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オークランド・アスレチックス選手名鑑2020【完全版】

今年はワールドチャンピオン獲得の大きなチャンス!

昨年のアスレチックスは、春先に出遅れながらも、自前の選手たちの台頭により、2年連続のプレーオフ進出を果たした。

今年もチームの中心は ”2人のマット”擁する内野陣だ。
 一塁手マット・オルソンと三塁手マット・チャップマン、そして遊撃手マーカス・セミエンがどっしりと居座る陣容は、守備だけでなく攻撃でもリーグトップクラスと言える。



2018年まで、その3人以上に打線を引っ張ってきたDHクリス・デービスは昨年、目も当てられない不振に苦しんだ。
デービスの打棒が復活するかは、今年のチームの出来を占う上での最重要事項と言っても過言ではない。
本人は復活に自信を覗かせているが、スプリングトレーニングではいまだに長打がない。


外野陣のレギュラーは、昨年の活躍で内野の3人に次ぐ、”準コア”クラスのマーク・キャナラモン・ロレアーノまでは確定。

残る枠には、2018年は主砲として活躍したスティーブン・ピスコッティが濃厚と見られていたが、故障で出遅れが決まった。
そのため当分の間は、今年も昨年に引き続き、スイッチヒッターのロビー・グロスマンと右打ちのチャド・ピンダーがプラトーンを張ることになりそうだ。
ピスコッティが復帰後に自らのポジションを取り戻せるか、そして昨年AAAで37HRを放ったセス・ブラウンが割り込めるかは注目ポイントである。ピスコッティに関しては、デービスが2年連続で不振に苦しんだ際の指名打者の保険としても重要な存在になるだろう。


そして、目下スプリングトレーニングの大きな焦点となっているのが「セカンドの定位置争い」である。
現状、フロントランナーは24歳のフランクリン・バレトとカブスからトレード移籍してきたトニー・ケンプ。その2人をルール5ドラフトで獲得したヴィマエル・マチーンとAAAの有望株ホルヘ・マテオが追い掛けている状況となっている。

イメージの悪さが先行していたが20HRを放ち、守備も後半はマシになった昨年のジュリクソン・プロファーのクオリティを超えられるかは疑問であり、誰が定位置を獲ろうとも多くは望めなかろう。
ただその中でも、フランクリン・バレトのブレイクのみが状況を打開できる数少ないシナリオであり、バレトのプレーには注目が集まる。

中途半端な面子が集ったセカンドの競争に比べ、捕手陣の切磋琢磨はファンに嬉しい悲鳴を上げさせている。
ついに昨年ヴェールを脱いだ有望株ショーン・マーフィーに加え、プロファーのトレードで獲得した26歳のオースティン・アレンは打撃に定評があり、傘下の有望株ジョナ・ハイムは確かな守備力とヒッティングスキルで知られる。
その全員がスプリングトレーニングでは申し分ない活躍を見せているため、捕手に関しては贅沢な悩みを抱えることになった。


内野陣と同様にストロングポイントとなりそうなのが、”先発投手陣”だ。

何しろエース格の投手を3人も抱えている。

昨年、自らの素質を証明したフランキー・モンタス、プレーオフを託されたショーン・マナエア、そして超有望株ヘスス・ルザードの3人である。
スプリングトレーニングではマナエアは試行錯誤の段階という印象を受けるが、モンタスとルザードは既にレベルの高さを見せつけていて開幕投手はこの2人のどちらかに絞られたと言えると思う。

そしてその3人の後ろを受け持つことになりそうなのが、昨年の開幕投手マイク・ファイアーズ
抜群の安定感でローテを回し続けたファイアーズがこの位置にいるため、先発投手のやり繰りはずいぶん楽になるだろう。是非とも810万ドルの高額年俸に応える年を送ってほしい。

そして、この先発投手陣をストロングポイントたらしめているのは、先発5番手を巡るハイレベルな競争にもあるだろう。
現状、5番手争いは昨年ローテを回したクリス・バシットと有望株AJ パクの2人の一騎討ちである。
パクの素質の高さも、バシットの実力も捨てがたく、悩ましい問題ではあるが、両投手ともリリーフ適性も備えているため、2人ともロスターには残るだろうし、シーズン中の入れ替えも可能だろう。
パクの故障でバシットが濃厚になった感じはあるが、いずれにせよ漏れた2人のどちらかをブルペンから柔軟に用いることができるのは投手陣にとってプラスである。

追記
新型肺炎の流行によって、今年のシーズンは開幕が遅くなり、代わりにダブルヘッダーの多い日程になる可能性がある。そのため先発投手の頭数の多さが重要性を増す事になるだろう。その点でもパクとバシットの2人がいるのは心強い。

それに対して、ブルペンは崩壊の危険を帯びている。

不振に苦しんだブレーク・トライネンとの契約を見送り、ジェイク・ディークマンユスメイロ・プティートを引き止めることを選んだアスレチックスだったが、衝撃的なことにブルペンにはほとんど補強を施さなかった。

オールスタークローザーのリアム・ヘンドリクスとセットアップのプティートが大黒柱だが、両者とも勤続疲労が不安視され、トライネンの二の舞になっても不思議ではない。

鍵を握るのはホアキム・ソリアルー・トリビーノの復活だ。
2人が再びエリートリリーバーに返り咲くことができれば、ブルペンは一転して強みになる可能性もある。

また、”ブースター”としてドールトン・ジェフリーズグラント・ホームズらの有望株がシーズン中に昇格するか否かも注目したい。


今年はセミエンのFAとチャップマンとオルソンの調停も迫っている一つの節目の年だ。
ルザード、パク、マーフィーの嘱望されてきた有望株3人も開幕をメジャーで迎えることになり、今年は勝負をかけなければならない。
レギュラーシーズンの目標はアストロズを打ち倒しての地区優勝だ。


