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【OAK】ヘスス・ルザードに必要な投球術とは

ヘスス・ルザードが殻を破りきれません。
有望株として非常に高い評価を受けていたルザードですが、昨年は防御率4.12とエースになるまでのちょっとした足踏みをしています(この数字も十分すごい)。

選手名鑑などでのルザードの寸評には、概ね「有望株」だ「素質は本物」だといった言葉の後に「投球術が足りない」みたいなフレーズが並ぶことがあります。事実、私もルザードの寸評について書くときに「投球術を磨けば...」などと言及しています。

だったらその投球術とはなんなのでしょうか?

自分でもよく分かっていない言葉を世間様に向けて使っていたのはフェアじゃなかったなと深く反省し、今日はこれからルザードの投球に必要な具体的なことを考察していきたいと思います。


投げるスポットを間違えている可能性

昨年のワイルドカードゲームでの被弾然り、ルザードの投球を見ているときに「不必要な内角攻めが多くないか?」という印象を受けました。
そして今回調べてみると、データは顕著にその傾向を示していました。

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右打者の内角低め、左打者の外角低めに投球が集中しています。

上のチャートは左右両打者に対するチャートですが、右打者に対しても内角低めのボールゾーンへの投球割合が多くなってるのが下の表で分かります。

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これはルザードだけに見られる特異な傾向かと言えばそういうわけではなく、スライダーを武器とする(≒チェンジアップ系が発展途上)の左腕にはそれなりに見られる傾向のようです。

しかし、ルザードはブレーキングボールだけでなくチェンジアップにも秀でた投手
右打者に対してはチェンジアップを有効に使いたいところですが、被打率.283と決め球とするには少し打たれています。

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その原因も投げるスポットが適切ではないことに起因するのではないかと考えています。

ルザードのするように、右打者の内角にチェンジアップを投じるのは比較的珍しい配球ですが、現KCのマイク・マイナーなどは内角チェンジアップの名手として活躍しています。
しかしマイナーのチェンジアップの用法はいわゆるフロントドア、対になる速いスライダーと組み合わせて見逃し三振を取る使い方です。
高速のスライダーというよりは曲がりの大きいブレーキングボールを扱うルザードに内角のチェンジアップを活かす手札があるかと問われれば、それにはやや疑問符がつきます。

そこでルザードのチェンジアップの用法のある種のロールモデルとして欲しいのがジョン・ミーンズ(BAL)です。

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これはミーンズの右打者に対する投球マップですが、速球とチェンジアップの外角への出し入れが目を引きます。
基本は4シームとチェンジアップの偽装で組み立て、カーブはバックフットに食い込ませるというシンプルな意図が窺えます。
ルザードもこのように球種の用途、そして攻めのパターンを確立することが大事かもしれませんね。


シンカーなのか4シームなのか

これは開幕シリーズのHOU戦で上がった話題です。
ルザードはどうやら「高めに4シームを投げ込む」ことに取り組んでいるようなのです。彼自身はそれをトレンドに乗っかることと捉えているようですが、同時にルザードはシンカーを投げるべきだとする意見も多くあります。ルザードはこれまではメインでシンカーを投げてきました。

私はルザードは高めの4シームを投げる必要はそこまでないとの立場です。
というのも、ルザードの球質はどうも高めに投げ込むのに適していないようだからです。

4シームの回転数は上位20%スピン効率も96%という高数値を叩き出しているルザードですが、回転軸が良くありません。下の表にあるように10:15を指しています。もう少し縦、12:00方向に近づけばホップ変化を生み出しやすくなるのでしょうが、現状では横の変化が大きくなっています(下図参照)。

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現状、ルザードは横変化を活かしてシンカーの割合を増やすのがいいと思います。
しかし、高めの速球という選択肢が大きく投球の幅を広げてくれます。特にカーブを武器とするルザードにとっては。
4シームの質改善はルザードにとっての中長期的な課題になるかもしれません。


終わりに

と、この記事を書いている途中にルザードは2度目の登板を果たし、LAD相手に見事なピッチングを見せました。
その投球ではここでも言及したチェンジアップの出し入れはもちろん、少し脱力してコマンド重視でカウントを組み立てるなど、ルザードの成熟を感じ取ることができました。

今年こそ待望の大エース誕生といくでしょうか。多大な期待は禁物ながらも、ルザードに大きな夢を見てしまいます。今後の登板が楽しみでなりません。


出典:Oakland A's公式Twitter、baseball savant

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