見出し画像

【FX】本気で勝ちたい人のためのファンダメンタルズ分析基礎講座

割引あり

この記事は2024年3月3日に更新されました。

―――非情なFXの世界で戦う戦士たちよ。

―――損失を穿つ聖剣『ファンダメンタルズ』を授けよう。


「本気でファンダメンタルズを学びたい。」

そんな鉄の意思が感じられる。


テクニカル分析と双璧を成すファンダメンタルズ分析。テクニカル分析以上に習得難易度が高いと言われている。

その理由は、定量的な判断基準や売買タイミングを測るシグナルがないからだ。


私はこれまで、数多くのファンダメンタルズ分析に関する本や記事を読んできた。

それらは漢字の羅列ばかり。難しいことが、より難しく書いてあるようなものばかりだった。


「なんでこんなにわかりにくいんや…」


読み進めていくうちに閉じゆく目。その目を無理やりこじ開けながらそう思ったものである。


「もっとわかりやすくまとめてある記事があったらいいのにな…」


今回は、当時の思いを振り返り、筆をとることにした。

この記事には、知らないだけで損をしないために必要な『FX初心者が絶対に知っておくべきファンダメンタルズの知識』をまとめた。この記事の中身さえ理解できれば、ファンダメンタルズ分析ができるようになるはずだ。記事に書かれた内容を完全に理解するため、何度も読み返してもらえれば幸いである。


さて、それではこれから、あなたがまだ知らないファンダメンタルズの世界へとお招きしよう。
※この記事はわかりやすさに重点を置いているため、厳密な解説にはなっていない箇所がある。その点には注意して読み進めてほしい。


FXの基礎を学びたい方はこちら。



1.市場の登場人物


「市場にはどんな参加者がいるのか?」


人には、人であるがゆえに様々な思惑が存在する。市場ではそれらの思惑が混ざり合い、チャートが動いている。

例えば、資金力のある市場参加者がこう思ったとしよう。


「あー、なんか今めっちゃドル欲しい気分だわ。」


そう思った者が「大量にドルを買う」ことで、ドル買いの勢力が強くなる。すると、チャートがドル高に向かうのだ。

市場は、常にこのような勢力争いを続けている。買い勢力と売り勢力との戦いなのだ。その様子は、さながら終わりなき天下分け目の戦いのようである。

FXで勝つためには、より強い勢力につくことが重要だ。買い勢力が強ければ買い勢力に、売り勢力が強ければ売り勢力につくのだ。そうすることで、より確実な利益を見込むことができる。


「では、より強い勢力につくにはどうすればいいのだろうか?」


残念ながら、確実により強い勢力につく方法は存在しない。が、その確率を上げる方法はある。

その方法とは、勢力を形作る『市場参加者を理解する』ことである。市場参加者を知ることは、市場参加者の思惑や行動の理解に繋がる。それらの思惑や行動を理解することで、どちらの勢力に身を置けばいいかの判断がしやすくなるのだ。

特に資金力のある市場参加者がどのように考え、行動するかを知ることが大切だ。資金力があるということは、市場に与える影響力も強いからだ。


「あー、そろそろ決算だし、利益確定せなあかんわ。」


そう思った資金力のある市場参加者は、大量の資産を一気に利益確定させる。すると、売られた資産の市場は下落方向に動いてしまうのだ。そんなときは売り勢力に身を置いておこう。このような戦い方をすれば、勝率は必ず上がるはずだ。



(1)政府


政府とは『国家を統治する機関』である。

政府の役割は山のようにある。その中でも、市場に大きな影響を与える役割の一つが『国債の発行』だ。国債の詳細については後述するが、国債とは『国の借金』のことである。

政府は、国債を発行することで企業や個人などからお金を借りる。そして、そのお金を使って国を運営しているのだ。

一般的に、借金と聞くと悪いイメージが浮かぶ。が、資本主義は借金で成り立っていると言っても過言ではないのだ。


さて、国債を発行したときのお金の流れを見てみよう。

市場に国債が投入されると、市場にあるお金は政府によって回収される。政府は、国債の発行によって、市場に出回るお金の量を調整できるのだ。

また、市場に直接的に影響を与える『為替介入(外国為替平衡操作)』という施策もある。為替介入は『為替相場の安定化を図るために外国為替市場で通貨の売買を行う施策』である。

円安が急激に進みすぎて歯止めが効かなくなったときを考えてみよう。政府はドル円を円高方向に動かしたいので、ドルを売って通貨の価値を安定させる。これが為替介入である。

