうとしたけど、毎日来ている常連のおっちゃんに怒られた記憶がある。
年齢を重ねるごとに徐々に銭湯には行かなくなって、正直今日まで思い出すことはほとんどなかった。銭湯があるはずの場所には、アパートができていてこれっぽっちも面影は残っていなかった。
「大人になったら入ってやる」と思っていた古びた銭湯の2階には結局行くことはできなくなてしまったけれど、この銭湯での思い出は忘れない気がする。
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