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「7つの習慣」にとってのタスクシュートとは 【7.TaC理論】

名著『7つの習慣』は、世界的な大ベストセラーです。
日本でも、多くの人が知る本と言えるのではないでしょうか。

では、「7つの習慣」を実践している人がどれくらいいるかというと、少し心許ない気がします。
それは2つの意味においてです。

一つに、『7つの習慣』の名前が出される時は、だいたいが「時間管理のマトリックス」や「影響の輪」を紹介したいがためです。
確かに、これらはとても重要な概念で、欠かせない考え方です。
しかし、どちらもテクニカルなもので、コヴィ博士が最も伝えたいことではありません。
もしかしたら「一時しのぎのテクニックやスキルばかりに注目してしまっている」という、コヴィ博士が嘆いた状況そのものになってる可能性があります。
その意味で、「7つの習慣を実行している」とは言い難いと思います。


もう一つは、「時間がなくて、なかなか手がつけられない」という人も多いのではないかと思っています。
コヴィ博士自身が、書いています。

「自分にとって本当に重要なこと」を書き出し、それを実現させるための目標を設定してみたのですが、日々の雑務をこなしている間に、いつの間にか「夢」が消えてなくなっているのです。

スティーブン・R・コヴィ著『7つの習慣 最優先事項』P.43

それは、無理もありません。
生き物としての人間が今の形になったのは、30~40万年前。その頃の環境に最適化された生き物です。
これほどまでに物や人や情報に溢れている環境では、必ず不具合が生じます。
「いつの間にか『夢』が消えてなくなる」のも、その不具合の一つです。

自分の外側からの情報が多すぎて、内側の声が聞きにくい状況です。
「あれをやれ、これをやれ」
「ああなるべきだ、こうなるべきだ」
「あれも欲しい、これも欲しい、もっと欲しいもっともっと欲しい」
という外側の声は、心の声をあっという間にかき消します。


だからこそ効果を発揮するのが、タスクシュートです。
タスクシュートの真骨頂は、「没頭状態への導入」にあります。
外側の声が、聞こえなくなるのです。

デイリープランを組み立てようと始める段階で、すでに「没頭状態への導入」は、自動的にスタートされています。
変幻自在なルーチンを多用するタスクシュートは、日付が変わった時点ですでに、いい感じのレールがだいたい敷かれるようになります。

だいたい敷かれたレールをベースにして、「7つの習慣」で定めた最優先事項や、日々の雑務などを材料としながら、自分らしいしっくりくるレールを敷き詰めます。
そして、光の差す出口(=終了時間までに終わるタスクリスト)を作ってあげることで、立派なトンネルが完成します。

そのトンネルは、外側の景色がどうあろうと、不安なく迷いなく、目の前のことに没頭して行動させてくれるのです。


没頭して行動した結果、思った以上の成果が出せることは、よくあります。
その成果は、噛みしめていいものです。

でもそれ以上に感じてもらいたいのは、「没頭活動しているその時って、自分らしい生き方の一つですよね」ということです。
北極星(ななつ星)に向かって、無我夢中で活動しているその状態は、サイクロンがいい感じで上昇している姿です。

理想的な世界に向かって進み、成長している状態。そのプロセスこそ、幸福と言えると思います。


タスクシュートが無い場合、そのサイクロンが巻き起こりにくいので、北極星にはなかなか近づく実感を得られないことでしょう。
「大事なことは、分かっている。なのに、ああ、今日もまた何もせずに終わってしまった。時間を無駄にしてしまった」と。


「7.TaCモデル」の「タスクシュート」層を取り出した場合、その上部はこのようになっています。
サイクロンの動力源となる、タスクシュート・サイクルです。

 jMatsuzaki、佐々木正悟著『先送り0(ゼロ)』P.102


大事なことを定めただけでは、容易にその内なる声がかき消されてしまう。
だから、タスクシュートのメソッドによって、大事な大事な心の声を守り、行動に移していけたらいいのではないかと思います。

優しく、柔軟に、現実的にルーチンを育てていくタスクシュート・サイクルは、コヴィ博士の願う人格主義を回復するための強力な相棒です。

最後に、コヴィ博士も『7つの習慣』の中で引用した言葉をここでも紹介して終わりにいたします。

人格は繰り返し行うことの集大成である。それ故、秀でるためには、一度の行動ではなく習慣が必要である。
──アリストテレス

スティーブン・R・コヴィー著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』p.84

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