ちなみに、日本では政府の指示によって、中央銀行が実際にその介入操作を行う。

政府は、市場への影響力が非常に大きな機関である。



(2)中央銀行


中央銀行とは『国家や地方の金融機関の中核となる機関』である。政府が脳だとしたら、中央銀行は心臓という位置づけになる。

その存在理由は国によってさまざまある。「物価の安定」や「雇用の最大化」、「金融システムの安定」を掲げている国が多い。

その主な役割は『金融政策の決定』や『お金の発行』、『政府や普通銀行の銀行』である。お金に関する重要な決定は、すべて中央銀行によって行われている。国のお金のすべてを司っているため、通貨の番人とも呼ばれている機関だ。


中央銀行は、政府と協力して市場にあるお金の価値(量)を調整する。その具体的な方法は、あまりにも多いため、詳細は後述させてもらいたい。

ちなみに、主要な国の中央銀行(に相当する機関)は以下のとおりだ。以下の3つの機関は頻出するため丸暗記推奨。

  • アメリカ:FRB(TheFederalReserveBoard(連邦準備制度理事会))

  • 欧州:ECB(EuropeanCentralBank(欧州中央銀行))

  • 日本:日本銀行


中央銀行は、先に解説した政府と並び、市場への影響力が強い機関の一つである。



(3)機関投資家


機関投資家とは『普通銀行』や『年金基金』、『保険会社』のことを指す。多くの人からたくさんのお金を預かり、そのお金を元手に資金運用している機関だ。

これらの機関は預かっている資金をマイナスにすることができない。その存在理由から、将来的に預かったお金以上のお金を返す必要があるからだ。


「預かってたお金が減ってしまったのでお返しするお金も減ります!」


銀行や年金基金がこんなことを言ったら、一発ぶちかましたくなるだろう。そのため、独自の投資ルールと厳密なポートフォリオ比率で資産運用を行っている。その主な投資先は債券であり、低リスク低リターンの安全投資が基本となる。

世界最大の機関投資家は、われらが日本の年金積立金管理運用独立行政法人『GPIF』だ。GPIFでは、国内・外国債券、国内・外国株式をそれぞれ25%ずつのポートフォリオで資産運用している。


外国株式が上昇し、国内株式20%、外国株式30%の比率になったときを考えてみる。この場合、外国株式5%を売って、国内株式5%買うというリバランス(バランス調整)が行われる。

国内株式は日本円でしか買えない。そのため、外国株式を売って得た外国通貨を日本円に両替する必要が出てくる。

つまり、上記のリバランスを行うことで外国株式と外国通貨の価値が下がる。そして、国内株式と日本円の価値が上がるというわけだ。

このようなリバランスは月末(特に四半期末や半期末、期末)に行われることが多い。これは、運用パフォーマンスの評価やリスクを量るタイミングが月末であるためだ。そのため、機関投資家によるリバランスは月末リバランスとも呼ばれている。

リバランスは巨額の資金を運用している機関投資家が行うイベントだ。非常に大きな値動きになることが多いため、月末の市場の動きには特に注意したい。

ちなみに、機関投資家は新年度予算が執行できる年度初めに運用計画を立てる傾向にある。そのため、新年度予算が市場に流入してくるのは、海外が1-2月、日本が4-5月だ。年度初めも要注意である。



(4)ヘッジファンド


ヘッジファンドとは『お金持ちから集めた資金を運用する運用会社』である。お金持ちから集めた資金を運用する個人トレーダーのようなものだ。

ヘッジファンドは、資産運用をするという名目で資金を集めている。ゆえに、常に何かしらの金融商品に投資しているという特徴がある。


「預かったお金はそのまま金庫に眠っています。ご安心ください。」


これではお金を預けている意味がないのだ。

そのため、株式が下がりそうなら債権へ、日本円が上がりそうなら日本円へ。このように、預かったお金を増やすために常に資産をガチャガチャ移動させている。

また、ヘッジファンドには、お金を預けてくれた顧客への説明責任がある。そのため、顧客を納得させやすいファンダメンタルズに沿った取引を行うことが多い。


「上昇トレンドで押し目買いしたらダマシで損しちゃいました…申し訳ございません。」


これでは顧客は納得しない。損をした顧客は資金を引き揚げてサヨナラだ。



(5)輸出企業


輸出企業とは『国内で作ったモノを海外で販売して収益を上げる企業』である。日本においては、トヨタやホンダ、キヤノンなどが挙げられる。企業名をみてのとおり、輸出商品のほとんどが自動車や半導体関連だ。