2020選手名鑑

野手は予想オーダー順に、先発投手は予想ローテ順に並べていく。


投手陣

フランキー・モンタス SP

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先発一番手予想のモンタスは昨年の前半戦にブレイク。エース誕生かと思われたが、オールスター前に禁止薬物の使用が発覚し、後半戦は1試合の登板に止まった。
今年、覚醒したモンタスがフルシーズン投げられるのはA'sの強みの一つだ。

モンタスのブレイクの一因となったのが、新球種スプリッターの習得である。
この被打率.160の決め球は、シーズンを追うごとに球速やコマンドが安定していったため、今年は更に多くの三振が見込めそうだ。

禁止薬物のおかげか球速も軒並み上がっているので、今後は薬物抜きでどれだけやれるのかは注目だ。
成績予測サイトSteamerでも、OOTPのシミュレーションでも低調な予測が出ているが、今年はリーグ屈指の先発へと羽ばたく年にして欲しい。


ショーン・マナエア SP

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2018年に頭角を現したエース格の投手だが、8月にローテーターカフの故障で長期離脱。その影響で戦線復帰は19年9月までズレ込んだが、復帰後は本格派エースのような投球にモデルチェンジし、チームを牽引した。

特に目覚ましい改善を示したのは4シームで、被打率は1割以上、Whiff%も13.6% → 24.6%の向上を見せた。
恐らくこの要因は「球威が増した」ことだ。

とはいっても平均球速は微減しているが、4シームの横変化量を見るとvs.Avgで7.2 → 4.0に減少している。
マナエアの元々の出所の見にくいフォームと、高めへの投球が増えたこともプラスになって、打者の感じる体感球速はアップしたと思われる。そして4シームの改善もあって、以前から決め球としていたチェンジアップに加えて、軌道がより速球に近いスライダーの成績も良くなっている。

しかし、ワイルドカードゲームではその4シームを徹底的に張られて炎上。

本人は「全部自分のせいのように感じられた」と振り返るほど堪える経験だったが、今では「正直なところ、そのようなことが起こったことは本当に嬉しいよ。負けたことは嬉しいことではないが、その経験、『対処法を学ぶ』ということ、そしてプレーオフの試合で、大勢の人がいる状況にどう対処するかということを学んだ。」と前を向く。

今春は名投手ランディ・ジョンソンにスライダーの指導を仰ぎ、スライダーの高速化を目指している。


マイク・ファイアーズ SP

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もはやサイン盗みの告発者という印象しかないが、昨年は長いキャリアの中でもベストのシーズンを送った。

持ち味は変幻自在のピッチセレクションで、試合毎に投球スタイルを変え、打者に的を絞らせない。
昨年はスライダーとシンカーの質が改善したおかげで投球の幅が広がり、ノーヒッター含む自己ベストの15勝につながった。

今年は2年契約の最終年だが、成績予測は低調なものが多く、OOTPのシミュレーションでは既にチームからDFAされている(!)
今年もローテを回して、イニングを稼ぐ活躍に期待したい。


ヘスス・ルザード SP

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昨年ヴェールを脱いだ超有望株左腕。

昨年9月に昇格してからはいきなり重要な役割を担い、接戦のミドルイニングで複数イニングを投げて試合のクロージングも任された。
最速100マイルに達する速球系は鋭い変化のシンカーと4シームの2種類、またカーブとチェンジアップも支配的な決め球であり、打ち崩すのは至難の業だ。

今年はついに先発投手としてフルシーズンを迎えるが、怪我さえなければ新人王を獲るぐらいのパフォーマンスは見せてくれるはずだ。
予測値はかなり控え目に出しているが、いきなりサイヤング賞レースに加わってもおかしくはないのではないだろうかと思う程度には期待をかけている。


クリス・バシット SP

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2019年に飛躍を遂げた古参のピッチャー。

以前にnoteでも取り上げたが、速球のスピードアップが飛躍の要因で、シンカーのピッチバリューはMLBでもトップ。これに70マイルを切る超スローカーブを織り交ぜる。

今季は有望株のA.J.パクに押し出されてブルペンに回ると見る向きもあるが、まだまだ実力ではバシットの方が上回っているはず。
更なる成長に期待したい。


A.J.パク SP

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昨年デビューの2016年ドラフト全体6位の有望株。

8月にデビューすると、前評判通りの豪速球でK/9は10.32の高水準を記録したが、秘密兵器とまではいかなかった。

パクの球種は速さはあるものの、変化量には乏しく、思ったよりも空振りを奪えていないという印象を抱いた。
長身を活かした縦の変化球があったらロマンだな〜という感じだったが、今春は故障後は封印していたチェンジアップを解禁。
女房役のマーフィーも「彼のベストピッチの一つ」と認める決め球を復活させて、投球の幅が広がることに期待したい。

今季は先発で勝負するというパクだが、個人的には今季はブルペンでもと思うところだ。
ブルペンにはあまり補強を施していない上、プティートやヘンドリクスもいつ壊れてもおかしくないという状況なのだ。
その中で、パクをジョシュ・ヘイダー(MIL)のように起用するのはプレーオフに向けても得策のように思える。

しかし、そんなことは承知しているはずの球団がなぜあえて先発で勝負させるかというと、やはりパクをエースに育てあげたいからだろう。
同様にブルペン転向が既定路線と言われていたモンタスはマイナーと行ったり来たりでも辛抱強く先発で使い、ついにブレイクした。
華々しい結果が出るのはすぐではないだろうが、パクが大輪の花を咲かせる時までじっくり待ちたい。


