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【OAK】藤浪晋太郎を獲得

スポーツ報知によれば、阪神タイガースからポスティングでMLB入りを目指していた藤浪晋太郎がアスレチックスとの契約に合意したとのことです。

契約内容は1年3.25M+出来高1M。
さらにポスティングを介しての移籍ですから、0.65Mのポスティングフィーも加算すると、トータルで出費は3.9Mとなります。なお、仮に藤浪が出来高をクリアすれば、0.2Mを阪神タイガースに支払う必要があります。


さらに先発デプスを分厚く

藤浪獲得を知った時の率直な感想は「驚き」でした。

既にチームには、コール・アービン、ポール・ブラックバーンらのベテラン勢に加え、一昨年からの解体トレードでかき集めた多数の投手プロスペクトがおり、さらにルチンスキまで獲得していました。

そのため、頭数の上ではアービン/ブラックバーン/ルチンスキ/キャプレリアンで4枠が確定することになっており、残りの枠はプロスペクトに割くというのが大方の予想でした。
しかし、アスレチックスは新たにベテランを獲得することを選びました。


藤浪獲得の意図は?

藤浪獲得の構図はルチンスキ獲得のそれと被ります。

既に多くのメディアで報じられているように、トレードデッドラインでの転売を狙う意図はもちろんあります。
しかし、もっと大きな狙いは「確実にイニングを消化してくれるピッチャーを加えること」だと思っています。

どうしても層が薄くなる再建モードのチームにあって、確実にイニングを消化できるベテランは違いをもたらします。1人で150イニングでも消化してくれれば、ブルペン・先発ローテ共に大きな負担軽減となり、それが若手の肩肘を守ることに繋がるからです。

頭数に含められている内、ブラックバーンとキャプレリアンは共に故障明け。特にキャプレリアンは耐久性に問題を抱える投手です。
ルチンスキの獲得前には、先発投手を1人か2人獲得するつもりがあるようだと番記者が報じていましたから、ルチンスキ1人では足りないと球団は考えていたのでしょう。

藤浪は故障と戦ってきた、と報じているアメリカメディアもありますが、阪神ファンの方から聞く所によれば藤浪に大きな故障歴はないとのこと。調べても2015年の肩関節の炎症くらいしかヒットするものはありませんでした。
一軍で投げられていなかった時期は、イップスじみた制球難との戦いに追われ、阪神の分厚い投手層にブロックされてチャンスをつかめない時期がほとんどだったようです。
故障耐性が本物であれば、藤浪のイニング消化性能への期待はグンと高まります。

シーズン中にトレードして有望株を獲得しようという狙いもあるにはあるでしょう。
しかし、ルチンスキもそうですが、アジアから渡米してくる実力未知数な投手が3ヶ月で適応して、デッドラインでプロスペクトに化ける可能性はそこまで高くありません

とはいえど、アスレチックスが藤浪のポテンシャルに賭けたいと思っているのも確かでしょう。

藤浪の契約には、ルチンスキのように球団有利なオプションは付いていません。
つまり、チームがコンテンドできそうにない以上は、藤浪が最もアスレチックスにバリューをもたらすシナリオは、開幕から3ヶ月で好成績を残してトレードによってプロスペクトに化けるというその1点になります。

前述の通り、その可能性はそこまで高くありません。
しかし、それでもルチンスキを上回る額の投資をし、既に頭数の揃っているスポットに藤浪を加えたということ自体が、藤浪のポテンシャルへの期待の裏返しなのではないかと思います。

先日の記者会見でも、コッツェイ監督が現状のスターター陣の経験不足について言及し、日本で10年間の経験を積んだ藤浪が重要な補強になるといったことを述べていました。
ベテランの実績を持ちながらも、ベテランの枠を超えたポテンシャルを持つハイブリットな補強になったのではないか、と思います。


藤浪のパフォーマンスへの期待

FanGraphsに藤浪を分析した記事があったので、ここから多くを引用していきます。

藤浪の武器のひとつが100mphを超す豪速球です。
アベレージで96.3mphは先発としては規格外の速さで、MLBではブランドン・ウッドラフ(MIL)と同水準にあたります。

さらに特徴的なのがリリースポイントと変化量。長身で手足も長い藤浪は低めのリリースポイントを持っています。そこから投じる速球は4シームとしては横変化が大きく、シンカーにしては縦変化が大きいハイブリットな球種だと言われています。
リリースポイントと変化量の観点からすると藤浪の速球は相当レアな球質のようで、そこには期待が持てます。変化量とリリースポイントが藤浪の4シームに似ている投手には、アーロン・ノラ(PHI)とネイサン・イオバルディ(TEX)が挙げられています。