輸出企業は売り上げを外貨で受け取るため、常に外貨を自国通貨に両替している。トヨタやホンダなどの輸出企業は、日本の取引先や従業員への支払いを日本円で行う必要があるからだ。

ドル円の通貨ペアの視点から見てみよう。ドルを日本円に両替するということは、日本の輸出企業は常にドル売り(円買い)をしているということになる。

そして、輸出企業はドルの価値が高いときに、持っているドルを売った方が都合が良い。より多くの日本円を手にすることができるからだ。

このことから、両替するタイミングは決まっていない。常にドルの価値が高くなるタイミングをはかっている。


「よっしゃ!今や!ドル売りするでえ!!ぽちっとな。」


大手の輸出企業であれば、専門のトレーダーがより良いタイミングでの取引を行っているのだ。

ちなみに、輸出企業は自国通貨安(日本の場合は円安)なほど売り上げが増え、業績が上がる傾向にある。自国で安く作った製品を、海外で値段を変えずに売ることができるからだ。



(6)輸入企業


輸入企業とは『海外から仕入れた商品を国内で販売して収益を上げる企業』である。日本においては、三菱商事や三井物産、伊藤忠商事などが挙げられる。

輸入企業は外国製品を外貨で購入するため、常に自国通貨を外貨に両替している。前述した輸入企業とは真逆の立場である。

先ほどと同様に、ドル円の通貨ペアの視点から見てみよう。日本円をドルに両替するということは、日本の輸入企業は常にドル買い(円売り)をしているということになる。

そして、輸入企業は持っている円の価値が高いときに、ドルを買った方が都合が良い。より多くのドルを手にすることができるからだ。


エネルギー資源に乏しい日本では、輸入の8割を原油と天然ガスが占めている。

輸入企業は、これらのエネルギー資源を定期的に購入する必要がある。そのため、その購入に合わせて定期的にドル円の買いをする。早めにドルを購入してしまうと、商品購入時にドルの価値が上がった場合に損をしてしまうことがあるからだ。

そのため、ドルの購入方法は、毎日定額でドルを買うという方法をとる。そのタイミングは、後述する『五十日(5と10のつく日)』の東京仲値に向けて購入することが多いとされている。東京仲値とは『日本時間の9時55分に決定する外国為替取引をする際の基準レート』のことだ。


東京仲値が決まるタイミングは、普通銀行の思惑が錯綜する。

普通銀行は輸入企業の両替相手だ。普通銀行の視点で考えると、自分たちが持っているドルを高い値段で売ることができれば利益は大きくなる。ドル高であればあるほど、より多くの円を受け取ることができるため都合が良いのだ。

そこで、普通銀行は安いうちにドルを購入する。また、東京仲値に向けてドルを買うことでドルを安く仕入れたりもする。そして、その安く仕入れたドルを輸入企業に高く売っているのだ。

そのため、東京仲値に向けてドル高になる傾向がある。



(7)個人投資家


個人投資家とは『組織に属さず自己資産のみで投資活動を行う個人』である。これまで解説してきた中で最も小口の市場参加者である。

通常、市場の中で個人投資家の動きを意識する必要はない。運用資産が少ないため、市場に及ぼす影響力が小さいからだ。

この記事を見ている方は個人投資家が多いように思う。

我々、個人投資家が市場に与える影響は少ない。こと市場においては、完全なる弱者である。まずは、この残酷な現状をしっかりと受け止めるべきだ。

そして、小さなコバンザメのように、大きなクジラに着いていく。市場で生き残るためにはそんな戦略が必要になってくる。



2.市場に出回る金融商品


「FXは為替レートだけ見てればいい。」


この考え方は間違っている。

アメリカ株に上がる見込みがあったとしよう。このとき、ドルを持っていない人は、まず自国通貨をドルに両替する。そして、両替したドルでアメリカ株を買う。これはつまり、アメリカ株があがればドルの価値もあがるということだ。