リアム・ヘンドリクス CL

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2018年のDFAを乗り越えて、昨年はオールスターにまで登り詰めた。

正直言って昨年はマリアーノ・リベラ賞に輝いてもおかしくなかったはずだ。そのぐらいの活躍だった。

ブレイクの要因は何といっても球速の向上と、スライダーとカーブの2つの変化球でストライクを奪えるようになったことだ。

ファンとの交流も盛んに行うヘンドリクスは、インスタグラムの質問コーナーで、昨年の球速アップについて「遠投」を要因に上げていた。
その効果で平均球速は94.7マイル→96.5マイルに上昇、さらにはEdge%も47.4%に上がりコマンドも冴え渡っていたことがわかる。

そして変化球についても、カーブは2018年では一番投げていない球種だったが、昨年はサードピッチにまで磨き上げ、Whiff%は55.8%の好水準に。
スライダーもカーブもストライクからボールへの変化で多くの空振りを奪えるようになったことが大きかった。

昨年はフル回転を続け、終盤には疲労の影響も見られたのは不安要素だ。
同じようにブレイクしたブレーク・トライネンが大不振に陥ったこともあるので、今年はひとまずクローザーの座をキープして欲しい。


ユスメイロ・プティート SU

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在籍2年はまさに大車輪の活躍。2019年はヘンドリクスに次ぐNo.2として大きく貢献した。

34歳にして自己ベストの成績を残したが、昨年は変化球が冴え渡っていた。

右打者用のカッター・カーブ、左打者用のチェンジアップの3球種はいずれも被打率.155以下で、Whiff%は30%を超える。
特にやや変化量が増えたカッターは、被打率.259→.155と大きく成績を向上させた。

その変化球を精密に投げ分けるコマンドは健在で、今年の成績もそこまで急激に悪化しないのではないだろうか。
ただ、酷使が続いているのでいつ壊れてもおかしくないのは確かなので、今年はもっとプティートを楽に起用したいところだ。


ホアキム・ソリア RP

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昨年は乱調気味だった実績あるベテラン。

2年15Mの契約で加入した昨年は、トライネンとトリビーノに次ぐブルペンの3番手的役割を期待されたが、接戦を託すには心許ない存在だった。

左打者に対してERA6.21と滅多打ちを受けたことが、成績悪化の原因か。

とはいえども、どの球種も昨年に比べて大きく成績を下げているわけではないのは今年に向けてポジティブな要素だ。
引き出しの多いベテランなので、ちょっとしたことで修正の手がかりを掴むことはありえなくないと思う(特に左打者用の決め球チェンジアップに関しては)

クローザーのヘンドリクスは、優れたメンターとして彼の名を挙げていて(もう1人はラトロイ・ホーキンス)、ソリアは指南役としても重要な存在を担っているという。


ルー・トリビーノ RP

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昨年後半からの不振から抜け出せず、苦しいシーズンを送った。

データを見ると、とにかくシンカーが打たれまくっていることがわかる。
被打率.488の球種を2割近くも投げていれば、打者にはボーナスチャンスを与えているようなものだ。

このシンカーは、2018年に比べて縦にも横にも動かなくなっている。
同時に4シームは変化量が増えており、恐らく4シームと上手く棲み分けができなくなったのかもしれない。
今の時代、中途半端なシンカーは投げない方が良い。
ゴロ率を下がったシンカーを尻目にゴロ率を上げた4シームや、88マイル程度でシンカーよりも沈むチェンジアップを増やせば、シンカーの代用にはなるはずだ。


また、起用法にも改善すべきところは多そうだ。
2018年のワイルドカードゲームでもそうだったが、トリビーノには2~3イニングでの登板が合っているのではないかと感じている。
1イニングだけだとカッターと4シームでゴリ押ししようとしてしまうので、むしろ複数イニング投げてカーブなども散らした方が良いような気がするのだ。

トリビーノは間違いなく持っているモノは素晴らしいので、何とか些細なことでも良いから変化をつけて、また2018年の前半戦のような姿を取り戻して欲しい。プレーオフで勝つにはトリビーノの存在が必要だ。



J.B. ウェンデルケン RP

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2018年にERA0.54のシーズンを送り、昨年は本格開花が期待されたが、AAA暮らしが長かった。

4月まではシチュエーション問わず投入されるファイヤーマン的な役回りで機能していたが、絶対的な武器に欠け、その後はAAAで長く過ごした。

打者天国のAAAでもERA5.59と微妙だったが、9月にコールアップされると5試合で自責0、2勝をあげる活躍。
9月からはスライダーを第二球種として採用し、このモデルチェンジが機能した。

変化球のレパートリーが定まりきらないのは課題だが、高回転の4シームには可能性を感じる。
今年是非とも一皮剥けて欲しい逸材である。


ジェイク・ディークマン RP

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昨夏にトレード加入した左腕がまさかの再契約。

KCから移籍後は19三振に対して16四球の豪快なピッチングで、流石に再契約はないだろうという感じだったが、オフになると2年7.5Mの安価な契約で出戻り。
ある意味でこのレベルで安定した成績を2年間残すだろうなという予測はつくので、この条件でのキープは美味しいものになる可能性は高い(ワンポイントが今年から廃止されるので、上手い具合に足下を見た契約と言える)

ハードヒット%やバレル%などのx-statsでは非常に優秀な数字が出ているため、ディークマンはストライクさえ取れればエリートリリーバーになれる可能性を秘めている。
A'sはマイナーでも「ストライクを投げろ」と投手に口酸っぱく指導するという話があり、事実昨年はストライクゾーンに投げ込んだ割合を示すZone%でリーグ1位だった。
ストライクを投げさせる球団と、ストライクを投げられないディークマン。何も起こらないはずはなく...?


