「珈琲/大根役者/鱗雲」、或いは「破片」
目が覚めて寝室から出ると、床に伏せた妻が居た。
周囲に黒い液体と赤黒い液体とを撒き散らし、緑色の欠片を散乱させた妻が。
机の上には封筒が一封。貴方へ、と書いてある。
ああ、死んだんだな、と思った。
彼女とは学生の頃に知り合った。
二年片想いした後に付き合うことになったが、初めての恋人に戸惑って亀の歩みを続けた。
進路の関係で一度別れ、再開したのは六年後。
お互いに大人になり、多くのことを経験していた。多忙を極め、疲弊しきった二人だった。
燃えるような情熱はもう無かったし明