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【OAK】クリス・バシットをNYMにトレード【終わりの始まり】

ついに火蓋が切られました。
ロックアウト明け2日目、A'sはエースのクリス・バシットをNYMに放出し、マイナーリーガー2名を獲得しました。
シーズン終了後から濃厚視されていたA'sの大解体劇が現実のものとなろうとしています。


総括

A's獲得
アダム・オラー(Adam Oller) RHP/AAA
JT ギン(JT Ginn) RHP/A+

NYM獲得
クリス・バシット(Chris Bassitt) RHP

トレード全体として見れば、NYMに有利なトレードですが、A'sにとっても悪くないトレードになったと思います。

そう思う背景には、A'sにとって刻一刻と難しくなっていく今の状況があります。
というのも、ロックアウトと新しく結ばれた労使協定は、A'sのオフシーズンの展望に影を差す可能性があるのです。

その考えられる可能性のひとつは、買い手球団がトレードではなくFAに積極的になってしまうことです。
新しい労使協定が提供され、今年の贅沢税ラインは前年比+20Mの230Mに設定されました。しかし、新労使の規定がFA前の選手のサラリー増に反映されるのはまだ先のようで、今では実質金を出せる球団の財布の上限が引き上げられたのみにとどまっています。
そんな中、カルロス・ロドンが2年44M、菊池雄星が3年36Mを得たように、FA市場での先発投手への投資が増えていくことが予想できます。いくら実力があり、サラリーが安いバシットのような投手がいたとしても、獲得するのにプロスペクトが必要なのであれば、多少サラリーが割高でもFA市場で補強した方がマシと考える球団が少なくないからです。

ふたつ目はロックアウトが長引いたことにより、A'sには時間がなくなっているということです。
開幕までにトレードできなければ、トレードバリューが落ち目になることは避けられません。しかし、トレードを焦り過ぎれば足元を見られ、買い叩かれるリスクも上がります。A'sがバシットをトレードした翌日に起こったソニー・グレイのトレードはまさに足元を見られた結果でしょう。

そういった悪条件下にあって、今トレードのJT ギンとアダム・オラーというパッケージは悪くないものだと思います。

成績がパッとしないか、怪我をしまくるかと二極化していたA'sの投手育成にあって、健康かつスタッツも抜けているギンとオラーの加入はまさしく天啓。
しかもポテンシャルの高いギンは既にA+でスタッツも残していますし、オラーの方は2022シーズンのローテーション加入にも現実味があります。


交換要員について

色々調べてみて面白いなと思ったのは、交換要員として加入した2名がどちらも”ネクスト・バシット"とも言うべく素材である点です。

まず、JT ギンは今トレードの目玉と言って差し支えないでしょう。
高校時代にも1巡目指名を受けている、アマチュア球界では名の知られた逸材でしたが、大学進学後にTJ手術を経験。NYMは2020ドラフト2巡目でギンを指名し、オーバースロットで契約にこぎつけました。
大学時代から最速97mphのシンカーと縦割れのスライダーを交えてゴロを量産するスタイルにモデルチェンジ。BB/9は2.2、ストライク率63%とコントロールに優れており、92イニングで被HRはわずか3本とクオリティの高さが際立つ存在です。

ギンはいかにもA'sが好みそうなスタッツ先行型の逸材でありながら、高いポテンシャル(シーリング)の持ち主です。ストライクスロワーかつ被HRの少ないグラウンドボーラーである点は、A'sが長年スターターに求めてきたスタイルにまさしく合致し、コロシアムの球場特性にも完璧にフィットするはず。
三振数がまだ伸びていないという声もありますが、逆にこのスタッツで三振も奪えていたら、評価が高すぎてトレードで獲得するのは無理だったかもしれません。
ギンは高校時代から嘱望されてきただけに非常に洗練されており、メジャー昇格後すぐに一線級の働きをしてもおかしくないと思います。バシットの2020-21のようなシーズンを何年も送ってほしいですね。

アダム・オラーは現在27歳、一時は独立リーグで投げたこともある苦労人です。独立リーグで投げた後、SFとマイナー契約を結び、その後NYMからマイナーフェーズのルール5ドラフトで指名されました。NYM加入後は、92-94mphの速球をコマンド良く投じ、80mph中盤のスライダーとチェンジアップを交えるスタイルで、2021シーズンは大ブレイク。AAとAAAで120イニングを投げ、ERA3.45を記録しました。

バシットが相手ならメインピースのギンに加え、もう少し良い選手が付いてもいいかもしれません。しかし、オラーの評価やスタッツを見る限り、A'sはオラーのことを相当気に入っていてもおかしくないなと思いました。
ギンと同じくオラーもストライクスローワーで、コマンドに関してはギンより優れているのかもしれないとも思います。K/9は10.35と三振を奪えているのもプラス要素です。
既にAAAデビューも果たしていますし、オラーが今春から先発ローテ争いに食い込む可能性は低くないでしょう。A'sはバシットに引き続いてマナエアとモンタスのトレードも試みるでしょうし、空席は必ず生じるはずです。

今思い返せば、バシットはエリートでも無かったですし、苦労人というにしてはプロスペクトとして評価されていました。また、その成績も圧倒的ではなくとも堅実だったことを考えれば、このギンとオラーのステータスと成績をちょうど2で割ったのが昔のバシットに近いかもなと思いました。



バシットとのお別れ

このトレードにて、A'sはクリス・バシットと袂を分かつことになりました。

2014年オフに加入し、2019年のローテーションに定着するまでの4年間はもちろん、そしてブレイクの兆候を示した2020年にでさえも、バシットがこのようにエースとしてファンからの最大限の惜別を受けながらチームを去るとは想像できませんでした。

バシットがフランチャイズに残したものは本当に大きかったように思います。

昨年8月の試合で顔面にライナーを受けてからの奇跡的なカムバック劇は、バシットの人間性をよく表した出来事だと思います。本当に感動しました。

いつかまたA'sに戻ってきてほしいですね。そして、来年はデグロムとシャーザーに次ぐ三番手としての活躍を見守りましょう。

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