T.J. マクファーランド RP

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ウェーバーで新加入。

先ほども述べた通り、今年からの新加入でワンポイントリリーフは廃止となり、A'sはそれに合わせてライアン・バックターをノンテンダーにし、新たなブルペン左腕を補強することになった。それがディークマンとマクファーランドである。

マクファーランドは、2018年には47試合で72イニングを投じていることからも分かるが、ワンポイントのレフティーではない。
ディークマンとは違い技巧派のマクファーランドは、球威こそ平凡で三振は少ないが、回転の少ないシンカーでゴロを量産するタイプだ。
また、ただの微妙な技巧派というだけでなく、打球初速やバレル%は平均以上、スライダーとチェンジアップのWhiff%は30%超と上向く要素も多い。

ひとまず、シンカーを減らして変化球を増やす、というようなピッチングスタイルの修正は行うのではないだろうか。
掘り出し物候補として注目したい存在だ。


バーチ・スミス RP

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SFとOAKのベイエリアで行われたトレードはほぼ30年ぶりということで話題になった右腕。

スミスの特徴は、投手コーチのスコット・エマーソンが言っていた通り「スピンレートが高い投手」であること。
平均以上のスピンレートを持つ速球を高めに、そのほかにカーブとチェンジアップを交えるスタイルだ。

正直、期待値はかなり低いが、昨年は打者有利なAAAで15先発してERA2.33を記録していて、この調子ならばMLBでもロングリリーフを務められる可能性もある。

ただその後、実績のあるコリン・マクヒューがスミスよりも安い1年0.6Mで契約していたのを見ると、マクヒューを獲っても良かったのでは??と思わざるを得ない。


ダニエル・メンデン SP

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ついに正念場のシーズンとなりそうな右腕。

これまでの4シーズンはMLBとAAAを行ったり来たりして定着を狙ったが、結局実力不足や故障もあり定着は果たせなかった。
今年はオプション切れを見据え、背水の陣となるはずだったが、オフに寄生虫の病気を患い体重を失い、さらに長年痛みを抱えてきた右肘にもメスを入れた。

窮地に追い込まれたメンデンではあるが、これまでも個人的には球速が上がれば活躍できるポテンシャルはあると思っている。
メンデンの良いところは6球種全てをそれなりのレベルで操れる投球感覚の良さだ。
80マイル後半のスラッター、80マイル前半で変化の大きいスライダー、スライダーと対になるチェンジアップ、変化の大きくブレーキの効いた優秀なカーブなど、どれもコマンドよく出し入れすることができる。実はかなりハイレベルな投手なんじゃないかと思う。

ただ如何せん球が遅い、変化球も絶大な信頼のおける球種とまでいくものはなく、それが毎年同じような成績に停滞する原因である。
ブレイクのためには、絶対的な球種を磨くことか、もしくは球速の向上が必須だろう。

コンディションに苦しんでいるメンデンだが、このパンデミックで野球が止まっている期間に当たったのは不幸中の幸いと言える。ロングリリーフの需要も増えるはずなので、復活に期待したい。


ポール・ブラックバーン SP

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メンデンと似たような、4A投手だが、昨年はわずか1先発とチーム事情で不遇の扱いを受けた。

実はこのブラックバーン、私の注目株である。
というのも今年はスプリッターの習得に着手したらしいからだ。

スプリッターを覚えてブレイクといえばモンタスが思い出されるが、スプリッター習得を勧めたエマーソン投手コーチもその再現を狙っているようだ。
エマーソン投手コーチによれば、スプリッター習得を勧めたのには「速球もカーブもスライダーも人差し指と中指を使って投げる球種。だからチェンジアップを中指と薬指を使って投げるのが難しかった」という技術的な理由があったという。

ブラックバーンは元々、大きなカーブと昨年スピードを上げたスライダーという2つ良い球種がある。
スプリッターさえハマれば、好成績をあげることも可能ではないだろうか?

↓これは個人的に好きなブラックバーンの4シーム


ドールトン・ジェフリーズ SP

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2016年ドラフトでA.J. パクの次に指名された有望株右腕が、今季ついにMLB昇格を果たしそうだ。

ジェフリーズのこれまでのキャリアは、彼の耐久性の低さという最大の弱点のせいで、決して順調ではなかった。
プロ入り直後の2017年には7イニングを投げただけでTJ手術を受けることになり、続く2018年もリハビリでほとんど棒に振った。
プロ入りして4年、いまだに99イニングしか投じていない。
更に、今春のキャンプでも上腕二頭筋の違和感により離脱も経験している。

ただ、ジェフリーズが脚光を浴びるに値する能力の持ち主であることに間違いはない。
ジェフリーズの武器はとにかく完成度がずば抜けて高いところだ。マイナー通算のK/BBは10.08という異次元の数値で、昨年は奪三振93に対して与四球はわずか9だった。
昨年の復活を見て、ジェフリーズをマイナー全体のTop100プロスペクトにランクする媒体も増え、特にZiPSは79位の高評価を与えている。

マイナーリーグの開催がどうなるか分からない以上、ジェフリーズがMLBで通年過ごす可能性はまだ残っていると思っている。
今年のジェフリーズにはひとまず、怪我せずにブルペンで投げてくれることを期待したい。そして、あわよくば、2013年のソニー・グレイのように先発ローテの椅子を奪うぐらいの活躍も...


