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【OAK】教科書通りの再建シーズン【2022シーズン振り返り】

どうも、ワイルドカードシリーズ予想全的中、もーてん(Mo10_11)です。

さて、プレーオフが始まりました!

我らがオークランド・アスレチックスはAJ パクとヘスス・ルザルドのWエースの活躍で、トロント・ブルージェイズ相手のワイルドカードシリーズに快勝。続く絶対王者アストロズ相手のディビジョンシリーズもまさかのスウィープで突破(最後は延長18回の死闘を制しました!)。メルビン監督にとっては15年ぶりのリーグチャンピオンシップに駒を進めています。

夢か・・・?
短ぇコンテンドだったな・・・。

さて、再建が始まりました。

結果的には43年ぶりのシーズン100敗を喫するダメダメシーズンだったのですが、個人的には追っていてそこまで苦ではないシーズンでした。
とはいえ、ここではできるだけ客観的に、今年のシーズンと今年から始まる未来に向けた動きを評価していきたいと思います。


シーズンの戦いっぷり : D

弱かったです。

有用な補強は一切なく、ただただ主力選手がトレードで抜けただけのチームだったので、ロスターは放出を待つ選手と昨年以前は主力未満だった選手という構成で成り立っていました。
当然、強いはずがありません。

それでも4月には負け越しわずか1と意地を見せましたが、その後は野球の神様の怒りに触れたのでしょう。5,6月の間に実に27もの負け越しを積み重ね、来年のドラフトロッタリーの確率を高めました。

後半戦からは、前半戦とは一気に別物のチームに生まれ変わりました。デッドライン前までにベサンコート、モンタスらの売却を完了させ、デッドラインで売り物にならなかったベテランを見切り、若手中心のチームに移行。再建としてはワンステップ進んだ形態になったともいえるでしょう。

ただ、再建が始まったばかりということもあって、大物と呼べるプロスペクトはTop100に名を連ねていたランガリアーズ程度。ひよっこの若手中心のチームには、本気モードの9月のチームを相手にするのは大変だったと思います。結果、8,9月も負け越しは19を数えました。


トランザクション : B-

2022シーズンがバシット/オルソン/チャップマン/マナエアのファイヤーセールに幕を開けたことが象徴するように、今シーズンの重要なテーマのひとつが”売り”でした。

多くのトレードを通じて言われていたのが買い手有利なトレードであった、ということ。
それ自体に異論はありません。ただ、ハイフロアーなタイプ(特に先発投手)を好んで獲得している傾向も見受けられ、A'sにとってももたらすものが大きいトレードであったことは間違いありません。

唯一悔やまれるのが、開幕前にはモンタスをキープしたもののデッドライン前に負傷し、対価が軽くなってしまったこと。モンタスは故障前まで快投を続けてバリューを高めていましたが、やはり保有すればするほど故障のリスクは高まるもの。結果論ではありますが、怪我する前に捌きたかった所でした。

ただ、皮肉なのはそのモンタスのトレードが、一連のトレードの中でも現状最も成功に近い部類であること。トレードの対価がどうだったのかについてはまた後述します。


もちろん、売ることだけがトランザクションではありません。”買い”もあって然るべきところですが、”買い”はありませんでした。

前回ファイヤーセール時には買いトレードやFA契約も行ってデプスを埋め、戦えなくもない陣容を整えましたが、今年は一切なし。そもそもロックアウトで時間がなかったこと、オーナーが予算を下ろさなかったであろうこともあり、オフの補強は無に等しいものでした。

ただ、そのスッカスカのロスター事情を逆に活かし、積極的なウェーバークレームを行っていた点は評価に値します。

タイラー・シアー、ジョエル・パヤンプス、ドミンゴ・タピアらをクレームし、特にシアーとパヤンプスは終盤に重要な役割を担いました。

さらに野手でもコナー・ケイペルやアーニー・クレメントら、オプションが残るデプス要員を複数クレーム。来年以降を見据えてデプスを厚くする動きを敢行しました。


常にセラーであったこと、予算が一切無かったことを考えれば、できることをやっていたという印象です。
来年以降もショーン・マーフィーやラモン・ローレアーノらの利益確定のタイミングを睨みながら、多少は増えるであろう予算でどれだけ効果的に補強できるのかに注目です。


育成(MLBレベル) : B

今年はこれまでマイナー暮らしやベンチ要員に甘んじていたような選手が日の目を浴びるシーズンとなりました。

その最たる例が2017年からチームに所属し、今年ついに定着、そしてオールスター選出まで上り詰めたポール・ブラックバーンです。ブラッシュアップしたカーブを軸としてレパートリーを確立させ、キャリアを繋ぎ止めるには十分な活躍を見せてくれました。

