【ATH】fWAR17を上積みせよ ~コアプレイヤーは誰だ編~【オフシーズン展望その1】
サムネイル撮影:もー
来季に向けてfWAR17を上積みせよ
理論上、リプレイスメントレベルの選手のみのチームは48勝。ここをベースラインと考えると、プレーオフ進出のためには何勝分(fWARいくつ分)を上積みすれば良いでしょうか?
2022年にプレーオフが12チームに拡大されて以降、プレーオフ進出チームの中で最も勝ち星が少ないのは2023年のマーリンズの84勝(2022,24年はボーダー86勝)、プレーオフを逃したチームの中で最も勝ち星が多いのは2024年のダイヤモンドバックスの89勝(2022年はブリュワーズが86勝、2023年はマリナーズが88勝)となっています。
つまり、机上の計算では、プレーオフ進出のためには最低でも84勝ないし86勝が最低ライン、そして90勝していればまず間違いなくプレーオフに進出できます。
さて、アスレチックスの現状はどうでしょうか。
昨季比で19勝増やしたアスレチックスの今季チームfWARは25.1。2023年の7.6と比べると3倍以上に膨れ上がりました👏
最低ラインの84勝までもfWARの上積みは10以上必要で、安全ラインの90勝を目指すならばfWAR17の上積みが必要になります。
外部補強には期待できない
上積みを目指す上で真っ先に思いつく手段が外部からの補強です。
しかし、アスレチックスはあらゆる意味で理想的な移籍先とは言い難く、ここ2年は補強に苦戦しています。
たとえば2023年。コアプレイヤーの放出で得た若手選手をそのまま補強とした2022年と異なり、2023年はベテラン勢をオフシーズンに補強しました。
しかし、加わった8人の新規加入勢(ルチンスキ、藤浪、ファミリア、メイ、ジェイス、ピーニャ、アギラー、アレドミス)の合計fWARは-0.6。
2024年も8人の新規補強(ウッド、デスボール、アレクサンダー、マクファーランド、アダムス、デービス、トロ、帝王)を施し、ちょっとマシになって2.3のfWARをマークしました。
過去2年で惨憺たる結果を残し、さらに今オフはFA物件をどれほど呼び込めるかが未知数。来季以降、サクラメントのマイナー球場を本拠とすることもあって、FAに敬遠される可能性が高いことは既にフロントも認めるところです。
したがって、外部補強によって大きな上積みは期待できそうにありません。
上積みの方法は:コアプレイヤーを確立せよ
WARを上積みする上でもう一つの手っ取り早く、そして効果的な方法、それは1人で莫大なWARを計上できるコアプレイヤーを確立することです。
アスレチックスは今季、昨季のチームfWAR7.6から25. 1へと大きな上積みを記録しました。その要因は現存の選手の急成長にあります。
ルーカーは2.1から5.1へとアップ。ローレンス・バトラーは-0.2から3.3へ。JJ ブレデイは0.4から3.1へ。シェイ・ランガリアーズは0.7から2.0へ。メイソン・ミラーが0.7から2.3へ。
その他にも新人のマックス・シューマン、ルール5から加入のミッチ・スペンス、2年目で新加入のオズバルド・ビードなど1超えのfWARを記録した選手が現れました。
伸びしろという面ではまだまだ期待できそうな選手が多く揃っており、今季ほどの成長率とは言わないまでも、成績を伸ばす選手が多く現れるのではないでしょうか。
この中からさらに大きなバリューを叩き出すコアプレイヤーが現れること、これがアスレチックスに必要な要素です。
前述の通り、外部補強には大きな期待はできません。アスレチックスとしては上積みが必要なfWAR17の大部分を、自前の選手の成長で賄わなければいけないでしょう。
さて、今のアスレチックスのコアプレイヤーはfWAR5.1を記録したルーカーでしょう。
fWAR5.0オーバーの選手は今季球界に21人しかいません。その内の1人が我らがルーカーです。
ただ、ルーカーは既に30歳。衰えが始まってもおかしくない年齢でもあり、39本塁打・wRC+164を記録した今季がキャリアハイとなる可能性は十分にあります。
つまり、早急にルーカー以外のコアプレイヤーを生み出す必要があるということです。
ルーカーに続いて、今季のコア4と表現されることもあったバトラー、ランガリアーズ、ブレデイもいます。