前述した例のように、金融商品の動きはそれぞれ連動する。この動きが理解できていれば、為替レートだけを眺めているよりも、はるかにたくさんの情報を得ることができる。

すなわち、判断材料が増えるのだ。この情報材料が多ければ多いほど、取引判断の精度が高くなることは間違いない。


「今はこんな状況で、こういった出来事があったから…円高になるハズだ!」


FXで勝つ確率を少しでも上げたいのであれば、主要な金融商品だけでもしっかり理解しておきたい。

それではさっそく、主要な金融商品を見ていこう。
※金融商品の連動については別の章で詳しく解説するため、この章では金融商品の解説に絞る。



(1)通貨


通貨とは『価値の尺度・交換手段であり、価値の保存ができるモノ』である。言うまでのことでもないが、馴染みやすいところでは円やドル、ユーロなどがある。

お金が存在しない時代は、お金の代わりに米や布、貝殻を利用していた。そこから時代が進み、金や銀、銅といった金属になった。しかし、金属では重くて持ち歩くのが大変だったため、金属を担保とした紙製の預り証へと変化していく。そして、この預り証を買い物に直接利用するようになった。

これが、今の紙幣の誕生秘話である。預り証を考えた人も、預り証を直接買い物に使った人も天才だと思う。


現在、世界で出回る通貨の流通量は以下のとおりだ。

  • ドル:約40%(基軸通貨)

  • ユーロ:約15%

  • 円:約10%


このとおり、為替の三大マーケット(ニューヨーク市場、ロンドン市場、東京市場)の通貨が世界に出回る通貨の約7割を占めている。そのため、FXの世界では、ドル、ユーロ、円の動向が必然的に他の通貨よりも重要となってくる。



(2)債券


債券とは『資金調達の際に発行される借用証書』である。国債や地方債、社債など、債券には数多くの種類が存在する。

FXに一番強く影響するのが国債であるため、国債に絞って解説を進める。先にも触れたが、国債はいわゆる『国の借金』であり、それは『国の財源』である

国債を発行して得たお金は、様々なものに投資され、国の発展・成長のために使われる。国から企業へ、企業から個人へと、お金が流れていくのだ。国から個人までお金が手渡しされていると捉えることもできる。

一般的な国債は、1年に1度の金利収入を得ることができ、満期(1年~10年など)を迎えると預け入れたお金の満額が返済される。

金利が1%の10年国債を100万円で買ったときのことを考えてみる。この場合、毎年1万円の金利収入を10年間得ることができる。すなわち、債券は預けたお金以上のお金を得ることができる金融商品なのだ。

債券そのものを債券市場で売買することも可能である。



(3)株式


株式とは『企業が資金調達する際に発行する証券』である。端的に表すと、株式発行体となる『会社のオーナーとなる権利を分割した有価証券』だ。

株式を所有する人は株主となる。そして、株主は会社の運営への参加や配当金・株主優待を受ける権利を得ることができる

ただし、株主が株式会社へ出資した資金は、会社が存続する限り払戻しされない。株式を換金するためには、株式市場でその株式を売却する必要があるのだ。

ちなみに、株式は会社の価値そのものを表すことから、その会社の業績により価値が変動する。ロクでもない社長の所業が世間に露見すれば、会社の社会的信頼は地に落ち、それと同時に株価は大暴落することになるだろう。



(4)暗号資産


暗号資産とは『ネット上でやり取りされる電子資産』である。ビットコインを筆頭に、イーサリアムやドージコインなどがある。

暗号資産は、あくまでも分散的に管理されたプログラム上の数字でしかない。実在するモノではないため、実際に触れることはできないのだ。

また、その発行数に上限が設定されているものが多く存在する。そのため、国が発行する法定通貨とは異なり、その希少性が担保されているという特徴がある。

希少性が担保されているということは、希少性の原理が働くということだ。希少性の原理とは『なかなか手に入らないモノに価値を感じるという人間の習性』である。そのため、暗号資産は今も長期的な上昇トレンドが継続中だ。(2024年1月現在)

ただし、暗号資産は有価証券ではないため、国による保証を持たない。さらに、税法などの整備が未だ完全でないため、取り扱いには注意が必要な金融商品である。

ちなみに、暗号資産の筆頭であるビットコインには『半減期』と呼ばれるイベントが設定されている。これは、4年ごとにビットコインの流通量を減少させ、希少価値を高めるものだ。過去の半減期のタイミングでは、その都度バブル相場が到来している。

ここではその詳細な説明は割愛するが、ビットコインに投資するのであれば『半減期』のタイミングはしっかりと注視しておきたい。なお、暗号資産は暗号資産取引所で取引することが可能だ。