グラント・ホームズ SP

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前述のジェフリーズ、そして後述のキャプリーリアンと混ぜて「スペ有望株三羽烏」の一翼を担うのがこのグラント・ホームズだ。
元々は2014年ドラフト1巡目指名でLADに入団、そして2016年のジョシュ・レディックとリッチ・ヒルとのトレードで移籍してきた選手だ。

ホームズもまた怪我に苦しんだ選手で、2018年は右肩の負傷、2019年の最初の2ヶ月も上腕二頭筋の負傷で登板機会が制限された。
ただ、2019年は復帰後に軌道に乗り始め、今季中のMLB昇格は濃厚というところまで漕ぎ着けた。

ホームズ曰く昨年の成功は投球フォームの微修正にあるという。
「昨年の5月にちょっとした挫折をした後、腕の振りを少し短くして、とても良い感じになってきた。」と言うホームズはまた、健康でフル稼働で投げられることがとても幸せだったと感じていると語っている。(この時点で涙腺が緩む)。

ホームズはマックスで96マイル近い速球と、80マイル中盤のパワーカーブのコンビネーションが評価されている。ブルペン向きとの声もあり、MLBでは当分リリーフでの勝負になるだろう。
MLBレベルでいきなり通用するかは疑問だが、まずはホームズが投げている所を見てみたいというのが本音。くれぐれも故障の無いシーズンにしてほしい。


ジェームズ・キャプリーリアン SP

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「スペ有望株三羽烏」最後の一羽は、3人の中で誰よりも故障に祟られたキャリアを送っていると言える。

2015年ドラフトでNYYに1巡目指名され、2017年にソニー・グレイのトレードで移籍してきたキャプリーリアンは、TJ手術はじめとにかく故障で投げられない期間が長かった。
昨年5/19の登板は2016年以来の登板であると同時に、A's傘下でのデビュー戦だったというレベルで長いブランクがあった。

もはやかつてのような100マイルの豪速球を投げることはなく、エースとしての期待を受けることはないが、ハードワークを積み、昨年はA+からAAAまで駆け上がった。
今のキャプリーリアンは総合力で勝負するスタイルで、平均93マイル前後で96マイルに触れることもある速球と、平均以上のスライダー・カーブ・チェンジアップをコマンドよく織り交ぜる。

今年キャプリーリアンに期待したいのは、まず怪我をしないこと。そして来年以降のMLB定着とローテ入りに繋がる物をつかんで欲しい。




野手陣

マーカス・セミエン SS

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長年の努力が実を結び、ついに大ブレイク。攻守に非の打ちどころがない完璧な成績を収めた。
今年もセミエンがMVP級の成績を維持できるかはチームの浮沈を大きく左右するだろう。

私は今季のセミエンに関してはそこまで心配していない。彼はアスレチックスに移籍してきてから、長い時間をかけて守備力を磨き上げ、打撃のクオリティも上げてきた。恐らくこれはフロックではないだろう。
昨年後半は変化球に対してもハードヒットを飛ばせるようになっていたため、むしろ成績が上がる可能性もある。

フランシスコ・リンドーアの移籍が実現せず、アンドレトン・シモンズも復帰するためゴールドグラブ獲得は難しいかもしれないが、今年はシルバースラッガーとゴールドグラブの両取りを期待したい。

ちなみに、2児の父であり、チームの中では赤ん坊を安心して任せられると信頼されている。


ロビー・グロスマン LF

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移籍初年度はキャリアハイの出場数を記録し、ゴールドグラブファイナリストに選ばれた守備が高評価だった。ただ、選球眼が売りの打撃は低調で、出塁率は.334に過ぎなかった。

372.5万ドルでの再契約は割高に感じるところだが、安定したアプローチと守備への首脳陣の信頼は厚いようだ。
実際、グロスマンの他の野手(外野手)は大味なタイプが多く、その対極のプレースタイルとも言えるグロスマンの存在は効いてくるかもしれない。

そして、グロスマンのスタッツを見ていると、「対右腕/左腕」や「ホーム/アウェイ」のカテゴリで成績に乖離が大きい傾向にあることが分かるため、実力そのものは湿っていないと信じたい。

ただ、ホームを苦手にする傾向があまりにも強く、球場の広さが特に影響しない三振数などでも大きな差がある。
これはオークランドが本気で合わない可能性もあるのかなと思うが、色々なシチューション別でも明白な差が出ている。不思議な選手である。

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本人は「契約をした時から目標は、毎日少しでも良い選手になること」と語る真面目な男。

マット・チャップマン 3B

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順調な成長ぶりで2019年は”チームの顔"たる地位を確固たるものにした。
ただ本人も認めるように、9月に打率1割台に陥るなど後半戦の不振は反省点の一つだ。

チャップマンはオフに打撃の改善を図り、特に変化球と速球のコンビネーションに対処すべくスイングを改良したという。

そんなチャップマンが狙うのは「3割40HR」
40HRは十分可能(これを阻止できる候補の一番手はコロナウイルスである。そして阻止には成功した)だと思うが、3割にはまだ届かないかなと思ったので予測値は以上の通り。

あと、もう言うのも野暮ったいレベルだが、今年もゴールドグラブは獲ることになるでしょう。

マット・オルソン 1B

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2019年はとにかくオルソンの存在の大きさを理解した一年になった。

昨年、開幕シリーズで有鈎骨を骨折し、その後オルソンを1ヶ月欠くことになったチームはその間期待を裏切る低空飛行に終始し続けた。1Bの代役には急遽トレードで獲得したモラレスを中心に穴埋めが図られたが、どの策もハマらなかった。
しかし、オルソンの復帰後からは攻守ともに歯車が回り始め、復帰初戦でマイク・ファイアーズのノーヒッターを演出するなど、オルソン復帰の効果は目に見えて明らかなものであった。