そして、決め球として期待されているのがスプリッターです。
平均球速91.4mphはNPB/MLB両方のリーグで最も速く、効果は絶大。横変化量は速球と同じながらそこからストンと落ち、ボールゾーンでの空振りとウィークヒットを量産することに長けています。ハードヒット率はわずか9%というデータも出ています(!)。

2022年以前はメインの決め球であったスライダーは、空振りを奪える球種ではありますが、縦変化の乏しさから痛打されやすい球種でもあるとのことです。


個人的には、藤浪が参考とすべきはネイサン・イオバルディではないかな、とこの記事を読んで思いました。

MassLive.comより

藤浪との共通点は、同じような球質の100mph超の剛速球とスプリッターを持つということです。
そして異なる点はイオバルディはメジャー有数のストライクスローワーであり、優れたブレーキングボールを持つという点です。

有望株時代にはコマンドが疑問視されることもあったイオバルディですが、MLBではゾーンをアグレッシブに攻めるスタイルで成功を収めました。

藤浪も独特な球質の4シームをゾーン内に散らせば、相手打者も的を絞れずに打ちづらいのではないでしょうか。決め球のスプリッターは恐らく通用するはずです。

ここで鍵を握るのはスライダーのクオリティかもしれません。
痛打されることもあったというスライダーを、スピン効率を落として縦変化を増やすなどして改善させられれば、効果的にゾーンを攻められるようになるでしょう。


NPBからの渡米であることやレパートリーから言えば、藤浪の現実的な比較対象は澤村拓一だと思います。
澤村はボール自体は通用していましたが、制球面で大きく苦しみました。

制球難がぶり返さないことは大前提です。
その上で、澤村と同じ轍を踏まないように藤浪も投球スタイルを見直す必要があるかもしれません。


藤浪がアスレチックスのローテーションで投げるのは7月まで?

藤浪がアスレチックスのローテーションで投げるのは7月までの可能性が高いと思います。アスレチックスが想定通りの低迷に陥った場合の話です。

まず最高のシナリオは、

1.先発として好投→デッドラインまでに他球団にトレード

です。過去の例からいえばリッチ・ヒルのような即栄転コース。当時のヒルと同じように、復活したローレアーノとセットで売れたら対価も弾みそうですね。


2番目のシナリオは、

2.先発として失敗→ブルペンに降格→リリーバーとして他球団にトレード

出来高に先発登板数の項目が含められており、ブルペン降格には制約があるかもしれないので、可能性はそこまで高くないでしょうか。ただ藤浪がよほど低調なパフォーマンスだった場合、見切ってリリーバーとしての出荷を目指すのはあり得なくない話です。
また、1のシナリオのようにアスレチックスでは先発として活躍したとしても、藤浪がトレード後にリリーバーとして起用される可能性は大いにあると思います。先発としてのパフォーマンスがそこまで良くなくとも、ロングリリーバーや先発デプス要員としての需要はあると思います。


3番目のシナリオは、

3.先発として失敗→デッドラインまでに売り切れず→若手にスポットを空けるためにブルペン降格またはDFA

これは最悪のシナリオですね。ケース的には昨年のパイレーツと筒香嘉智と全く同じです。この場合、筒香はDFAとなりましたが、藤浪は投手かつリリーフ適性も備えていますから、ブルペン降格が濃厚でしょう。
いずれにせよ、最も避けて欲しいシナリオであることに違いはありません。


先日のチーム紹介にも記載しましたが、藤浪のライバルは少なくありません。

しかも、これは開幕時点での話。
シーズン中には、メイソン・ミラーやホーガン・ハリスといったマイナーにいる有望株も仕上がってくるはずです。

藤浪が成功するにせよしないにせよ、アスレチックスが藤浪に先発の機会を与える期間はそこまで長くないかもしれません。


藤浪への期待の高さ

新加入選手・藤浪をもてなすために、アスレチックスは入団会見を用意しました。
FA選手の入団会見は10年前の中島裕之以来と、アスレチックスが入団会見を行うことは非常に稀なことです。

そして、同日には開幕シリーズでの「晋太郎Tシャツ」配布を発表。

かつては大谷翔平と肩を並べた日本球界のスターの営業力にも大きな期待を寄せていそうです。


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