(5)コモディティ


コモディティとは『世界中で数多く取引される国際商品の総称』である。

コモディティには、世界的に一般的となっている商品が該当する。原油やガソリンなどのエネルギー、金やプラチナなどの貴金属、トウモロコシや大豆などの穀物などだ。

中でも特に身近なのはガソリンだろう。車に乗っているのであれば、その値段が常に変動していることに気づくはずだ。


コモディティはインフレに強いという特徴がある。物価が上がるインフレは、コモディティの価格を押し上げてくれるからだ。そのため、自然災害や紛争などの有事の際には買われる傾向にある。中でも、特にゴールドが買われやすい。

コモディティは外貨建て決済のため為替リスクがある。また、その価格変動の要因が多く、世界情勢や景気、天候などが複合的に絡み合う。これらのことから、値動きがわかりにくい投資商品だと言われている。

コモディティは証券会社をとおして取引することが可能となっている。



3.市場と経済


2020年ごろに起きた新型コロナウイルスによるパンデミック。多くの都市がロックダウン(都市封鎖)され、世界経済が停止した。

世界経済の停滞は、金融市場に大きな影響を及ぼした。通称コロナショックと呼ばれる金融市場の大暴落である。債券、株式、原油など、先に解説した金融商品が軒並み下落したのだ。底があるのかわからない、そんな奈落に落ちていくように。

経済は、金融市場に大きな影響を与える。その影響がとてつもなく大きい以上、FXをやる我々が経済の動向を理解することは必須だと言えよう。

経済を端的に表現すると『ヒト・モノ・カネの流通』である。血液が人の体を巡るように、ヒト・モノ・カネが国家を、世界中を巡っているのだ。

もしその流れが止まってしまうと、それは国家の死に直結する。その国の通貨が意味をなさなくなり、モノやサービスの供給量が減少することで、生活基盤が大きく揺らいでしまうからだ。

国家はそうならないように経済の動向に細心の注意を払う。そして、経済対策を実施することで経済の正常化を図るのだ。

われわれ個人投資家は、国家による経済対策を考慮して金融商品に投資したい。前述したとおり、経済の動向と金融商品の価値が連動するからである。


だが、経済は非常に複雑で難しい。

そのため、ここでは経済の基本のみに焦点を絞ろうと思う。本質となる部分だけを理解できていれば、応用がきくからだ。



(1)需給


需給とは需要と供給をかけ合わせた言葉である。需要を『モノを求める人の数』、供給を『提供されるモノの数』と考えると分かりやすい。

どうしても欲しい漫画があるとしよう。その漫画を買いたい人が100人いても、販売数が10冊であれば10人しか買えない。これは、需要が供給に対して大きい状態『需要>供給』である。つまり『足りないやんけ!』状態だ。

一方、漫画を買いたい人が10人、販売数が100冊であれば全員が買える。これは、需要が供給に対して小さい状態『需要<供給』になる。つまり『あり過ぎやんけ!』状態だ。

このような関係が、すべてのモノに対して展開されている。経済は、買い手の需要と売り手の供給をもとに成り立っている



(2)物価


物価とは『様々なモノの価格を一定の方法で総合した平均値(モノの価値)』である。そして、価格とは『様々なモノに個別に付けられた値段』のことだ。

価格の総合値である物価は、市場における需要と供給のバランスによって決められる。市場で取引を行うことで、自然と買い手と売り手の折り合いがつく価格に落ち着くのだ。

先の漫画の例に、漫画を買いたい人が10人で、販売数が100冊の例があった。このとき、買いたい人が100人になるまで漫画の価格を値下げしていく。

1冊あたり100円で価格が落ち着いたとしよう。すると、市場で折り合いがついた価格は100円ということになる。売り手は大損だ。が、市場ではこのようにして物価のバランスが保たれているのだ。需要を理解できていない売り手は大損する道しかない。

ちなみに、『需要>供給』のときはモノの価格が上昇し、『需要<供給』のときはモノの価格が下落する。これは、前述した希少性の原理が働くためだ。

人は、需要が多く供給量の少ない、手に入りにくい漫画に対してより高い価値を感じる。よって、価値の尺度である価格もおのずと高くなる。



(3)景気


景気とは『経済の状況』である。状況という言葉では分かりづらいため、雰囲気や空気感をイメージしてもらいたい。

一般的に、企業の収益や労働者の給料などが増加している状態であれば好景気と判断される。逆に、減少している状態であれば不景気と判断される。

そして、好景気のときは消費が活性化し、物価は上昇する。一方、不景気のときは消費が抑制され、物価は下落する。

ここから先は

15,030字 / 8画像

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?