オルソンを必要不可欠たらしめている最たる要素は、その守備力にある。
大柄な体格と巧みなスクーピング力を生かして未然に防いだ送球エラーは数知れず、またポテンヒットやグラウンダーのヒットを捕球できる守備範囲の広さも一級品だ。
セミエンとチャップマンの守備での好成績の立役者は間違いなくオルソンだと言えるだろう。

予測値では、オルソンのもう一つの売りであるパワーが”順当に”発揮され、ホームラン王を争うシーズンになると予測する。
もしこの予測値が現実のものになれば、オールスターやシルバースラッガーなど多くのタイトルレースでオルソンの名前を聞くことになるだろう。

まだ弱冠25歳ながら、チームの後輩には尊敬の眼差しを向けられているらしく、契約延長の話もぜひ進めてほしいものだ。


マーク・キャナ RF

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左殺しのプラトーン要員として長年チームに在籍してきたキャナが、不動のレギュラーに定着。

元々良かった選球眼と、右投手へのアプローチが改善し、一気に優秀な選手に生まれ変わった。

この成績以上に、オルソンが怪我した後の1Bの穴を埋め、CFのロレアーノの怪我の穴も埋めるなど、汎用性の高さと献身性での貢献も大きい。

今年はレギュラー待遇で迎える初めての年だが、是非とも一流の数字を維持して自身のキャリアを確かなものにする一年にしてほしい。

小ネタ方面でも余念が無く、球界トップクラスの”グルメリポーター”としても知られているが、それをここで言うのはベタすぎるかなと思うので趣向を変えて。

こちらは詩の才能(?)をメディアに見込まれて、キャナが試合の振り返りを詩にした記事。
グルメらしくロレアーノの一発をシカゴで食べたタコスに喩えている。


ラモン・ロレアーノ CF

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俊足と強肩を兼ね備えたベイエリアのヒューマンハイライトリール。

2018年の途中昇格以降、守備でビッグプレーを連発して人気を博したロレアーノだが、2019年は打撃で進境著しい姿を見せた。

マイナー時代を通じて四球も三振も多いタイプだったが、昨年は積極的アプローチを実践。
その結果、
各種スイング率→UP、各種コンタクト率→悪化、ローンチアングル→上昇、流し打ち方向への打球→減少
という非常に分かりやすい傾向を示した。

これらの変化は粗くなったともとれるが、まさしくフライボール革命・世界一になったHOUとBOSが導入した積極打法の流れを汲むものだ。
また昨年同様にブレイクしたキャナにも引っ張り打球増加の傾向があり、その裏にはアスレチックスの球団としての戦略がある可能性もある。

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対して元々評価の高かった守備・走塁は怪我の影響もあってやや停滞した感もある。

東京の開幕戦で患ったスネのストレス反応を抱えながら戦っていたらしく、スプリントスピードも落ち、守備範囲・ルート取りの数値も大きく落とした。

もっとも、守備範囲・ルート取りに関しては怪我以前にまだ未熟な面であり、これからCFに留まるには改善が必須だろう。
もしも、この点を改善できたなら攻守ともにオールスター級の選手にステップアップする可能性は高くなる。

ちなみにメルビン監督大好きエピソードに事欠かないロレアーノだが、

中でも私のお気に入りのメルビン監督大好きエピソードはこちら。
インタビューで「メルビンは監督としてどうですか?」と尋ねられて
「十分な時間ありますか?」と開口一番に言い放ったこの記事である。


クリス・デービス DH

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2018年に念願の本塁打王を獲得し、2019年シーズンは開始早々に2年の契約延長(20-21オフにFA)を手にしたが、まさかまさかの大不振に陥った。
もしデービスが本領を発揮していたなら、もっと高みを目指せたのではないかと口惜しい気持ちは大きい。

開幕当初はリーグ最速で2桁HRに到達するなど、例年並みかそれ以上の打棒を奮っていたが、4/12以降はパタっと当たりが止んだ。
そしてそれに追い討ちを掛けるようにして、インターリーグでの守備中に脇腹を負傷。
以降はメカニクスを見失い、長い長いトンネルに入ることになった。

打撃フォームが変わってしまったことで、デービスは以前のように打球を打上げられなくなってしまった。

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(縦軸が変わっているので見方には注意。)

baseball savantから引用したこのヒストグラムによれば、2019年シーズンは明らかにゴロ打球は一目瞭然である。

2018年のヒストグラムで突出しているローンチアングル25°は、デービスの”スウィートスポット”であり、多くのホームランをこの角度で打ち出している。
打撃フォームのカンを取り戻し、打球が上がるようになれば再びホームランを量産する可能性は高い。

ちなみに2018年以前はジャスティン・バーランダーの速球を格好の餌食にしていて、打倒アストロズの鍵もやはりデービスが握っている。


ショーン・マーフィー C

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球団No.3有望株がついに昨夏デビューを果たした。

ゴールドグラブ級と評判だった守備では強肩を発揮し、パンチ力も十分に見せた。

fWAR4.8という私の願望値は高すぎるように見えるかもしれないが、何であれホームランを20本打てれば、守備力と混ぜても十分可能な数字のはずだ(全盛期のラッセル・マーティンやヤン・ゴームズと比較してます)。
そして、まず間違いなく、今年とは言わなくても2~3年後にはこのような成績を安定して残すようになりそうだ。

ライバルであるオースティン・アレンやジョナ・ハイムとの競争に勝ち切り、そして故障せずに出場機会を得られるかが当面の争点になるだろう。

マーフィー曰く「目標は毎日(相手打線を)シャットアウトすること」で、打撃よりも守備にかなり比重を置いているようだ。


フランクリン・バレト 2B

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(先に言っておきますが、wRC+が-2なのは誤植ではありません。)