この内、バトラーはシーズン通して昨季後半の打撃をキープできれば、十分にコアプレイヤーとしての立場を確立できるはず。ブレデイは中堅守備がしんどく(OAA-3,DRS-19)、これ以上を望むのは酷かも。ランガリアーズは守備さえ改善できれば、さらなる上積みに期待できそうです。
では、ここで挙げた選手以外でコアになれそうな選手はいるでしょうか。
ジェイコブ・ウィルソン
真っ先に候補に挙がるのが遊撃のジェイコブ・ウィルソンです。
ウィルソンは2023年ドラフト1巡目(全体6位)で入団。フルシーズン初年度の今季は主にAAとAAAで226打席に立ち、wRC+200という驚異的な打棒を見せ、メジャーデビューを果たしました。
マイナーでの今季打率は.433と、ルイス・アライズ(パドレス)に比肩するヒットメーカーとしての期待を受けています。また、遊撃守備も高い評価を受けており、名手だった父ジャックの遺伝子を受け継ぐ好守も持ち味です。
ただ、デビューしたMLBレベルではやや苦戦。打率は.250にとどまり、wRC+は86。守備でもOAA-2と低迷しました。
しかし、まだプロ入りして2年足らず。各種予測システムもウィルソンに大きな期待を寄せる数値を算出しています。
特にSteamerではwRC+116、ディフェンス貢献度6.2でfWAR3.1という堂々たる成績が予測されています。この予測値でも打率は.284と、ウィルソン本来のヒット量産スキルはまだ開花前。もし、マイナーで発揮されていた打棒を再現できるようになれば、コアプレイヤーとしてカウントできるようになるでしょう。
デビュー後に伸び悩んだ守備力も、4打球あった推定成功率80%以上の打球におけるミスが影響しているかもしれないと思います。少ないサンプル故に、凡ミスはOAAに響きます。
また、球際で取り損ねる打球も散見されており、まだまだ改善の余地があるのは確かです。それでも、マイナーにおける守備指標DRP(Baseball Prospectus)では、+0.3をマークしているため、守備でのバリューも問題なく出せるようになると考えています。
タイラー・ソダーストロム
2年目のタイラー・ソダーストロムも今季、存在感を残しました。
デビューイヤーの2023年は45試合でwRC+34と苦戦も、今季は114に大幅アップ。xwOBA.348はルーカーに次いで、バトラーをも上回るチーム2位に入りました。
特に菊池雄星との交錯があった6月9日以降は目覚ましい活躍。今季9本塁打の内の8本塁打を放ち、wRC+は127。課題の粗さも三振率19.3%と改善され、一皮剥けました。
ソダーストロムが来季以降もこの打力を維持できれば、マット・オルソンのようなコアに成長することもありえると思います。
バリュー上、OAA-3の守備力が足を引っ張っていますが、ソダーストロムの一塁守備はコーチ陣からの評判も上々。見ていても十分上手そうに見えるため、指標の改善に期待したいところです。
ザック・ゲロフ
ゲロフは今季、2年目のジンクスにハマりました。69試合でfWAR2.7を稼いだ2023年から一転、wRC+は132から82へ落ち、fWARは半減の1.4。2023年には次代のコアとして期待される活躍を見せただけに、失望感の募るシーズンになりました。
それでもゲロフに期待する理由はその天井の高さ。
今季は不振といえど17本塁打を放つなど、パワーツールは確かなものがあります。
さらに特筆すべきは守備力の高さ。守備力が低いアスレチックスにあって、ゲロフは二塁でOAA+2と高い守備力を発揮。さらに25盗塁を決めてBsR4.3の走塁貢献共々、ゲロフが打撃不振でもバリューを残せた要因となっています。
ゲロフは今オフ、MLBワーストの三振率34.4%を記録したコンタクト面の改善に着手予定。これが成功すれば、再び大きなバリューをチームにもたらせる選手になるはずです。
正直、パワーツールと守備走塁の貢献を両立できるゲロフこそが、コアプレイヤー候補の1番手であることは確か。ゲロフの成長はチームの趨勢に大きな影響を与えると思います。
次回以降はこれまでのオフシーズンの動き、外部補強の現実的な提言、またアスレチックスのサクラメント移転などについても記事を挙げていく予定です。よろしくお願いします。