すっかり勝ちパターンに定着したザック・ジャクソン、ダニー・ヒメネス、AJ パク、ドミンゴ・アセベド、サム・モールらも、この1年で見違える成長を遂げました。

さらに2021年からチームの主力であったコール・アービンとセス・ブラウンもスタッツを伸ばし、より将来的な構想に加わる重要な選手になれる芽も出てきました。

特筆すべきは、パク以外は将来を嘱望されるようなプロスペクトではなく、ほとんどがウェーバークレームやマイナー契約からの発掘であったという点です。無名な選手を起用し続けたツケは102敗という結果に現れましたが、収穫も十分にあったと言えそうです。


育成(MiLBレベル) : C-

ニック・アレンを筆頭として、ジョナ・ブライドやジョーダン・ディアスなど、コンテンド期に枯れていたファーム組織の中でも成長していた若手たちが無事に卒業。

自前のタレントの中でも、ザック・ゲロフ&タイラー・ソダーストロムのコンビが順調にステップアップ、フューチャーズゲームに選出されたデンゼル・クラークの躍進、さらにはブレット・ハリスやマックス・シューマンなどのレーダー外からのブレイクもあり、マイナーデプスはそれなりの改善を見たはずでした。


しかし、誤算だったのはオフの一連のトレードで加入した大量のプロスペクトたち
無事に昇格まで漕ぎ着けたシェイ・ランガリアーズ、シーズン途中から加入したケン・ウォルディチャックとJP シアーズ以外は、惨憺たる出来でした。

アダム・オラー、エイドリアン・マルティネス、ザック・ローグらはついぞローテーションで立ち位置を確立するまでには至らず、MLBの壁に跳ね返されました。

AAでスタートしたJT ギンとライアン・キューシックも故障と不振に苦しめられ、ガナー・ホグランドはトミー・ジョン手術からの復帰後に再び故障を負う始末。

フォーストGMも「トレードで獲得できた才能には満足している」としながらも「ただその才能がもっと健康ならば良かったのだが…」と嘆いていました。


首脳陣 : B

ボブ・メルビン監督をパドレスに送り出し、10年ぶりに新政権が誕生したのも、2022年の注目すべきポイントでした。

今年が監督デビューとなるマーク・コッツェイ監督は、勝ちにこだわった采配でチームの緊張感を高め、若手の多いチームを鼓舞しました。
前任ボブ・メルビン譲りの繊細なプラトーン戦略と代打攻勢はもちろんのこと、コッツェイ監督の色であろう(そして経験の浅い若手スターターへの配慮も)3巡目に入ってからの素早いブルペン運用など、彼と参謀のオースマス・ベンチコーチの運用は好感触を得ていたと思います。

再建期に突入するにあたって度々起こるのが監督の交代で、その点で言えば今年のA'sもその限りではなかったということになります。
しかし、コッツェイは内部昇格であり、球団内の投手用データベースを構築したスコット・エマーソン投手コーチや、"マット世代"のドラフト・育成を彼抜きで語ることは難しいであろうエリック・マーティンズ一塁コーチなど、多くのコーチは留任して今季を迎えました。

監督面接でのコッツェイは素晴らしかったと聞きますし、内部昇格の候補でなくともジョー・エスパーダ(HOU)やマット・クオトラーロ(TB)といった新進気鋭の監督候補を退けていた可能性はあったでしょう。
しかし、出来レースとは言わないまでも、最初からコッツェイの公算は高かったと思います。

再建期に突入するにあたって度々起こるのが監督の交代で、そして悪い場合に陥ってしまうとフロントと新しい現場の間のコミュニケーションが不足し、混乱を来してしまうことがあります。
しかし、そこは勝手知ったるアスレチックス内部の人間。数多の解体トレードを経験したベテランスタッフたちにとっては、もうやるべきことは分かっているとばかりの、粛々としたマネージメントだったと思います。

財政・チーム状況を鑑みた徹底した売りトレードの断行、若手の登用とベテランの見切りのタイミング、果敢なデプスムーブの数々。
上手くいかなかった要素もあるとはいえ、教科書通りの再建シーズンを送ってくれました。


終わりに

個人的に今年のチームが好きだった点は、一貫してモチベーションが高かったところです。

春先にブラックバーンの口から出た「勝とうが負けようが、最後のアウトまで戦うことを約束する。」というコメントには胸が熱くなりました。
ブラックバーンがまさに筆頭格といえそうですが、開幕時のチームはこれまで十分にチャンスを得られていなかった選手たちで構成されていました。そのため、多くの選手にハングリーな姿勢が垣間見えたと思います。

後半戦でも、チャド・ピンダーやスティーブン・ボートといったベテランのリリースの波に飲まれずにチームに残ったベテランが、その雰囲気を若手に伝導。

ピンダー自身が「102敗した気がしなかった」と発言しているのも、ひとえにポジティブな要素の多さに尽きるのではないでしょうか。

今シーズンは再建初年度の上、制約も多いシーズンでした。ですからかなり甘々に見てしまっていますが、来年以降は成果を求められるシーズンになってきます。オフシーズンの動きから、来年に期待です。



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