崖っぷちの有望株。
ついに定着を果たせないまま、オプションが切れてしまった。

攻守に絶不調だったプロファーの代役として、昨年は待望されて途中昇格したものの、蓋を開けてみればプロファーより酷かった。
とにかく打撃が粗く、メジャーレベルでは40%近い三振率を記録し続け、一向に改善される見込みがない。

今春はオプションも切れ、開幕ロスターに入らなければDFA不可避の状況だが、それなりに改善も見せていて、ブッシュ打撃コーチもバレトのオフの研鑽に太鼓判を押している。

その成果が現れたのが3/9のMILとのオープン戦。
ジョシュ・ヘイダーとエイドリアン・ハウザーからの2本を含む、3本の二塁打を記録し、成熟を感じさせた。
しかしその2日後、MLBは新型コロナウイルスの感染拡大を受けてシーズンの開幕を延期。
バレトのブレイクへの道のりは、まだまだ遠い。


スティーブン・ピスコッティ OF

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2018年には打線の中心的存在だったが、2019年は故障と不振で足踏みする一年になった。
今年も同様に、故障で出遅れ開幕に間に合うかが危ぶまれたが、開幕の遅れで事無きを得そうである。

ピスコッティはチームの長期的な見通しの中でかなり重要な存在である。
というのも、ピスコッティとは700万ドル程度の契約が2022年まで残っていて、それがボーナス契約となるか、もしくは死に金となるか次第でチームの動きは大きく変わってくる。

リーズナブルな契約が残っているというセールスポイントでピスコッティをトレードに出せるとすれば、今年のオフが最後のチャンスだったように思うので、ピスコッティとはこれから心中するつもりでいかなければならないだろう。

また、今年のオフにデービスがFAになるため、そのデービスが担うチャップマンとオルソンの援護砲の役割もピスコッティに引き継いで欲しいという思惑もチームにはあるだろう。

まず今年は試合に出場し、下位打線で恐怖の7番打者的立ち位置で荒稼ぎして欲しい。主砲としての数字を求めるのは、21年からでもいいと思っている。


チャド・ピンダー UT

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パンチ力と汎用性を兼ね備えたユーティリティープレイヤー。
私が東京ドームで見たときにはブレイクを100%確信したものの、物足りない成績に終わってしまった。

打球初速やバレルの多さなどを理由にブレイクを予測する声も多かったピンダーが停滞してしまった理由は、小さくまとまろうとしてしまったことにあるような気がする。

開幕まもない時期にピンダーの2019年シーズンからの打撃フォーム及び打撃スタイルの変化について取り上げた記事がこちら(出来た記事だなと思うのでぜひ読んでみて欲しい、というのとピンダーの最終的な成績と照らし合わせてみても面白いかもしれない)

この記事の中でも、ピンダーがフリースインガーから脱却したスタイルになりつつあるという話をさせていただいたのだが、この記事を投稿した辺りから、風向きが変わり始める。
それ以前は成功を収めていたのが一変して、三振が増え始め、しかしゴロが多くハードヒットは少ないという考えられる中で最悪の方向へ向かってしまったのである!(私のせいなのか...?)

打撃スタイルの改造の果てに、打撃スタイルを見失ったかのような不振に陥ったピンダーだが、何とか9月にはローンチアングルを前年並みに戻し、Hard%も52.8%を記録した。
シーズン終了時の好調そのままに、今春の仕上がりも上々である。

一方、守備の方では変わらぬ汎用性の高さでチームに貢献した。
なぜかそれまで何ともなかった2B守備でミスを多発したものの、その代わりに外野の両翼守備はゴールドグラブ級と言っても過言ではないレベルに成長し、3B守備にも適応を見せた。
打撃の方でブレイクした暁には、セミエン流出に備えてSSでの出場機会を増やすのも選択肢に入れるべきだ。

これは余談ではあるが、ピンダーは「クラブハウスで最も尊敬されている選手」だという。
メルビン監督は「いつか監督になるだろう」と述べ、ロレアーノも今季のブレイク候補にピンダーを挙げつつ「彼を見る度に幸せな気持ちになる。今までで最高のチームメイトの1人」と絶賛している。


トニー・ケンプ 2B/OF

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ケンプは、今オフの数少ない補強の一つで、スプリングトレーニングでは期待に応える活躍を見せ、開幕ロスターと2Bのプラトーンはほぼ手中に収めたものだと思われる。

ケンプの売りはマイナー通算打率.312、同出塁率.389の優れたアプローチと複数ポジションを守れる汎用性だ。
粗い打撃スタイルが多いA's打線、こと特別に粗いバレトとプラトーンパートナーを組むため、ケンプの緻密な打撃スタイルは打線に良いアクセントをもたらしてくれるだろう。

実は既に28歳ながら年俸調停権も得ておらず、今季は最低年俸で雇える & 2023年までの保有が可能という点も魅力だ。
しかも、ケンプの見返りとして出したアルフォンソ・リバス一塁手は決して評価の低い選手ではなかったため、出来れば複数年バリューを残して欲しいところである。

また、サイン盗み騒動真っ只中のアストロズに在籍していたが、サイン盗みへの参加を拒否していたことでも評価は上昇した。(間違ってもホームのファンからブーイングは浴びないだろう)
サイン盗みを拒否したこともそうだが、アストロズ時代からファン人気は高く、告発主となったマイク・ファイアーズとも良い関係を築いていることもあって人柄への評価も高い。


セス・ブラウン 1B/OF

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昨年AAAで37HRを放ち、待望のメジャー昇格を果たした生え抜き野手。
MLBでは、初ホームランこそお預けになったが、バレル%は11.5%と大砲の片鱗を見せた。

実際には選手層の壁に阻まれて出場機会はもっと少なくなりそうだが、私の予測では十分な出場機会を得る想定で成績を予測した。

もっぱら評価されていたのは打撃だけと思っていたが、水準以上の運動能力も備えているため、1BでもLFでも守備貢献には期待できるのも推せるポイント。

守備・走塁での貢献も加味すると、理想とする選手像はコール・カルフーン(ARI)が現実的。
そのためには三振を減らすことも必要になるが、まず当面の間はMLBでホームランを打てるということを証明してもらいたい。

ちなみにこれまではオフの間に公園の清掃やゴルフクラブの従業員のアルバイトをしていたが、メジャーに昇格した今年のオフは初めてアルバイトをせずに過ごしたという。



ホルヘ・マテオ 2B/SS/CF

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私が信じていない快足プロスペクト。

不振に陥った2018年からは持ち直したとはいえ、打者有利なラスベガスの本拠地&AAAでのボールの変更の恩恵に授かった結果でしかなく、wRC+もそれを裏付けている。

正直言って未だメジャーレベルの選手とは言えないが、マイナーオプションが切れていることもあって、今春は2Bの定位置争いに加わった。
しかし、オープン戦ではボーダーに届かない程度の成績に終始し、またDETがマテオに興味を示しているという報道もあって、ついにマテオがオークランドから居なくなるのも秒読みかと思われた。

ところがどっこいである。
新型コロナウイルスによって開幕が大きくずれ込み、またシーズン中はロスターが拡大されることが確実視されるようになった。
マテオは九死に一生を得る形となり、拡大されるロスターには入ることが予想されている。

今年のマテオには、最大の売りである脚力を発揮し、ピンチランナーとしてプレーオフの秘密兵器になることと、来季もロスターに残れる程度の打撃成績を期待したい。

本人も今シーズンに向けて、モチベーションは十分な様子↓



ヴィマエル・マシーン UT

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ルール5ドラフト後のトレードで獲得した新鋭。

特徴は高出塁率と、内野全ポジションを中心にマイナーで9ポジション全ての経験がある汎用性である。

スプリングトレーニングではヒットを量産する意外な活躍で、2Bの定位置争いに食い込み、拡大されるロスターには入る可能性が高いと目されている。

とはいえAAA以上での経験も10試合程度しかなく、彼の上位互換と言えるトニー・ケンプがいるためロスターに入る必要はないと思っているし、私の中でも期待値は低い。


オースティン・アレン C/1B

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(守備のRESは"Runs Extra Strikes"の略でフレーミングの指標)

ジュリクソン・プロファーとのトレードでやってきた期待の若手捕手。

アレンの最大の売りは打撃で、マイナーでは打率.280/出塁率.350/20本塁打クラスの成績を毎年安定して残していた。
打撃のポテンシャルだけなら正捕手マーフィーより高いと言ってもいい。

反面、守備力には課題があると見る向きが多いが、A'sは捕手の守備力にはこだわらない傾向がある。
ましてや、守備力の高いマーフィーのバックアップの予定なので、下手だとしても特に問題はない。
また、昨年のアレンを見る分には、SDの教育の賜物かフレーミングは良さげに映ったので、あまり心配はいらないだろう。

昨年のデビューイヤーはややほろ苦だったアレンだが、是非とも今年は適応して2桁本塁打ぐらいを目指して頑張って欲しい。


ジョナ・ハイム C

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守備型で右打ちのマーフィー、打撃型で左打ちのアレンときて、最後に来るのが守備&アベレージ型で両打ちのハイムである。
彼も本当に良い選手。

ハイムの長所の一つはまず守備スキルの高さ。
盗塁阻止率52%の強肩をもち、守備指標FRAAでは9.9と上々の数字を残していてレシービングも巧みだ。

そして、打撃も向上している。
昨年AAでは11.5%のBB%に対して、K%はわずか13.0%と素晴らしいアプローチを見せ、また力強いラインドライブを飛ばす力もついてAAAにも難なく適応した。
将来的にはホームランを量産するタイプにはならないかもしれないが、ミドルヒッターとして安定した数字を残すかもしれない。

2019年シーズンに大きな飛躍を遂げたハイムだが、その裏にはメルビン監督のアドバイスがあったという。
2018年のスプリングトレーニングに招待選手として参加した当時のハイムは、あまり活力がないタイプだったらしい。そこで、同じく捕手だったメルビン監督はもっとエネルギッシュに振る舞い、リーダーシップを発揮するようにアドバイスし、そのアドバイスを受け止めたハイムはフィールド上でのリーダーシップという面でも成長できたという。


シェルドン・ノイジー 2B/3B

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昨年8月にデビューを果たした有望株。

本職は3Bだが、MLBでは主に2Bを任され、2Bでも3Bでも守備では立派な数字を残した。
打撃でも粗い所は垣間見えたが、持ち味のパワーは発揮できていた。

守備、打撃両面で見ても「ノイジー>バレト」は揺るがないが、今春はマイナーオプションの関係からバレトやマテオよりも優先順位は低く、早々にマイナーに送られた。

ただ、開幕が遅れることでロスター入りの可能性も出てきた。
というのも、現在MLBの開幕案は進んでいてもマイナーに関しては不透明なままで、マイナーリーグが開催されないのにノイジーをロスター外に留め置くのはもったいないからだ。

もしロスターに入れても出場機会は限られるだろうが、まず今年は初本塁打を目標に頑張って欲しい。


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